第6話 王室オバタリアンは強烈っう!
参加した中で一番人がいた集会って学校の入学式でした。
とうとうこの日が来てしまったぜ!
日が暮れた頃、着飾った俺とバジルと叔父さんは祝賀会会場につれてかれた。
会場は光魔法で照らされてシャンデリアやピッカピカの床や柱が反射でキッラキラである。
満腹でややおねむの俺の目にはちょっと痛い。
夜会のご馳走には毒をモリモリご馳走になった思い出があるので、あらかじめ食べて来たのだ。
どんなに美味しそうな食べ物を見ても手が出ないくらい腹一杯にしてきたぜ!
やべぇめちゃくちゃお腹苦しい、帰っていい?
どうにか帰れないかなぁと思っていたらファンファーレが鳴った。
王族のお出ましである。
階段状のステージの一番上に国王夫妻と2組の王子夫妻が現れて、会場に居る全員が頭を下げた。
もちろん下々として下段に居る俺達も頭を下げる。
俺も王子だけどね?
今回の夜会の主役のはずだけどね?
まぁ誕生日が来て半年以上たってから成人祝いってのは呼び出す口実だろうとは思ってたけどね?
国王の今日は来てくれてありがとう!的なふわっとした挨拶があり、俺たちが呼ばれる。
俺がバジルをエスコートしてステージの階段までやって来ると登れと指示され。
中段まで登った所で最上段の宝石ギラッギラな派手なドレスの中年オバさん(王妃)からドスの聞いた声がかかる。
「止まりなさい!
土臭い田舎者王子と路地から拾って来た女があたくし達と同じところへ来れると思わないことね!」
会場には俺達を嗤うようなクスクス笑いが聞こえる。
いや俺は生まれも育ちも王都のど真ん中ココ(城)ですが。
オバさんは為政者なら汗水垂らして国境を守り、食料を作ってくれてる田舎に土下座すればぁいいと思うよ?
俺は叔父さんの話してくれる田舎ライフにちょっと憧れているのだ。
あとバジルはんは路地よりずっとどす暗い裏社会出身どすえ!たぶん。
あれ、てかあんた顧客じゃなかったか。
顔バレ身バレはまだしていないらしい。
俺とバジルは向き合うと、はぁ〜何言ってんねんと軽く肩をすくめ合う。
うんうん、夫婦っぽいね。
小馬鹿にされたと思ったオバタリアン(王妃)は金切り声を上げる。
「きいぃ!!この生意気な出来損ないが。
お前のようなゴミ王子は王家に要らないのよ。
成人祝いに不毛の土地ブラッドエンドの領主にしてやるわ!
王家を出るのだから王子の予算も終わり。
お前の好きな豪華な宿も酒場も娼館やカジノももう行けないわよ。
遊び呆けていたお前が何もない場所でせいぜい泣き喚いてひなびていくがいいわ。
オーホッホッホ!」
わぉ、もしかして高貴な淑女ってのはあからさまな罵り力が必要なのか?
まぁこのオバタリアンいつもそんな感じだから、旦那が見た目清楚可愛い母ちゃんに逃げたんだろうけど。
なるほど、今回呼ばれたのは俺を王都から追放するためだったのか。
ってかそうだろうと思ってたけど俺の事監視してたのね。
親類に夜遊びバレるのいたたまれない。
でも俺が楽しく暮らしている事に王妃がイラついてたならグッジョブ俺!
