【#12】ダンジョンで料理してみた
翌日俺たちは例の如くダンジョンの入口で配信をつけた。
「うぅ~悠真、オレお腹空いた……」
『なんだってんだ。昨日あんだけ煽っといて開始は遅ぇし、朝飯も食ってないのか』
「あぁ、色々準備があってな。待たせて申し訳ない」
そう、今日の探索はいつもより遅めの開始になっている上に朝食も抜いてきたのだ。別に食ってきてもよかったのだが、今日のメインであるドロップ肉の試食兼毒見のため、ポイントを結構使ってしまい現在丁度0ptの素寒貧なのだ。
『準備っていうと昨日のドロップ肉か。何するんだ?』
「なんか夕べの悠真は肉に光魔法を当てたりずーっとゴソゴソやってた」
「まぁ、それは昼のお楽しみってやつだな」
俺は背中に背負ったバックパックをポンと叩きゴーレムに見せつける。
現在俺とレオは昨日購入した装備をそれぞれ背負っている。パッキングも元の世界で見た動画の記憶を頼りにレオと試行錯誤したのだ。
『装備もなんだか充実してるな。それで戦闘出来るのか?』
「ゴブリンくらいなら問題ないと思っているが、正直慣れるための訓練も兼ねているんだ。レオの影に収納する能力も不安定だし、荷物を持った探索も出来た方が良いと思ってな」
『なるほど。そりゃ堅実だ』
「オレはなんかかっちょ良くて気に入った! 皆見てくれよ!」
そう言いながらレオはバックパックに引っかけたシェラカップをゴーレムに見せつける。昨日オリジナルの焼き目をつけられるという話をした際に、自分でもやりたがったので、レオのシェラカップには、チタンブルーのグラデーションがじんわり硬貨程のサイズでついていた。
その模様は当然俺の物とは異なる一品もののオリジナルと言えるだろう。
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——
そんな調子でいつものように俺たちはダンジョンの通路をズンズンと進む。荷物を背負っての戦闘もそこまで問題にはなっていない。
人間ではないレオは当然の事ながら、俺まで5㎏を背負い難なく戦闘が出来ているのは、恐らくレベルアップの恩恵なのだろう。
現在の俺たちのステータスはこんな感じだ。
名前:榊悠真 Lv11
種族:人間
職業:なし
能力値
攻撃力 32(100)
防御力 120(200)
魔力 980
素早さ 50(-10)
器用さ 60
運 100
スキル
短剣術Lv0、盾術Lv1、光魔法Lv8
特殊
鬲ゅ?蜿ッ閭ス諤ァ
————
名前:レオンハルト・ディア・アルシオン Lv11
種族:ヴァンパイア
職業:魔法拳闘士
能力値
攻撃力 370
防御力 30
魔力 800
素早さ 320(-10)
器用さ 40
運 80
スキル
格闘術Lv10、氷魔法Lv8
種族固有技
闇魔法
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あまり体感で説明出来るものでもないので、何がいくつ上昇したかとかの詳細は省くが、特筆すべきは、今のところ探索では大して役に立っていない光魔法が無謀な特訓によって魔力に異常な伸びが見られる事だろう。防御力も3桁にのった。
バックパックを背負っている時に素早さにマイナス補正がつくのだが、5kgの荷物を背負って-10のペナルティとなっているようだ。
体感でしかないが、元の世界の運動能力を考えると大体どの能力も30くらいが人間の平均なのだろう。いや、魔力は知らんのだが。
そういや盾術のレベルが上がっていた。昨日のイノシシ戦で妙にシールドバッシュもどきが上手くいったのはこのお陰なのだろう。ショップでスキルを購入しなくてもスキルを習得出来るという事が判明した。だが俺はこの事実をレオや配信で明かす事はない。何故なら華々しいDPSになる希望をまだ捨てていないからだ。花開いてくれ光魔法。
ぐぅ
後ろを歩くショタっ子から腹の虫が鳴く音が聞こえた。なんだかんだ1時間近く歩いているか。
「よし、じゃあそろそろ飯にするか」
「やったー! 『まってました!』」
子供吸血鬼とゴーレムが同時に歓声を上げる。先ほどからあえて聞き流していたのだが、俺たちの飯に合わせて昼食を取るつもりで居たようだ。準備だけして配信を眺めてたのだろうずっと恨めしいコメントは耳に入っていた。
「よし、じゃあレオ昨日教えた通りに準備をしてくれ」
「うん分かった!」
勢いよく返事をすると、レオはてきぱきとバックパックを下ろしシートを広げ、異世界パチノックスを組み立てていく。
俺も焚火シートやグリルなどを組み立てて準備を進める。二人ともステータス上は、一般人がめちゃくちゃ調子良いときくらいの器用さをもっている。あっという間に準備が整う。
『ダンジョンでも焚火シート使うんだな』
