表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たけど魔力が無いから賢者になった  作者: 山科碧葵
第4章 異世界召喚は長寿ロリとともに
64/101

4-23.雷魔法の使い方

 雷魔法が完成した。

 完成したというか、書き込みが成功したと言うべきだろうか。

 久しぶりにインクが弾かれることなく、新たな魔法を魔導書に記すことが出来たような気がする。


 魔法としては、元の世界の創作物なんかに出てくるような、普通に雷を使う魔法だ。マナを吸い上げることによって、使用することができる。吸い上げた量によって、威力や攻撃範囲を変化させることが可能。

 例えば火魔法でいうところの火の玉を一発繰り出す程度のマナで、雷の球が一発発動可能、といった感じだ。

 基本的に魔力使用量は、既存の属性魔法に倣って決定した。


 後々雷魔法も属性魔法に加えられた際、極端に魔力の使用量の差が出ると、バランスブレイカーになりかねない。

 でも多分、実験したわけでは無いけど、極端に必須魔力量を減らすと、弾かれるような気がする。

 でなければ、一部の例外を除いて、書き込む際に総員魔力量を減らすはずだからな。

 

 だが、威力に関しては若干低性能に設定されている。

 雷魔法は他の属性魔法と違って、下手に扱うと少量でも人体に悪影響を及ぼす可能性があるからだ。

 風魔法も、ある程度便利な魔法を使いこなすには魔族の血が混じっていないと難しい。

 雷魔法に関しては雷の球などのちょっとした魔法は、普通に使用可能。だが中級程度の魔法までは、身体がちょっぴり痺れる程度に設定している。

 本人が行うのは不可能に近いが、他者から治癒魔法をかけてもらえば完治する程度。後遺症も残らない。

 そういう点では、火魔法などと比べても安全な部類に位置する魔法になるだろう。


 だがある程度の魔力をつぎ込むと、途端に攻撃特化な魔法へと変貌する。

 詠唱や魔法陣は考えていないため、全てが想像魔法ということになる。

 落雷のようなものを思い描けば、対象を黒焦げにして即死させる程度には威力を込めることができる。

 だがここまでは、攻撃範囲は極端に狭い。

 雷魔法は、扱いを間違えると二次被害が凄まじいことになるからだ。

 ここは慎重に設定した。


 範囲に関しては、威力をある程度上げた辺りから設定可能と記してある。

 中級程度の落雷なら、攻撃範囲は人間一人程度。

 最大で――極端に言えば王都全域に落雷という名の光の柱を叩き落とすことも可能だろう。

 使うつもりも無いが。


 雷魔法のみで戦うのならば、まずは低級の雷の球などで相手を痺れさせ、身動きを封じたところで落雷を叩き落とす戦法が主流となるだろう。

 もしくはそんなことしなくても、落雷だけで戦えるようになるのかもしれないが。


 威力上昇が打ち止めになると、それ以上魔力を注いでも、範囲を広げる以上のことは出来ない。



 ついでに、雷の球一個分より少量のマナを使用することで、『機械類・電化製品』の充電が可能、ということにしておいた。

 電化製品なんて存在しないこの世界では、それらの魔法はきっと秘術とも隠術ともとられず、歴史に露呈することなく人々の記憶から抹消されていくだろう。

 だが俺にとっては、こっちが本命だ。

 

