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異世界に来たけど魔力が無いから賢者になった  作者: 山科碧葵
第4章 異世界召喚は長寿ロリとともに
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4-22.器を持たぬ賢者

 幼少時のサザンガンフォルトは、他の魔族たちから嫌われ、孤立していた。


 魔大陸で剣術や武術が発展し始めたのは、局地的獣魔戦争によってエルフの生息する森林や雨林が被害を受けた頃である。

 局地的獣魔戦争が勃発したのは、サザンの死後二千年以上は経過した後だ。

 サザンが生まれた当時は、魔族の価値や武力を決めるのは、他でもない体内魔力量だった。

 

 子供というのは残酷なもので、自分たちと違った者のことを無意識に排斥しようとしてしまう。

 喋るのが苦手だとか、価値観が違うだとか、そんな些細なことで。

 無論それは、劣っていることに関してのみの話ではない。

 自分たちより多少出来る奴のことは、尊敬もするし憧憬の眼差しを向けることもあるだろう。

 だがサザンガンフォルトの魔力才能は、他人よりちょっとばかし多い、などといった言葉では言い表せられぬ程に異常だった。

 上級魔族と同等――もしくはそれ以上の純度をもつと言われる龍族。

 それらとも比較にならぬオドの純度に、周囲の魔族たちはやがて彼に畏怖の眼差しを向けるようになっていた。



 孤立したサザンガンフォルトは、人生に意味を見出すことが出来なくなっていた。


 ――無意味に人生を消費していた毎日だったが、ある朝目覚めると、彼の書き物机に菖蒲色の書物が置かれていた。

 初めて見る書物だったが、何故かそれは今までもそこにあったような、不思議な雰囲気を醸し出していたという。



 それが、サザンガンフォルトとユグドラシルの魔導書の出会いだった。



        ◇          ◇          ◇



 ユグドラシルの魔導書はどういう原理か、現在の所有者が失命すると、自身と波長の合う人間を探し出してその者の前に現れるらしい。

 選択の対象になる要因が何なのかは分からないが、ともかくこの魔導書は、間違いなく俺に会うために異世界から旅をしてきたということになる。


 故にこれで、異世界人だから魔導書に書き込める、という仮定は崩れた。

 元々穴だらけの理論だったから、別に良いんだけどな。


「サザンと同じペンとインクを使っても、妾は魔導書に新たな魔法を書きこむことは出来なかった。最初は妾が原因かと思っておったが、后や側室が増えた辺りで、サザンはそやつらとも書き込めるかの実験をしたようでな。全員失敗だったと言っておった。結局最後には、オドの純度が影響しているのだろうという推論で、集結したのじゃが――」

「魔帝サザンガンフォルト以降に魔導書を手にした人達も、同じように書き込めたと」


 ラスティは静かに首肯してみせた。

 魔大陸を旅している間や時折大陸を出ていた最中、ラスティは何度かユグドラシルの魔導書を所有する者を見かけたことがあるのだとか。

 リリムの誘惑術を使って近づいてみたり、魔導書に関する知識を与えるなどと言って近寄ってきたらしいが。


「書き込むことが出来ることを知っている者自体少なく、あまり参考にはならんかった。じゃが明らかに、サザンが所持していた頃よりページが増え、当時の妾には読めぬ文字が多かったが、書かれている魔法も増えておった」


 何度かそういった場面に遭遇したことで、ラスティも『魔導書の所有者は新たな魔法の書き込みを行える』という仮定に辿り着いたらしい。

 所有権の移行は、現在の所有者が失命しなければ行われない。


 しかしまあ、これで少し安心した。

 異世界人なら誰でも書き込めるだとか、ある一定の条件をクリアした者なら書き込めるとかだったら、奪われて勝手な魔法を書き込まれるのではないかという不安に常時怯えることになってしまう。

