初恋
アキラとシビを探させると言ってそう時間がかからない内に、部屋へと連れてこられたアキラ達に、立ち上がって手を振ると、ほっとしたように息をついて、シビはこちらに飛んできた。
「カレン!」
急に連れていかれたから探してたんだぞ、と目の前に来て怪我はないかと確認してくれるので、大丈夫、と伝えると、またほっとしたように、そうか、と笑うので私の気が抜けた。
「ここに来たってことは護衛の試験合格したのよね?」
「ん?試験?あー…えっと、」
「?」
なにやら言葉を濁すアキラを覗き込むと、ふい、と顔をそらされた。もしかして不合格だったのかしら…
「彼は試験を受けていませんよ。」
「え?」
「あ、ちょっ!」
アキラを連れてきてくれたアルバートの息子らしい…ロイにも見覚えがあったけれど、とりあえず何故試験を受けなかったのか、と言う疑問の方が先である。
じ、とアキラを見ると、うぐ、と息を飲んで口をつぐんでしまったので、何かを隠している様子である。
あきらの後ろにいたロイに視線をうつすと、こちらの視線に気づいたロイはにこりと微笑んだ。
「カレン様を探されていたようですよ。」
「おまっ、あー…」
「私を?」
「…急に連れていかれたら、心配するだろ普通…試験どころじゃねーよ。」
まあ、無事だったからよかったけど、と私の肩に手を置いて笑ったアキラを見て、ズキリと頭がいたんだ。
『オレは…っ』
痛みに目を瞑った時、まぶたの裏に再生されたかのように映像が流れた。
これは、キャンプ…?
前回の旅の途中の記憶だろうか、今のように私の肩に手を置いたアキラは今とは違う泣きそうな苦しそうな顔をして私に何かを伝えようとしている。
この記憶はなんだっけ?私も泣きそうになって思い出した。ああそうだ私は…アキラが好きだったんだわ。これが好きってことなのね、と初恋を経験していた。手をとられたり、笑う顔を見て胸がざわつくのが、ときめいているということなんだ、と気づいたのだ。そしてその後の言葉も思い出した。
『サーシャが好きなんだ。』
わかっていたことだった。
明らかにサーシャへの態度は違かったから。
だから私は辛くない。自分に言い聞かせるように笑った。
『そう、頑張ってね。』
サーシャはかわいい。私もサーシャのことは家族のように思っているし好き。だからこそ、アキラならサーシャを任せられると思っていたし、他のパーティーのメンバーも恐らくサーシャの事が好きなんだろうと思っていた故の頑張ってなのだ。一緒に旅をしてきたから分かる。みんなきっとサーシャの事を幸せにしてくれる。
さて誰がサーシャとくっつくかしらね、なんて目の前で揺れる炎に目を移したのは私の記憶であるけれど、何故か瞼の裏で流れている映像は私から離れて前を向いて揺れる炎で瞳を揺らし泣きそうな事を隠した私と、そんな私をまだ泣きそうになりながら見るアキラの映像に切り替わった。これは夢なのかしら。
あまりに頭が痛くて眠ってしまったの?
アキラは何故苦しそうなのかしら。
もしかして私にサーシャとの仲を手伝ってもらおうと思っていた?いや、そんな人ではないと私は知っている。じゃあ…そこまで考えて腹が立った。
聞いてもいないはずの恋心を急に聞かされて私だって何故か苦しそうな顔されてまた悩まされて…確かに前回はアキラが好きだった。だけど、だった、んだわ。
今はもうまっさらな気持ちでまた違う生を送ろうとしているんだもの。
「きゅうん!」
「!」
「カレン…大丈夫か?」
また心配そうに私を覗き込んだアキラにときめいたりなんてしてない。
誤魔化すように同じく心配してくれている様子のシビを撫でてふわふわに顔を埋めた。




