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リバイバル・マジック〜女神はなぜ死者を愛でるのか。人ならざる身体に男は惑い抗う  作者: IT
3章 Road to hope

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22/23

22話 Miss Swing

 今話より第三章 Road to hope が始まります。

 

 新たに定められた目的。

 それに向かって残された命を燃やすレイズ。

 

 極光の如く輝く幼馴染。

 暗い影を落とす二つの心。


 傷を負った二人の歩む道は、希望の道となるのだろうか。


 是非、見て頂けると嬉しいです!

 空が少しずつ白みを帯びてきて、夜が明けることが分かる。

 土や枝葉を被り、隠れるように仮眠を取った俺は、身体を起こし西へと向かった。

 目指すのは“リーブス”という名の町だ。

 ホクレイに戻るというのも選択肢の一つではあったが、俺の身体をそれなりに多くの人に見られてしまっているし、戦いが終わっているとも限らない。

 それであれば、ホクレイから近く、軍の施設もあるリーブスに行くのが比較的安全かつ効果的だと思った。

 俺に残された時間は少ないのだ。

 一分一秒でも無駄にすることはできない。


 それなりに起伏のある道を四半日ほど歩き、リーブスが見えてくる。

 途中、魔獣などにも遭遇はしたが、問題なく対処できる範囲の遭遇だった。

 少し小高い所から見る町は、魔族に襲撃されたような形跡はなく、素朴で温かみのある様相を保っている。


「ここがリーブスか……」


 一息つき、安心する。

 まずは、ここが魔族たちに襲撃されていなくて良かった。

 着いたは良いが、既に壊滅していましたでは話にならない。

 ディバロやホクレイよりは簡易的な門に入ると、関所の役割も兼ねているようで、衛兵が待ち構えていた。

 金を払い、簡単な手続きをしながら、衛兵に尋ねてみる。

 

「魔族関連のことで話がしたいんですが、話せるところはありますか?」


 衛兵は手を止めて、俺を軽く睨んでくる。

 対応するのが面倒なのか、それとも俺を怪しんでいるのかは分からないが、どっちにしろ良い反応ではない。


「ここは街の出入りを取り締まる場所だ」


「だから、どこに行けば良いかを聞いているんだ!」


 こういう融通の利かない奴に当たってしまうとは運がない。

 俺も思わず声が大きくなってしまう。

 衛兵は、少し憤慨したような顔をしたが、黙って町の中の地図を出してきた。

 そして、わりとここからすぐ近くの場所に丸をつけ、突き出してくる。


「分かった。すまない。ありがとう」


 地図を受け取った俺は、足早に地図に示された場所へと向かう。


 リーブスの軍施設は、町の中ではそれなりに大きな建物だったが、あまり人がいるような感じはなく、閑散としている。

 恐らく、主だった者はホクレイの援軍に行っているのだろう。

 それは仕方のないことだ。

 受付の女性に話をすると、これまた怪訝そうな顔をされて、カウンターの一番端の席で待つように指示される。

 数十分ほど待った後、気難しそうな壮年の男性がやってきて、俺の前に座った。


「ええと……レイズ・グラスノーさん?」


「はい」


 男性は、俺の風体を確認して、小さく溜息をつく。

 

「見たところ、冒険者さんのようですが、義勇軍には参加されないのですか? 見ての通り我々も人が足りていなくてね。健康な方には是非参加して頂きたいのですが」


「……そういう状況は分かっていますが、今日はその話をしにきたのではありません」


「そうですか。魔族関連の情報提供でしたね。ええ、勿論探していますよ。我々軍隊が、それこそ血眼になってね」


 よく見ると、男性の目の下にも大きなクマが見える。

 ここはまだ戦場にはなっていないとはいえ、大変な状況であることに変わりはないのだろう。

 俺のような面倒そうな者の相手など、誰もしたくはないのだ。


 俺はリンク・ストーンやスプーフィングなどの魔族たちの技術や、アメリアの言っていた魔界の存在について、知っていることを洗いざらい話した。

 男性は、ぼんやりとした顔で俺の話を聞いている。

 俺の熱量に対して、あまりに手応えのない反応だ。


「はぁ、聞けば聞くほど、おとぎ話のような話ですね」


 男性は鼻で笑い、身体を横に向ける。

 

「ええと……グラスノーさん? あなたが義勇軍に入れない理由も何となく分かりましたよ。この状況下ですから、冒険者の方にも色々あるのは分かりますがね。残念ながら、精神的な病院となるとこの辺りには……」