 俺みたいな異常分子イレギュラーが、これ以上現れないという保証も無いしな。


「魔導書のページって、どうやったら増えるんですかね」

「詳しいことは妾も知らん。ただ、まあ……。心当たりが、無いわけではないが」


 言葉を濁しながら、ラスティは目を逸らした。


「さっきも言った通り、魔導書に書き込めるのは、今代の所有者のみだと言ったじゃろ。そして、表紙に書かれておる文字は、古代龍族によるものじゃ。ついでに言うと、オドを使用した火魔法や水魔法のページも、古代龍族の文字で書かれておる」


 原理は分からないが、ともかくユグドラシルの魔導書に魔法を書き込めるのは、その時代の所有者のみ。

 表紙と最初のページを書いた者ということは、魔導書の最初の所有者である可能性が高い。

 最初の所有者ということは、その人が魔導書の製作者ということになるから――。


「古代龍族なら、ページを増やす方法を知っているかもしれない、ということですか?」

「……正確には違う。古代龍族は既に生物進化の過程で絶滅しておるから、過去に古代龍族が住みついていた場所では、今は“龍族”が生活しておる。じゃから、知っておるとすれば――」

「龍族、に会えば分かるかもしれない、と」


 龍族、か。

 神聖なる種族であり、その他の種とまぐわっても子供の出来ぬ、純粋な種族だと聞いたことがある。

 故に姉と弟だとか従弟同士だとか、近親同士の婚姻も日常的に認められているのだとか。


 体内魔力オドの純度は上級魔族程度の者から、それより少し純度が高い――程度。

 龍族に関して記された書物はトリスコールの図書館には少なく、それ以上のことを知ることは出来なかった。


「一つの可能性の話じゃがの。確かに龍族も人族や獣族と比べると長寿種族じゃが、流石に妾ほどの年齢の者は存命しておらんじゃろ。サザンがその魔導書を手に取った時点で、もう既に数多の魔法が書きこまれていたらしいからの。製作者、もしくはそれに近い者に話を聞くことは――はっきり言ってしまうが、不可能じゃろう」


 確実な裏付けを取ることは、不可能に近いというわけか。

 まあ、仕方が無い。無いものを強請っても、出てくるわけでは無いのだ。

 もし魔導書が、『死人を生き返らせるような魔法』を受け付けてくれれば、話は別なのだが――。


「死んだ人を蘇生させる魔法は、書き込めないでしょうか」

「無理じゃの。サザンも似たような魔法を書き込もうとしていたが、弾かれてしもうた」


 やはりか。

 私利私欲云々ではなく、社会の秩序を根幹から揺るがす魔法、に値するのだろう。

 小石から金塊を作る魔法が、不可能だったのと同じように。


 欠損一つ治す治癒魔法が存在していても、失命した者の生命を再び活性化させる魔法は管轄外なのか。

 サザンガンフォルトが思いついたという時点で、この世界に死者を蘇生させるという概念が無い、ということはなさそうだが。

 ともかく。


 ――これ以上の情報を、ここで集めるのは難しそうだな。


 魔導書に書き込めない魔法の存在。何らかの行動を起こせばページを増やすことができること。この書物が、まごうことなくユグドラシルの魔導書であること。

 先に知ってしまっていたが、魔導書には魔法を書きこむことができるということ。

 ラスティが知っている内容は、大体聞くことが出来ただろうか。


 本当は俺がここに呼ばれた原因とか、魔導書に選ばれた理由だとかが知りたかったのだが。

 そこに関しては、ラスティは管轄外だろう。

 異世界関連の疑問は、どうにかして自力で解かなければならない事項なのかもしれない。

 自分が何故ここにいるのか分からないというのは、些か気味の悪い話だからな。



        ◇          ◇          ◇



 書き込める魔法と書き込めぬ魔法の差異は、とりあえず保留ということになった。

 だがまだ、少し試してみたいことが浮上した。

 喩えばそう、今までオドの活性化を行わなければ、発動することの出来なかった魔法。それらを、マナの使用でも扱うことができるかどうか、という疑問だ。


 勿論今のままでは、使用することなど到底不可能だ。ティオが召喚魔法を使えぬように、どれだけ膨大な量のマナを以てしても、天候操作や他種族の従属魔法を使うことはできない。

