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リバイバル・マジック〜女神はなぜ死者を愛でるのか。人ならざる身体に男は惑い抗う  作者: IT
2章 DOLL

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11話 リンク・ストーン

 数日後、俺が連れてこられたのは、離れの二階奥にある部屋だった。

 先日までは施錠されていた部屋だ。

 そしてそこには、見たことがあるような気がする鉱石が、多数宙に浮き青い光を放っていた。

 大きさはかなり大きく、俺の身長くらいの大きさがある。

 

「これは……?」


「これは“リンク・ストーン”と呼ばれる鉱石です。ある特定の産地でしか採れない鉱石ですが、かなり便利な物でもあります」


 俺たちは、俺の母国であるシアイン帝国に行くための準備をした状態で、この部屋へときていた。

 装備品は、アメリアさんが準備してくれたようで、標準的な槍と防具を貸して貰っている。

 ユリちゃんもいつものメイド服ではなく、以前ディバロで会った時のように、普通の町娘のような恰好で、腰の後ろに細身の剣を差していた。


「それでは、出発の前に最終確認をしておきましょう」


 アメリアさんは戸惑う俺を余所に、話を続けていく。


「今回の目的地は“ホクレイ”という街です。そして、目的はレイズさんのお仲間たちやご家族の安否の確認、そして“レア・クリスタル”の採集です。期間は一週間を予定しています」


 ホクレイはシアイン帝国最北端に位置する街だ。

 そしてレア・クリスタルは、その名前に反して特段珍しいものではなく、山間に行けばわりとその辺に転がっている鉱石のことだった。

 特段何かに利用できるといった話は聞いたことがないが、どうやら蘇生魔法の研究に必要な物らしい。

 

 それにしても、この屋敷は大陸の南端に位置するはずだ。

 もしもシアイン帝国に行くのであれば、必然的に南の地域に行くようになるはずなのだが、何か不都合でもあるのだろうか。


「何か質問はありますか?」


 アメリアさんは明らかに俺のほうを向いて言った。

 隣のユリちゃんを見ると、ぼんやりとした感じで、話を聞いているのかさえ怪しそうに見える。

 もしかしたらアメリアさんは、先ほどから俺にだけ話をしていたのかもしれない。


「幾つかあるのですが、まずこれからの移動に伴って、魔族との戦闘も考えられます。なので、戦力の確認をしておきたいのですが」


 まず、誰が何をできるのか。

 それを確認することは基本中の基本であり、駆け出しの冒険者だってやっていることだ。

 見たところ、アメリアさんは魔法士タイプだろうが、ユリちゃんはどうだろうか。

 戦闘ができるようには見えないし、体格が小さく荷物持ちができるようにも見えない。

 それなら、いっそのこと連れて行かないほうが危険が少なくて済むのではないだろうか。


「それは確かにそうですね」


「俺は準備して貰ったので今更ですが、槍を主戦にした前衛です。あとは、土魔法が少々。といっても防御系が主ですが」


「私も防御系や補助系の魔法が得意です。ただ、申し訳ないのですが、攻撃系の魔法に適正がなく、そういった面ではお役に立てないかもしれません」


「なるほど。全然謝ることじゃないですよ。防御系の魔法があるのとないのとでは、パーティーの安定感が違いますから」


 アメリアさんは恥ずかしそうに肩をすぼめている。

 恐らく、攻撃系の魔法がないことを気にしているのだろうが、それは仕方がないことだ。

 魔法は、生まれ持った素養によるところも大きく、適正がない魔法はどんなに努力しようとも使えるようにはならない。

 つまり、本人がどんなに望んでも、できないものはできないのだ。

 それに、アメリアさんは戦闘が本職ではないだろうし、防御系の魔法が使えるだけでもありがたい。


「そう言って頂けると嬉しいです。ユリは純粋な剣士で、魔法は使えません。基本的には、レイズさんと同じ前衛? になると思います」


「え? それはあまりにも危険なんじゃ……」


 前衛はその名の通り、敵と最も接近するようになるため、必然的に傷を負いやすくなる。

 例の薄紫の光で、傷は回復するのかもしれないが、それにしても危険に思えた。


「ユリは、こう見えて剣術に関してはとても優れています。多分、レイヤ? もちゃんとやれば、結構高いと思いますよ」


「そうなんですか? ユリちゃん、大丈夫?」


「……え? 何が?」


 やはり、ユリちゃんは聞いていなかったようだ。

 しかし、ユリちゃんが剣を振ったり、トレーニングをしているような姿は見たことがない。

 もしかしたら、全然戦えないというわけではないのかもしれないが、注意して見てあげるのが良いだろう。


「まぁ戦力、というのはこんなところですかね。他にはありますか?」


「あぁ、それと準備物と移動に関してなのですが、ここからホクレイまではかなり遠いと思います。さっきは一週間の予定と言っていましたが、移動も考えるとその数倍は……」


「いえ、そこは心配しなくても大丈夫です」


 アメリアさんは俺の言葉を遮り、宙に浮く鉱石を指差した。


「そのためのリンク・ストーンですから」 


「と、言うと?」


「まぁ、実際に体験してみるのが早いです! 準備は大丈夫ですか? 忘れ物はありませんね?」


 アメリアさんは、いたずらっぽく笑う。

 いつも笑っているイメージのアメリアさんだが、こういう無邪気な笑顔を見るのは初めてな気がした。

 

「まぁ、大丈夫ですけど……」


「それでは、早速出発しましょうか!」


 何故か、アメリアさんが一番張り切っているようにも見える。

 俺などは、仲間や家族の生死を知るのが少し怖くもあるのだが、アメリアさんは、純粋に楽しんでいるようだ。

 まぁ、旅の雰囲気が暗いよりはいいのかもしれないが。


「そういえば、エレンさんのことは良いんですか? 一週間もこの屋敷を空けることになりますけど」


「そちらは大丈夫です。以前、少しだけお話しましたけど、この家にはもう一人住人がいるんです。そろそろ帰ってくるようなので、エレンのことは彼に置手紙をしておいたので大丈夫だと思います」


 他に印象的なことが多く忘れていたが、確かにそんな話があった。


「それでは、レイズさん」


 アメリアさんは、リンク・ストーンと呼ばれた鉱石の前まで行くと、俺に向かって手を差し出してきた。

 俺に手を取れと言っているのだろうか。

 何の意味があるのか分からないが、ひとまずはアメリアさんに従い手を重ねる。

 すると、ユリちゃんも俺の手の上に、その小さな手のひらを重ねてきた。

 アメリアさんが、空いているほうの手でリンク・ストーンを触ると、その鉱石はたちどころに赤く染まる。

 そして、一つ瞬きをした時、目の前には豊かな森が広がっていた。

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