第3話 打ち上げ
会社での私は、一流のブランド品で武装し、凛とした態度で仕事をしている。
しかし、職場の空気を引き締めている訳ではない。
企画部の仕事は、頭の柔軟性が要求される。
アイディアは、のびのびとした環境で生まれる。
だから、私の職場は私以外、笑いと雑談が絶えない。
毎週1回、担当者から、進捗の報告会を行っている。
部下の進めている仕事を、より良く完成させる事が目的である。
今日は、その日である。
1人ずつ、進捗と抱えている問題を報告してもらう。
この報告会で、私は悪い話しから聞かせて欲しいと伝えている。
心配事、うまく行ってない事を聞き出すのが目的である。
良い話しは、打ち上げで飲みに行った時にでも、ゆっくりと聞かせてほしい。
そのように伝えている。
私は、その報告に対して、凛とした表情で指示を送る。
「それは素晴らしいです。この企画、是非進めて下さい」
また、ある人の企画には、険しい表情で応える。
「これは市場規模として大化けするかもしれません。是非成功させましょう」
肯定的な対応は楽なのだが、中にはとても進められない、しょうもない企画を捻り出してくる部下もいる。
その場合、穏やかな口調で伝える。
「この企画、私に少し、預からせていただけませんか」
・・・・・・
自宅へ戻り、しょうもない企画を彼と相談する。
彼のアイディアによって、その企画は興味深い企画に変貌する。
次の日、そのアイディアを部下に伝えると、顔色が明るくなった。
自分が捻り出した企画、しょうもないという自覚は、あった様だ。
こんな調子で仕事をまわしている。
・・・・・・
私の課で進めているプロジェクトの1つが完成した。
週末を迎え、近くの居酒屋で、打ち上げが予定されている。
私にとって、大切なイベントである。
険しい表情で短い挨拶を行い、乾杯の音頭を取った。
凛とした態度を崩さず、1人1人にお酒を注いで回る。
そこでは、仕事に対するねぎらいの言葉を掛け、また、うまく行った事、想定外の成果など、良い話しを聞かせてもらう。
宴会終了の時間となった。
全員とお酒を酌み交わし、何も食べていない。
一旦解散し、みんなは2次会に行く様だ。
私は失礼し、タクシーに乗って自宅へ向かった。
玄関を開けると、彼が出迎えてくれた。
「おかえり」
私は彼に抱き付いて言った。
「疲れたよ~」
「……おつかれさま。お風呂、ぬるく設定してあるから、ゆっくり入って」
私はゆっくりと湯舟に浸かり、アルコールを飛ばす。
バスローブをまとい、バスルームから出ると、夕飯の準備がされていた。
野菜、タマゴ、チーズのサンドイッチ。
それと、コーンポタージュスープ。
「飲みたい!」と言うと、
「大丈夫?」と心配された。
「明日は休日、あとは寝るだけ!」
と言うと、ビールを持って来てくれた。
「何か食べた方がいい」
彼は心配してくれる。
「乾杯!」
と言って彼と乾杯する。
今日は疲れた。
だから、いつものわがまま……許してほしい。
私にとって、至福のひと時。
彼は、深夜まで付き合ってくれた。
・・・・・・
週末を終えて会社に行くと、私に向ける皆の表情……何か違う。
先週の2次会、私を話題に、していたのだろうか?
2次会に参加した後輩の女性が、こっそり私に教えてくれた。
みんなが陰で、私のことを、何て呼んでいるのか。
……『うちの姫さま』
次回:うちの姫さま