「もう、いいです。お時間とらせてすみませんでした」


 立ち上がり、背を向ける。

 俺の言うことが信じられないというのも分からなくはない。

 もし、逆の立場だったとしたら、俺もすぐには信じられないだろう。

 ただせめて、もう少し真面目に話を聞いてくれる相手でなければ、無駄に時間を浪費するだけだ。

 軍関連の施設が一番手っ取り早いというだけであって、他にも話ができる施設はある。


 それから俺は、様々な施設を渡り歩いた。

 衛兵の詰所を回り、役所や冒険者ギルド、それに商人ギルドや町長の家さえも。

 そして、どこに行っても似たような対応をされる。

 見ず知らずの冒険者である俺の話に、聞く耳を持ってくれるような人はいなかった。

 徐々に陰っていく夕陽を見上げる。

 大事な一日だというのに、刻一刻と終わりが近づく。


「クソ……!」


 俺は、手頃な場所にあった針葉樹に拳を叩きつけた。

 普通であれば、もう宿を取らなければならない時間帯ではあるが、俺はそんな悠長にはしていられない。

 要は、証拠があれば良いのだ。

 アメリアとともに使ったリンク・ストーン。

 それをここまで持ってこれれば、俺の話にも説得力が増すはずだ。

 俺は軽く食事を済ませた後、さっさと町を出て、ホクレイ近郊の森まで足を走らせた。


「確かこの辺だったはずなんだが……」


 森の木々に手をつき、体重をかけながら辺りを見渡す。

 目的の場所の近くにはきているはずなのだが、アメリアがスプーフィングで変えたような低木は見当たらない。

 夜になり、視界が悪いのも分かるが、そうも言ってられないのだ。

 俺は休息も取らず、必死に森の中を彷徨った。

 

 結局明け方になっても目的の物は見つからなかった。

 よくよく考えてみると、アメリアが自分の屋敷へと繋がるリンク・ストーンを、そのままにしておくことは考えにくい。 

 アメリアは俺からの最後の復讐だって警戒しているはずだ。

 もし、俺が何人もの兵士を引き連れて、自分の屋敷に乗り込んできたとしたら、アメリアとて困るだろう。

 

 焦るあまり、冷静な判断を欠いていた。

 俺の考えも、行動も、ことごとく空回りしている。

 ユリちゃんと別れてから、既に一日と半分が経過しており、更にここからリーブスまでも四半日はかかるのだ。

 前にアメリアの屋敷から抜け出した時は、三日目で身体に異常をきたした。

 そう考えると、あまりにも時間が足りない。


 荷物から小瓶を取り出してみる。

 『ユリ』とだけ書かれている小瓶だ。

 中にはそれなりの数の錠剤が入っている。

 できれば手を出したくない物ではあるが、もしかしたらこれを飲まざるを得ないかもしれない。

 ユリちゃんの顔を、そしてアメリアの顔を思い出し、そして自分の決意を思い出す。

 俺の死は、決して犬死にであってはならないのだ。

 俺はなんとしてでも、俺の言葉を国と大衆に届けなくてはならない。

 

 俺はどうすれば良いのだろうか。

 何をするべきなのだろうか。

 必死に考え、思考を巡らすが、上手く考えが纏まらない。

 そして、一人で延々と考えていると、眠気が襲ってくる。

 思えば、昨日からろくに休息もとっていなかった。

 この身体は気持ち悪いほどの再生力はある癖に、疲労もするし、眠くもなる。

 どうせ人間ではないのだから、いっそのこと疲れも痛みも感じないような、永久機関でも持った身体のほうが都合が良かった。

 

 足をふらつかせながら森を出る。

 ひとまず、ここに留まっていても仕方ない。

 帰りながら、リーブスでの動きを考えるべきだ。


「ちょっと、そこのお方!」


 街道へと出た時、不意に正面から声をかけられる。

 顔を上げると、デカい荷台をつけた馬車と、馬の手綱を握る獣人の男がいた。

 小柄でまだあどけない顔をしていて、年は十代後半かそこらといったところに見える。

 耳と尾は狐色で、少し硬そうな毛並みが特徴的だ。

 恐らくは狐種の獣人だろう。

 

「冒険者の方とお見受けするっす。ちょっとお話良いっすか?」

 何を言うのかではなく、誰が言うかだ……


次話 第23話 光明


 是非、見て頂けると嬉しいです!


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