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ペンギン戦記〜黒を持たない鬼が戦場を破壊する〜  作者: ペンギン愛好家


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第五羽 偽りの邂逅

読んでいただきありがとうございます。

本作はペンギンたちが文明を築いた世界での戦争を描いた物語です。


学業の関係で不定期更新になりますが、基本的に毎週日曜日の20時に投稿していきます。

桜は街中に咲きほこり、心ばかりか不幸を忘れさせる輝かしいものであった。ほどよい風は花が散る様子を、より美しく魅せた。


戦争から少しばかり日が経ち、いたるところで感情が飛び交ってる。感動、悲哀、そして暗澹アンタン。それは鬼にも例外ではないはずだ。



大金艮帝国・銀小州ーー小さな鍛冶屋から金属を加工する音、刀を研ぐ音が鳴り響く。禹廻神は特殊な弾の製造を、頼みに訪れていた。


「はあああ!」


裂帛レッパクした声は、どの音にも負けていない。キツく縛った鉢巻、ボロボロの作業着、そして一点を見つめるその集中力。


刀・鍛治夫。


鍛治に関しては右にでるものはいないであろう。そして禹廻神も研磨の技術は、師から教わっていた。


「もう少し完成には時間がかかるな…」


「急いではないので、大丈夫です」


「私も全ての刀となると、それなりにかかりますしね」


「それならいいが…」


鍛治夫は少しばかり考えていた。禹廻神との会話も、鍛治と思考によって疎かになっていた。


「……言うべきか」


それは”ある”ことについてだった。鍛治夫の手が止まる。集中することは得意だが、一度他のことを考えだしてしまうと、そちらに意識が飛んでしまう。


「…いや、言おう」


これは決意が固まったというより、早く作業に戻りたいという意思の方が大きいからだ。


「…….”アイツ”も帰ってきた」


鍛治夫が言い放った瞬間、研磨中の刀が音を立てて落ちた。そして禹廻神の顔色は大きく変化する。


「どこだ」


それは焦っているようにも見える。


「ペンギンズ地方・平銀(ヒラシロガネ)県で潜入しているらしいな」


「今すぐに会いに行きます」


「敵対関係にある国にずかずかと入るのか!!?」


二人の間に沈黙が訪れる。依然として、鍛治の音の勢力は落ちていない。金属の音が通り抜ける。

だが、鍛治夫は作業をいち早く再開するために切り出す。


「しばらくしたらここに帰って来ると言っていた」


「…そうですか」


急に落ち着いた口調に戻った。しかしその感情は安心というより、呆れであった。


二人は自然と作業に戻った。



戦争から半月が経過した。禹廻神はずっと鍛冶屋で寝泊まりしている。


「できたぞ!」


鍛治夫の弾んだ声で禹廻神は目覚めた。朝早くから作業を続け、とうとう完成させたらしい。


「後はこれを量産するだけよ」


「ありがとうございます」


小さな鍛冶屋は歓喜に包まれた。


「この弾の作り方は覚えました」


「今日でここを発ちます」


「そうか…」


鬼は空気を読めない。そして禹廻神には目的があった。武器の回収。戦争の途中に大金艮帝国は、いくつもの工場を手に入れた。その工場の一つに興味深い物があるらしい。


神具・朱雀蘭丸(スザクランマル)


その工場では、護身のために置かれていた。だが戦争と同時にどこかに消えた。もうすでに回収されたと言う者もいたが、誰一人としてこれを持っていなかった。


「いってきます」


「必ずまた、顔を合わせに来い」


「…」


師の言葉を無視するように出て行ってしまった。



ペンギンズ地方・動凱(ドウガイ)県西端ーー鶴下製鉄所と大きく書かれた看板がある。だが、その字は目を凝らさないとはっきりと分からない。


ここは、大金艮帝国の工場として利用する予定であった。しかし、何人もの作業員が死傷する事故が発生。計画は中止となった。今は大金艮帝国兵が”外”の警備をしている。


「正面二人…だけか」


鬼は漆黒の目を光らしている。


「窓をぶち破ってもいいが、後から入られると面倒くさいな」


「だったら…」


木陰にいた禹廻神の姿が、一瞬にして消えた。次に見えた頃には、すでに兵はぐったりと倒れていた。


「キィィィィィ…」


錆まみれの扉を開く。中はいたって普通の工場だ。


だが何かがおかしい。


……綺麗すぎる。外と中では、全く別の建物と間違えるほど異なっていた。


「誰か住んでいるな」


禹廻神が口にした突如ーー何十人もの兵士が武器を持ち、禹廻神を囲む。


「おいおい。打つなよ」


軽薄な声、整った白衣、そして片手の義手。


「こんなとこにいるとはなDr(ドクター)止場(ストップ)


「お前から来てくれるとは思っていなかったよ、柏木」


緊張した空気が工場全体を包む。互いを観察し合っている。


「殺す」


声が届く前に、首元に刃があった。


「てっきり鈍くなったと思っていたが…」


「手加減してるでしょ。スピード上げろよ」


依然、武器は首から離れていない。するとーー


肉媒錬筋術(ニクバイレンキンジュツ)!!」


小さな箱に入った肉片を摂取した。だんだん体の形が変形していく。


「さ せ る か」


背中の銃を抜き、一瞬で撃ち込む。脳幹に特製の弾がめり込む。出血が止まらない。


『術輪神経も狙ってきやがった。だが!……?』


禹廻神は”あえて”術の記憶に備わるところに撃った。


「術が発動しなっ…グハッッ!」


奥の搬送装置まで吹っ飛んでいく。間を空けず禹廻神も近づく。刀を抜き四肢に差し込む。


「まさかお前が持っているとはな…朱雀の効果を参考に作ったのだろ?これ」


苦しそうに話す。


「持っていないのか!?」


「?あーなんだ。ここにあると思って来たのか。それは残念だ」


「何がだ」


禹廻神の声色がみるみる変化する。


「その弾、鍛治夫に作ってもらったやつだな?自分でも作れるように朱雀を参考にしたいっていうわけだ!!」


「ドスッツツ」


大きく声を発したかと思えば、禹廻神に一本の刀を突き刺した。腹部から血が流れ出る。


「神具・朱雀蘭丸には、神経を鈍らせる効果があんだよ。術も神経を通る。だから効く。欲しい理由がよく分かるよ」


荒い息遣いだ。


「いくらお前でも…これを刺されりゃ…即死だろう…」


止場は地面に倒れ込んだ。しかし、禹廻神は立ち続けていた。それどころか顔色一つ変化していない。


禹廻神がとどめにさしかかろうとした。


しかしーー


突如として肉体の外殻が崩れていく。


なんだこの”違和感”は。


「お前、止場じゃないな」


「正解!」


軽薄な声が工場を再び包んだと同時に、弾が発泡される。だが、すでにその場に彼はいなかった。


「お前と久しぶりに会えて嬉しかったよ」


「どういうつもりだ?」


「お前を探してたんだよね。わざわざ基地まで出向いてやったのに。いなかったと思えばあの爺さんのとこにいるとはね」


「あっ、その刀もういらないからあげるよー。それじゃねー」


止場は窓を破り颯爽と外に逃げていく。禹廻神はただそれを夕日とともに睨んだだけであった。



二人の関係を知る者はいない。


鬼に孤独という空白を作った。


……それだけだ。



目指すの先には、争いだけないのか。


続く…

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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