表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日消えたみんなが配信をしている件 〜集団失踪者のダンジョン攻略、コメントだけが命綱です〜  作者: にぎりウニ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/17

【#14】ボス部屋を見つけてみた

 イノシシ肉を充分に堪能したあと俺たちはサクッと後片付けをして、そのままダンジョンの通路を進んだ。

 そういえば本来こうして配信を切らずに探索する事が目的だったな。


『行きはこうして連続して進めてるが、帰りはどうするんだ?』

『確かに。あまり進みすぎると帰れなくなるわよね』


「あぁ、一応マッピングしながら進んでるし、今までの経験でどれくらいの時間でどれだけ進んだかも分かって来たからな。寄り道しなかったら帰れるくらいの道を今日は進めるつもりだよ」


 荷物を背負っているとはいえ、最短ルートであればそれなりの距離を進んでも大丈夫だろう。

 その分、行きは大いに探索をして今まで確認出来なかった領域を細かく確認するつもりだ。思えば今までは様子見の意図が多くてこんな腰を据えて探索した事なんてなかったな。


「君たちの成長と世界をたすける画期的なシステムの提供か……」


 思わずいつも目にする拠点のノートパソコンに表示されたこの救世のダンジョンというものの説明を思い出す。

 やっている事は分かるのだがイマイチやりたい事が分からない。


「なんのためにダンジョンに無職の俺たちを集めたんだろうな」


『ん? 無職とも限らないぞ。失踪者の基準はこっちでも分からんとされてるくらい無差別だ』

『まだ未発見の所なんかもありそうだしな』

『身寄りのない奴らとかも多いし、この機に乗じて変な犯罪とかも増えたから全体的に有耶無耶になっちゃってんだよ』


「ふーん。そんなもんなのか」


『あぁ、居なくなった当初はそれなりにニュースとかにもなったが今じゃそんな話題にもなってないよ。捜査とかは続いてるがな』

『プレイヤーのお前らにとっちゃ3日目だが、俺らからしたら配信開始まで数か月は経ってるしな』

『失踪者が変なサイトで配信してます、そこは剣と魔法の世界でしたなんてニュースで取り上げるには得体が知れなすぎるしな』

『もう少ししたらバラエティとかには取り上げられそうだよな。他の動画サイトには既にダイジェストとか出てるし』


 思わぬ所で現実世界の状況を知る事が出来た。そんな感じになってるのか。検閲にもかからないって事は取るに足らない雑談として判断されたのだろう。


『もしかして検閲にかからないとか考えてるだろ?』

『めちゃくちゃかかってるぞ。実際俺らにしか見えてない読み上げないコメントがちらほらある』


「げっ! そうなのか」


 そんなに知られたくないネタバレがあるのか。というかそれを視聴者が知っているという事は誰か他のプレイヤーがそのネタを踏んで配信したという事である。もちろん推測も中にはあるだろうが、検閲されるレベルの秘密があるのか。


「ま、考えてもわからんか」


「オレは最初から悠真たちが何話してるか全然わかんなかった!」


 ケラケラとレオが言う。そりゃそうだよな、俺も深く考えても分からないし今すぐ戻れるってワケでも無さそうだし考えるのやーめた。


「ん? 悠真あそこに何かあるぞ」


 ピタと立ち止まって進行方向先をレオが指さす。その方向を見てみると通路の幅や高さが一気に広がり、突き当りに大きな両開きの扉が見えた。どう考えてもボス部屋です本当にありがとうございました。


ピコン


 手元のデバイスから音がした。覗いてみる。


 クエスト:1階層のボスを倒し攻略せよ

 クエスト報酬:世界の秘密の断片・???


 かぁ~このタイミングでクエストか。見計らってやがるな。てかクエストってデバイスの方にも表示されるのな。例の如く時間制限で今回は5時間以内。こりゃ迂闊にフラグ立てられなくなったわ。

 なにがフラグかなんてわからないワケだが。

「ボス部屋らしいぞアレ」


「ボス? 強い敵って事?」


『どうするんだ? 今日挑戦するのか?』

『俺たち何の役にも立たないし、指示コメはことごとく弾かれてるな』

『自分で決めないとならんぞ』


「悠真、オレもう浮足立たない。決めるのは悠真でいいよ? 信じる」


 レオは昨日の事を思い出しているのだろう。現状は何も情報はなく、どのレベルで挑めば苦戦しないのか、あるいは既に挑戦して敗北(・・)したプレイヤーはどうなってしまったのかなにも分からないのだ。


 ある程度経験は積んでいる。クエストで1階層と呼んでいたのがここであるのならば、この辺で一番強い敵は昨日のイノシシなのだろう。今なら余裕を持って倒せる自信もある。

 いや、情報ならある。クエストの残り時間だ。流石にあと1か月修行しなければ倒せない敵だとしたらそんな無茶なクエストは出さないだろう。それはダンジョンの望むエンタメではないからだ。


