5-9.その鮮やかな桃色の髪を
結果から言ってしまえば、シュネアはもう一つの召喚魔法を発動することは、やはり不可能だった。
体内の魔力ではなく体外から借用した魔力であるため、実は無制限に吸引できるのではないかと、実は少し心の底では疑っていた。
器が無いために、俺だけが無制限にマナを吸引することが出来る。
そんな都合の良いことを喜ばしいと思うと同時に、そんなことがあってたまるかという一種の懐疑心を抱いていたのだ。
故にどこかで、それを証明しておきたかった。
いずれどこかで正面からぶち当たる壁なのであれば、多少の金銭や時間のコストを支払ってでも、準備万端な姿勢で試行し、その事象を確かめておきたかった。
生命を脅かす場面にて思いもよらぬ現象を目にするよりかは、実験と称し、こうして安全な状況で結果を目にしておいた方が良いと、そう思っていたのだ。
エルフ族――魔物以外の生物と戦うなんてありえないとは思いたいが、万が一ということもある。
不適合者である自分がどの程度のレベルなのか、はっきりと認識しておきたかったのである。
◇ ◇ ◇
魔法が不発だったとはいえ、そう何度も限界量のマナを体内に巡らせていれば、自然と疲労も溜まっていくものだ。
丁度ティオが帰宅したということもあって、本日の魔法実験は終了することにした。
シュネアはまだまだ頑張ります! といった感じだったが、明日に疲労を持ちこされても困るのでやめるように命じておいた。
こういう時、相手が奴隷だと扱いが楽だ。
不満を漏らすことなく、言うことに従ってくれる。
それに、シュネアも分かっているのだろう。
意地悪ではなく、俺がシュネアの身体のことを考えて実験終了の命令を下したことを。
「アヤメお兄さん、どうですか? 痒いところは、無いですか?」
「大丈夫だよ、ティオ。それとその質問は、頭を洗っているときにするものだってば」
「でも、頭だけじゃなくて、身体だって痒いことあると思うもん。それに、背中は手が届かないから、自分だと痒くてもかけないでしょ?」
「ごもっとも。でも大丈夫、特に痒いところはないから」
会話から察せられるように、俺は今ティオと一緒に一日一回のバスタイムを堪能している。
最初ビリーの宿で出会った時は頭どころか身体も洗えなかったティオだが、今はもう自分だけでなく、他者の身体も洗えるようになった。
ここ最近、俺もティオの身体は洗ってやっていない。
背中は流してやるが、前みたいに全体を洗ってやるということはもう無いのだ。
別に意地悪でしていないのではなく、ティオが「もう自分で出来るから、アヤメお兄さんはやらなくて良いよ」と言ったからである。
察するに、大方年相応の羞恥心が芽生えてきたのだろう。
開けっぴろげ過ぎて多少心配だったので、そうなってくれることは別に問題ではないのだが。
いつか一緒に入ってくれなくなるのかな――なんて、創作物に出てくる親みたいなことを考えてみたりもする。
ティオが背中を洗っている間に、俺は体躯の全面を手早く自分で洗っておく。
洗っておかないと、ティオが「やる」と言って聞かないからだ。
流石にそれは倫理的にまずいと思うので、こうしてどうにかこうにか回避している。
まあ最も毎晩一緒に風呂に入っている時点で、倫理も常識もあったもんじゃないのだが。
身体を洗い終えたところで、二人一緒に湯船に浸かる。
流石にこっちは一緒じゃなくて良いだろと突っ込みたくなる状況だが(昔読んだ創作物で類似した場面が出てきたときは、心の中で突っ込んだ)これに関してはこうするしかないのだ。
どうにもこうにも、俺には器が無いので、オドを使うことは出来ない。
身体構造に関しては魔法でどうこう出来るようなものではないので、他人のオドを受け渡してもらう魔法が書き込めたとしても、俺にはそれを使うことは出来ないのだ。
