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反抗期少年  作者:
4/7

3

突然、何かがぶつかった。


「ごめんなさい。誰もいないと思って」


顔を上げれば、女がいた。


寝惚けた頭を働かせて、象の中にいたことを思い出す。


「雨、まだ止んでなかったんですね」


ずぶ濡れの彼女は、スカートが汚れるのも気にせず、地面に座り。


「秋の長雨ながさめなんて、よく言ったわね」


彼女の言葉で、すっかり涼しくなったことに気付く。


昼間の汗が冷えて、むしろ少し寒い。


もうすぐ、長い夏が終わるようだ。


「狭いけど、やむまでいさせて」


鞄からハンカチを取り出して、長い髪を拭う。


「見慣れない制服ね。中学生?」


その台詞は、近所の人間が使うものだ。


「すぐそこの、丸川中です」


狭い空間でふたりきり。


これほどの至近距離では、いくら知らない人でも、無言が続くと辛い。


「家出でもしたの?」


何故、そう思ったのだろう。


「まあ、そんなところです」


「行く宛は?」


「いえ、そこまでは」


そこまで本格的な家出をするつもりはない。


「どっちにしろこの雨じゃ、どこにも行けないわね」


若い女性に向かって、話し方がおばさん臭い、とは言えなかった。


「そうですね」


「早く止まないかしら」


「はい」


「夕飯の支度、しなくちゃならないのに」


「夕飯、作るんですか?」


「新婚だもの」


ふふふ、と幸せそうに笑う。


「高校生じゃ、なかったんですね」


相手によっては、失礼な発言だったかもしれない。


しかし、女性は気を悪くすることなく、あっけらかんと言った。


「3ヶ月前まではね。辞めたの」

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