第2話 あとは寝るだけ
私は、いつも一流のブランド品で武装している。
この武装は、私が課長職に就いてからだ。
女性が昇進を望まないという一面もあるが、課長職以上に就いている女性は、非常に少ない。
それも20代となると、私ぐらいだ。
今の私は、ひと回り近く年上の男性社員の上司である。
『こんな小娘が、と舐められない様に……しかし内心は一杯一杯なのだろう』等と噂されている様だが、少し違う。
こんな私でも、課長として、大きな権限が与えられている。
その権限の大きさは、そのまま責任の大きさでもある。
何かあった時、私が責任を取る。
その気持ちから、決して逃げない。そして誤魔化さない。
その覚悟がなければ、私の指示に従ってくれる訳がない。
私の武装は、その覚悟の現れである。
だから会社では、常に凛として、緩んだ態度は取らない。
そう決めていた。
……そう……決めていたのだが……
今日の私は緩んでいる。
神経が衰弱している。
原因は解っている。
禁断症状だ。
今週一杯、彼は海外へ出張中。
フッ(笑)
しかしそれは今日までである。
明日の土曜、朝4時、成田に着く。
今週中にあげなければならない仕事を、きっちりと上げた。
時計を見ると、てっぺんをまわったところ。
タクシーに乗って、自宅マンションへ向かう。
今日の夕食時、会社を抜け出して近くの百貨店へ日本酒と懐石弁当を買いに行った。
きっと彼は、日本食が恋しくなっているに違いない。
玄関を開けると、真っ暗な部屋。
今週、それを見続けてきた。
部屋の電気をつける。
脱ぎ捨てた服が散乱している。
それと食べ散らかしたキッチンとテーブルの上。
いけない、こんな部屋を見たら、彼に嫌われてしまう。
脱いだ服はハンガーにかける。
食べた容器は廃棄する。
使った食器は食洗機に入れる。
なんで、この程度の事、出来ないかなぁ。
部屋全体を、静音モードで掃除機を掛けた。
時計を見たら、4時を過ぎている。
ヤバイヤバイ、なんでこんなに時間かかる?
バスルームを洗って、お湯を張ったところで、玄関扉の開く音がした。
彼が帰ってきた。
急いで玄関へ出迎えた。
「ただいま帰りました」
挨拶を返す前に、抱き付いてしまった。
「……おかえりなさい」
彼の荷物を持ってリビングへ向かう。
ゆっくりと入浴してもらう様、彼に伝えた。
寝室の温度を下げてカーテンを開ける。
窓の外は明るくなり始めた。
懐石弁当と日本酒を温める。
彼がバスルームから出てきた。
私は急いで入浴を済ませ、懐石弁当とお酒をワゴンに乗せて寝室に向かう。
私も彼も寝ていない。
ナチュラル・ハイになっている。
暖かい光が差し込んでいる。
ひんやりとした部屋で、熱燗を飲みながら、あとは寝るだけ。
待ちに待った、至福のひと時。
だらしない時間の始まりである。
二人とも、バスローブのみをまとっている。
解放感に、姿勢を崩す。
バスローブが乱れてしまう。
彼の視線が泳いでいる。
そんな彼にドキドキする。
熱燗が良い感じにまわって来た。
……気持ちい~
今日は何処まで墜ちていくのだろう。
次回:打ち上げ




