10話
魔力弾を使って戦闘を行なえば複数匹のモンスターの群れに襲われても問題なく対処が出来ることは分かってきた。
問題はこのまま魔力弾を毎回戦闘毎に使っていれば魔力切れになってしまう。
「魔力弾は使わずに倒せる様になっているべきだよな。次、やってみるか?」
魔力をケチって魔力弾を使わずに戦闘を行なって怪我をした場合のことが頭に過ぎる。
怪我をした場合、回復用のポーションはあるがそれにも回復力の限界やポーション自体の持って来ている数のことを考えると悩むところだ。
「ギリギリまで魔力弾は使わない方針でやってみるか。」
魔力弾は使わずに倍加を使う戦法で戦うことに決めた。魔力を使う魔力弾とは違って体力を使う倍加の方が今なら使いやすいから。
とりあえずどうやって戦うのかの戦法は決まった。2階層を目指して先を進んで行く。
「あれは野犬だな。しかも3匹もいるよ。」
進んでいた進行方向に野犬だろう姿が3匹屯しているのが見える。
このまま進んでいれば野犬たちはマサキのことに気が付いて向かって来るはずだ。
「あ、やっぱり気付いた。」
進んでいると野犬たちはマサキの方を一斉に向いてこちらに向かって駆け出している。
このままだと1分後くらいには野犬の群れとの戦闘が開始されるだろう。
マサキの方からも野犬の群れに近寄りながら倍加のタイミングを測る。
「もうそろそろかな?身体能力に倍加。」
もう野犬の群れとの距離は15メートルを切りそうだ。マサキは片手を胸に当てながら身体能力を2倍にする。
身体能力が2倍になった。これでもう野犬の群れに負けはしないだろう。そう思うほどに力が漲っていた。
駆け寄って来ている野犬の群れ。
マサキは一気に踏み込んで野犬の群れへと距離を詰めながら全力で槍を横薙ぎに振るった。
薙ぎ払われる野犬の群れ。
悲鳴を上げながら地面を転がっている野犬の群れの中の1匹に接近し、マサキは槍を野犬の頭部に振り下ろした。
槍が野犬の頭部に命中する。
頭部を破壊された野犬を置いて次の野犬たちへと視線を向けた。
槍で薙ぎ払った時に穂先で斬られた野犬はどうやら前足に怪我をした様で上手く立てない様子を見せている。
それならあの野犬は放って置いても大丈夫だろう。
なら、マサキが狙うのはもう1匹の野犬。
その野犬は立ち上がってマサキのことを威嚇して警戒をしている様だ。
マサキは踏み込んで加速すると一気に野犬へと距離を詰める。
槍の攻撃範囲に入った瞬間に刺突を繰り出した。
身体能力が増したマサキの刺突は風を切り裂きながら野犬に命中する。
深く突き刺さった槍を引き抜いて野犬の様子を確かめる。
「トドメを刺すか。」
刺突を受けた野犬はもう戦える状態じゃない。それでも一応の危険性を考えてトドメの一撃を加える。
残りはこれで野犬1匹だけ。
前足を怪我して上手く移動が出来ていない野犬を接近して刺突を数回。
それだけで野犬の群れとの戦闘はマサキの勝利で終了した。
「身体能力を倍加するとこうまで違うなんて思わなかったな。でも、これはこれで問題があるぞ。」
野犬の群れとの戦闘後、マサキは倍加を解除して呼吸を整えながら野犬の群れのドロップアイテムを回収する。
身体能力を倍加する。
それの何が問題だったのかと言えば全身から若干の痛みがあることだ。
身体能力が2倍になってもどうやら肉体の耐久力まで2倍になっていない様で、そのせいで全身の肉体が悲鳴を上げているのだと思われる。
それでもポーションを必要とするほどの痛みは感じないのでこのまま探索していても問題はないだろう。
でも、この倍加の使い方だと消耗が早くなってしまうだろうし、倍加を使った別の戦い方をしないと駄目だろうな。
「はぁ、もっともっと強くなりたい……
。」
ため息を吐きながらもマサキは先へ先へと歩くのをやめずに進んで行く。
それからもマサキは遭遇するモンスターの群れをどうやって倒すのが体力や魔力や肉体の疲労を少なくして戦闘を終わらせられるのかを考えながら進んでいた。
「もうそろそろだよな?」
野犬が現れる様になったエリアをだいぶ進んだ。
もうそろそろ2階層へと繋がる上り階段が現れるはずだし、階段が現れる場所には門番役のボスモンスターが待ち構えているはずだ。
「ん!?あっ!これがボスエリア!!」
ボスモンスターが待ち受けるボスモンスター専用のエリアであるボスエリアに入った感触があの変な水の中に入った感触なのかと気が付いた。
ボスエリアに入ったからだろう。もう既にボスモンスターの野犬を大型にしたモンスターである巨大野犬が現れた。
野犬のサイズの3倍はあろうかと言うほどに大きな巨大野犬。
「ワォオオオオオオオオーーーーンンッ!!!!!!!」
ボスエリア全体に巨大野犬の遠吠えが響き渡る。
「ぅうぅぅ、耳が壊れそうだ。」
片手じゃ片方の耳しか覆えない中でマサキは槍を杖代わりにしながら巨大野犬から視界を外さない。
巨大野犬は最初にまず遠吠えをするのだけど、その後に起きることが厄介だ。
あの巨大野犬の遠吠えはただうるさいだけではない。あの遠吠えで仲間の野犬を呼ぶのに使ってくるのだ。
「「「「「ワォオオオオーーーーーーーンンッ!!!!!!!」」」」」
複数の遠吠えが聞こえて来た。
どうやら巨大野犬の遠吠えが野犬をの群れを呼んだのだろう。
「あぁ〜これは無理だな。」
マサキは逃亡を決意した。
ボスエリアからの逃亡は可能なのだが、その為にボスエリアに移動した場所からそれなりの距離を離れないといけない。
ここからだと最低でも5分くらいはボスモンスターの巨大野犬を中心にした場所から遠くに離れないといけないだろう。
その為にもマサキはこの後の肉体への疲労を考えずに全力で逃げることにした。
「倍加!全力でダッシュだ!!」
巨大野犬から背を向けてマサキは倍加で2倍になった身体能力を使って無我夢中でボスエリアから逃走を開始した。
その甲斐もあってボスエリアからの逃走には成功する。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………………つ、疲れたぁあ……。」
全身から汗が噴き出すのを感じながらマサキは地面にへたり込む。
そして、もっと強くなってからボスモンスターの巨大野犬を倒そうと決意するのだった。