 これは鉄則だ。


 だが逆に、使えるようにすればどうだろうか。

 マナでも使用可能、などと付け足すことが出来ないのは、前回の実験で試行済みだ。

 ならば、新たな魔法として別のページに書き込み直せば良いのではないか。


 何らかの行動を起こせばページが増える、これが事実なら、残りページが多少減っても、何とかなるような気がしてくる。

 ページを増やす方法を知ってからの方が安全ではあるだろうが、未だ俺には実験したい魔法が残っているのだ。


 一先ず天候操作が書き込めれば、同じような雷魔法や氷魔法も書き込めるだろう。

 天候操作には、霹靂や雹なんかも入っているはずだしな。

 まず大きなものから、書き込めるか試してみよう。

 雷魔法の使い方、氷魔法の使い方、と分けても良いが、出来るなら同じページに纏めてしまいたい。

 魔術師ウェインが使っていたような魔法を、マナで再現できるならそれに越したことはない。


 試す順番としては、サザンガンフォルトと同じような天候操作、ウェインの万能天候操作、雷魔法の順にしよう。

 前者二つが失敗したら、わざわざ氷魔法を記す必要もない。

 ただほら、俺にはどうしても雷魔法が必要なんだよね。

 主に充電的な意味で。


「では新たな魔法の書き込みを試してみますので、魔導書を返していただけますか?」


 ラスティは所謂体育座りをして、魔導書を真剣に読み込んでいた。

 だが俺の言葉にハッとすると、パタンと閉じてこっちを見た。


「何じゃ、何か面白い魔法でも思いついたのかの」

「ええ。世界を巡るマナを利用して、天候を操る魔法を書き込もうかと――」


 離れかけていた手に力が籠り、魔導書を掴む力が強くなった。

 む、この長寿ロリ(ラスティ)、意外に力が強い。


 全力で引っ張ろうとしたが、ラスティは頑なにそれを拒絶した。

 結局俺の方が先に折れ、ユグドラシルの綱引きはこれにて終了となった。


「な、ななな、何故サザンの代名詞とも言われる最高の魔法を、そんな形で無碍にしようとするか!」


 親の仇を見たような迫力で、そんなことを言われた。

 いや、流石の俺でもそのくらいは考えたよ。

 だから幾つか条件を付けて、矢鱈に乱発されないよう対策を練ろうとはしたんだぜ。

 エルフ族だって、恒久的にマナの吸い上げができるわけじゃ無いって、昨日だかにラスティが言ってたし。


「第一、マナを使う魔法を魔導書に書き込んだって、にぃ様は何も得をしないじゃろう。普通の人族なら、マナを吸い上げることなどできないんじゃから――」

「それは違うよ、ラスティちゃん」


 興奮してた様子で魔導書を背中に隠すラスティに駆け寄り、ティオがラスティの服の裾を引っ張った。


「な、何が違うと言うんじゃ?」

「アヤメお兄さんはその、体外魔力マナ? を使った魔法を、使えるよ。地面とか樹木とかに手を当てて、すっごい魔法を使うんだよ」


 ね! とでも言うように、キラキラした目を向けられた。

 

