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返す言葉に詰まる。
逆光で、彼女の表情は見えない。
「俺の母親も中退です」
結局、こんな言葉しか思い付かなかった。
あら、と明るく返してくれた彼女に、でき婚で、と付け足す。
「デキコン?」
「妊娠したから、学校辞めて結婚したらしいです」
「あら、私と同じね」
「妊娠してるんですか?」
ええ、とお腹を優しく触る。
言われてみれば、膨らんでいるように見える。
「風邪ひかないように、気をつけてください」
「ありがとう」
雨は、止みそうにない。
「親は反対したのよ」
彼女が独り言のように言う。
「え?」
「結婚と出産」
そうなんですか、と相槌を打つが、一般的な家庭では当然だろう。
「堕胎って、赤ちゃんをグチャグチャに潰して、掻き出すらしいの」
一瞬、想像してしまった。
「検診の時、赤ちゃんの心臓の音を聞いたの。生きてる人間だって知ったら、殺すなんて私にはできない」
俺の反応を待っているようだが、言葉が見つからない。
「お母さん、幸せそう?」
「どうですかね。息子はこんなんだし。父親は、俺が赤ちゃんの時に死んだらしくて」
母親は今、幸せなのだろうか。
顔も見たことがない父親と、母親が出会ったのは高校2年の頃。
「あの人、私に一目惚れしたのよ」と母親は自慢げに言うが、本当のところは分からない。
家族に内緒で交際を続け、2年目に妊娠が発覚。
お互いの両親に反対され、家出同然で駆け落ち。
父親は、寝る間も惜しんで働いたらしい。
「ホストクラブの方が儲かるって、あの人は言ったんだけど、女の人にベタベタされるなんて嫌だったの」
そして、出産。
その後のことは、ほとんど知らない。
知っているのは、俺が1才の時に父親が死んだことだけだ。




