表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の契約がガバガバすぎるので、現代知識で国家を回します  作者: 鱈場蟹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

第9話:線は人を分ける

もし面白かったら、評価やブクマしていただけると励みになります!

朝。


広場。


人が集まっている。


昨日より多い。


ざわつきも強い。


「来たぞ」

「どう決めるんだ」


視線が集まる。


俺は中央に立つ。


石板の横。


紙を一枚持つ。


(逃げるな)


心の中で言う。


ここが分かれ目だ。


「始める」


ざわめきが少し収まる。


「災害の扱いを決める」


一拍。


「基準を作る」


空気が張る。


「まず――」


紙に線を引く。


「被害の大きさで分ける」


指で示す。


「全壊」


ざわめき。


「家が完全に潰れた場合」


次。


「半壊」


「住めるが、使えない部分がある」


そして。


「無被害」


静寂。


「この三つだ」


「それで何が変わる」


商人が言う。


「全部だ」


俺は答える。


「期限、信用、負担」


一つずつ説明する。


「全壊は――」


紙に書く。


「期限停止」


ざわめき。


「信用維持」


さらに。


「負担は三者で分ける」


沈黙。


「半壊は――」


続ける。


「期限延長」


「信用は期限までに払えなければ微減」


「負担も分散」


「無被害は?」


誰かが聞く。


「通常通りだ」


空気が一気に重くなる。


「待て」


男が前に出る。


顔が険しい。


「俺の家は半分潰れた」


「半壊だ」


「だが畑は全部やられた」


ざわめき。


「それでも“半壊”か?」


(来たな)


俺は頷く。


「家と畑は別に見る」


紙に線を追加する。


「居住と生産」


「両方で判断する」


空気が少し動く。


「じゃあ俺は?」


別の声。


「家は無事だが、倉庫が潰れた」


「商品が全部ダメだ」


商人だ。


俺は一瞬考えて――


「生産に含める」


「倉庫は生産だ」


沈黙。


「つまり――」


誰かが言う。


「細かく分けるってことか」


「ああ」


俺は答える。


「一つじゃ足りない」


ざわめき。


だが、納得も混じる。


「次」


俺は続ける。


「証明だ」


空気が止まる。


「被害を証明する」


「どうやってだ」


鎧の男が聞く。


「三つだ」


指を立てる。


「現地確認」


「第三者証言」


「記録」


一つずつ。


「壊れた家を見る」


「近くの人間が証言する」


「記録に残す」


沈黙。


「嘘は?」


短い問い。


「即アウト」


はっきり言う。


空気が締まる。


「信用は?」


「ゼロに近づく」


ざわめき。


「厳しすぎる」

「でも嘘は困る」


声が分かれる。


いい。


分かれている証拠だ。


「最後」


俺は言う。


「判定方法だ」


全員を見る。


「三人で決める」


「誰だ」


「記録係、第三者、そして――」


一拍。


「当事者以外の村人」


沈黙。


「一人じゃ決めない」


「三人で決める」


「多数決だ」


ざわめき。


「二対一で決定する」


これで決まる。


完璧じゃない。


だが、動く。


沈黙の後。


「……分かった」


商人が言う。


「やるしかねえ」


「他にない」


農民も頷く。


少しずつ、広がる同意。


(よし)


だが――


「待て」


低い声。


振り向く。


貴族だ。


あの男。


リオネルの後ろにいたやつ。


「その基準」


ゆっくり歩いてくる。


「完璧か?」


空気が凍る。


「違うな」


俺は即答する。


ざわつき。


「完璧じゃない」


一歩前に出る。


「だが必要だ」


貴族が笑う。


「では聞こう」


視線が刺さる。


「境界はどうする」


一拍。


「全壊と半壊の間」


沈黙。


「誰が決める?」


(そこか)


俺は答える。


「さっき言った通りだ」


「三人で決める」


「違うな」


貴族が首を振る。


「その三人が割れたら?」


空気が止まる。


「一対一対一」


「どうする?」


沈黙。


(想定内だ)


「再判定だ」


俺は言う。


「別の三人でやる」


ざわめき。


「それでも割れたら?」


追撃。


「時間を置く」


「状況が落ち着いてから再評価する」


沈黙。


貴族はしばらく黙って――


小さく笑った。


「なるほど」


「逃げ道はあるか」


(見てるな)