まあ実際オドというのは物質ではなく、体内を巡る魔力エネルギーのことであるため、譲渡だとか貸借だとかそういった概念があるはずはないのだが。
話を戻そう。
俺はオドを使えないが、湯船を温めたりシャワーっぽい魔道具を使うにはオドが無ければならない。
スタッフで水をジャーッとやればシャワー代わりにもなるが、あれは水しか出ない。
火魔法と絡めて温水を作るのも可能っちゃあ可能だろうが、心地良い水温を保つには調整も面倒だし、加減をミスれば凄まじい量の水が放出されるような魔道具なので、無防備なこの状態ではあまり使いたくないのである。
そういったわけで、俺が風呂に入るには誰かオドが使える人が他にいなければならないのだ。
故にティオかラスティかシュネアの誰かと一緒でなければならない。
その中では一番ティオが乗り気かつ安全なので、毎晩彼女と入ることにしているのだ。
「はーぁ、生き返るー」
誰か(とは言っても俺しかいない)の真似をして、十歳の童女には似つかわしくない科白を口端から漏らす。
この世界の風呂と比べてうちの風呂は水温が若干高いらしいが、ティオももう慣れたらしく、最初の頃のように文句を言うことは無くなった。
「シュネアちゃんのこと、どう思う?」
代わりに、何か変な雰囲気を纏った疑問を真正面からぶつけてきた。
「ど、どうって?」
「シュネアちゃんとは、毎晩一緒に寝てないでしょ? だから、アヤメお兄さんはシュネアちゃんのこと嫌いなのかなって、思っただけ」
一緒に寝てないと、嫌いってことになっちゃうのかよ。
――とはいえ、ティオともラスティとも同じ布団で寝ているし、ラスティが来るまではプリムヴェールとも同じ布団で寝ていたため、あながちティオの推測は大きく的を外れたものというわけではない。
だがニュアンスを気を付けないと、別の意味にもとれてしまう。
だがティオは十歳でまだそういったことには早いので、多分そういう意味ではないと信じたい。
「シュネアは奴隷、だからな……。
確かに俺は可能な限り奴隷と主の間にある垣根を取り除こうとは思ってるけど、それでもやっぱり最低限のけじめは必要だと思う」
――というのは建前で、実際は同い年の異性と共に眠るのは何か不味いような気がしていたからだ。
ベッドが狭いからと言えば、ティオは「つめれば平気!」と言うだろうし、理由として定めるのならばこれが一番妥当だろう。
奴隷は普通、ベッドでは眠らない。
しかも主と同じ場所で眠る――それは、何かおかしいと思う。
「そっか、奴隷さん、だから」
「まあそれが全部ってわけじゃないけど――。というか、何で突然そんなこと聞いてきたんだ?」
話を逸らすつもりは無かったが、少し気になったので先に問うておくことにした。
「……プリムお姉さん」
プリムヴェール?
何でここで唐突に、プリムヴェールの名前が出てくるんだ。
「前にプリムお姉さんが、好きな人とは一緒のお布団で寝たいって、言ってたから」
「――ぶっふ」
何も口に含んでいないというのに、盛大に咳き込んだ。
ちょっとプリムヴェールさん、あなた十歳の童女になんてこと言うんですか!
この場にいない銀色のグラマーお姉さん(年下だが)を思い浮かべながら、冷静さを取り戻そうと湯船のお湯を顔にかける。
いや、だがプリムヴェールのことだ。
多分他の意味――間違っても、そういった意味で話したというわけではないだろう。
大方「好きな人とは寝る時も一緒にいたいものなんだよ」とか、そんな感じで言ったのだと思う。
そうに違いない。うん。
「……それに」
遠慮がちに紡がれたティオの言葉に、刹那的に不穏な空気が駆け抜ける。
まだ何かあるのか。
今度はラスティか?
ラスティも何か、ティオに教育上よろしくないことを何か吹き込んだのだろうか。
「時々、アヤメお兄さんとプリムお姉さん、二人っきりで一緒に寝てること、あるでしょ?