「よし、行こう。策も安全マージンも無いのは今日も明日も変わらない」


「おう! 絶対悠真の事は守るから安心してくれ」


 王子様が心強い事を言ってくれる。だが、実際問題レオは俺よりも強い。子供に守られているというヴィジュアルに俺自身が耐えられない事が唯一のネックである。


『おぉ~! ほのぼのキャンプ飯回かと思いきやボス戦か』

『剛毅だねぇ~』

『絶対負けるなよ。俺たちはこんなだが、そっちは命掛けなんだろ』


 そのコメントに心が揺れる。そうだコレは現実なんだ。今は視聴者の一人がそう捉えてくれた事が救いだと、そう考える事にしよう。深く考えずタテマエを張り付けて。


「へへっ、まぁヘタレ無職の頑張りってヤツをね。御覧じてくださいよ」


 やりたかった憧れだったキャンプ飯も出来た。自作のベーコン? 最後の晩餐にしちゃ上出来じゃないか。レオの安全だけは気がかりだが、なんだ……こうならないように最悪を想定してレオとの距離は工夫してたつもりなんだけどな。


 俺はレオに目線で覚悟を伝えると、一歩、また一歩と扉へと足を進める。

 ちょっとやっぱり怖いな。いやでもクエストの報酬は世界の秘密だ。正直知りたい。もう一つの報酬は意味わからんが、俺たちがなんでこんな事をしているのか、それは知りたい。


「ついに目の前か。やっぱちっとブルっちまうな」


「悠真、オレ帰ったらまたベーコン食べたい」


「いくらでも作ってやる」


 そうだな。帰ったらもう少しレオに優しくしよう。もう少し素直になろう。なぁ佐伯、俺ってまだ本音とタテマエ使い分けるの下手くそだよな。極端なんだよな基本的に。俺は俺を生きよう。よしやるぞー!


 重たい扉に手をかけて力を込める。少し押すと自動的に扉はギギギと音を立てて開いた。

 空気に重力があるみたいだ。ズンと腹にくるような重厚なプレッシャー。あの向こう側に何かがいる。気配だけはビンビンと感じる。なんていうか、冠婚葬祭とか儀式の時のチョけたらだめな雰囲気、あの物理版て感じだ。説明下手でごめん。

 こんな引きこもり素人が感じるようなプレッシャーだ。レオみたいな戦闘慣れした敏感なやつには相当感じるものがあるんだろう。俺はチラっとレオの方を見る。


「ん? どうした悠真。ビビってるのか?」


 頭に手を置いて、ケロっとした雰囲気で後ろをついてきていた。えぇ……俺だけ? なんか緊張感があったの俺だけなの?


「いや、まぁそれもそうか。雰囲気かこんなものは」


 どうやら俺が勝手に感じていただけらしい。

 気を取り直して、現れた通路を進むとやはりそこにはまるでボスです。とでもいうような巨大なモンスターがいた。というか大きなゴブリンがいた。王冠を被りファーの付いた真っ赤なマントをしている。


 ファンタジー作品の定番能力である鑑定とかはないが、多分あいつはゴブリンキングだろう。キングっぽいゴブリンだからだ。

 その両脇にもモンスターがいた。甲冑を着たゴブリンだ。ゴブリンソルジャーとかジェネラルとかそういう感じの奴が2体。キングの両脇にいるからジェネラルとする。


「レオ、とりあえず空間を広く使って雑魚から着実に処理しよう。あいつをジェネラル、アイツをキングと呼ぶが、ジェネラルからやるぞ! まずはあっちの奴に魔法で先制してくれ」


「おう。わかった」


 そう言いながらレオは大きな氷柱を形成し、俺の指定したヤツに放つ。

 ズガァン! と大きな音を立ててジェネラルAの腹に突き刺さる。お、意外と通用するのか。と考えた途端ジェネラルAが早速退場したようだ。幸先がいい。


 しかしそれを黙って見ているジェネラルBとキングではない。当たり前だが突然の侵入者に怒り狂って殺気を向けてくる。いや殺気とかわからないけどすごい怒った感じをこちらに向けてくる。


 ジェネラルBは腰にさした剣を抜きこちらに駆けてくる。相当な速さだ。


「レオ! もう一発行けるか!」


 既に準備をしていたらしいレオの魔法がジェネラルBに向かって飛んでいく。しかし今度は一撃でとはいかず、ジェネラルBは意外に機敏なサイドステップでそれを避ける。

 この距離で余裕をもって避けられるという事は不意打ち意外でもう魔法は通用しないだろう。


 俺は盾を構えジェネラルに向かって踏み込む。あの巨体に突っ込まれたら盾があるとはいえ無事では済まないだろう。

 受け流す事も視野だが、運動エネルギーの都合で下がる選択肢はない。吹き飛ばされてしまう。


 ガキィン!


