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もし高天神城が落ちる前に本能寺の変が勃発したら  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』


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水先

 小浜景隆を見つけた九鬼嘉隆は、これまでの慎重な姿勢を一変。小浜の船目掛け突進を命じたのでありました。兵数から見た場合、優位なのは九鬼嘉隆を中心とした織田方。正面から戦っては小浜に勝ち目は無い。

九鬼嘉隆「船は我らと同じ安宅!これまでの様には行かぬぞ!!」

と逃げる事も想定しながら退路を断つよう指示を飛ばす九鬼嘉隆。しかし……。

「敵に動きは見られません。」

九鬼嘉隆「なるほど。我らに勝てると思っているのだな?その思い上がり!後悔させてくれん!!」

と更に詰め寄る九鬼嘉隆。これを見て小浜景隆は船を後退。

九鬼嘉隆「逃がすな!!」

と更なる追撃を指示。両者の距離はみるみる縮まり、銃撃戦を避ける事は出来ない。と見られた。丁度その時……。

「殿!船が動きませぬ!!」

九鬼嘉隆「ん!?うちは奴と同じ船。通れないわけは……しまった!!」

引き潮か。

小浜景隆「善し!これで敵は動けぬ!!」

岡部元信「退路を塞げ!!」

「おぉっ!!!」

小浜景隆「積年の無念を晴らすのは今ぞ!1つずつ潰していけ!!」


 引き潮により身動きが取れなくなった九鬼水軍に攻撃を仕掛ける小浜景隆と岡部元信。これに対し九鬼水軍は数で対抗するも、縦横無尽に動き回られる武田水軍を前に徐々に戦力は削り取られていく中……。


「如何為されますか?」

滝川一益「後詰に出れば局面を打開する事は出来るかも知れぬ。しかしここは敵地であり、船いくさが専門の九鬼があのような状況に陥る場所に踏み込むのは下策。敵は私が九鬼を救いに来る事も想定に入っているはず。そう……。」

高天神でやったように。

滝川一益「大いくさは武田討伐にある。今ここで兵を損耗させるわけにはいかない。ただこのまま帰ってしまっては……。」

佐久間信盛の末路を辿る事になってしまう故。

滝川一益「戦線から離れる事も出来ぬ。幸い沿岸は近く、徳川の手配により安全は確保されている。潮が満ち、九鬼の船が動ける状態になった所で……。」

救援の兵を差し向ける。

滝川一益「敵もその事をわかったいるはず。深追いする事はあり得ない。何故なら……。」

船の数はうちの方が上手だから。

「しかしそれまで九鬼様の船団が……。」

滝川一益「九鬼は何度も修羅場を潜り抜けておる。心配しなくとも良い。」


岡部元信「……そろそろだな。合図を出せ。

『潮が変わる』

と。」


「敵が動き始めました。」

九鬼嘉隆「もうじき潮が満ちるのであろう?我らの船が動く前に……。」

退却を完了させるのであろう。

「追いますか?」

九鬼嘉隆「本音ではな。しかし今は出来ぬ。無念ではあるが……。」

一度志摩に帰る。

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