私とかラスティちゃんは別室に寝かせて、朝まで二人だけってこと。
それって、プリムお姉さんとしかしないでしょ?
だから、それってきっと特別なことなんだろうなって、思ったの。
……ラスティちゃんが来てから、私はアヤメお兄さんと二人きりで朝を迎えるってこと、してないなって思って」
桃色に濡れた瞳を揺らし、薄く頬を染めながらティオの口が小さく開かれた。
「私も、アヤメお兄さんと二人っきりの夜を過ごしてみたいな。
夜だけで良いから、アヤメお兄さんを独り占めしたい。
……これって、我儘、かなぁ?」
しっとりと湿った桃色の髪に、水滴の滲む瑞々しい素肌。
童女らしくほどよく日焼けした幼い体躯は、波紋の揺らめく水面を通しているため、はっきりと視認することは出来ない。
思わず腕を伸ばし、小さな肩を引き寄せる。
突然触れられたというのに、幼きティオは身を縮こませることも震わせることもなく、無抵抗に水の中を泳ぐ。
これは俺を信頼しているが故の行為か、それとも――幼いながらも本能的に俺のことを誘っているのか。
普段冷静な時であれば過ることさえ許されぬ後者の思考が、じんわりと脳内に浸食していく。
小さな背中を全面に感じ、濡れて重くなった桃色の髪を鼻先に抱き込み、顔を埋める。
桃のような甘い香りが鼻孔をくすぐり、胸いっぱいにティオの香りが充満する。
背後からギュッと抱きしめる格好になっているが、ティオは嫌がる素振りも見せず、リラックスした様子で四肢を投げ出している。
不安や緊張――期待や戸惑いも、全く無いように。
「……アヤメ、お兄さん?」
「ティオは……。
俺に頭を撫でられるのと、抱きしめられるのと、どっちが好き?」
左腕で体躯を抱きしめ、右手で頭を撫でながらそんなことを問う。
意地悪な質問だということは、重々承知した上で聞いている。
「アヤメお兄さんに撫でてもらうのも大好きだけど……。
抱きしめてもらったり、キスしてもらえるのは、もっと嬉しいし、好きだよ」
だがティオは純粋に――。俺の心を蝕んでいる邪な思いなど感じていないように、無垢な科白を紡いでくれる。
汚らわしい誘惑だとか、邪な計算行為などではない。
ティオの言葉は全てが純真で――、嘘偽りのない純正なものだ。
本能的に俺を誘うなんてことは、今のティオにはありえない。
「ラスティに、シュネアと同じ部屋で寝てもらえるように頼んでみる」
「……え」
眼前の桃色頭がくるんと回り、端正な顔が上目遣いにこちらを見やる。
「今日はティオと、二人っきりで夜を過ごそうと思う」
ティオにお願いされたからではなく、俺自身の意思として。
「本当!? アヤメお兄さん!」
だからその意思に、こんなにも嬉しそうな顔で応えてくれるティオが本当に愛おしくて――。
「――――っ!」
「どうしたの、アヤメお兄さん」
思いもよらぬ感覚に思わず口端が妙な方向に歪み、それを見たティオが不思議そうに小首を傾げる。
行動の一つ一つに胸が高鳴り、鼓動が速まり、あってはならぬ反応が身体の内部を刺激する。
そっとティオの体躯を放し、脚を閉じる。
こんな姿、絶対にティオには見られたくない。
「ティオ、先に上がっててくれ。俺はもう少し、温まってから出ることにするから」
――と、そんな台詞を絞り出すのが精一杯なのだった。
◇ ◇ ◇
精神統一の後風呂から上がると、リビングにはもうティオの姿は無かった。
ラスティが湯呑を片手に頬を染めており、シュネアはその様子を色のない瞳で見やっている。
俺がリビングに入ると、二人は同時にこっちを見やり、
「…………」
「――――」
「何ですか、その意味深な目は」
分かってますよとでも言いたげな、何とも表現し難い笑みを向けられた。
「ティオ殿は妾と違ってまだ幼いからな、優しくしてやるんじゃぞ」
