とりあえず使い魔にしました
私はなぜか、いまだに墨俣んちのリビングにいて、しかもカップ麺を食べていた。
帰ろうとする私と、引き留めようとする墨俣で押し問答をしていたら、
ぐぅぅぅーーーと元気なお腹の虫に対して
「俺、誰かに気づいてもらうために宅配頼みまくっちゃってたから、食べきれないし、何か食べてく?」
と提案され、二つ返事で頷いた。
「だから、熱が高まると気が混じっちゃうんだよ。きっとあんたの曾祖母さんか曾祖父さんあたりに、猫とハッスルする変態がいたんだ。」
「そ、そんなわけないよ!猫と人間がハッスルしても遺伝子が混ざるわけないじゃん!」
私は必死に反論する墨俣をいなしつつ、ズルズルとカップ蕎麦を啜る。
(鴨だしの高いやつ、美味い。)
「冗談だよ。たぶん猫又かなんかが家系のどこかに混じってて先祖返りしたんじゃない?」
何の根拠も無い、適当な私の発言にいかにも納得いかない表情をしつつも、言い返せないのか、墨俣は口を噤んでいる。
私は全部スープを飲み干したいのを我慢して、タンッと食べ終えたカップ蕎麦の容器をローテーブルに置いた。
「ごちそうさまでした!じゃ、お邪魔しました!」
食事を終えて帰ろうとする私に対し、小走りで先回りした墨俣が、玄関に続くリビングルームのドアの前に立ち塞がる。
「…俺、観月さんが一緒に居てくれるなら、大学行けるかも。」
長めの前髪の隙間から必死に縋るような視線を向けてくる。
よく見ると案外小綺麗な顔をしている。
まぁそんなものに絆される私じゃないけど。
「あ、そう。でも私は墨俣が大学行こうが行くまいが関係ないし、なんなら忙しいから今日以降あんたに構う気はないし。」
「そんな!…ご、ごはん!あげるから!」
「ごはんはくれるならもらう。でも一緒には行動しない」
「普通にひどい!」
そのまま涙目になり私を見つめてくると、なぜか背後にプルプル震える黒い子猫が見えてくるから不思議だ。
(でも、よく考えたら、あんなに人の言葉分かる従順な猫ってめちゃくちゃ珍しいな。)
私の中に商売の神が降り立った。
「よし、分かった!墨俣が猫化して私の使い魔として店を手伝うなら、気が向いた時は一緒に居てやってもいい」
「ほんと?!使い魔できるかは分からないけど、やるよ!」
「とりあえず墨俣は、店で私の言う通りに従順な猫ちゃんとして客に愛想振りまけばいいから。看板猫ってやつ?店が終わったら人間に戻すサービスも付ける!ごはんは忘れるなよ?」
「分かった!」
墨俣は目をキラキラさせて私の提案を即承諾した。
(よしよし、良いことをしたな。)
私は人助けをした充実した気持ちで、一人頷いたのだった。




