私がいる
少しして落ち着いたサーシャから、いつからここに?記憶はある?と矢継ぎ早に質問が飛んできたので、もう少し柔らかい座り心地の所で話しましょうと伝えたら、彼女の部屋に連れられてきた。
移動中魔法使いということで探されているという話をチラッとしたら、近くの護衛に、私の客人なので、部屋に連れていきます。と伝える様に指示をしていた。言われた方の人は、はぁ、みたいな曖昧な面倒臭そうな顔をしてその場からいなくなった。
先程近くにいたのにサーシャを助けなかった事で何となく察してはいたけれど、あの護衛兵士なってないわ。サーシャの立場はあまり良くないのかしら。
部屋の扉を開けた先でお辞儀をする5人のメイド達を見てサーシャを見た。
サーシャもこちらを見ていて、目が合うとにこりと笑い、幸せそうにこちらを見るので可愛らしいのだけれど…先程の護衛のことを考えると、メイドの中にも敵が居そうな気がしてきたわ。急に私が2人きりにしてとか信頼できる人だけとか言い出しても警戒されるだろうし…まあ、聞かれて困ることを話さなければいいのよね、と促された席に座り出された紅茶を飲んだ。
「また会えて嬉しいわ。サーシャ。」
「私もよ、カレン…!」
「で、悪いのだけれど、この部屋の方々に私のこと紹介してくださる?知らない人が入ってきたら驚くと思うの。」
「あ!そうよね!みんな、彼女はカレン。私の特別な人よ。」
「カレンよ。来てそうそう紅茶をありがとう。とても美味しいわ。」
にこり、とメイドさん達に笑いかけると少し緊張が解けたのか、肩が下がった気がする。
怖い人ではない、という印象は与えられたようだ。こちらも観察をしながらサーシャと話すことにした。
「5日前かしら?目が覚めてアキラとシビに助けて貰ったの。街の掲示板を見て貴女達に会いに来たわ。」
ざっくりだが自分の状況はこんな感じだと思う。ついでに騎士の試験受けようとして魔法使いだって追われてた事も話すと、そう、と頷いたサーシャが、覚えていてくれてよかった、と涙をこぼした。
「サーシャ…」
「ごめんなさい、みんな私の事も覚えていなかったから…カレンはもしかしていないのかと思っていたの。」
そして17の誕生日までに私が現れなかったらもう諦めようと思っていたらしい。
まあ、17歳の誕生日は先日迎えてしまったらしいけれど。だからこそ驚いたし嬉しかった、と微笑まれ、嬉しく思ってもらえて良かったわ、とこちらも微笑んでおいた。サーシャがどれだけ記憶をもっているのか私が忘れてることはあるのかの確認もしたいところだけれど、ここでその話をするのはやめておいた方がいいか、とメイドさん達を見て違う話題を口にした。
「ところでサーシャ、単刀直入に言うけれど貴女よく思われていないの?」
「!」
「何故か貴女自身は知っている?」
「…ええ。私が出来損ないだからよ。」
「出来損ない…?」
話を聞くところによると、どうやら私がいない世界なら頑張っても仕方ないと色々放棄してたら出来損ないの姫というレッテルを貼られ、疎ましく思われてしまったとの事。
正直何をしているのか、と思ったけれど、それならば打開策はある、とも思える。
「なら、もう頑張れるわね。」
「え?」
「私がいるんだもの。」
「!」
「貴女がやらなくてはならないこと、手伝うわ。だって、私も貴女が大切なの。」
「カレン…!」
「さっきの様な事が日常茶飯事なら、頑張って見返してやりましょう。」
にこり、ともう一度微笑んで紅茶を飲み干した。まずはあの護衛よね。やっぱり騎士になって私がサーシャの護衛になろうかしら。