「ただ添い寝をしてあげるだけですよ」
事実ラスティの想像しているようなことを致すつもりはない。
将来的にどうこうという話はこの際置いておくとして、とにかく今の状態でどうこうするわけにはいかない。
八歳程度離れた夫婦ならそう珍しくはないが、それが両方未成年となると話は別だ。
ティオは可愛いし好きだけど、性的な目で見てよろしい年齢ではない。
もう後何年か――。何年か経過してから、その時にどうするかは考える。
それまでは、何かしでかそうとは思っていない。
「何じゃ。妾はてっきり、ティオ殿を女にしてやるのかとばかり思っていたが」
「流石に早すぎますよ。……というか、ティオは何て言ってたんですか?」
種族柄常時発情期を迎えているラスティはともかく、シュネアまでもを勘違いさせるような振る舞いを、ティオはしていたということだろうか。
だとしたら、逆に何もしないのはティオに対して失礼なのではないかと勘繰ってしまう。
だからといって、そう易々と信念を曲げようとは思っていないけど。
「『アヤメお兄さんと二人っきりで一緒に寝るの! だから、今晩だけはラスティちゃんもシュネアちゃんもお部屋に入って来ないでね!』と、言っておったぞ」
無駄に雰囲気類似レベルの高い声真似を披露しながら、ラスティは蠱惑的に片目を瞑ってみせる。
なるほど、普通に十歳の少女が言っているだけなら微笑ましい台詞だが、俺とティオの関係を疑っている人が聞けば何かしら言外に潜んだよからぬ意味を見出しそうな科白だ。
ティオのことを責める必要はない。
元々そんなつもりは無かったけども。
「シュネアも。
……前に言ったでしょ、俺はティオをそういった目で見たり、どうにかしようとか思ってないって」
「申し訳ございません、ご主人様。
ですがその……、ラスティお嬢様がさっきまでずっと『ティオお嬢様とご主人様は今晩大人の階段の登るんじゃ』と、おっしゃっておりましたのでつい……」
シュネアの科白が終わるより先にラスティを見やると、目を逸らしながらペロリと舌を出していた。
勘違いの主原因はラスティだったか。
シュネアは妙なところが素直で、聞いたことをすぐに信じてしまうからな。
ある意味で、奴隷になった経緯を想像しやすい人種である。
「俺がシュネアに手を出さないのは、そういった趣味があるからとかじゃなくて。
ちゃんと思いを伝えあった大切な恋人がいるからで、シュネアもそういった扱いをされるのは嫌だろうと思ったから、って前に言ったのに」
「分かってはいるのですけど……」
まあ、シュネアばかりを責めることは出来ない。
これでティオだけならまだしも、うちにはもう一人幼女体型の同居人が存在する。
シュネアが来るまで、童女二人に囲まれて生活していた人――。
そこだけ聞くと、シュネアの思い込みも荒唐無稽な話だと一蹴することなど出来やしない。
生活環境に問題があったのだ。
仕方がない。
「あまりティオを待たせても悪いので、お先に失礼します。
それとすみません、ラスティさん。今晩は、その――」
「分かっておる。今晩はシュネアとともに、朝まで飲み明かすとしよう」
「え!? 待ってください、私はお酒に弱いといいますか――」
「大丈夫じゃ。妾もそう強く迫ったりはせん。長寿種族同士、昔の話でも語らいあおうではないか」
もう既に酔っているらしいラスティに絡まれたシュネアに心の中で同情しながら、俺は静かに階段を上っていった。
◇ ◇ ◇
「遅い、アヤメお兄さん」
寝室の扉を開けると、むくれたティオがこっちを見つめていた。
眦をゴシゴシ擦りながら、ふわふわした表情で身体を揺らめかせている。
眠いのに、俺が来るのを待っていてくれたらしい。
健気な子だ。
そして嬉しい。眠気を必死に堪えてでも、寝る前に俺の顔が見たかったということだ。
