第5話 仲の良い義姉妹はお揃いを着けるものなのです
人にもらったものって身につけるか飾るか。
祝賀会の前日、長兄上の嫁からバジルがお茶会に呼ばれた。
今回は3日前に招待状が来たので、宿泊している賓客を招くとしてもギリ常識の範疇だろう。
ドレスや手伝いの侍従もよこすと言われたがバジルは断った。
黒子さんにより手持ちのドレスが3日で別物レベルにびっくりリメイクされ。
黒子さんによりバジルはばっちり着飾られて。
迎えに来た侍従とバジルは意気揚々と茶会に出かけて行く。
黒子のポテンシャルが高すぎるやろ。
てかあの、黒子増えてない?
え、隠れてただけ?
顔が見えない義家族?(複数人)と知らないうちに同居とか怖過ぎるんだが。
そういえば宿屋の婿養子に同居のコツを聞いたなぁ。
にこやかに、おおらかに、時に図々しく。
「ねぇ!喉乾いたから誰か一緒にお茶しない?」
しゅばばばんと黒子が数人やって来た。
わーい!お菓子いっぱいだ。
バジルは庭園に作られたガゼボへ連れて行かれると第一王子妃が待っていた。
第一王子妃のラウアリは優しげでたおやかな美女だ。
ふわふわのブロンドヘアに飾られた愛らしい花々がまた彼女を可憐に見せていた。
守ってあげたい系なのにどこか色っぺえのがたまらんとは紳士達の主張である。
いや良い歳こいて日常的に頭に花飾ってる奴はヤベェやつだから!
頭の中わいてるかもしくは・・。
バジルが第二王子妃の時と同じく淑女の礼をとり名乗りをあげる。
ラウアリは穏やかに微笑み礼を返した。
「初めまして、わたくしは第一王子妃のラウアリです。
貴女と義姉妹になれて嬉しいわ。
よろしくお願いしますね」
ラウアリはヒスリーテがふっ飛んでいくレベルの淑女であった。
育ちは公爵家、幼い頃から第一王子妃と婚約して教育された彼女は若手一番の淑女として名高い。
バジルもラウアリの所作には感服したのでさっそくトレースしたそうだ。
怖!嫁の高すぎスペックが怖い!
バジルがガチるとトレースした本人に見えてくるからなんか不気味なんだよな。
まったく同じ動きされて怖かったろうラウアリ姉さん乙でーす。
そしてヒスリーテはふんぞり返って遅れて来たそうな。
どこぞのゴロツキの親分か。
ヒスリーテ様のご教育係乙でーす。
出来る王子妃ラウアリはちょいちょい会話の邪魔をするヒスリーテをひらひらひらりとかわし、終始にこやかに茶会を進行していった。
そろそろお開きかという頃、ラウアリはぽんと手を打つと侍従に小さな箱を3つ持って来させる。
それぞれの前に開けられた箱が一つづつ置かれた。
「せっかく3人での初めてのお茶会ですから。
特別なモノをご用意しましたの」
箱の中身はそれはそれは綺麗な指輪。
優美な細工のされた指輪の台座には大きな薄紅色の真珠。
日陰にも輝いて見えるほどの真珠には金で王家の紋章が彫られていて一目で王族の品だと分かる。
大きさからただの真珠ではなく貝系の魔物から採られた貴重なモノで、その輝きから相当に良質で高価なものだろう。
豪華なモノが大好きなヒスリーテの喉がゴクリとなったが、なけなしの理性で手は出さなかった。
ヒステリーテは待てができる偉い子なのだ。
「ふ、ふん!
