第六羽 凋落の儚い
読んでいただきありがとうございます。
本作はペンギンたちが文明を築いた世界での戦争を描いた物語です。
学業の関係で不定期更新になりますが、基本的に毎週水曜日の18時、日曜日の20時に投稿していきます。
日差しが、少しずつ暖かみを帯びて始めている。地の底まで堕ちた感情は、地上の眩しさを知らない。いや、知りたくないのかもしれない……
あの戦争から一ヶ月。
三辺同盟及び、大金艮帝国、ブラックテリト、大海底連邦の各地では、市民による反乱が勃発していた。
大金艮帝国議会院大会館前ーー
「なぜ賠償金を取らなかった!?」
「国民がどれだけ税金を払わさられたのか分かっているのか!?」
押し寄せる民の足数は、止まる様子を見せない。しかし、これらの雑言は各国の首脳にとって耳障りでしかなかった。
石が投げられる音が響く。
だが議会は、それすら届かない場所にあった。
「”戦争に勝った”なんていうからこんなことになったんですよ。下級市民共はなんでとすぐ信じてしまう生き物…お忘れですか?」
「秩序保全隊に取り締らせましょう」
「そうですね。それが一番手っ取り早いです」
外の声に耳を傾けようともしない。
「それより明日、平次箱協定との会合があるのですが」
「適当に済ませればいい」
戦争に勝っていないと言いながら随分と強気だ。負ける光景などというものは、恐らく見えていない。だが、自信の後ろ盾は見ようとはしない。
鬼が全て終わらせてくれるーー
その程度でしか考えていない。
大金艮帝国郊外。
禹廻神が独りで歩いている。郊外は戦争の影響で寂れていた。足踏む煉瓦の隙間は、大きくずれている。
「これでいいか」
綺麗な煉瓦を一つ手に取る。
そしてーー
「カアアアアン」
凄まじい勢いで煉瓦を削る。表面は煉瓦とは思えない、黄金色の輝きを放っている。不純物を削ぎ落としているのだ。さらに禹廻神は刀を置き、水筒の水を利用し刀を研ぐ。この刀こそ先日手に入れた、朱雀蘭丸である。
研ぎ終えた禹廻神は、再び歩き始めた。
行き先はもちろん存在しない。正面が己の進む道、これが彼の方針だ。
だが、今日は違う。道は禹廻神の伝書鷹が示している。
行きたくないというより、どうでもいい。会合の”召集”がかかった、ただそれだけ。
集合場所には誰よりも早く到着した。禹廻神を抑止力として見せつける目的だろう。各国の首脳たちはまだ到着していない。
国際連等本部。
最新鋭の技術で作られたのだろう。とても広く、静かだ。その空間に禹廻神は、何時間も独りで立ち続けている。誰一人として声をかける者はいない。
だが、その空気は一瞬にして一変する。
ペンギンズ地方及び、ぺぺ家一同。あの国は一つの貴族が、政権を千年以上握っている。
威圧が、空気を歪ませる。今にも手を出してきそうだ。
しかしーー
「お会いできて光栄です、柏木さん」
第一声は意外な言葉だった。隊を壊滅させた張本人が目の前いるばずだ。しかし、放ったその言葉に殺意は感じられなかった。
「本当ならもっと話したかったのですが……」
後ろには、三辺同盟の首脳たちの姿があった。軽く会釈を挟んだ後、席に帰っていった。禹廻神はその場で立ったままだ。
会議は想定よりも早く始まった。鋭い視線が飛び交う。雰囲気はさらに緊張に包まれる。
「戦争をする必要がどこにあるんですか?」
「必要だからやっている」
ペンギンズ地方はこの一点張り。会議は一向に進行しない。長い沈黙が訪れる。
――のはずだった。
突如として状況が急変する。
武装した平次箱協定兵が乗り込んできた。鈍い銃声が会場全体を包む。
「どういうつもりだ!?」
会場は冷たい戦場へと一転する。
「何をしている!」
ペンギンズ地方の代表も同じような反応を見せる。平次箱協定が事前に仕組んだものではない。
これはーー
「死ねぇぇぇ!!」
次々と襲いかかる。刀に手をかける。
――その瞬間だった。何かを察したかのように即座に撤退していった。
その日の会議は強制的に終了した。
ここからは三辺同盟と平次箱協定の文書でのやりとりを記す。
「先日ノ行為ヲ我々ハ、我ガ國ヘノ宣戦布告ト判断シタ。直チニ降伏シナイ場合ニハ、ソレ相応ノ装置ヲ講ジル」
「アノ武装組織トハ我々ノ國トハ無関係デアル。マタ戦争ヲ続ケルコト自体、無意味ナ行為ダ」
「アノ件ニ関シテ、何ノ説明モ伺ッテイナイ」
『……』
やりとりはこの時点で途絶えた。交渉は、完全に決裂した。
三辺同盟は武装組織の件を盾に戦争を促す。平次箱協定は平和を望み続けている。
お互いの真実がぶつかり合うとき、和む平凡な日は戻ってこない。
過去は、繰り返される。
続く…
ここまで読んでいただきありがとうございました。
よければ感想・評価いただけると嬉しいです。