ティオにそこまで思われている、それだけで俺はとても幸せだ。
「ほら、ギュッてしてあげるから、こっちおいで」
布団に潜り込み、未だに背中を向けるティオに向けて腕を広げてみせる。
せっかく二人きりの時間だというのに、拗ねたまま寝られてしまっては勿体ない。
胸の中に飛び込んできたら、抱きしめながら遅れたことをちゃんと謝らなくちゃな。
だが、ティオの精神年齢は、俺が思っていたよりもずっと成長していたのだ。
「……嫌」
「へ?」
「そんなんじゃ、許さないもん」
潤んだ瞳は、眠気のためかその他の理由によるものか。
ようやく振り向いてくれたティオはそのまま俺のもとへ近寄ると、上目遣いに俺を見やり、コクンと生唾を飲み込んだ。
「キス、して」
「……う、うん?」
「お目覚めのときにしてくれるのじゃなくて、ちゃんとしたやつ。
挨拶とか、何となくとか、そういうんじゃなくて。相手のことを思って、包み込むようなのをして欲しいの」
ティオの腕が肩に回され、ずいと鼻先にティオの顔が近づいてきた。
ふわりと漂う甘い香りは、石鹸の香りによるものだけなのだろうか。
視線が交錯し、あまりの熱っぽさに思わず目線を逸らしてしまう。
逸らした先では、念入りに唇を湿らせるティオの舌が瞳に映り込んでいた。
「好きだよ、アヤメお兄さん」
「う、うん」
「世界で一番、アヤメお兄さんのことが好き」
「あ、えっとその」
脳内の俺は「俺もだよ、ティオ」と言いながらニヒルに微笑んでいるというのに、実際の俺は何も言えていない。
準備万端で自分から行くならば、それ相応の対応だって出来ただろう。
だがここまでとは思わなかった。
そこまでの準備は、してこなかった。
まだ小さな女の子だと思っていたティオも、心はちゃんと――成長していたのだ。
「私はまだ、アヤメお兄さんから見たら子供かもしれない。
プリムお姉さんみたいにおっぱいも大きくないし、ラスティちゃんの言ってた『抱きしめてもらうだけでは我慢できなくなる』の意味も、まだちゃんと理解できてない。でも!」
見よう見まねで覚えたのか、俺の居ない間にラスティから習ったのか。
小さな指先で俺の首筋を舐めながら、甘い吐息を耳元で放つ。
それはもう――十歳の童女がしている行いとは思えなくて。
「『好き』って言葉の、違いくらいは分かるようになったよ?
憧れとか格好良いとか、そういう意味での好きとは違う。アヤメお兄さんとずっと一緒にいたい、独り占めしたい、二人っきりになりたい。そう思えるような『好き』と、今まで抱いてきた『好き』は、違うって、――それだけはちゃんと、理解できたの」
カプリと耳朶を噛まれ、痛みより先に異常なほどの熱が体内を駆け巡った。
鼓動が速まる。心拍が上がり、呼吸が乱れる。
鏡なんて見なくても、今俺がどんな顔をしているかどんな顔色をしているか――全てが分かる。
「キスして、アヤメお兄さん」
俺をそんな風にするくらいに――、
「ね、早く」
強い想いを真正面からぶつけてくれたティオのことを――、
「早くってば」
絶対に、無碍にすることなんて出来なくて。
「アヤメおに――――」
「――――――――」
言葉だけじゃなく、ちゃんと行動で示さなければ。
そしてただ行動するだけでなく、その行為の一つ一つに、ちゃんと自らの想いを込めることで。
「――メ、お兄、――さん……」
ティオの真剣な思いに、真正面から受け答える。
「…………アヤメお兄さん」
「ティオ、大好きだよ」
上気した顔で見つめ合い、口端を繋ぐ架け橋を指先でそっと絡め取る。
一時も目線を逸らすことなく、小さな体躯を優しげな手つきで引き寄せて。
今までで一番熱の籠った視線を絡めながら、俺はティオの体躯をしっかりと胸の中に包み込んだ。




