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万能薬を飲まされ長寿になった私は安住の地を手に入れたい。  作者: おもち
第1章 旅の始まり

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24.お祭り二日目(前編)




3005年10月11日



 今日は、一日休みのジェイドがルーナの面倒を見てくれることになった。今日もおばあちゃんは朝早くから救護所の手伝いに向かい、フェルナンドさんはクロシェット販売の手伝いをするそうだ。


 おばあちゃんを見送った後、食堂の椅子に座り、のんびりお祭りのことを考えていると、後ろからジェイドに抱き上げられ捕獲された。


「ジェイド!?何?」


「おチビは今日一日俺と一緒だ。ほら準備しに行くぞ。」


 そう言わてルーナは抱き上げられたまま、ジェイドの部屋へと連れて行かれた。ルーナの準備ならすでにできている。


 訳も分からぬまま床に下ろされると、ジェイドはルーナのメイド服のボタンを外してゆく。


「えっ?」


 5歳児の体を見られても別に恥ずかしくはないのだが、いきなりのことで動揺している。


「バンザイしろ。」


 言われるがまま両手を上げると、メイド服を脱がされ下着姿にされた。


「よし、もう一回バンザイだ。」


 もう一度バンザイのポーズをとると、今度はモフモフした物を着せられる。


 何かの魔物の衣装のようだ。お腹側は白く、下半身にボタンがついているタイプのつなぎだ。手際よくジェイドがボタンを止めてゆく。


「これなーに?」


 何となく予想がついてきたが、一応聞いてみる。


「ハムタリアンだ。ほら、フードも被れ。」


 やっぱりそうか、とじとっとした目でジェイドを見る。


「これ、態々用意したの?」


「そうだ、俺がデザインしてやった。特注品だぞハムタリアン、今日は一日おチビの衣装はこれだ。辛いの代わりに食べてやったとき後で罰ゲームだって言ったよな?」


 ジェイドがニコリと圧のこもった笑みを向けてくる。


 そういやそんなこと言われた気もするが、何ヶ月前の話だよ!!


「はいはい、一日これで過ごせばいいんでしょ。」


「そういうことだ。」


 ルーナは内心呆れ果てて抵抗する気も起きないが、ジェイドはとっても嬉しそうだ。


「おチビ、完璧だなぁ!かわいい!ハハッ最高だ!ほら、ぎゅーだ。よちよちかわいいなぁ。」


 お前誰だよ!!

 ジェイドは今まで一度も見たことがないとろけるような顔で、ルーナを抱き上げ頬擦りしている。


 こんなことで喜んでくれるならそれでいいですよ、はぁ。


「ジェイドは仮装しないの?」


「ああそうだ、ちょっと待ってろ。」


 ルーナのおでこにチュッとして大事そうにベッドの上に座らせる。本当に誰だ?いつものジェイドとはまるで別人だ。


 ジェイドは寝巻きにしているタンクトップを脱いで、胸元を開けて黒いシャツを着る。


 よく鍛えられたいい体だなぁと思いながらルーナはそれを眺める。黙っていれば本当にジェイドはかっこいい。


 そして、黒のマントを羽織り、頭に角をつければ完成だ。ルーナの物とは違って凝った衣装ではないがそれっぽい。


「魔王様?」


「正解だ。ハムタリアンは魔王に従うんだぞ。」


 そう言ってまた大事そうにハムタリアンを抱き上げる魔王様。魔族領にハムタリアンの保護区なんて作った本物の魔王様も、もしかしたらこんな感じなのかもしれないなと想像してクスッと笑う。


「なんだ?」


「いや、本物の魔王様もこんな感じなのかもしれないなって思って。ハムタリアンの保護区なんて作ってるでしょ?」


「ふっ、たしかにそうかもしれねぇな。勇者より魔王様の方が気が合いそうだ。」


「私もそう思う。」


 ジェイドに抱かれたまま一階に下りると、ルーナとジェイドの様子を見たフェルナンドさんたちがクスクス笑っている。


「クスッ、二人ともお似合いだね。」


「俺の自信作だからな。」


 ジェイドは得意げだ。全くルーナのことを離してくれる気配がない。今日は一日このままなのだろうか?


