第4話 うちの姫さま
後輩の女性が、先週の2次会での様子を教えてくれた。
「大変な盛り上がりでしたよ」
私は彼女に言った
「ああ、私がいると、ハメを外せないと思って、遠慮させてもらった」
「え~? もう課長の話題で持ち切りでしたよ」
「あ……ああ。こんな私でお酒が進むのであれば、いくらでも肴にしてくれ」
「も~うちの男性社員、みんな課長にぞっこんで、主任なんか『俺がうちの姫さまを支える』って言い出して……」
「……え?」
「そしたら係長が『いや、うちの姫さまの1の家臣は私だっ』って言い始めて……」
……ちょっとまて、何が起こっている。
私を非難して盛り上がっているのではないのか?
だいたい係長といったら、私より1周り近く年上の男性で、奥さんもお子さんもいらっしゃる。
私の様な小娘の下に就けられて、納得している訳が無い。
彼女は話を続けた。
「女性の皆からも『うちの姫さま、あこがれる~』……『ミステリアスよね~』……『普段、どんな生活をされているのかしら~』……『きっと一般庶民とは住む世界が違うのよ~』って」
……普段、だらしない生活をおくっている事……言えない!
「ありがとう」
その時の私は精一杯、やれやれといった表情を作って、静かな笑顔で彼女を帰した。
頭の中を整理する。
私が課長昇進の話を頂いた時、最初の気持ちは『辞退しよう』だった。
だいたい私は、管理職の器ではない。
私よりも年上の男性に、指示を出す?
うん、無理だ。
決裁権を持たない今の役職が、一番私に合っている。
いや、正直、今の役職でさえ荷が重い。
いっそうの事、降格願いを出そうか。
だが……
私1人なら、それでも問題無いのだが……
彼と食べていくのであれば……
今の私にとって、彼との生活が全てである。
……私が課長になれば、今の生活を続けられる。
それに、こんな私が昇進の話を頂けたのも、彼のアイディアのお陰である。
彼の功績を、捨てたくない。
そんな気持ちが、その時あった。
しかし、事は私だけの問題ではない。
新規に課を起ち上げるとの事。
そのメンバーは、他の課から異動させるという。
私は、彼らの上司となる。
部下となる彼らの今後を、私は預かる事になる。
課の業績が悪ければ、いずれ解散となる。
当然責任を取るのは私だが、彼らの将来にも影を落とす。
私は……ちゃんと……やれるのか?
悩んだあげく、私は課長昇進の話を受ける事にした。
私は心に誓った。
絶対、彼らの将来に、影を落とさない。
その為なら……私は……鬼になる!
ところが、どうした事だ。
嫌われ者を選んだ私を『うちの姫さま』と呼び『俺が支える』と言っている?
私の知らない所で……何が起こっているのだ……
そんな事を考えていると、主任が私のデスクの前に来た。
「課長!」
「ひゃい」
「……はい?」
「……コホン、失礼」
彼は企画書を持って来た。
「承認、お願いします」
「はい、お疲れ様。目を通しておきます」
「……」
彼は席に戻って行った。
……緊張した~
いかん。
陰で『私を支える』等と言っているという……意識してしまうではないか。
……主任、私より2つ上、イケメンだ、絶対に彼女、いるんだろ!
係長に関しては、イイ感じのおじ様タイプ。
若い娘に人気がある。
今後……大変に……なりそうではないか!
次回:姫さまと愉快な仲間たち




