5 これでも好きなのよ?
“淑女レッスン”が始まる…という理由で、全部の授業を終えて特別教室に行く途中にクリミオに会った。
いや、待ち構えられていたが正しいか。
「やぁ、今日も淑女レッスンかい?」
「……。えぇ、そうね。あなたが皇太子だなんて面倒な役割を負ってるせいで私は物凄く今大変だわ。」
こいつは私とソフィリアが会ってることを知ってる。なのに、気まずい様子を見せない。普通、元婚約者と現婚約者が会っていたら嫌がるだろうに。
私の嫌味を言ったにも関わらずクリミオは「ハハっ」と爽やかな笑顔を向けた。
「なによ、急に笑い出して気持ち悪い。無駄にイケメン振りまいて話を誤魔化そうってゆうの?」
その笑顔で苛立ちが少し緩和される程にクリミオはイケメンなのだ。馬鹿っぽくいうと、絵本の中から飛び出してきたかのような典型的な王子様。……いや、その言葉が一番適切なのだ。
「うんうん、僕は君のそういう所が好きなんだ。」
「あらそう。どういう所かわからないけど、それはあの完璧な元婚約者様より秀でてるものなのかしら?」
今度は、王子様顔に惑わされずよりはっきりと嫌味を言ってやった。まだ綺麗に笑っている所を見ると効果は無いみたいだが……
「ふーん、珍しいね。僕がソフィリアの元にいっちゃうか心配なの?」
「違います!嫌味よ、嫌味!!」
私が苛立っていく様子が面白いのか、クリミオはより楽しそうにする。
「あはは、わかってるって。でも、君は本当に珍しいよね。僕が皇太子であることに不満を言うなんて。……他の女の子だったら泣いて喜ぶよ?」
「わかってるなら言うな。
別に。私が好きになったのはクリミオ自身で、皇太子の地位を好きになった訳じゃないわ。むしろ、皇太子なんてやめちまえ。
大体、あなたはもう私のものでしょう?今更、ソフィリアにだって渡しはしないわ。……仮にソフィリアがあなたを振り向かせようとしたって私が阻止するし。」
素で驚いたのだろう。一瞬だけだが、顔が真顔になった。すぐにいつもの王子様顔に戻ったが。
「…逆に、どうして君が僕のことを好いてくれたのかを知りたいよ。」
そんなの、絶対あなたに教えてあげないわ。私が黙っていると、小さく溜息を吐いた。
「そう、僕はもう君のものだ…絶対に離れないよ。
だから、もっと君が好きな様に僕を変えて?もっともっと僕を好きになって。」
私を後ろから抱き締めながら、抱き寄せながら、まるで《けっして離さない》とでも言うかのように……
それを振り切って私はソフィリアの元へと歩く。
「良い心掛けね。……でも、私は変えないわ。あなたの好きなように変わりなさい。」
一言言ってから、再度進む。
後ろから「つれないなぁ〜」という残念そうな言葉は無視して。