「よし、出かけるぞ。」


 やはりジェイドに抱かれたまま外へ出る。先に冒険者ギルドに用事があるらしく、フェルナンドさんも一緒だ。移動している間、ずっとジェイドに撫でられている。


 冒険者ギルドの中に入ると、若い冒険者たちは「え、ジェイドさん?」と驚いていたが、昔からジェイドを知っているらしい冒険者たちは、「お、新しい子捕まえたのか?」とニヤニヤしながら話しかけてくる。どうやら昔ハムタリアンを飼っていた頃も、よくこうやって連れ回していたようだ。


「今日は珍しく行きたくねぇって言わないんだね。」


「今日は大丈夫だ。」


 なんのことだろうかとルーナが首を傾げていると、フェルナンドさんがジェイドを揶揄うような感じで説明してくれる。


「いつもならギルド長室に行く時は、毎回行きたくねぇて駄々をこねるんだよジェイドは。まったく困った魔王様だよね。」


「ふふ、それは困った魔王様だね。ジェイドはギルド長のことが苦手なの?」


 ルーナも揶揄うようにそう尋ねると、ジェイドは苦い顔をする。


「あいつから漏れ出てるオーラ?のような威圧のようなものが、肌にまとわりつくような感じでゾワゾワすんだよ。おチビにはまだ分からねぇよ。」


「ふーん。」


 そんな話をしているうちに、ギルド長室の前に着いた。


「入れ。」


 部屋の中からグレゴリオさんの声が響き、入室すると、ジェイドはルーナを膝の上に抱いたまま来客用の椅子に座った。グレゴリオさんも苦笑を漏らしている。


「新しいハム⋯、いや、マーリンさんと一緒にいた子供だな。孫だっだか。」


 ルーナがこくりと頷く。


「マーリンさんたちとも顔見知りだったのですね。」


「ああ、一応魔導具を持っていないか薬師ギルドに聞きに行った。で、要件は?」


 そう尋ねながらジェイドとフェルナンドさんの向かい側に腰掛けた。緊張感のある空気が漂う。


「昨日、家の宿に勇者カインが訪ねてきました。」


 知らなかったルーナは驚いて目を見開く。


「おチビが部屋に戻った後だ。」


 ジェイドが小声で教えてくれた。


「⋯やはりか。こちらにも来て転移の魔導具を持っていないかと聞かれたよ。それでオルランドの死体を持ってきたのは誰かと聞かれてね、話すつもりはなかったが、国宝の魔導具を盗んだ犯人かもしれないやつをお前は庇うのかと言われて君のことを話してしまった。すまないね。それで、何を聞かれた?」


