第1話 武装解除
私は大手家電メーカーに勤める独身女性、27歳。
肩書は企画部課長。
20代で課長職に就いた女性は非常に少ないとの事。
年収は……それなりに。
現在、都心のマンションに住んでいる。
頭のてっぺんからつま先まで、一流のブランド品で武装し、常に凛とした態度で仕事をしている。
そんな私には、同棲している男性がいる。
年齢は私と同じで大学院生。
実験の助手等を受け持っている様だが、年収は100万に届かない程度。
実質的には、私が彼を養っている。
そんな彼なのだが、私は彼にベタ惚れなのである。
とにかく優しい。
そして、どんな私も受け入れてくれる。
そして、私に対して気付いた事を、きちんと伝えてくれる。
そして、私が課長になれたのも、実は彼のお陰である。
毎年、社内で行われる企画コンペに、彼がアイディアを出してくれた。
そのアイディアが3年連続して採用され、ことごとくヒットした。
お陰で私は今年度、課長の役職に就く事となり、生活に困る事も無くなった。
今日は週末の金曜日。
今週中に上げなければならない企画書がある。
土日の休日を取る為に、一人で深夜まで残業している。
ようやく仕上がったのは午前3時をまわったところ。
タクシーに乗って自宅へ戻る。
部屋に入ると、彼も起きていた。
「おかえり」
彼が玄関まで出迎えてくれた。
彼は来月、ミュンヘンで開かれる国際会議で、研究発表が予定されている。
そこで発表する資料を整理していた様だ。
「……ただいま」
疲れた態度で言葉を返す。
歩きながら、着ていた服を脱ぎ捨てる。
粗末に扱う気持ちは無いのだが、一刻も早く武装解除したい。
彼は私が脱ぎ捨てた服を拾い上げながら、優しく言葉をかけてくれる。
「遅くまで、大変だね」
私は下着姿でバスルームに向かう。
途中、彼を横目で見ると、彼は視線を外している……ドキドキ。
シャワーを浴びながら自分自身を振り返る。
……私は彼に甘えている。
私は、バスローブのみをまとい、バスルームから出た。
ベッドに座って髪を乾かしていると、彼が扉をノックする。
ピザ、パスタ、サラダ、スープ、そして、お酒を乗せたワゴンが運ばれてきた。
彼は照明を消してカーテンを開け、エアコンの温度を少し下げた。
窓の外が明るくなり始めた。
菫色の空を見ながら、彼と並んで食事を始める。
徹夜明けで、頭がふわふわしている。
……実に気持ちがいい。
優しい光が射し込む部屋で、二人でお酒飲みながら今から寝るのだ。
待ちに待った、至福のひと時。
だらしない時間の始まりである。
二人で乾杯してお酒を飲む。
彼は優しく抱き寄せる。
ピザを頬張りながら談笑する。
私も彼も、ヘラヘラしている。
そんな私は、思ってしまう。
もし、彼にふられたら、私は生きていけない。
……私は彼に溺れている。
良い感じにお酒がまわって来た。
私は彼に抱き付く様に、寝てしまった。
実は寝たふりをしていた事、彼には内緒だ。
次回:あとは寝るだけ