『てか結構本格的なソロキャンパー装備で草』
「まぁ、一応マナー兼憧れだな」
「憧れ? 悠真はこれやったことがないの?」
「あぁ、実はな。向こうにいた時に見ていた動画で聞きかじってたエアプってワケだ」
『草』
『エアプでも、ここまでサクサク用意出来るのはすごい』
こういう事に憧れを抱いていた当時の事を思い出し、少しだけ胸がチクりとしたが、今はなんだかんだ楽しんでいるんだ。いいじゃないか。
「ま、そんな事はさておきお待ちかねの飯だが、今日ご用意させて頂いたのはこちら! ドン!」
口で効果音を演出しながら、俺は地面にとある長方形の箱を置いた。昨日残ったポイントは殆どコイツに飲まれたと言っても過言ではない。何を隠そう燻製機である。
『めちゃくちゃ立派なスモーカーじゃねぇか』
『ま、まさか今日の料理って……』
「そう、そのまさか! ベーコンを作りたいと思います!」
イノシシからドロップした肉なのだからイノシシ肉なのだろうし、部位なんか分からない。だが、食えるか食えないかを考えた時、原始のひらめきである燻製で殺菌や寄生虫対策をしようと考えたのだ。それにイノシシなんて概ねブタだろう。
『さっきレオが言っていた夜中の光魔法ってまさか……』
「おっと、察しがいいね。そう、昨夜俺はこの肉を数時間塩漬けしたあとに太陽光をイメージして、天日干し代わりの光魔法晒しをしていたのだ! これで乾燥はばっちり!』
ぶっちゃけ光魔法が紫外線を再現していたかどうか分からんが、ほんのり熱も帯びていた上、こころなしか乾燥も順調に進んだので滅菌出来ていると信じよう。
マジで拾った肉を食うなんて良い子はマネしないでくれ。
地面に置いた燻製機に肉を引っかけ、下部にセットしたチップに火をともす。この火もキャンプグッズのトーチを用いている。流石にそのうち火魔法は習得したい所だな。
「ここで残念なお知らせだが、今から1時間ちょっと燻し時間となります」
「『えーー!!』」
『ふざんけんな!』
『時間返せ!』
「まぁまぁ、慌てなさんな」
そう言いながら、手に持っていたトーチで折り畳みグリルに置いた薪に火をつける。この作業はそう簡単じゃあないと思っていたのだが、やはり難しい。
着火剤はポイントが足りず断念したのだが、紙屑やトイレに置いていたペーパーの芯など拠点にあった使えそうな物を持ってきていて良かった。それらに火をつけながらフーフーと薪で作ったトンネルに酸素を送り込む。
パチり、パキッ
と、木の中にある水分の弾ける音が聞こえてきた。どうやら火がついたようだ。ふぅ。
「レオ—、朝持たせたあれとあれ持ってきてくれ」
火をつける様子を眺めていたレオに指示を出す。
「オッケー! これだよね」
レオから網と水筒、鍋型のクッカーを受け取ると、グリルの上にそれらを置き水を温める。
「さて、お待ちかねシェラカップをだしてみろレオ」
「うん! こう?」
レオが差し出したカップに、俺はポケットから取り出した固形のキューブを置く。そしてバックパックからOPPの小袋に入れた、刻み玉ねぎを少し炒めた物と塩コショウを入れる。
「今からお湯を注ぐが、熱いから気を付けるんだぞ」
「わかった!」
レオは勢いよく元気に返事をしながらも緊張した面持ちで、自分のチェアに腰掛ける。
コポコポと網にかけておいたクッカーから湯が沸騰したような音が聞こえたので、その湯をレオのシェラカップに注ぐ。
即席のコンソメスープである。キューブなど材料はポイントで購入したものだが、食前のスープにはピッタリだろう。
俺も自分のカップに同じように即席コンソメスープを注ぎ席に腰掛ける。
「さてと、見ている皆を待たせるのも申し訳ないしな。こんなもので悪いが乾杯とさせてくれ。みんなは無理して待たないで飯食ってくれていいからな」
俺は乾杯! とカップを少し掲げ視線でレオにも飲んでいいぞと促す。
視線を受けて、意図を理解したのか少しカップを掲げると早速カップに口をつけてあちち、と驚いているようだ。
「ったく、気を付けろよ?」
『ほう、なかなか気が利いてるじゃねぇか』
『初心者ソロキャンプみたいなディテールだな……』
『へぇ~こういうのあるんだ』
『レオきゅん美味しい?』
「美味しい! オレ、記憶がないからさ。悠真が用意するご飯に毎回驚かされてるよ。ご飯て美味しいし楽しいんだな」
『キュン! 闇深物憂げショタ……美味しい』
『お姉さんも一緒にメインのご飯まっちゃう!』
相変わらずここの視聴者はブレないな……しかし、初心者ソロキャンか。なるほどな。
『そういや悠真はなんでこんな色々詳しいんだ? 元の世界でも結構やってたのか?w』
気軽な質問、そうだよなそう思うよな~。俺はパチリとはぜる焚火に視線を落とした。