 別に隠していたわけでは無いんだがな。

 昨日森に行った時にもそんな話題になったけど、その時は「使えるはずがない」って一蹴されちゃったし。


 とか何とか思いながらラスティを見やると、目が点になっていた。

 背中に隠していた魔導書がバサリと音をたてて落ちる。


 そこまで動揺しなくても――、とは言えないのか。

 エルフでもない俺が、マナを利用して魔法を使うなんて、衝撃の事実を叩きつけられたのだから。

 でも、ビリーもプリムヴェールもティオもターニャも、俺が体外魔力マナを利用して魔法を使っていると知っても、別にそこまで驚いてはいなかったと思うんだが。


「まさか、……冗談じゃろ?」

「いえ、事実ですよ。悪魔デーモンを殲滅したときも、昨日の依頼の時も。俺は体外魔力マナを使用して魔法を使っていました」


 この際だから言っておこう。

 隠し立てするようなことでもない。

 むしろここで黙っていたことで、後々理解の齟齬が出ても困る。


体外魔力マナを、にぃ様が、使えるじゃと? ……にぃ様は、ハーフエルフ、だったのかの? いや、しかし、だとしたら悪魔を倒すほどの魔力を通すだけの“器”が――」

「祖先にエルフがいたかどうか、それは分かりません。ですが、俺は体内魔力オドを使うことは出来ません」


 クォーターであるバルテルスは、体内魔力オドはあるものの、純度が低いか放出口が塞がっているかで、同じようにオドを使って魔法を使用することが出来なかった。

 事実俺もまだ、魔力が無いのか魔力が使えないのか、はっきりとしたことは分かっていない。


「またれよ、整理させてくれるかの。――体内魔力オドを使うことが出来ぬから、体外魔力マナを吸い上げて魔法を使っておる、じゃと?」


 ラスティは口端を震わせながら、再度問いかけた。

 魔導書を見た時ほど怯えてはいないが、やはり少なからず動揺しているようだ。


「ええ、そういうことです」

「なんと……」


 震えが止まり、安堵したような表情。いや、何かを納得したような顔か。


「なるほど、悪魔殲滅に使用した魔法は、マナによるもの。……そして、残り香が無いのは、“器”が機能しておらんから、かの」


 コクコクと頷き、何やら彼女なりの考察を口端から零している。

 やはり俺には残り香とやらが無いのか。

 魔力を溜めこめない体質というのと、何か関係があるのだろうか。


「確かに器が機能しておらん魔族も、長い人生で何度か見たことはあるが――、にぃ様のように、普通の生活を送っておる者は少なかったの。器が機能しておらんということは、体内で生成されるオドがそのまま世界へこぼれ落ちてしまうということじゃからの。魔大陸で魔法が使えぬというのは致命的じゃ。自衛する手段も無ければ、魔物に食われてお陀仏じゃの」