 機械類や電化製品の充電場所に手を宛がいながら、マナを流し込むことで、機械の内部にて電気に変化するように設定した。

 そうしなければ、流し込む際に感電する可能性があるからだ。


 俺はあまり機械類に詳しくないので、下手すると携帯スマホがぶっ壊れてしまうかもしれない。

 油断は禁物だ。

 とはいえこのままではどのみち使えないので、実験に付き合ってもらうことにする。

 壊れたって困るようなデータとかは、保管してないしな。

 電話番号もアドレスも、親と自宅しか登録していない。


 青春も思い出もないデータを失うリスクを背負う代わりに、プリムヴェールやティオの姿を半永久的に保存することのできる実験。

 しない道理が無いだろう。

 別に変な意味ではなく、やっぱ好きな女の子の写真って、持っていたいじゃん。

 それにここ異世界(圏外)だから、どうせそれ以上の機能は碌すっぽ使えないんだから。



 覚悟を決めて、唯一持ち込んだ文明利器を取り出した。

 スタッフを左手に持ち、俺の体内にマナを通して、右手の指先から充電する。

 体内を巡るのは電流ではなくマナであるため、感電したり、そういったことにはならないはずだ。

 少しでもビリッときたら、すぐに手を放そう。


「もし俺が突然動かなくなったり苦しそうにしてたら、急いで治癒魔法を頼む」

「わ、分かったよ。アヤメお兄さん」

「妾もいる。心配するでない」


 ティオとラスティに挟まれながら、俺は携帯スマホを手に取った。

 スタッフからマナを吸い上げ、携帯のメッキ部分に流し込む。何となく吸い込まれているような感覚があるので、多分充電できてはいると思うのだが。

 唯一の難点は、充電中は両手が塞がってしまうところかな。


 暫く続けていると、マナの闖入が悪くなってきた。

 充電が終了したのだろう。これで電源が入れば成功、うんともすんとも言わなければ、失敗。変な音が出たり煙が出たら、修復不可能。


 無言で頷くと、ティオとラスティは興味深げに身を乗り出した。

 静かに見守る二人に挟まれながら、電源を入れる。

 懐かしい四ケタのパスワード入力画面が出現し、ありきたりだが自分の誕生日を打ち込む。

 画面の色彩が変貌し、――――画面には、幾つかのアプリと、ゴシックロリータっぽいメイドファッションに身を包んだ黒髪ロングのお姉さんが甘えた顔をしているイラストが現れた。

 一瞬二人の視線を危惧したが、それ以上に画面が変わったことに関して驚いているようで、メイドさんのイラストについてはとくに気にしていないようだ。


「変わった魔道具じゃの。どういった機能を持っているんじゃ?」

「顔とかを映す魔道具じゃ無かったんだ」


 興味津々な二人に携帯スマホを盗られそうになるが、必死に阻止する。

 彼女も友人もいなかった俺が、オトコノコな事情を詰め込んだフォルダをきちんと管理しているわけがない。

 この二人なら理解してくれるかもしれないけど、あまり女の子には見られたくない。

 多分当時の趣味全開フォルダなら、ほとんどが黒髪メイドさんで埋め尽くされていることだろうし。

 

 いやしかし、今はそれどころではない。


「成功した!」


 圏外扱いだし電波も無いから時間もめちゃくちゃだし、起動するアプリも皆無だけど、充電が成功したのだ。

 そこはかとない安心感。どうということはないが、やはり嬉しい。

 それに、これを使えば愛する美少女達の姿を、永遠に収めることが出来る。


 せっかくだから、ティオとラスティを撮ってあげようかな。

 いや、どうせ撮るならプリムヴェールもいるときにしよう。

 今回は起動した、その事実を噛みしめるだけで良い。



 これで俺の携帯スマホは、マナさえあればいつでも充電可能になった。

 


        ◇          ◇          ◇



 充電は可能だった。

 ならば次に試すのは、攻撃魔法として利用価値があるかが重要になる。

 

 家の中で雷魔法をぶっ放すのは危険なので、外で魔物に向かって撃つことにした。

 痺れさせる程度のやつを、いつも水の球とかを撃っているような感覚で使う。


 ラスティとティオには留守番を頼もうとしたのだが、キラキラした目で「見たい」と言ってきたので、連れて行くことにした。

 鍵もかけているし結界も張ってあるから、少しくらい留守にしても大丈夫だろう。


 開拓地を出てから暫く歩くと、鼠色の塊が雑草の陰から現れた。

 見た目は鼠というかモグラというか、微妙な形状。四足で歩いているが、時々ミーアキャットみたいな感じに二足歩行もしているようだ。

 思ったより胴長で、立ち上がると鼠にしては割と背が高い。

 とはいえ、ティオやラスティよりも小さいので、大した脅威ではない。


「あいつにしよう。止めを刺すつもりは無いから、追撃はしなくて良いからね」


 ティオとラスティに告げてから、樹木に手を宛がい、出来立てホヤホヤの雷魔法を脳裏に描く。

 小さめの雷の球が手のひらから出現し、吸い込まれるように中空を翔ける。

 何かの接近に気が付いた鼠色の魔物は三角の瞳でこっちを見たが、刹那雷の塊が腹に衝突し、ビクンと痙攣した。

 一瞬だけ口腔から泡が飛び出し、ステンと頭からすっ転がった。

 四肢を痙攣させ、足を投げ出して動かなくなる。


 警戒しながら近寄ると、白目を剥いて涎を垂らす鼠色の顔が見えた。

 声にならない言葉を辛そうに喉から絞り出し、助けを求めるような目で俺のことを見やっていた。

 思ったより苦しいらしい。可哀想なので、治癒魔法をかけてやった。


 痺れがとれたらしい魔物はすぐ跳び上がると、こっちを一瞥してから草木を掻き分けて姿を消した。

 なるほど、雷魔法で痺れさせるとあんな風になるのか。


 消えた背中を見送っていると、少し遅れてラスティが来た。


「ほぅ……。先ほどの魔法を使うと、動けなくなるのか。従順にさせて好き勝手するのも中々良いものじゃが、抵抗する輩をこうして縛り付けて無理矢理するのも楽しそうじゃの」


 ラスティは前方を見やりながら、艶やかに目を細めていた。

 何か危険な雰囲気を醸し出していたので、聞き流しておく。

 深く突っ込んではいけない気がする。


 

