九十、後ろめたさの気持ち
スマホがずっと震えていた。でも今日は電話にでたら、なんかいつも通りにできない気がした。私は画面を見つめながら、切ることもできずに、立ち尽くしていた。するとさすがに諦めたのか、着信が止まった。私がそれにホッとしたのもつかの間、すぐに何かのメッセージが送られてきた。私は再度画面に目を向けた。
怒ってる?
私はその言葉を見て、透じゃなく、さっきの元カレの言動を思い出してしまった。私はやっぱ無理だと思い、とっさに電源を落としてマンションまで走った。今の自分のモヤモヤとした感情をどっかに置いて帰りたかった。何かから逃げたかった。私はひたすら走った。冬なのに汗をかきなから、全速力で走って、走って、マンションについて、そのまま家の玄関までダッシュした。そして、家に入り、風呂場に行き、一気に服を脱いで、シャワーをあびた。冬の冷たい水が自分をひたすら罰してくれてるように感じた。そして冬なのに水を浴び続けた結果、私は風邪を引いた。なんて間抜けな話なんだろうか。私はひたすらベッドで毛布にくるまって寒いのをなんとかしようと我慢していた。幸い今日は指名もなく、人も多かったので、お休みをもらい、仕事には支障がでなくて済みそうだ。そしてゆっくりと腕だけ出して、体温計をベッド横の棚から取り出し、体温を測った。ピピッと、なった体温計を見るとなかなかの高温だった。私は精神が弱るとこうも身体に出るのかとさらに自分に嫌気がさした。そしてゆっくりとスマホをとって電源を入れると、さらにあれからメッセージがきていた。
――――今日は話せる?ちゃんと説明する――――
どうせただの仕事仲間とか、心配しなくていいとか、そんなことしか言わなそうだなと思いながら、私は体調不良だからごめんと、悩みつつそう一言返信をした。私はそう返しただけだったのに、返せたことへの安心で気が抜けたのかそのまま、また眠りについた。
そして家のインターフォンで現実にまた引き戻された。一回無視していたら落ち着いたが、何故かまた鳴り響いた。私はなんだろうと思い、重い身体でのそのそと動き、モニターを見ると、こちらをずっと見つめる仁美が映っていた。
「……仁美?」
「あ、出た、開けて~。」
「……ごめん、体調……悪くて。」
「だから来たに決まってるでしょ~!」
仁美はそう言うと、持っていた買い物袋を持ち上げた。私はとりあえずエントランスのロックを解除して、仁美を待ち、呼び出し音がなったので、扉の鍵を開けた。
「……なんで?」
「もー、神山君が様子見くれないかって、わざわざ電話してきたんだよ?」
「…………………………。」
「香奈、顔真っ赤だよー?熱高いんでしょ?……一旦ベッドに……。」
「うぁああぁ~~っ!」
私は一気に感情が爆発してしまい、その場にしゃがみ号泣した。
「えぇ?!な、な、な、なに?なんで、泣くの?!」
私は一気にメンタル崩壊したので、ただただ全力で泣くしかなかった。そんな私を仁美は背中をさすりながら、えぇと少し引きぎみにその場に同じようにしゃがんでくれた。
「す、傑先輩が……。」
「いやいや、なんで急に元カレの名前?」
「……いま、一緒に…………働いてるの。」
「………………は?……は!?いつからよ!?」
「…………そろそろ半年?……ズッ。」
「は、半年?!……なんでそんなまさかの展開話をいきなり?……なんでもっと前に話してくんないのよっ!…………それは、さすがに神山君知ってるよね……?」
「…………………………うぅぅぅ。」
「まさかの言ってなんかいっ!!どんだけ拗らせてんのよっ!真面目も一周回ってまさに鈍感?……不器用すぎるわ。」
いつも冷静な仁美が若干あきれ気味に捲し立てるので、私はやっぱりダメなことをしてしまったと気持ちがどんどんマイナスに走り、さらに泣きじゃくった。さすがにそこまでくると仁美もヤバイって思ったのか、焦り気味にとりあえずリビング行きましょう、と何故か敬語で声をかけて私をゆっくりとソファへと手引きした。そして一旦寝室から毛布を私に持ってきてくれた。
「……とりあえず、、なんか食べよう、うん、空腹は気持ちが滅入るからね。とりあえず、ゼリー飲料と薬飲んで。」
仁美は袋から私にパパッと手渡して、キッチンに向かった。私は言われるがまま、ゼリーをゆっくり飲み、薬も飲んだ。そしてティッシュで鼻をかみながら、毛布にくるまって、ソファに寝転び、窓の外の空を眺めた。キッチンでカチャカチャするのを聞きながら、心を浄化するようにただただ窓の向こうの空を見つめていた。
「香奈ー?たまごー?梅干しー?」
「……うめ。」
「はいはい。」
「…………冷蔵庫の浅漬けも食べたいです。」
「ん、わかった、浅漬けね。」
仁美は優しくそう言うと、何も言わずにてきぱきと料理をしてくれた。しばらくすると優しい香りがキッチンからしてきた。私はそれにさらに心が落ち着き、仁美はできたものを目の前にセットしてくれた。
「…………ありがとう……いただきます。」
「うん、やけどしないようにね。」
私は頷いた後、いただきますと言いながらゆっくり食べ始めた。
「香奈はさー、心配かけたくないのかもしれないけど、完璧な人なんていないんだから、ちゃんとヘルプサインだしなよー?」
仁美は近くに座りながらそう言ってきたので、私ははいと小さく返事をした。
「……じゃあ、ゆっくりでいいから……話してみ?」
「………………実は――――――。」
私はおかゆをゆっくり食べながら、仁美にこれまでの経緯を話した。私がゆっくり話してる間、仁美はフムフムとただ頷くだけで、あえて否定もつっこむもせず、最後まで聞いてくれた。
「――――――――っていうのが、昨日までの流れです。」
「とりあえず、仕事は仕事で割りきるしかないけど、その4人?の集まり、やめなよ。」
「え……やっぱダメだったかな?」
「いや神山君に失礼とかじゃなくて、なんか怪しくない?……傑さん、また香奈とより戻そうとしてない?」
「え、そうかな?……昨日とかはたまたま2人だっただけな気がするけど……。」
「ってか、あんな浮気しといて、、、都合良すぎない?あいつ……腹立つな。」
仁美はそう言いながら、食器をキッチンまで片付けて洗い始めた。
「……確かにそれはそう……でもそもそもの話、あれも疑問だったんだよね……。」
「疑問?」
「うん……宮野さんって……なんか、浮気する度胸なさそうだったから……正直意外?だった。」
「えぇ……浮気に度胸とかなくない?酒の勢いで……とかもあるでしょ……とりあえず、やめなよ。」
「わかった、、、。」
私がそう返事すると、仁美に横になってな、家事やっといてあげるからと言われ、素直にゆっくり身体を休ませることにした。