 そこまで言って、ラスティは疲れたように溜息を吐いた。


「そうか、そういった輩は、マナを吸い上げられたのか。

 今までマナの吸い上げは、エルフ族特有のものじゃと思っていたから、器のない魔族がマナを吸い上げるなど、出来ないもんじゃと思い込んでおった」


 ラスティは俯き、視線を逸らした。

 痛ましげな表情が一瞬だけ見えた。

 誰か、いたのだろうか。魔力を溜めこむための器官である“器”とやらが機能していないために、死んでしまった知り合いか誰かが。


「……ま、済んだことは仕方がないの」


 ラスティは顔を戻すと、普段通りの表情で俺のことを見た。


「話を戻そうかの。

 つまり、にぃ様の話は、こうじゃの。

 膨大なオドを使用することで発動が可能な天候操作の魔法を、同じだけのマナを使って発動できないか、と」

「そういうことです」


 天候操作という概念は、魔導書に書いても弾かれない魔法であるはずだ。

 オドよりマナの方が若干優位な面があるため確実とは言えないが、類似した魔法を書き込める可能性は充分にあるだろう。

 それにこれは実験。

 実験に失敗は付き物だし、俺が求めるのは天候操作より先――機械類を充電できる雷魔法だ。

 天候操作はあくまで通り道。試してみる価値は、あると思うのだ。


「却下じゃ」

「ダメ、ですか」


 理由――は、さっき言っていたな。

 サザンガンフォルトの代名詞でもある天候操作の魔法を、他の者が使うのは嫌だ。

 確かに俺は、ハイエルフがどの程度のマナを吸い上げられるのかは知らない。

 豪快な天候操作魔法を、ハイエルフが使えるようになっては困るのか。

 連発は不可能でも、それを複数人で行うことが出来たら、制約が無意味だ。


「それにの。妾の許しを無視して書き込もうとしたところで、大方弾かれるのが関の山じゃろ」

「どういうこと、ですか?」


 試す前から諦めろとはこれいかに。

 私利私欲や社会秩序の崩壊に繋がる魔法を書き込めぬのは理解した。

 しかしこの魔法は、既に書き込まれている類の魔法だ。

 不可能、などと。


「魔導書を見てみよ。妾も全ての種族の文字を読めるわけではないが――」


 言いながら、ラスティはマナを使用して周囲のマッピングをする魔法の書かれたページを捲って俺に見せた。

 アトリアお嬢様やティオを探す時に使った魔法だ。


「次に、こっちを見てみぃ」


 魔導書のページを()()方に捲り、今度はオドを使用して周囲のマッピングをする魔法の書かれた項を出した。

 なるほど、そういうことか。


「そういうこと、ですか」


 オドを利用したマッピング魔法は、迷宮でのプリムヴェールの発言から魔族の発案した魔法だということが分かる。それが、マナを使用した上記の魔法より、先に書き込まれている。


 ユグドラシルの魔導書を手にした者は、ここ数千年の間に何十何百といるはずだ。

 その全ての所有者が知ってたかどうかは定かではないが、幾何かの人間は、魔導書に魔法を書きこむことが出来ることを知っていた。

 無論書き込む前に、ある程度は過去の記述を読み返すだろう。

 誰だってそうする、俺だってそうする。

 まあ俺の場合は、流し読みしたりしている場所があるので、完全に記憶しているわけではないが、ともかく。

 魔法を書き込む前に、魔導書の所有者は先人たちが書き記した魔法を読むはずだ。

 それならば、今までに俺と同じことを考えたエルフ族だって、いるはず。


「オドによるものとマナによるもの、同じ魔法が書かれていないものは、書き込みが実質不可能だったと考える方が、自然だと言うわけですね」

「書かれた時期が新しい魔法ならば、書き込みを知ったエルフ族が手にしていない、ということも考えられる――が、サザン以降に一度もエルフ族が魔導書を所有していないということは考えにくい。この探査マッピング魔法も、サザンの書いた魔法よりずっと後の方に書かれているからの」


 ということは、天候操作の魔法は、マナでの再現は不可能と考えた方が良いか。

 いや、それ以前にサザンガンフォルトが書き込んだ魔法はほぼマナでの再現は不可能と見た。

 事実彼が書き込んだ魔法は、知った者を虜にするような豪快かつ便利なものが多い。

 後人たちが誰も試さないなど、それは流石に無いだろう。


「まあそう気落ちするでない。天候操作までは出来なくても、二百体以上の悪魔を殲滅するだけのマナを吸い上げることは出来るんじゃろ? だったらそれだけのマナを無駄なく使えるような、また新たな魔法を考えれば良いのじゃ。

 妾を呼び出したあの魔法だって、常人には考え付かんような代物じゃからの。

 あれに関しては、素直に感嘆する」


 ラスティは蠱惑的に目を細め、コクコクと頷いてみせる。

 あれは別に俺がゼロから考えたわけでは無いのだが、まあ、こうなってしまえば同じことか。

 雷魔法や氷魔法だって、元の世界における既存の創作物からの知識だ。

 だが、発案した理由がどうあれそれらの魔法がこの世界には存在していないことはまた事実。

 この世界において言えば、それらの魔法を思いつけたのは、俺が最初ということになる。


「そうですね、では次の魔法に参りましょう」

「そう、その意気じゃよ」

「ファイトだよ、アヤメお兄さん」


 いつの間にやらお茶を淹れて戻って来たティオにも励まされ、俺は二人を傍に、新たな魔法の書き込みを行うことにした。



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