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ペンギン戦記〜黒を持たない鬼が戦場を破壊する〜  作者: ペンギン愛好家


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第二羽 純白の地獄

読んでいただきありがとうございます。

本作はペンギンたちが文明を築いた世界での戦争を描いた物語です。


学業の関係で不定期更新になりますが、基本的に毎週日曜日の20時に投稿していきます。

氷原の戦場は、黒い煙と爆発音で覆われている。

血で溢れかえる悲惨な光景が浮かぶ。

だが、それでもなお視界の大半は白に閉ざされていた。


毒沼領・南部防衛線


「くそっ、押し切られる…!」

「前線を保て!」


兵士たちの叫声は、風によってかき消される。


ペンギンズ地方兵の放つ術が氷原を裂く。負けじと三辺同盟も術で対抗する。両者の術がぶつかり、発泡音のような音が響くが、誰一人として銃は持っていない。


黒い光が戦場に降り注ぎ、煙が巻き起こる。視界が元に戻るとき、三辺同盟は気付かされる。


「効いていない…」


前線は崩壊寸前。


ペンギンズ地方陸軍第拾壱師団大将、ぺぺ・透日の圧倒的な指揮力。それをもって発揮される軍事力は、三辺同盟を押し切ろうとする。


それに対し、三辺同盟は兵士の数で対抗しようとした。だが、兵士一人一人で戦う三辺同盟と、集団戦法を扱うペンギンズ地方では、相性は最悪と言える。


「術の精度も威力も桁違いだ…」


兵士が唖然とするなか、怒りの矛先は突然に変わる。


「第零師団はまだなのか!?」


次々に兵士たちが叫ぶが、それに応えるものは誰もいない。



大金艮帝国陸軍・銀小基地。


一羽のペンギンが外を眺め続けている。


柏木・禹廻神。


禍々しい銃剣を背負ったまま動かない。術がぶつかる音、兵士の叫びが聴こえる。


だが禹廻神にもっとも響いているものは――


「戦うな」


灰堂の言葉だった。


「戦う…」そんな命令はどこにもない。


「なんで出てこないんだよ…!」

「あいつ1人で全部片付くだろ…」


近くで潜伏している兵士が思わず漏らす。その声はわずかに震えていた。それでも鬼は動かない。戦場は荒れていく。



そのとき突然として危機が訪れる。


「前線が突破されました」


敗北が脳裏によぎる。


「第零師団を投入するべきでは!?」


焦る声が次々と聴こえる。


灰堂・光留は、黙り込んだ。数秒の沈黙。


「ダメだ…」


何も言えない。


「しかし!」

「…ダメなんだ」


言葉が重い。



戦場の端。


黒ずくめの影が、基地に紛れ込み暖をとっている。


ブラックテリトのスパイ。


「動く気配なしか」


「このままでは…」


真剣な雰囲気の中、1人不敵な笑みを浮かべる。


「簡単なことだ。言葉を変えるだけでいい」




その頃――幸領・北部防衛線。


「援軍はまだなのか!?」

「ペンギンズ地方は何をしている!」


小国、幸の部隊の兵士が、口々と怒りをあらわにする。


「見捨てられたんだ…もう前線も崩壊した…」


誰かが呟く。


――それはブラックテリトのスパイだった。


目的は、敵を内側から崩壊させるため。


三辺同盟は、いまだ幸のどの部隊も陥落できていない、劣勢の状態。


しかし、誰もそれを疑おうとしなかった。


「作戦通り〜」


余裕に満ちた声が、基地に響く。


「情報戦だよ。どいつもこいつも時代遅れで困るよ」


三辺同盟の士気が上がる。


通信機器が発達していない時代、言葉は最大の武器であった。



気づけば視界は、白い世界に囚われていた。


爆発の跡や兵の屍が、戦場であることを物語っている。


黒資源を守るため、ペンギンズ地方の部隊が前線に展開している。


だが、ブラックテリトの偽情報により、三辺同盟に唯一の勝機の光が差し込む。


爆発音が大地を揺らし、黒を用いた術が空間を歪める。


しかし、気づけば三辺同盟の兵士たちの歩みは、止まっていた。それは偶然ではなかった。


「……なんだ、体が…」


一人の兵士が膝をつく。


遅れて、もう一人。


さらに一人。


「術が……発動しない…!」


黒を練ろうとしても、力がまとまらない。


「毒だ……!」


誰かが叫ぶ。


毒沼地方の結界に踏み込んだ時点で、すでに仕込まれていた。戦場は一斉に、地獄へと変貌を遂げる。


術の流れを乱す微細な毒。


三辺同盟の勝機はまたもや、地に堕ちていった。



その中で――

ただ一羽だけ、足を止めない存在があった


誰もが黒を使い、力を引き出して戦う中で、その兵だけが、何も纏っていない。


「……なんだ、あれは」


震える声は、今にも消えそうだ。


雪を踏みしめる音は、なによりも大きく聴こえる。

進む…ひたすらに。


漆黒の目は、どこを向いているか分からない。


「あれなのか…」


どの兵士も同じ一点を見つめる。


「無敵の鬼……」


敵、味方関係なくその存在は脅威として映る。


「来るぞ!迎撃開始!!」


地獄の毒が鬼を蝕もうとする。その攻撃は、瞬く間に世界を変えるものだった。

肉を腐らせ、無数の氷山を破壊していく。勇ましい声と爆撃音が響き渡る。


だが、それはすぐに沈黙へと変わる。


「ちっ…近づいてくる」


地獄を歩く鬼の俊敏さは、依然と変化していなかった。


そしてーー


「正面からだと!?」


スピードは上昇し続け、戦場のど真ん中を突っきる。恐れを知らずではない、恐れの文字を鬼は知らない。


「さっきのは、まぐれにすぎないはずだ!」

「今度こそ地獄に送ってやる!!」


鋭い攻撃が放たれようとした瞬間ーー


「じ…術を、は…放てない」


「何を言って…グッ!」


次々と兵士が膝から崩れ落ちる。倒れた兵士の腹部には、細い針が刺さっている。


「どうやってこの距離を当てた!?」


「もしや術を乱す毒が…」


「我らの毒を瞬時に、針に塗ったのか…」


集団が崩れれば高出力の術は、まともに扱えない。


「術が放たないなら、肉体で戦うまでだ!!」


禹廻神に一斉に切りかかる。


「よせっ!!」


声を上げるのが遅すぎた。


一振り。周りの全ては吹き飛ぶ。攻撃を受けた者は、地獄への道が開く。


その一撃は、相手の行動を全て読んだかのようだった。無駄が一切ない。空気が一瞬で凍る感覚が全員に走る。


だが敵もまだ止まらない。


戦場は変わり続ける。


鬼が動く度に。


続く…

ここまで読んでいただきありがとうございました。

よければ感想・評価いただけると嬉しいです。


次回は、戦争がさらに激化します。お楽しみに。

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