 ジェネラルの助走をつけた上段からの振りおろしを盾で受ける。


「くっそ、なんて力だよ。めっちゃ手痺れる」


『おいキングも来てるぞ!』


 コメントが騒ぎ出す。そういやそうか、俺がジェネラルを抑えるとなると必然キングがフリーになる。そりゃ配下が戦闘しているのをのんびり眺めているワケがない。


「くそっ! シールドバッシュ!」


 身に着けた技能がスキルになるので多分叫ぶ必要はないが、ぶっつけ本番なので一応技名を叫んでおく。イノシシ戦の時のように素直に技が発動する感覚、全身の筋肉が自在に動いているような感覚と大きな塊を難なく弾き飛ばすイメージが連動する。


「レオ! ジェネラルを攻撃出来るか! その間俺はキングを抑える」


 ジェネラルを弾き飛ばし、敵の体制を崩しながら俺はキングの方へ駆け出す。

 想定通りだ。失敗のイメージはない。シミュレーション通りに身体が動く。


「ん! くらえ!」


 レオは俺の指示を聞きながら、まるで最初から理解していたかのようにジェネラルの胸あたりにストレートパンチを放つ。

 横目でそれを見届けると、キングが振りかぶったであろうデカいこん棒——最初は杖かと思ったそれを受け止める。


 ここでジェネラルとキングの体格についてだが、ジェネラルは大体俺の1.5倍くらいの大きさでキングは2倍くらいある。ちなみに通常のゴブリンは腰くらいの背丈である。


 つまり何が言いたいかと言うと、全然受けきれない。俺は盾に加わった重さに耐えきれず後ろに倒れ込んでしまう。


「悠真!」


「俺の事は気にするな! ジェネラルにとどめをさせ!」


 立っているキング、倒れている俺それと相反するようにレオの正面には体制を崩し倒れているジェネラルがいた。先ほどジェネラルAを倒した経験からレオの攻撃が上手く刺さればジェネラルは一撃圏内の体力なのだろうと当たりをつけてレオに指示を出す。


「くっ!」


 レオはそのまま前を向いて、地面についた片足を屈伸させ、大きく跳躍した。そのままアクロバットな宙返りをしながら体勢を整えカカト落としのような恰好を作る。

 ピキパキとレオの足が氷に覆われ空中でみるみる鋭利になっていった。


ズガァン!


 イノシシ戦で見せた飛び蹴りの応用だろう。そのまま氷に覆われたレオの足はジェネラルの装備を砕き大きなダメージを与えたようだ。


ガキン! ガキン!


 その間も俺の盾にはキングの振り下ろすこん棒の感触が伝わってくる。姿勢を直す隙もなく何度も盾越しに殴打されているようだ。腕の感覚はもうない。


「悠真! 大丈夫か!」


 レオがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。どうやら無事ジェネラルは倒せたようだ。

 レオは大きく踏み込むと、俺を殴打するキングに思いっきり体当たりをした。魔法の選択肢を忘れるくらいには焦っていたのだろう。しかし、レオの目論見通りキングは大きく体勢を崩した。

 倒れながらもこん棒をがむしゃらに振ったのだろう、その一撃がレオの横腹を捉える。レオの小さな身体は大きくくの字に折れて、まるで雑巾のように後方へ放り出される。


「レオ! くそっ……シールドバッシュ!」


 俺はレオの作った少しの隙を利用し、踏ん張りがきくよう片足を引けるまでに姿勢を整えそのまま盾でキングの身体を押し倒す。


 投げ捨てられながらもレオは上体を起こし、手のひらをこちらに向ける。魔法を使おうとしているのか? しかしレオはもう虫の息である。


「無理するなレオ!」


 射線を通そうか逡巡し、しかし、そう叫びながらレオに駆け寄る。

 

 バキバキバキッ


 駆けた俺の後方から何かが凍る音が聞こえた。なけなしの力を使ってキングを地面に固定するように氷を放ったのだろう。そんな使い方も出来たのか。いや、今使えるようになったのか? ええい考察はあとだ。


「大丈夫かレオ!」


『レオきゅん大丈夫?』

『さすがに見入ちゃってコメントできなかったぞ』


 ゴーレムもふよふよと寄ってきてレオの安否を心配しているようだ。


「はは、また失敗しちゃった。ごめんなさい悠真」


「いいんだ謝るな」


 レオは今にも消えそうな声だ。肩で息をしているようでダメージは相当なのだろう。


「クソっ! こんな時に回復魔法が使えれば」


 俺は今まで一度も成功していない光魔法の光でレオを包む。意味はない事は分かっている。でも今までよりも鮮明に明確に元気なレオの姿をイメージする。オムライスで喜ぶ姿、空腹で悲しげになる姿。たった3日だが芽生えた自分の情を回想しありったけのイメージを込める。

 しかし、やはり何も変化はない。


「大丈夫だよ悠真、それよりアイツ……」


「うるせぇ、黙ってろ! 今俺が回復させてやるから」


「でも……」


 帰ったらまたイノシシ肉食うんだろ。頼む発動してくれ! これからは素直になるから。


ドチュッ!


 鈍い音が聞こえた。どこから? レオ? 俺か? 俺だ。

 熱い、こめかみが焼けそうだ。どうやらキングがこん棒を投擲したようだ。バキリ、バキリと自分を拘束する氷も徐々に引きはがしている。

 まぁ、でもいいやそんな事どうでも。痛みと引き換えにどんどん思考がクリアになっていく。

 その時俺の手元の光が一層の輝きを発したかと思った瞬間、俺の意識は途絶えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