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もし高天神城が落ちる前に本能寺の変が勃発したら  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』


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数では

 遠州沖。


小浜景隆「岡部様。」

岡部元信「如何した?」

小浜景隆「先程私は殿に

『お任せください。』

と言いましたが、正直……。」

勝てるかどうか定かではありません。

小浜景隆「船いくさは数が物を言います。もしこのまま正面からぶつかったら勝ち目はありません。」

岡部元信「えぇ。」

小浜景隆「加えて九鬼の船には……。」

大砲を積んだ船もあるとか。

小浜景隆「大砲を積んだ船を相手にした事はあります。」

岡部元信「北条が持っていますね?」

小浜景隆「はい。そのいくさ。幸いにして退ける事が出来ましたが……。」

とても勝ったとは言えるものではありませんでした。

小浜景隆「陸を殿が押さえていたから、なんとかでありました。可能であれば此度も駿河で戦いたいのが本音でありましたが……。」

岡部元信「横須賀の防衛が第一でありますので。」

小浜景隆「はい。その横須賀には殿がいらっしゃりますが、仮に織田の船が接近した場合……。」

高天神の徳川家康が打って出て来る事になります。

小浜景隆「先日、我らが横須賀を奪った戦術をそのまま踏襲。しかも大規模な形でとなってしまいますと……。」

岡部元信「我らに勝ち目はありません。」

小浜景隆「故に西に船を進めたのでありましたが……。」

沿岸は徳川の兵によって押さえられている。

小浜景隆「出浦は

『我らの船を恐れて。』

と報告していましたが、そうでは無かった。奴らは……。」

織田の船を援護するため沿岸に兵を展開させていた。

小浜景隆「こうなるのであったら……。」

吉美までの間に拠点を設けるべきであった。

岡部元信「しかし横須賀を攻略する事を考えた場合……。」

小浜景隆「兵を割く余裕はありませんでした。」

岡部元信「仕方ありません。ただ敵の方の船が多い。しかも装備が充実しているからと言って……。」

負けると決まったわけではありません。

小浜景隆「えぇ。私も同じであります。」

岡部元信「兵の数も大事でありますが、士気も重要。」

小浜景隆「弱気は禁物でありました。」

岡部元信「敵は必ずやって来ます。沿岸は徳川が押さえています。ただ両者よりも優位に立っている事があります。これは敵だけではありません。小浜殿。」

あなたに対してでもあります。

小浜景隆「頼みましたよ。」

「申し上げます!織田の船接近!!」

岡部元信「数は!?」

「倍はあるかと!」

岡部元信「船団は!?」

「大船を前面に押し出し攻め寄せています!!」

岡部元信「わかった。小浜殿。」

小浜景隆「はい。」

岡部元信「私は敵の船に向かいます。」

小浜景隆「しかし岡部様の船は……。」

岡部元信「戦うのではありません。彼らを……。」

出迎えに行くのであります。

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