第15話 食堂に現れたクソガキ
久しぶりの更新です。
2,3週間に一度くらいですかね?
本日、雨天なり。
さっき『今日も1日が始まる』なんて、ほのぼのとした空間でほのぼのとした事を思って心暖まる展開になったっていうのに、空は晴天じゃなくて雨天。ちょっとテンション下がる。空気読めよ天気。あ、でもどっかでブルーになってる人がいたら、その人の空気読んでるってことになるか?……こんな朝っぱらからブルーな人って……なんてどうでもいいことを考えながら、頭の片隅で今日どうするか考えていた。
俺は自転車登校なのだが、レインコートを持ってないからびしょ濡れになってしまう。パラパラとした弱い雨で、昼から晴れるのなら自転車でもよかったのだが、天気予報では今日1日ずっと雨らしい。だから俺はバスで登校することにした。時刻とかは既に調べてある。
曇った空を窓から眺めながら、玄関から聞こえてくる「いってきまーす」という凪沙の声に返事をする。
(……暇だ)
学校の準備も家事もすでに終わっている。30分後でもぜんぜん間に合うのだが、暇だからもう家を出ることにした。
玄関を出て、エレベータで一回まで降り、傘をさしてバス停へ向かう。バス停に到着したところで、タイミングよくバスが来たから少しラッキー。そのままバスにのって学校近くのバス停へと直行。
自分の教室まで行けばやっぱり早すぎたのか、誰もいなかった。暇だから早く家を出たのに、学校に来ても結局暇ということだ。しかたない、寝るか。
俺は机に突っ伏せて寝た。
俺が目が覚めたことには、すでに教室内はガヤガヤと騒がしくなっていた。
目が覚めたと言っても、俺はまだ顔をあげていない。うつ伏せたままだ。ここで、前から総司の声が聞こえた。俺の前の席は彦摩呂なのだが、総司の声がこんなに近くで聞こえるということは、彦摩呂と話でもしていたのだろう。
次に聞こえてきたのは、教室のスライドドアが勢いよく開かれる音。教室内は既に騒がしいからそれほどだが、ドアを開ける音にしてはでかすぎる。「あ、朝霧さん」と聞こえてきたあたり、彼女の仕業だろう。男子生徒が朝霧に挨拶しているが、朝霧は端的に挨拶を返し、その声は少しばかりご機嫌斜めのようだった。朝っぱらからいったい何に腹を立てているのやら。昨日からそうだが、いちいち忙しい奴だ。
不意に、オレの耳元でバンバンバンッと言う机をたたく音が鳴り響いた。オレは不機嫌さを隠さず、机を叩いた奴を睨みつけた。
「ヒドイよ秋人くん!」
うぜぇ。それが俺の最初に思ったこと。なんで耳元でうるさくされた上にそんなことを言われなきゃならないんだ。
……なんにせよ、朝霧が腹を立てている理由は俺にあるらしい。それが正当なものであるなら、俺は反省せざるを得ないが、不思議とそれが正当である気がしなかった。まだわずか1時間くらいの付き合いだが、それが分かってしまうほどこいつは分かりやすい。つうか、そんなでかい声でじゃべらないでほしい。人気者の君がそんな発言をすると注目を浴びてしまうのだよ。
「今日一緒に登校しようって言ったじゃん」
あーはいはい。周りの男子ざわつき始めたよ。
「いつ?」
少なくとも、昨日は言われていないはずだ。メールには「名前で呼んでね」という追撃メールしかなかったはず。全部無視したが。
「今朝メールで」
そう言われて、俺は携帯を取り出……そうとしたが、ポケットにも鞄にも入っていなかった。家に忘れたようだ。
