【#4】初クエスト発行されてみた
「はいどーもー。今回はなんとゲストに来ていただいてます!」
「なんだ悠真? そのテンションは」
うるさい子供だな。とりあえず俺は元の世界で見ていた配信のテンションを真似てみたのだ。いつもの皮肉めいた感じだといつまでもポイントを得られないからな。食事までVPで獲得するシステムなのは割と陰キャには致命的だ。
「既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、なんと! 眷属召喚というスキルがあって召喚してみました! 本当は配信でやるべきだったんですがウッカリ! 条件を達成すると召喚回数増えるらしいので、その時は是非皆さんにもお見せしたいと思います! さて! 前置きが長くなりましたが、そんな俺が引いたコモン眷属のレオ君でーす!」
「ど、どうも……レオです。ヴァンパイアやってます。な、なぁコモンてなんだ?」
もじもじと顔を赤らめてゴーレムに挨拶をするショタ。美形ショタだからめちゃくちゃ絵になっている。なんか心がささくれてきたな。
「あぁ、高貴なって意味だよ。確か」
「そうなのか!? 高貴か~ふふ」
ニコニコと満足気に先ほどの羞恥心など忘れてはにかむクソガキ。もといショタ。俺はそういう趣味はないのでアレだが、ホントコイツアレだな。腹立つくらい綺麗だな。
『ドキ。いま俺ちょっと恋に落ちそうになった』
『レオきゅん……』
『顔よ』
『こんなショタが召喚で出るなんて聞いてない!(20代女性会社員)』
『キャーー! ちょっとゴーレムに向かってお姉ちゃん! て言ってみて!』
「え、お……おね」
「と、いうワケでね! 今回はこのレオくんと探索してみたいとおもいまーす! ボソッ(そこまでサービスせんでいい!)」
レオの言葉を遮り、レオとゴーレムの間に身体を入れる。思った以上の反応だ。特に女性視聴者の心は掴んだようだ。
先ほど拠点では配信という事をして、色んな人に見てもらいながら探索を行う必要がある事。そして名前が長いからレオと名乗る事を言いつけてある。
その際にレオには何が出来るのか確認をしておいた。
——少し前、拠点――
「なぁ、お前って何が出来るの?」
「オレはそうだな。なんとなく魔法と格闘が得意な感覚があるな!」
手をにぎにぎとしながら自分の感覚を測るようにレオが言う。なるほどなゲームで言うと中衛ってところか? 俺が前衛しか今のところ出来んからレオは後ろか。眷属なのに主の後ろに立つのかコイツ。
「まぁ、子供を前に危険なところを歩くのも俺の小さな心が耐えられないか」
「ん? なんだ悠真。なんか言ったか?」
「いや、こっちの話だ。とにかくさっき言った通り配信で色んな人に見られているが油断だけはするなよ。俺は弱くてお前を守れない」
「きっぱり言うなよ……かっこ悪いなぁ……」
——現在、ダンジョン——
「さっきも言ったが、とりあえずモンスターを俺が剣で食い止めるからお前は後ろから攻撃してくれ。方法は任せるが魔法とやらを使う時に俺を巻き込まないように」
「おう! わかった!」
そんな会話をしながら俺たちはズンズンとダンジョンを進む。なんか見た事も無いモンスターとかに出会ったら終わりだな。その時は逃げよう。
『レオきゅんこっちむいて~!』
『あ~いいなぁ私も転移組になってレオきゅん召喚したい』
気楽なもんだコイツらは相変わらず。こっちは命がけなんだっての。レオも満更でもない感じで顔を赤らめるんじゃない。集中しろ! この思春期キッズが。
︎︎転移組というのは説明の必要もないだろうがプレイヤーである。システム上元の世界とのコミュニケーションが成立するので、この数時間で出来た共通の区分だ(掲示板談)
「ん? おい悠真あの通路なんかいるぞ」
「え、お前そんな事わかるの? どんなやつだ?」
『レオきゅん有能! おい榊! さっきのコモンての撤回しろ!』
「え、オレは高貴って結構気に入ってて……」
「いいから集中しろ。戦闘に入るかもしれないんだ。ゴーレムはいないものと思え」
「あ、あぁ……ゴメン。敵は1匹小柄な感じだから多分悠真が言ってたゴブリンだと思う」
なるほど。レオの力と連携を試すには丁度いい敵だな。でもマジで有能だなコイツ。俺は全然気づかなかった……。
「よし、1匹なら接近しよう。作戦通りいくぞ」
俺はレオにそう言うと、レオの位置を意識しながら駆け出す。見た目通りの身体能力だったら流石に俺の方が早いハズだが、そういう事も確認しておきたいので少しマジダッシュ。ゴブリンなら俺一人でもなんとかなるしな。と、思ったがやはり難なくついてきた。なんなら俺より早いのを加減してついてきているようだ。そりゃそうか。
少し走るとレオの言う通り先にあった通路からゴブリンが出てきたのでとりあえず間合いを測る。向こうもとっくにこちらに気付いており臨戦態勢だ。あれだけガチャガチャやってたら当然だろう。そのうち配信のコメント音量とか気にしないとな。
「レオ、戦闘態勢をとったら周りを気にしてみてくれ。他に敵が来そうか報告だ」
「近くにはいなさそう。いつでも行けるよ」
そう言いながら拳を構えるショタ。なんかサマになっているな。記憶がないと言ってたが、技能については申告どおり問題ないか? まぁ見てからだなっと。
ガキン!
