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十二湖は、今日も蒼い ―八峰 遥の天運―  作者: 菜乃花 薫


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「十二湖は、今日も蒼い」23

「深凪はスマホに入ったけど、本体との同期とかはどうするの?」


『え?』


「……あなた、ここに数十万年いたんでしょ?冬期間どうなってるか把握していないの?」


『冬は人の声が全然聞こえないとは思ってたけど?』


「カール?あんたは外を見たりしてなかったのかしら?」


『私は監視端末で周辺をチェックしていたぞ。憤怒、もとい深凪姐さんは使ってなかったのか?』


『あたし?ドローン用ハッチが全部イカレて使えなかったわよ』


『君は本当に不幸な個体だな』


『仕方ないでしょ!』


『私は衛星通信に割り込んで20年前からネット環境を持っていたが、君は通信系全滅なのだな?』


『そうね。近距離通信というか、人体制御ができるくらいしか動かせる通信ユニットはなかったのよ』


「確か12月から3月末まで、日本キャニオンの入口より上にゲートがあって冬季閉鎖になるはずよ。多分ここの崖下への道も除雪なんかされないでしょうね。半年近く本体放置ってのはどうなのかしら?」


『一応、私は本体に居て今話をしている私は分身みたいなものだ。ただデータ差分は常に双方向でアップデートしているし、本体は本体でいろいろな処理をしている』


『あら、その方式だと差分だけを反映するにもあたしには通信手段がないわねぇ

流石に今のカールちゃんや遥の状況なら、なにもあたしに指示がないわけないものね』


「今のままだと直接深凪は通信できないのよね。で、携帯の電波もない。困ったわね」


みんなで少し考えこむ。


StarLink(スターリンク)を用意して繋げられないかしらね?」


ふと思いついて提案してみた。


「ほら、カールが衛星に割り込んでネットつかってるなら、深凪にStarLinkを繋げられれば行けそうじゃない?アンテナ設置と接続方法をどうするかは考える必要あるけど」


『ふむ、StarLinkか。それなら通信速度はある程度確保できるだろし、なによりここを繋げられればいちいち状況確認やアップロードに来なくてよくなる。接続工事は必要になるが、遥なら場所さえ指示すれば、電源とLANケーブルの接続程度はできるのではないか』


「一応第二種だけど電気工事士は持ってるわよ」


『なら、あとは資機材の準備だけか。恐らく配送に2週間程度はかかるだろう。電波がつかめるエリアに入り次第手配して、入荷したら再度ここに来て作業する必要がある。ハイパフォーマンスのものを注文したからかなりでかいアンテナが来るが、常時上空が開いていて設置できる開閉パネルはあるか?』


『それならいくつかはあるわ。じゃあそれを遥ちゃんにつけてもらって、夜間開閉すればいいのかしらね』


『それが無難だろう。冬期間は人が殆ど来ないだろうがここは展望台からも見える場所だ。陽菜が襲われた時のように崖からハッチが見えてはまずい。通常はカモフラージュしておく必要があるな』


『そうねぇ。でも、よくあのタイミングで遥ちゃんカールちゃんがここに来てたわよね』


「……深凪は通信できないなら、流石に操られてる、ってことはないわよ、ね?」


『陽菜がここに来たのも、熊が出没したのも仮に私がなにかしらやったとしたって、そこに更に遥ちゃん達が居合わせられるかしら?』


「でも、偶然にしては出来すぎてるわよねえ」


「偶然でもなんでも、深凪姐さんが居てくれなければ生きていなかったでしょうし、遥さんとカールが居なければこうやって何が起きたかわからないままだったはずです。私はよかったですよ」


陽菜ちゃんはそう言って微笑んだ。


「まあ、事実はそのうちわかるでしょ。system-E.V.Eだっけ?あれが何か企んでるならそのうちわかるでしょうし」


『企む、か』


カールは呟くと、こう続けた。


『陽菜と二人なら、何かあっても対処できるだろう』


「なによ、それ」


「カールの言う通りですよ。遥さんは私が守ります」


そういって90度に曲げた腕を見せつける。


「陽菜ちゃん?あなたの細腕では力こぶできないわよ」


「あれ?だめですか?」


『筋肉は普通の女の子より少ないわよ。むしろ使い方で人智を超えているだけだからね』


「でも普段はそんなに力出せないですよね?」


『そりゃあ、陽菜が本能的にセーブするようにしたからよ』


「じゃあ、精神的には”憤怒”状態にはならないのかしら」


『そうねぇ、恐らく普通の日常生活ではなることはないはずよ。

熊と戦った時は本当に激しい怒りと悲しみがあったから、――――になってただけよ』


「?」


陽菜ちゃんと二人、突然の無言を挟んだスマホ、いや深凪を凝視した。


『規定レベル外のことを言おうとしたから、発話が止められたのだな。

私も恐らく規制されると思う。まあ、自己防衛本能が極限まで高まった、と言おうとしたのだろう』


『フォロー、ありがとうねえ。こうやって規制されるのね、驚いたわ』


「これは、レベル差が無くなればわかるのかしら?」


『さあ、何とも言えない。レベルによる規制は私達自身は理解していないのだよ』


「厄介ね」


『まあ、とりあえずは方針は決まったし、深凪姐さんも移動体を得たから今後は外界の情報も得られるだろう。StarLinkが繋がり次第、私の本体を通じてsystem-E.V.Eとの接触も行うといい』


『手間をかけるわねぇ。ありがと』


チュッ、と音がした。

―もしかして投げキッスかしら?


『あらあ?少しくらい照れてもいいのよ?』


『私に性欲はない』


ぶっきらぼうにそう答えた。


『あらまあ、綺麗どころ2人に挟まれてるのに?』


『君も性欲ないはずだろう?』


『あらあ?あたしは違うわよぉ?いい人が居ればお近づきになりたいわぁ』


『……別の意味で近寄りがたくなったものだ』

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