「何時ごろ?」
「7時35分」
「その時間もう家出てた。携帯家に忘れたし」
朝霧は少しふくれっ面でありながらも、なんとか納得してくれたようだ。最後に「じゃあ明日は一緒にね!」と言い残して自分の席に戻って行った。あーはいはい。男子ざわつかないの。
「お前朝霧さんとどんな関係なんだ?」
「マンションのお隣さん」
総司の問いには端的に答えておく。総司は顔をにやつかせていて、この状況を楽しんでいるようだ。そんな浮かれた話ではないのだがな。ただ、朝霧がなんで俺にちょっかいかけてくるのかが分からないまま、朝のSTは始まった。
ちなみに、朝霧の髪型がツインテールだったから一瞬誰か分からなかったとか口が裂けても本人には言えない。それを朝霧が知った時、たぶんヤツは怒る。
「で、なんでお前が隣にいるの?」
「クジでこうなったんだからしょうがないよ」
俺の問いに答えたのは朝霧。隣、というのは、俺の右隣の席にいるということ。
俺は昨日、寝坊したせいで遅刻した。だから朝のSTには参加しておらず、その時に席替えのクジをみんな引いていたようだ。それで、俺にはクジを引く権利がなく、最前列右端の席になった。ちなみに、教室の左に廊下があって、右は外だ。最前列であることを除けば、結構いい席かもしれない。
「……っち」
「舌打ちされた!?……そんなに私の隣嫌?」
無視しようと思ったが、それをするとまたあからさまに落ち込まれるので一応は反応しといた。
「……別に」
「じゃあなんで舌打ちしたの?」
「……はぁ」
「今度は溜息!?]
この後、仕方ないから朝霧に舌打ちの理由の説明をしてやった。別に朝霧が嫌いとかではなく、朝霧の隣が嫌なのだ。だって……
「っち」「…っち」「っち!」「っちっち!」「っちっちっち!」
後方不特定多数の男子から舌打ち攻撃を受けているのだ。なぜだ!?なぜ俺がこんな目に合わなければいけないのだ!?
ふと、朝霧の右隣の奴と目があった。名前は知らんが、俺と同じ男だ。
その瞬間、俺達の間に一種の意思疎通が成された。俺が朝霧の隣の席だから舌打ちを受けているということは、もう一方の奴も舌打ちのターゲットにされているのだ。彼は沖田とう名前らしい。互いに苦労するな。
といった感じに、俺達に友情が芽生えたかと思えば……
「秋人君、さっき私を見た時、誰か分からなかったでしょ。顔に出てた。普通人の顔一日で忘れるかなあ?」
「結局昨日の夕飯は何にしたの?」
「ごめん秋人くん。シャー芯くれない?」
「秋人君ーーー」
・
・
・
といった具合に、朝霧はなぜか俺に話しかけてばっかりで、隣の沖田とはほとんど会話が少なかった。沖田はよく朝霧に話しかけていたが、苗字でしか名前を呼んでくれないうえに、朝霧が端的に答えて会話を終了させたためテンションだだ下がりのようだ。
そしてこうなる。
「……っち」
沖田にまで舌打ちをされるはめになった。お前の事、同士だと思ったのに……一言も会話かわしてないけど。
「どんまい、秋人君」
「サンキュ、ヒーロー」
味方はお前だけだよ。後ろの席の彦摩呂よ。
時間が経つにつれ、俺への舌打ちは減ってきた。さすがに彼らも、いつまで妬んでも意味がないと理解したのだろう。
朝霧からの言葉のボールを、もはやゲームセットしているのではないかというくらい見送り三振して、やってきた昼時。奴がやってきた。
「秋人、食堂行こうぜ」
総司だ。……てか、食堂?購買じゃなくて?
