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反抗期少年  作者:
2/7

1

チャイムが鳴り終わると同時に教室へ駆け込んだ。


「ギリギリセーフ。」


にかっと笑う陸。


「アウトだ。早く席につけ。」


呆れた口調の担任。


すいません、と何度か頭を下げ、陸の隣に座る。


「どうしたの?」


声を潜めながら陸が尋ねる。


「朝っぱらから、五月蝿くて。」


「京子さん?」


「ああ」


「若いからじゃん?」


「もう33だぞ。」


「うちは45だよ。」


「関係ないだろ。60になったって多分うるせえぞ。」


「そうかもね。」


「いいよな。陸の母さん、優しいだろ?」


「勉強しろって五月蝿いよ。昨日無視してたら、ゲームのコンセント抜かれたし。」


「そんな風に見えないけどな。」


「外面が良いだけだよ。」



「雑巾集めるぞー。」


担任の声に反応して、周りの生徒は鞄を掴んだ。


ほとんどの生徒が、雑巾を机の上に出す中。


「忘れた?」


陸の言葉に頷くと、それが机の上に置かれた。


「2枚持ってきたから。」


「さんきゅ。」


有り難く受け取ったそれは、名前が書いていない、真っ白の綺麗な売り物の雑巾だった。





賑やかだった教室は、あっという間に無人になる。


否、残っている人間が、俺ともうひとり。


どちらも、すぐに居なくなるだろう。


「帰らないの?」


いつもなら真っ先に教室を飛び出す俺を、気遣ってくれる。


「陸は塾だろ?」


「ごめんね。」


勉強しろと五月蝿い親を持つ、受験生なのだから、仕方ない。


「何で謝るんだよ。じゃあな。」


机に突っ伏し、寝るふりをする。


「ばいばい。」


小さな声と遠ざかる足音が、背中に刺さった。



帰ったところで、母親がいないのは分かっていた。


今日も、朝方になるまで帰ってこないだろう。


それでも、足が遠退く。


オレンジ色に染まった教室。


窓から見える夕日は、寂しくて綺麗だった。


完全に沈むまで見送ってから、俺は教室を後にした。


真っ暗な廊下を進み、下駄箱で靴を履き替え、ぼんやり歩く。

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