再出発?
さて、私の膝に前足を乗せているシビのふわふわを堪能しながら混乱している脳内を整理してみた所、ここは私とサーシャが魔王討伐しに来た世界のパラレルワールドだが、アキラ達は私のことを覚えていないし、サーシャも一緒ではない。そして私の記憶も1部ないし、前のアキラ達と同じアキラ達なのかはわからないと言ったところであろうが…
「(なでなで)」
「キューン!」
既に懐いてくれている様子のシビは可愛いのは事実である。
そのシビを至近距離で覗き込むアキラの頭がやはりふわふわと私を誘ってきた。
「…(なでなで)」
「なっ!なんで頭っ!?」
「嫌?」
「い、嫌とかじゃなくてだな…」
「ふふ。」
「!」
ふわふわを触りたいという抑えきれない気持ちで旅の最中も思わず撫でてしまっていたのを思い出して思わず笑ってしまう。
最初は慌てていたアキラがその内慣れてきて、またか、とため息を吐きながら、でも怒る事はなくてその優しさが好きだった。
最後に撫でた時はなんと言ったんだったのだろうか。
確か魔王の城に向かう途中の森で焚き火の火でアキラの髪の毛が赤く揺れてて、その時も無意識に撫でた手をとられて…ハッとした私と目が合ったアキラが苦しそうに顔を歪めて、
『オレ、は、…』
「おい!」「キュウーン!」
「!」
「大丈夫か?」
「え、ええ。ありがとう。大丈夫よ。」
「ならいいんだけど。」
人の頭に手をおきながら心どこかに飛ばすな、と口を尖らせたアキラに自然と私も頬が緩む。
前のアキラは前のアキラであって目の前にいるアキラと比べるのは失礼よね。
膝をぺちぺちと叩いてくるシビにもありがとう、とお礼を言って、自分がこれからどうすればいいのかを考えた。
「ねえ、アキラ?」
「ん?」
「この世界に魔王っているかしら?」
「魔王?」
「魔物の王様?」
「ああ、王はいるけど…」
魔王という言い方はメジャーではないらしい。という事はこちらの魔王も前の魔王とは違うのかしら。この様子だと敵対しているふうでもないし…
「そうか、記憶が曖昧なんだっけ?」
「ええ。王様には会えるのかしら?」
「いや、普通は無理なんだが、今度王子達が花嫁探すって掲示板で見てさ。護衛も募集するって書いてあったから、オレ試験、受けに行こうとしてんだ。」
「そうなの?」
「ああ。最初に頭に浮かんだんなら会ったらなにか思い出すかもだし、一緒にいくか?」
「え、いいの?」
「キューン!」
「キュウビがこんなに懐くなら悪いやつじゃないってことだろ。」
「キュンキューン!」
そうだそうだとばかりに尻尾をふるシビに思わず笑ってしまう。本当に可愛いわね。
「ふふ、ありがとう。せっかくだし、私も立候補してみようかしら。」
「りっ!?」
「護衛って何人募集しているの?」
「護衛の方!?」
「魔法使い枠はあるかしら?」
「魔法使い!?」
何故かいちいち驚くアキラにうるさいとばかりに尻尾を叩きつけたシビにまた笑ってしまった。