「一人で行け」
「お前昼飯どうするんだよ」
「弁当がある」
そこへ今度は彦摩呂が入ってきた。
「え~。2人とも購買組だから、僕も今日は購買にしようと思ったのに」
「だってよ秋人。弁当でもいいから、食堂行こうぜ」
「……はぁ。わぁったよ。で、なんで購買じゃなくて食堂なんだ?」
「妹に昼飯代渡さねぇとでよ。母さんが渡すの忘れたらしくて」
「総司君、妹さんがいるの?」
「ああ。中等部2年生だ」
「どうでもいい。行くんならさっさと行くぞ」
俺は自分の鞄から弁当を取り出して席を立った。その時
「秋人くん。私もいっしょにいいかな?」
朝霧が話しかけてきた。しかも一緒に昼飯を食べたいという誘いだ。手には弁当箱が包まれているであろう包み。ハッキリ言って俺はお断りだったけど、俺が答える前に総司が
「いいですとも朝霧さん!ご一緒にどうぞ」
なぜか紳士っぽくふるまう総司。テメェそう言うキャラなのか。っつうか、聞かれたのは俺なんだけど。
結局、朝霧もついてきた。
食堂につけば、俺達に向かって大きく手を振る一人の人影が。それに答えるように総司も手を振る。どうやら、彼女が総司の妹のようだ。
「遅いぞ、バカ兄貴」
中等部の服を着ていて、肩を超すくらいに長く茶色っぽい髪をそのまま下におろし、前髪を一つのピンで留めた子がそこにいた。さすが兄妹。総司に似てる気がする。
「……なに?兄貴の友達?じろじろ見ないでくれる?キモイんだけど」
……このクソガキが。年上に対する態度がそれか。
「特にその前髪。目隠しちゃってマジ陰キャラ」
……もう何も言うまい。俺はこいつが嫌いだ。
まあ、確かに俺は前髪を変に伸ばしてるから目が隠れている。きっと総司も、このクソガキと同じ理由で俺を陰キャラだと思っていることだろう。俺自身、これが原因だと分かっている。でも切ろうとしないのは、俺自身が陰キャラであることを望んでいるからだ。そうすれば、必要以上に他人と仲良くなることもないだろうと思っている。
「隣のメガネは……まあ普通ね。ていうか、後ろの人は?まさか兄貴、浮気!?」
「……はぁ。極御。年上に向かってその口の聞き方はないだろ。それに、朝霧さんはそういう人じゃねぇよ」
「ふうん……でも、まだ仲直りできてないってことだよね……」
妙にしんみりとしながらそう言うクソガキ。兄である総司も、いつもみたいなバカみたいにウザいテンションを下げてしんみりとしている。
「……まぁな。そんなことより、ほらよ。昼飯代だ」
「サンキュ兄貴。それじゃ」
そう言ってクソガキは券売機の方へと去って行った。
「なんて言うか、遠慮のない妹さんだね」
朝霧がそう言う。確かに遠慮のないクソガキだったな。
「みんな悪い。アイツそんなに悪いやつじゃないんだけど……本当は極御も一緒に昼飯食おうと思ってたんだけど、あれじゃあな」
「どうでもいい。さっさと食券買ってこい」
「私と秋人君で席確保しておくね」
ということで、一端ここで別行動。俺と朝霧は目についた空いてる席に向かって歩き始めた。
さっきの総司とクソガキの会話。気になるワードがいくつかあった。『浮気』『仲直り』十中八九女がらみの話だろう。しかも、浮気という言葉が出たということは、総司にはすでに彼女がいる。で、仲直りの話をあんなにも深刻に話すということは、軽い痴話喧嘩ではなく……いや、人の恋愛事情に首を突っ込むのはやっめよう。正確にはまだ突っ込んでないけど、俺には関係ない話だし、彼ら自身で解決するべき話だし。
「秋人くん、さっきの話って」
「俺達がでしゃばっていい話でもないだろ」
「……そうだね」
そう、俺達には関係ない話。でも万が一、総司が協力を求めてきたなら、その時は仕方なく協力してやることにしよう。もちろん、見返りを求めるが。
クラスNo1の朝霧さんが見るからに陰キャラの秋人に関わる理由とは……
朝霧さんの話でしたが、総司の話もちょっと入れてみました。どんな事情があるのでしょうか……
そして総司の妹、天道極御が登場です。俺妹の桐野辺りを想像してください。
次回、もう一回朝霧さんの話です。