そこそこ美しいようだけれど、美しいモノには毒がつきもの。
どういった風の吹き回しかしら」
ここに居る王子妃達は王位継承を争う王子達の妻なのだから。
どんなことで足を引っ張られるかわからない。
そんなヒスリーテにラウアリは微笑みかけた。
「遠慮なさらないで。
全ての王子に妃ができた祝いに何か作りたいと思いまして。
王妃様に相談してつてをお借りして作っていただきましたの」
その言葉にヒスリーテはほっと息を吐く。
王妃は第一、第二王子の母親なのでその妻達にも悪い事はしないだろう。
側妃腹のセシル達にはどうだかしらないが。
いや、むしろ全力でなにか仕掛けていそうだ。
ラウアリは箱から指輪を取り出すと自ら着けて見せる。
白魚のようにたおやかな白い手に美しい指輪は映える。
ガゼボはその美しさにほうっとため息が満ちた。
ヒスリーテも指輪を箱からもぎ取るように出すと、指にはめてまにまと喜んでいる。
素直な奴である。
その様子を微笑ましげに見ていたバジルにラウアリはさらに念を押すように言葉をかけた。
「国王陛下に許可をいただき王家の紋章が入ったものです。
これからこの指輪がわたくし達王子妃の証となりますわ。
肌身離さず着けて下さいね」
「まあ、それはそれは恐れ多いことです」
バジルはそう言ってもらった小箱を開ける。
中には2人と同じ指輪が入っていたが、箱から出す前にほんの少しだけ魅力的な輝きをした様に見えた。
しかし、バジルが箱から出せば他のものと違いは分からなくなった。
だがその一瞬の煌めきにヒスリーテは目を見開き歯をむいた。
豪華で高価な物が大好きなヒスリーテは格下のバジルが自分よりも良さそうなモノを持っているのが気に食わないのだ。
すぐにでもぶんどりそうなゴロツキの目つきであった。
「バジルさんはまだ王族になって日が浅いでしょう。
アクセサリーも困っているかと思って。
わたくし達とは別に特別なものを王妃様がご用意してくださったのですよ」
ラウアリはそう言って視線でヒスリーテを止めた。
『王妃様が用意したんじゃから裏があるって分かれやボケェ!』
そう伝えたいラウアリだったが、ヒスリーテは伝わっていないのかまだ物欲しそうにバジルの指輪を見ている。
エサに気を取られて罠にかかるのは動物の心理なので仕方ないのだ。
哀れラウアリの必死のアイコンタクトは気づいてさえもらえない。
ラウアリはこめかみをぴくぴくさせてダメ押しに一言付け加えてしまう。
「本当はわたくしが着けたいくらい素敵なものですけれど」
「ほほほ、ありがとうございます」
バジルはそう言いつつ指輪をはめた。
まだ物欲しそうな目で見るヒスリーテにラウアリは「ヒスリーテ様もとっても似合ってらっしゃるわ」と言う。
話しかけられたヒスリーテはやっと優しく微笑むラウアリの目が冷たいことに気がつく。
王太子妃に1番近いラウアリが譲るということは裏があるという事だ。
ヒスリーテはラウアリに礼を言いながらニヤリとバジルの手を見やった。
どんなことが起こるのやら。
ただヒスリーテの目にはバジルの指輪は先ほどまでの輝きが少しだけ失われているように見えた。
俺はまたもや表情は相変わらず、周囲に花を飛ばす幻視が見えるほどるんるん帰って来たバジルに話を聞く。
バジル的にはとっても盛り上がって楽しかったらしい。
ヨカッタネ。
「しかし、その指輪は着けて大丈夫なのか?」
「ええ、コッチの指輪は大丈夫ですよ。
着け心地から生命力が少しづつ供給されているようです」
「ソウナンダー、ヨカッタネ」
コッチじゃない方はとか、供給元ってどこかなのかとかは気にしちゃいけないやつね。
「しかし綺麗な真珠だな」
「これはボウショクガイの真珠ですね。
なんでも食べる凶悪で大型の貝系魔物です。
雨の日なら触手で陸上でも活動できます。
3体なら小さな村ごと食い尽くすでしょうね。
獲物の血と怨嗟が多いほど大きく美しい真珠になるとか」
「え、それ呪われそうだな」
「大丈夫ですよ。
真珠だけ取り出して生きてるうちに他のボウショクガイに食べられるとそっちに呪いが移るんです」
なるほど、最後に呪いが全部移った個体は大丈夫じゃないってことね!
俺のニヨニヨが止まらんぜ。
読んでいただきありがとうございます。
もらったモノ、うーんまぁだいたい大事にしまうと思います。
どこに入れたか忘れるけど。
やはり消えモノ(食べ物)が最強。




