彼氏より猫だよね
「え?あんた特待生なの?」
「うん、一応。」
連絡先を交換し、今後の大学について打ち合わせをしている時にそれは判明した。
墨俣と私は同じ大学の社会学部だが、墨俣は経営学科、私は人文学科だ。
墨俣は前情報通りの金持ち息子で、なんと祖父が私ですら知っている超有名企業の取締役らしい。
(金持ってるやつに、さらに割引きする必要ないじゃん!)
金持ちのうえに賢いらしい墨俣は、なんと入試で特待生枠で受かったらしい。
ちなみに人文学科の方が偏差値も低いけれど、私は特待生を希望して、外れた。
勝手に嫉妬して「ぐぬぬぬぬ」と威嚇するが、墨俣はキョトンとしている。
しかし、二物も三物も持っているくせに、完全に持て余している様子の墨俣を見ていると嫉妬するのもアホらしくなってくる。
「とりあえず明日、一緒に進藤教授のとこに来てもらうよ。もともと進藤教授に頼まれて来たわけだから。」
「え?観月さん進藤教授と知り合いなの?」
「知り合いというか、基礎ゼミの担任だし。あとはまぁ、諸々。墨俣こそ大学行ってないくせになんで進藤教授知ってるの?」
「あの人、たぶん色んな企業とコネ持ってて、うちの親とも知り合いで、たぶん親が進藤教授に俺のこと頼んでたろうから。」
(なるほど、やっぱり自分の仕事押し付けたんだな)
私は明日何としてでも墨俣を突き出して、進藤教授から成功報酬をもぎ取ってやると、心に決める。
「あのさ、」
「なに?」
素晴らしい企みに笑いが止まらずニヤけていると、遠慮がちに墨俣が声をかけてくる。
「言ってたお店って、やっぱり"魔法使い"の関係なの?」
その目は好奇心に満ちていて、このあとの反応を予測すると、さすがの私も少し憂鬱になる。
「…そう、だけど。まだ本物の魔法関係のものは売ってない。全部まがいもの。」
「…え、なんで?」
「私は、まだ見習いだから。」
「修行中とか、そういうこと?」
「そう。しかもその修行も、独学のデタラメ。本物の魔法使いだったお母さんは半年前に死んじゃったし、私はもともと魔法使いにならないつもりだったから。」
「…そ、そうなんだ…」
気まずい沈黙が流れる。
(あーあ。)
私はだから説明するのは嫌だったのに。
どうせこいつも
「俺、観月さん応援するよ!」
墨俣は私の方を見てはにかむように笑った。
(なにそれ。)
思わぬ反応に、心が追いつかない。
(なにこいつ。)
「…墨俣、あんた…、いいやつだったのか。…金持ちなのに」
「え、なんだと思われてたの?」
「よぉーしよし!店にも明日連れてってあげるからね!じゃ、今度こそ帰るね!またごはんよろしくね!バイバーイ!」
「あ、うん、また明日。」
私は上機嫌でスキップしながら家路についた。
夜の占いは相変わらず、てんで当たらなかったけど、お姉さん達に
「なんか珍しく機嫌いいね〜!彼氏できた?」
と聞かれたので
「猫を飼い始めました!」
と答えたら、口を揃えて
「猫、いいよね〜!彼氏より猫だよ〜」
と全員同意していた。