 グレゴリオさんは淡々と経緯を話した。感情か全く読めなくて苦手だなとルーナは思う。


 フェルナンドさんは、昨日の晩勇者カインに質問されたこととどう答えたかを順に説明していった。


「そうか、マーリンさんにはたどり着いていないのだな。総ギルド長にも報告しておく。下がれ。」


 そう告げるとグレゴリオさんは、立ち上がって執務机に向かったので、ルーナたちも退室する。


「今日はあんまりゾワゾワしなかったな、おチビのおかげか?」


 ジェイドがルーナの顔を覗き込みながらそう問いかけるが、そんなことをルーナに聞かれても分からない。


「違うと思うよ、たぶん俺たちとギルド長の力の差がほとんどなくなったんだと思うよ。マーリンさんにかなり扱かれたからね。」


「こんな短期間でか?ばあさんと戦ってても力の差なんて埋まった気がしねぇから実感ねぇな。」


「この辺りには成長を実感できるような強い魔物もいないしね。けど間違いないと思うよ。」


 どうやらおばあちゃんに扱かれ始めてからの短期間で、ジェイドとフェルナンドさんは相当強くなったらしい。


「さて、俺は母さんのクロシェット販売を手伝うから先に帰るよ。二人ともお祭り楽しんできてね。」


 広場でフェルナンドさんと別れてジェイドと二人になった。


「よし、とりあえずなんか食うか!」


「うん!」


 今日はジェイドに抱かれているので目線が高くて見通しがいい。何種類かのクロシェットと串焼き肉、薬師ギルドのお茶も買って、広場に設営されたステージの前に座った。

 ステージでは今、劇団による演劇が公演されている。題材は、魔王と魔王に恋してしまった人間の少女の物語だ。

 魔王と人間の少女は愛し合っていたが、歳を取らない魔王と人間の少女は結婚を許されず、結局少女は人間の男と結婚してしまう。魔王は愛しく思っていた少女を影から見守るが、結婚した男は仕事もせず、酒を飲んでは暴力を振るうろくでもない男だった。そこで魔王が助けに入り、今度は少女が寿命を迎えるまで寄り添いハッピーエンドだ。


 なんか観ていて複雑な気分になった。


「どうした?」


 どうやら気分が顔に出ていたらしい。


「いや⋯、魔王は少女が結婚した男が大事にしてくれる男だったらどんな気持ちで見守ったんだろうなと思って⋯。」


「女が幸せならそれでいいとか思えりゃいいけどな。俺には無理だな。」


 だよね、人間そんな単純ではないと思う。


「私も無理だね。」


「何度も聞くがお前本当に5歳か!?実はお前魔王じゃねぇのか!?」


 やばいやばい、たしかに5歳のセリフじゃなかったなと心の中で反省する。


「5歳だよ!魔王はジェイドでしょ?」


「ああ、そうだったな。」


 ジェイドは納得していなさそうだが、気づかない振りをした。


 その後は二人で中央通りの出店回りだ。まずは冒険者ギルドがやっている、子供用の的当てに挑戦した。やはりここでも冒険者ギルドに行った時のような反応をされる。若い冒険者は、大事そうにハムタリアンの格好をした子供を連れているジェイドの姿に驚いて言葉を詰まらせていた。


「あの、ここからでいいですか?」


「あ、⋯ああ、ここから投げてね。」


 小さな球を投げて、的の真ん中の円の中に当たればお菓子が貰える。的は少しでも当たれば球がくっつくようにできていて、年齢で投げる位置が決まっている。難易度はかなり易しめで、当たるまでやらせてくれるようだ。ルーナは二回目でお菓子を貰えたが、前に並んでいた子は五回投げていた。そして当たると冒険者さんたちがちょっと大袈裟なくらいに褒めてくれる。優しい世界だ。


 的当ての後は、占いの店で将来を占ってもらった。ルーナは将来大物になるらしい。


「あのばばあの孫なら確実に大物だよな。占い師じゃねぇ俺でもそう思う。よし、この占い師は当たるな。」


 その判断の仕方はどうかと思うが、ルーナの占い結果を聞いて、ジェイドも占ってもらう気になったようだ。


 だが、ジェイドの占いの結果はいいものではなかった。


「お前さんは身内に気をつけた方がいい。近い将来危険が迫ってる。そうだね⋯その娘の近くにいるといい。」


「随分と不穏だな⋯わかった。こいつを離さなきゃいいってことだな。」


 ジェイドが不安そうな顔をする。


 どうやらルーナはジェイドのラッキーパーソンのようだ。勇者が来ている今が一番危険なはずだ。ルーナもジェイドに危険な目にあって欲しくない。戦う力はないが、ルーナが近くにいて助かるなら、勇者が帰るまででもジェイドの側から離れないようにしようと思う。












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