癖になっている脳内モノローグを流しながらゴブリンの攻撃を受け止める。受け止める側は初めてだが力負けはしていないみたいでよかった。
︎︎俺は受ける戦闘スタイルではなかった事を、受けてから省みたが、もしファンタジー筋力があるゴブリンだったら怪我してたかもな。これは油断だ。よくない。
「よしレオ! 今だ攻撃してみてくれ!」
鍔迫り合いの容量でゴブリンの動きを制御しつつ後ろにいるレオに叫ぶ。と、思ったがレオの気配が後ろにない。
「了解! いくよ!」
俺の身体で死角になった影からさっと踊り出てゴブリンの側面に回り込んでいた。どうやら息を殺して接近していたようだ。
グギェ!
完全に意表を付かれたゴブリンは構えが間に合っていない。というか俺とレオに対する意識がバラついて判断が遅れているようだ。
「やー!」
そう叫びレオは渾身のストレートをゴブリンの脇腹に叩き込む。同時にサァッと光の粒子となってゴブリンは消えた。返り血とか出てないしなんか俺の初討伐よりスマートだな。
『やー! だって! レオきゅん可愛い!』
『初討伐オメ』
コメント欄も何やら盛り上がっている様子だ。今回は連携の確認だけだしこれで戻るか。レオの存在が口コミで広がれば見てくれる人が増えるかもしれない。配信も探索もここで欲をかく必要はないだろう。
「さて、大体わかったし戻るぞレオ」
「うん! 役に立てそうでよかった」
ニコニコと自分の手を眺めて言った。あの感じだと俺より全然強そうだし、何なら魔法の方はまだ見れていない。というかそうか……一杯一杯ですっかり意識から外していたが魔法があるのか。その辺も要確認だな。まぁいいやもう帰る気持ちになっちゃってるし。
『えー! もう終わっちゃうのー?』
ザワザワと騒ぐ配信に「ごめんなさいー! またすぐに配信するので、また見てくださいねー!」と営業スマイルを張り付けゴーレムのスイッチを切る。
——拠点——
「と、いうワケでだ。初戦闘ご苦労」
「うん? うん! 悠真もお疲れ」
卓袱台を囲んで座る俺とレオ。拠点に戻った俺は早速掲示板を眺めていた。
「どうやらダンジョンデバイスというアイテムがあるらしい」
「ダンジョンデバイス?」
なんだそれという顔をしてレオが首をかしげる。わかる、俺も最初なんの事か分からなかった。だが、掲示板における”とにかく買っておけスレ”で必ず名前が出るアイテムで、何やら携帯型の端末で、利用者やその眷属のステータスが分かる他、マッピング機能や複数購入する事で限定的に通信する事が出来る優れモノ、まぁようはダンジョン内スマホって所らしい。そのお値段なんと100pt。
専用のアプリケーションインストールにもポイントが必要だとか、眷属と通信出来る2台目以降はそれなりにかかるだとかで最初はお安く売られているというバランスだ。
先ほどの配信で視聴者が増えたらしく200ptが入っていたが、ふむ……充分購入できる額だな。
「よくわからないんだけどさ悠真、その言いづらいんだけど今の悠真……結構臭う」
「えっ」
なんてことを言いだすんだこのガキ……確かにこっちに来てまだ半日ほどとはいえ、全力疾走したり現代人がおよそ使わない筋肉を使ったのは確かだ。それに俺は年単位で引きこもりをしていて、汗を流すなんてのは久しぶりである。老廃物がけっこう溜まっていたかもしれない。
「敵の気配が分かるのも身体能力なんだけど、とりわけ嗅覚は強いんだ……」
なるほど。コモンキッズとはいえ少し申し訳なくなってきたな。気まずい顔をしながら俺は購入ウィンドウを操作する。風呂とは言わないがせめて身体を拭くものは……と物色しているが、どれもお高い……。ダンジョンデバイス買えるのか? これ。
ピコン
何やら通知がとどいた。届いたというかポップアップウィンドウが表示されたのだ。
「え、なになに? クエスト?」
クエスト:眷属の生活を充足させよ
クエスト報酬:キッチン拡張




