サーシャの覚醒
さてそろそろ明日のために寝る頃かと布を握って周りを確認する。
どこか元気のないサーシャは1日歩いて疲れているのかしら。
「サー…」
「カレン、一緒に寝る。」
1日魔力放出しながら歩いていて正直かなり疲れていたし、油断していた。
後ろから抱きつかれ、前に倒れそうになるが抱きついてきたシオンが私を後ろに引っ張ったことによってもちなおした。
おいおい、と慌てた様子のアキラがこちらに手を伸ばしたまま固まっていたので大丈夫、と手を振った。
はぁ、とため息をつきながらも困ったように笑っているアキラはすっかりパーティのお兄さんである。
「あー…速いわね。」
「下、土、乗る。」
「大丈夫よ。流石に下敷きには出来ないわ。」
「下土で硬いから上に乗れってことか?」
「寒い、一緒。」
「それはそうかも?」
「寒いから一緒に寝た方がいい?。」
「一緒に、寝る。」
「それは、一緒に寝ようってことだな。って、それは訳さなくてもわかるか。」
分かっているならいちいち声に出さなくてもいいのに、と思うが、多分彼なりにシオンのフォローをしようとしているのだろう。あと、シオンの言葉を理解しようとしている。
私達だけならば恐らく不便はないがいざ街に出た場合言葉足らずのシオンにキツく当たる人もいるだろうし、アキラが口にする事でシオンもそういえばいいのか、と少なからず思うはずだし。
そんな彼だからシオンも懐いているんだろうな。それにしても…
「アキラ、貴方面白いわ。」
「え?」
「カレン、今、僕。」
「カレン、今は僕の話聞いて?」
「ふはっ、どちらの話聞けばいいのかわからないわ…!」
「!」
「カレン、笑う、可愛い。」
私を覗き込んだシオンが、よしよし、と私の頭を撫でる。恐らく私がシオンがかわいいと撫でているからだろうが、足元でシビも喉を鳴らしていた。
「あら、それは訳してくれないの?」
「…」
「ふふ、冗談よ。ありがとうシオン、シビ。」
さあ寝ましょうか、とお腹にまわったシオンの腕をはがそうとしたら、その手をとられる。
ほんとに気が緩んでいるな、と思いながら顔をあげると、何やら真剣な表情をしたアキラと目が合う。
「どうし、」
「笑うと可愛いな!」
「え?」
「訳した訳じゃないぞ!俺がそう思ったから、言った…だけだから…」
じわじわと恥ずかしくなったのか、顔を赤くするアキラに、私も何故か恥ずかしくなって思わず視線を逸らしてしまった。シオンの力が強くなって一瞬苦しかったけど、小さくありがとう、と言っておく。
「寝る!」
「あ、そ、そうね、シオン、じゃあ一緒に…」
「ダメ!」
急に後ろから腕を引っ張られてまた油断していた、と本日何回目かの状況にもう思考がふわふわしている。
今度はサーシャだ。
何がダメなのか振り返った時、それは見えた。
「カレンと一緒に寝るのは私なんだから!」
思わず目が覚めた。
サーシャが輝いていた。
それはキラキラした魔力、と私が思っていたもので、とうとう自分で出せるようになったのか、と思い、 今のは2人にも見えただろうか、とアキラとシオンを振り返るが、心ここに在らずの様に何やらぼんやりした顔をした2人がいた。
急に眠くなったのだろうか、と首を傾げてサーシャを見ると、先程の光は既になく、あるのは不安そうに見上げるサーシャの顔だった。
「ダメ、かな?」
「いいえ、そうしましょう。シオンはアキラと寝るといいわ。」
「オレかよ!?…って、は?カレン、いま何かしたか?」
「サーシャ、キラキラ?」
「2人にも見えたのね。サーシャ、凄かったわ。使いこなせるようになったの?」
「え、え?私?」
「見えた…のか?なんか急にサーシャが可愛く…ってか、いや、なんでもない。」
「サーシャ、可愛い。」
「え、私!?」
「何言ってるのサーシャは最初から可愛いわよ。」
「カレン…!」
「爆発的な魔力だったわ。おかげで目が覚めたし、この森のカラクリもわかったわ。」
「!」
「とりあえず今日は寝ましょう。目が覚めた、と言ってもどうせ直ぐに眠くなるでしょうから。」
地面に引いた布に魔法をかけてふわふわにしてみた。アキラ達の布団にも同じやつをかけてあげたらはしゃいでいて面白かった。
横たわるとふわふわ感が体を包んで我ながら見事な魔法だわ。うん、寝れそう。
サーシャを手招いて、毛布にくるまり目を瞑った。少しづつ覚醒しているサーシャにわくわくしながら。




