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6 だから好きになった訳だけど…

「ごっめーん。待ったわよね?」


やはりというか、既にソフィリアは教室にいた。クリミオのせいで…とは、言わない。いや、本当は物凄く言いたい。言い訳がしたくてたまらない。…けど、クリミオはソフィリアの元婚約者。


私だって空気位読めるわよ。


……。散々思ってることだが、本当にそれについてソフィリアはどう思ってるのかしら?


「あら、早かったですわね。クリミオ様とのお話合いになっていたのでしょう?」


いつも通りの柔らかな笑顔を向けて、ソフィリアは私に尋ねた。


「⁈」


いつも通りの柔らかな笑顔。ううん。むしろ、いつもより…ずっと柔らかく…本当に幸せそうな……


…あなたは、婚約者を奪った私が憎くないの?


……あなたは、本当にクリミオが好きだったの?


でも、私知ってるわ。


あなたは、いつだって努力をしている。それは、皇太子妃になるため…クリミオの為ではないの?


………。


「…嬉しそうね。なーんで、あんたがその事を知ってるかわからないけど…そうよ、今さっきまで私はずーっとクリミオと話していたわ。あんたを待たせてね。…どお?羨ましい?」


皮肉たっぷりに言ってしまった。前言撤回。私は空気の読めない女でした…。


「ふふ、まさか。嫉妬なんて致しませんわ。だって、今のクリミオ様の婚約者はセリアンヌさんですもの。お話合い位するでしょう?…特に最近は私がセリアンヌさんを独り占めしてしまっていますから…そろそろクリミオ様が嫉妬していらっしゃるんじゃないかな〜って思いましたの。」


当たり前のことの様に、こいつはこいつで私の嫌味を意に介さず、あっさりと言う。くっ…こいつらは…(クリミオとソフィリア)


2人連続で嫌味を無視された私は、なんだかやるせなくなった。


「……なによー。クリミオのこと知ってる風に言っちゃってさー。…いい⁈私の方がクリミオのこと好きなんだからね!」


しかも、訳のわからない対抗心まで表してしまった…


うん。まぁ、元々が悪役令嬢とヒロインなんだものね。…なんだか、私の方か悪役みたいだけど。


「いいえ、私の方がクリミオ様のことを知っていますわ。…だって、知ろうとする努力をしてきましたもの。」


…ソフィリアは、はっきりと言い切った。


「ねぇ、どうしてなのでしょう?どうして私は、クリミオ様に選ばれなかったのでしょう?セリアンヌさんが努力したことは、勿論わかります。でも…だって!私だって、沢山努力したのに…っ!クリミオ様に選ばれる為にいっぱいいっぱい、色々なことを努力しました。わからないんです。どうして、セリアンヌさんなのか……」


そう、ひとしきり言ってソフィリアは泣いた。


でも、私を恨んでじゃない。だって、泣きながら


「あぁ、…っ、わた、くし…なんてことを…なんてことを言ってしまったの…。ごめんなさい。ごめんなさい。努力を妬む様な事を言ってしまって…セリアンヌさんに酷いことを言ってしまって…セリアンヌさんが大好きなのに…っ」


ソフィリアは自分自身を追い詰めていた。あの時と同じ様に。


そして、わかった。

どうして、クリミオは私を選んでくれたのか…


「ねぇ、ソフィリア。ありがとう。あなた、今初めて私のことを見てくれたわ。」


よくわからない、とソフィリアは目で訴える。


「あのね、ソフィリア。今、あなたは“セリアンヌさんに〜”って言ったの。あなたってば、ずっと“セリアンヌさんの努力に〜”って言ってたのよ?勿論、私の努力を見てくれているのは嬉しいわ。いや、努力も私の一部だから私のことを見てくれているのに代わりは無い訳だけど…なんていうか…」


なんていうか、ちょっと違うのよね。うーん、言葉に出すのが難しい。というか、“大好き”って言われたのが照れ臭くて頭が上手く回ってない気もする…。


「話むし返す様だけどさ、ソフィリアはクリミオのこと好き?」


「え…っと、はい。好きですわ。…クリミオ様はお勉強が良く出来て、運動も得意で…でも、それはとても努力をしているからですわ。とても努力家な方ですの。」


「じゃあ、悪い所は?クリミオの悪い所は言える?」



ソフィリアは驚きつつ律儀にも考え混んだ。



「私はすぐ言えるわよ。

あいつね、爽やかなイケメンの癖して性格がすっごく悪いのよ。腹黒いの。例えば…あいつテストの成績良いじゃない?それはあんたも言ってたことだけど…その理由が面白いの。


だって、王子が馬鹿だと他の奴らに舐められるじゃないか。僕は馬鹿にされるなんて嫌だね。むしろ、頭が良くて運動も出来る王子様…なんて存在自体が嫌味っぽくて面白いじゃないか。


…ですって。馬鹿馬鹿強いでしょ⁈」


私がクリミオと話しててて思い出したことを言う。ソフィリアは目をパチパチとしていた。


「とにかく、クリミオも多分私と同じよ…」


きっと、努力してることだけじゃなくて…もっとその理由だとか他の努力してないことでも、なんでも見て欲しかったのよ。


とてつもなく馬鹿馬鹿しいけど、そんなもん。人間は案外単純なもんなのだ。


「クリミオ様…」


優しく優しく、想い人に気持ちを告げるかの様にクリミオの名前を呟いた。








不器用な2人ね。

ソフィリアもクリミオも…


…だから、クリミオを好きになった訳だけど。言わない。

だって、


ーソフィリアのことを大切にしているクリミオを好きになりましたー


なんて何処のモブキャラの発言よ。




「ストーップ。感傷に浸ってる所悪いけと、私クリミオを譲るつもりないわよ。……ただ、クリミオの気持ちも知って欲しかっただけ。…私の大切な人の気持ち、だから。」



……~っ!自分で言って恥ずかしくなった。


「も、勿論、クリミオの気持ちったって多分だからね。私もなんとなーく今!本当にちょっと気が付いた…ってか思ってみただけだから!!」


あーもう何言ってるんだ私は!


ソフィリアは笑う。

…馬鹿にしてんのか…!いや、ソフィリアは笑顔がデフォルトだ。……良かった。もう混乱して無いみたい、いつものソフィリアだわ。


「あーもう!今日は帰る!」


「ふふ、はい。では、明日お会いしましょうね。


また、セリアンヌさんにお会いするのを楽しみにしていますわ!」



………。


なんだろう、クリミオのことを呟いた時より何処となく慈愛に満ちてるというか、楽しげなソフィリアがそこにはいた。





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