 もう少し様々な威力や範囲の雷魔法も試しておきたかったが、範囲の広い雷魔法を森林で実験するのは危ないだろう。

 今度また広い場所で戦う機会があったら、実験がてら使ってみようと思う。


 まあ、あまり進展は無かったが、本日の成果はこれで充分かな。

 携帯の充電に、雷魔法による攻撃実験。

 欲を言えば、俺以外にマナを使える人が実験を手伝ってくれていると、もう少し楽なのだが。

 無いものをねだっても、仕方がないね。



        ◇          ◇          ◇



 今日は他にすることも無いので、ラスティに留守を任せてティオと買い物に行くことにした。


 買い物といっても、大したものではない。パンと果物と燻製肉といういつもの食料品と、石鹸やタオルなどの生活必需品だ。

 ただシーツに付着した髪の毛とかが気になるので、ガムテープとか掃除用のローラーがあったら嬉しいなと思うのだが。まあ、そんな便利な品はこの世界に存在しない。


 世界中探せばあるのかもしれないが、トリスコールの王都にはそんなものはない。

 無論掃除機なんて便利なものもない。

 普段は窓を全開にして、風魔法で塵や埃を追い出してから丁寧に雑巾がけをしている。

 一度でいいから家を全部ひっくり返して掃除がしたい。


 なんてことを考えながら、雑貨屋の端で竹箒か何かが無いか探してみる。

 あるにはあるのだが、何かちゃちい箒ばかりだ。

 こんなもので掃除をしたら、多分頭の部分がボロボロ抜けて余計に散らかるだろう。

 フレドールの時計塔で使ったような掃除道具は、高価なのだろうか。

 それとも専門店があるのだろうか。

 今度機会があったら探してみよう。


 そんなことを考えながら石鹸を持ってカウンターへ赴くと、売り場の端っこで蹲るティオの姿が目に入った。

 ティオがしゃがみ込んでいるのは、園芸用品――ガーデニングに使う物品が置いてある棚だ。

 真剣な様子で見つめている。

 欲しいのだろうか。


「気になるのか?」

「昔お母さんと、よくお野菜とか育ててたから。ちょっと懐かしくなっちゃって」


 そう言ってパッと立ち上がりそそくさと売り場から離れたが、素知らぬ風をしながらも、ティオの目はずっと庭弄り用品の売り場を向いていた。

 ギュッと手を握り、スカートの端を摘まんでいる。

 欲しいなら、買ってあげようかな。

 

 うちの敷地は広いし、花壇か何かを作る程度の場所はある。

 うちの住人は三人とも全員無職だから、昼間は皆暇を持て余している。

 最近図書館にも行ってないから、読む本もなくて退屈していたところだ。


「買ってあげようか?」

「良いの?」


 それほど高くないし、買ってあげても良いんじゃないか。

 ティオは滅多に我儘を言ったりしないし、偶には良いと思う。

 それにティオは、一番親に甘えたい時期に我儘を言えないような生活をしていたのだから。


「どれが欲しい?」

「えっと、これとこれと、この種の中から、一番丈夫で綺麗なお花が咲くやつ!」


 ティオの選んだ物品を、俺はカウンターに並べる。

 小さなシャベルと花壇用の土と種だ。煉瓦は無いけど、土魔法で作れば良いだろう。

 作物用の土も魔法で出せば良い気もするが、それが原因で育たなくても困るので、専用のものを買っておく。

 種を撒く時期はいつでも良いらしい。途中で枯れたり花を咲かさなかったら可哀想なので、出来るだけ強靭な花卉を選んで貰った。

 ただ俺は夏休みのアサガオも十日で枯らすような人種なので、手伝えるかどうかは微妙だが。



 土は重いので俺が持つことにしたが、シャベルと種に関しては「持つ!」と言って聞かなかった。

 大事そうに抱えて、嬉しそうに頬を緩めてスキップをしていた。


 途中で枯れたりしないよう、大切に育てなくちゃな。

 この世界における植物育成の基本は知らないので、詳しいところはラスティにでも聞くことにしよう。

 悪魔デーモンを従えて畑を作ったとか言ってたし、作物を育てた経験はあるのだろう。

 

 幸せそうに園芸用品を抱きしめるティオと一緒に、夕焼けの下を二人で並んで帰途に就いた。





 三日ぐらいしてから庭先を見ると、子供らしい字で『ティオとラスティの花壇』と書かれたプレートが花壇の隅に立っていた。

 ティオかラスティが順番で、ちゃんと水やりや草むしりなどの世話をしているらしい。

 そういえばどんな花卉が生えるんだろうか。

 聞くのを忘れていたが――、まあ後のお楽しみということにしておこう。


 それっぽい花壇に微笑ましい気持ちになりながらも、ちょっとしたことが気になってしまった。

 本当にちょっとしたことなのだが、あえて言おう。



 俺の名前が書いてない……。



 確かに手伝ったのは花壇作りだけだけど、情けないような寂しいようなちょっぴり複雑な気持ちだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