努力
「...おぉう」
あれから数日、母さんが家事で普通にPSIを使うようになったのに慣れた頃。やっと、ようやく、3個同時糸通しが成功した。
人間不思議なもので、苦労しすぎると初めは喜びより先に驚きの方がくる。初めて知った。俺だけかも知れないけど。
「おっ出来たね~。じゃあ次、6個」
「は?なんで急に倍にしたの?殺す気?」
「いや~。1個ずつ増やしてったらペースが遅くなるんだよね~。倍々の方が成長効率が良いの」
「...本当に教えるの初めて?」
「初めてよ、もちろん!ほらさっさとやる!」
「う~い」
手慣れすぎてんだよな。しかも1人だけじゃ成長効率とか分からないし。まあいいか。
「ああ、あと今日から新メニュー加えるから」
「え!?なになに!?」
「目隠しで形当てるゲーム」
「いや無理じゃね!?」
無理では?まだ感覚掴めてないよ?
もっと練習してからの方がいいんじゃない?
「分からなくてもやるだけやっとくの。その方が早い」
「早いってなんだよ早いって」
「よし!道具持ってくるから糸通ししてなさい!」
「う~い」
もう隠す気なくない?てか6個無理すぎない?
余計なことは考えずに目の前のぐにゃぐにゃ不規則に動く糸に集中しよう。
...ああ!惜しい!
─
あれからさらに1週間。俺は12個の糸通しを成功し、糸通しの特訓は終わった。
コツというか感覚を掴めば簡単だったな。
糸じゃなくて輪の方を見て、無駄に糸を動かすのがコツだ。無駄に動かすのだ。糸を。
糸をめちゃくちゃに回転させたらいけた。
母さんにめっちゃ笑われたけど。
今は折り紙の鶴を3枚同時に作っている。
これはすぐに出来そうだ。
でも形当てゲームはまだ全然出来ない。
ボヤっとした輪郭は分かるようになったけど、性格な形までは全くと言っていいほど分からない。
全然成果が出ないのは辛い。もっと頑張ろう。
個人的な練習は肉体強化だ。
これがめちゃくちゃ難しい。走るのを速くしようとしたら全然出来なかった。理由は分からん。
パンチとかキックとかも強くしようとしたけど無理だった。
当分はこれを練習しようと思う。
─
ここはとある病院。その駐車場で、白衣を着た初老の男性と40代の女性が2人で煙草を吸っている。
「しかし、久しぶりですねぇ。今は武本さん、でしたっけ?」
「はい、今日は超能力について聞きにきました。先生」
「ほう...それも久しぶりに聞きましたねぇ。なぜですか?」
「息子が目覚めまして。特訓の記憶が曖昧で」
「今息子さんはどの段階で?」
「まだ素人です。でも私より成長は早いので、すぐ中級者になるかと思います」
「へぇ...いい才能ですねぇ。親譲りでしょうかねぇ?」
「そうかも知れません。夫も結構使えたので」
「だったらあれがいいかも知れません。あれ」
「ああ、あれですね。でもキツくないですか?」
「いえいえ、男という生き物は、多少キツくても強くなりたいものなんですよ、武本さん」
「そうですね。まあ、女もですけどね」
「それは武本さんだけですよ。フォッフォッフォッ」