ってか遊ぶお金もらえないの痛いわぁー。
心は痛まないが懐が痛くなって来た。
バジルが俺のお腹をヨシヨシしてくれた。
そして嫁にセリフを取られた国王がコホンコホンと咳払いをして仕切り直す。
いやもうどうにもならんよこの空気。
「セシルよ成人おめでとう。
成人した祝いとしてお前にブラッドエンドを授ける。
ブラッドエンドは自治区とし、王国の法や騎士の介入の範疇外とする。
今までその生まれから苦労をさせたが、これからは自分の領地でゆっくり元気で暮らせ」
親父(国王)さんよなんか親子の情を滲ませながらしんみり言いますけど。
何もない土地で法(国の援助)と騎士(安全)がない場所で元気でね!って冗談キツいッス。
良い事言ったなって顔すんな甲斐性なしの傀儡王め。
分かってない旦那の隣で嫁さん(王妃)が悪い顔でにやにやしてんぞ。
ここで乾杯用の酒が入ったグラスが配られる。
絶対になんか入ってるだろう。
このステージの中段では周りに何もなく、人や物に隠れて捨てることもできない。
嘲られることも、父親が助けてくれないことも分かっていたし悲しくもない。
だけれど、このギラギラと輝く空間に照らされたグラスは母さんが死んだ夜会を思い起こさせた。
俺のお祝いだと食べさせられた極上の料理や飲み物。
その後の苦しみと母さんを亡くした悲しみ。
俺が生きている限り、いつかまたこんな日が来ると思っていた。
王妃は俺のブラッドエンドで野垂れ死ぬ姿が見たいのでここで殺しはしないだろう。
でも何がしか悪いものが入っている。
「バジル」
申し訳なくて震えた声がみっともなかった。
お前が俺達に毒を盛ったのは仕事だったのに、今度は無給で盛られ役だなんて損だな。
さっきまで道連れにしてやろうって気持ちだったけど、俺は親父に似て小心者だったわ。
俺の震えた腕にそっとバジルが手を添えた。
「大丈夫」
バジルの手も、声も、あったかくて俺の震えが止まる。
バジルと見つめ合うといつもの胡散臭い笑顔がやたらと優しくキラキラして見えた。
うん、ええ嫁さんだ。
そんな俺達の様子を第二王子が鼻で笑う。
金髪をオールバックにしたムッキムッキのチャラチャラした男だ。
見て分かるままに戦闘大好きで女好き。
「はっ!お前らの酒は母上の特注品だ。
夫婦良く飲めることに涙して喜べよ!」
言葉遣いも笑い顔も母親そっくりである。
「クズが生まれた時にこの時のために特別用意して寝かせてた年代物だぜ?
ぶふっふはは、俺が飲みたいくらいだぜ」
そして夫婦して余計な事を言う。
「ほほほ、ありがとうございます」
う、うわぁあバジルさんのカウンター入りました!
チラリと俺達の手元を見ると俺とバジルのグラスで少しだけ酒の色が違う。
あ、コレやりましたな。
俺達のどっちかの酒が第二王子のものと交換されてるようだ。
そして今までずっとにこにこと微笑んでいた第一王子も参戦してくる。
サラサラの長い金髪を背に流して、優しげな美貌の男だ。
王宮の庭園に現れた心優しき精霊とか言われてたな。
「母上も弟も言い方が悪いが、恥ずかしがり屋なので許してやってくれ。
セシル、成人と結婚おめでとう。
君達の酒は体に良い特別ブレンドらしいよ?
僕も飲んでみたかったな」
こっちは父親に輪をかけてお人好し、というか全てを強引にポジティブ変換してるな。
あの罵詈雑言がどうしたら照れ隠しになんねん。
どうやらこのお花畑の精霊さんは住んでる世界線が違うらしいな。
「ほほほ、ありがとうございます」
闇の妖精からのカウンターだぁ!
俺とバジルのグラスの色は同じになった。
「セシルは昔から身体が弱かったから、ぜひ元気になってもらいたいよ。
できる事なら悪い所を取り替えてあげたいくらいさ」
俺が病弱なのはあんたの母ちゃん達にいびられて毒盛られてるからだよ。
鈍感も過ぎればイラッとするからな兄貴よ。
「ほほほ、ありがとうございます」
容赦ないバジルさんの追撃!
可憐なだけの精霊さまは沼にハマってしまったようだ。
あれ、なんかお腹の中が一瞬ひゅんてなったんですが。
あれ、腹一杯食べたのにお腹空いてるんですが!?
おま!何を交換してくれてんねん?!
第一王子は急にうっぷと口を押さえた。
お腹いっぱいなのかもしれないね。
「それでは我が国の繁栄を祈り乾杯!」
国王が乾杯の音頭をとり、皆んなでグラスの酒を飲み干した。
父親もとうとう夜会の主題を忘れたようだな。
俺が飲んだ酒はとてつもなく美味かった。
まぁ、俺達が飲むはずだった酒を飲んだ兄貴達がどうなるのか。
それは彼らの母親(王妃)のみぞ知る。
王妃は自分の行いの結果を、一番近くで息子達の行く末を見ればいいさ。
願わくば皆んなが優しい行いであれば良い。
義妹には思いやりのこもったお茶と指輪を。
義息子と嫁には身体を労わる薬酒を。
まぁ、結果は分かってるんだけど。
ゲヘヘへへへへへへへ。
読んでいただきありがとうございます。
アルコールが好きなのに分解酵素が貧弱すぎて悲しい。
乾杯の一杯が最初で最後の選択肢。
とりあえずビールは死語になるべし。
だってビールは家でも飲めるもん!
珍しい酒いかせてくれ!!