その視線。


ただの質問じゃない。


試している。


「完璧に決めない」


俺は言う。


「決められないものもある」


一拍。


「だから止める」


沈黙。


「判断を」


ざわめき。


「止めるだと?」


「ああ」


「無理に決めて壊すよりマシだ」


空気が揺れる。


その時。


別の声が上がる。


「じゃあよ」


荒い声。


農民だ。


「俺の隣のやつ」


指をさす。


「家は無事だ」


「でも壁にヒビが入ってる」


「それってどっちだ?」


ざわめき。


(典型だな)


「半壊だ」


俺は答える。


「住めるが、完全じゃない」


「でも住めるだろ!」


別の声。


「甘すぎる!」


空気が一気に荒れる。


「無被害だ!」

「いや半壊だ!」


言い合いになる。


(来たな)


俺は一歩踏み出す。


「止まれ」


声を張る。


一瞬で静まる。


「これは誰の問題だ」


沈黙。


「全員の問題だ」


ゆっくり言う。


「線を引くってことは」


一拍。


「どっちかに入れるってことだ」


静寂。


「全員を満足させる線はない」


誰も何も言えない。


「だから――」


紙を掲げる。


「決めるしかない」


「納得できなくてもか」


誰かが言う。


「ああ」


俺は頷く。


「納得じゃない」


「維持だ」


沈黙。


「仕組みを維持するための線だ」


長い沈黙の後。


「……分かった」


最初に声を上げた農民が言う。


「文句はある」


一拍。


「でもやるしかねえ」


それが広がる。


不満はある。


だが――受け入れる。


(これで動く)


だが、その時。


小さな声。


「……じゃあ」


振り向く。


若い男。


震えている。


「全部壊れたって言えば」


一瞬。


空気が止まる。


「得するのか?」


静寂。


全員がその意味を理解する。


(来た)


核心だ。


「しない」


俺は即答する。


「嘘は残る」


紙を叩く。


「証明が必要だ」


「三人で見る」


「記録も残る」


一歩前に出る。


「一度バレたら終わりだ」


沈黙。


男は何も言えない。


「それでもやるか?」


静かに聞く。


首が横に振られる。


「……やらねえ」


それでいい。


その時。


端で、誰かが笑った。


小さく。


だが、はっきりと。


リオネルだ。


目が合う。


(分かってるな)


あいつは全部見ている。


そして――


楽しんでいる。


「これで終わりだ」


俺は言う。


「基準は決まった」


ざわめき。


だが、もうさっきとは違う。


動く空気だ。


人が散っていく。


それぞれの場所へ。


決められた線の中へ。


夕方。


記録庫。


「……疲れたな」


鎧の男が言う。


「ああ」


俺も頷く。


紙を見る。


判定。


数字。


名前。


全て動き出している。


「これでいいのか」


低い声。


「分からない」


正直に言う。


「でも」


一拍。


「止まるよりマシだ」


沈黙。


火が揺れる。


「なあ」


鎧の男が言う。


「今日、何人か泣いてたぞ」


胸に刺さる。


(分かってる)


「線の外に出たやつか」


「ああ」


頷く。


「……そうなる」


俺は言う。


「全員は救えない」


火を見る。


「でも」


一拍。


「全員を沈めるよりマシだ」


それしかない。


夜。


王城。


暗い部屋。


「……どうでしたか」


リオネルが言う。


貴族が椅子に座る。


「悪くない」


短い評価。


「線を引いた」


「ええ」


リオネルは頷く。


「だが」


貴族が目を細める。


「不満が残る」


「当然です」


一拍。


「だから使える」


静寂。


「どうする」


貴族が問う。


リオネルは微笑む。


「簡単です」


「境界を揺らす」


沈黙。


「半壊か無被害か」


「そこを曖昧にする」


「そうすれば」


ゆっくりと言う。


「人は迷う」


「争う」


「そして――」


目が細くなる。


「頼る」


誰にか。


その答えは、言わない。


だが、分かる。


「なるほどな」


貴族が笑う。


「線を引かせて、揺らすか」


「ええ」


リオネルも笑う。


「彼は“決める”」


「私は“崩す”」


静かな部屋に、笑いが落ちる。


その頃。


記録庫。


俺は一人、紙を見ていた。


判定。


境界。


ズレ。


(まだ甘いな)


分かっている。


今日のは完成じゃない。


「次は」


小さく呟く。


「境界だ」


風が吹く。


紙が揺れる。


だが、もう止まらない。


線は引いた。


次は――


その線を、守る戦いだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます!次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