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万能薬を飲まされ長寿になった私は安住の地を手に入れたい。  作者: おもち
第1章 旅の始まり

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14.レナトルシア連合王国の奴隷




 ルーナたちが先に夕食を食べていると、他の四人も食堂に集まってきた。今日の夕食は下味をつけて焼いた骨付きの魔羊肉、焼き野菜、クリームシチュー、パンだ。魔羊肉の独特の香りが癖になりそうだ。クリームシチューはほっとする家庭の味って感じで美味しい。大人たちは今日もお酒を飲み始めている。


「どーお?」


 珍しく女将さんが感想を求めている。いつもはそんなこと聞かないのに、アイザックさんがいるからかな。


「ああ、今日も美味しいよセリーナ。やっぱりセリーナの料理が一番だよ。」


「良かったわ、そう思うならたまには帰ってきてちょうだい。ふふ」


 セリーナさんとは女将さんの名前だ。二人の間の空気が甘い⋯。


「焼き加減も味も最高だ。決して特別な食材ではないというのに、何故こんなにも学術地区の食堂のものと違う!この美酒とのハーモニーも素晴らしい!」


 レオナルドさんからも⋯好評のようだ。ずっとぶつぶつと女将さんの料理を賛美している。この人達は置いておこう。


「ジェイドたちは今日はなんの依頼だったの?」


「東側の森の調査だ。最近魔物の様子がおかしいらしくてな。」


 ルーナたちも通っている森だ。ルーナは首を傾げる。心当たりがない。


「私たちも二、三日に一度は行ってるけど別におかしなことなんてないよ?」


「ああ、俺らも今日見に行ったけどいつも通りだった。ただ、最近魔物が全然出ない日があるって報告が新人冒険者から何件も上がっててな。森に強い魔物でも出たんじゃねーかって俺らに依頼が来たんだよ。」


 ⋯⋯⋯。

 ルーナはゆっくりとおばあちゃんに視線を向ける。

 すごーく心当たりがあるんですけど?ねぇおばあちゃん?

 おばあちゃんは何も反応してくれない。


「⋯⋯へー。」


「ぷっはっ!もしかして、強い魔物ってばあさんのことかぁ!?まあ、それなら納得だ。」


「なるほど、納得です。マーリンさんのことでしたか。⋯クスッ。」


 何も喋っていないのにバレてるし納得されている。


「何も納得されるような覚えなんてないね。知らないよ。」


 シラを切るつもりらしく視線も合わせずクリームシチューをスプーンですくっている。


「おい、ばあさん、あれだけ森に通ってて知らねぇは無理があんだろ。」


「ふふ、ですね、マーリンさんほどの魔術師が何も知らないはちょっと⋯。」


「知らないね。私はルーナと薬草採取に行ってるだけだ。」


 おばあちゃんは涼しい顔をしている。強い。


「わかったわかった、ギルドには何もなかったって報告したし何もねぇならそれでいーだろ。」


「そうだね、実際何もないわけだし問題はないね。けど、理由が分かってスッキリしたよ。」


 どうやら丸く収まったようでなにより。調査に出たのがこの二人で良かったのかもしれない。


「そういえばファビエラはいないのか?」


 レオナルドさんが急に思い出したように問いかけた。やっぱり研究者同士知り合い?


「ファビエラちゃんなら部屋に籠ってるわよ。」


「まだ籠ってるのか、呼んできてくれ。」


 女将さんがファビエラさんを呼びに行った。

 二階の部屋から「ヒッ!ヒェェ!」とか「むむむむむむむりですぅぅぅ!」とか聞こえてくる。


 だが、暫くすると観念したのか、女将さんの影に隠れながらファビエラさんが出てきた。


「座れ。」


 レオナルドさんがそう言うと、何故かファビエラさんはその場で床に座った。


「違う、椅子に座れと言っている。」


「ひゃっ⋯ひゃい!」


 怯えた様子で俯きながら空いていたレオナルドさんの隣の椅子に座る。


「まったく、これだから奴隷は困る。はぁ、俺が命令すると面倒だ。アイザック、こいつにも飯をやってくれ。」


 え?ファビエラさんが奴隷?衝撃的すぎて皆ポカーンとしている。


「こいつって奴隷だったのか?」


 勇気あるジェイドがレオナルドさんに問いかける。


「ああ。私の奴隷だ。サンプルと助手の役割をさせている。」


 サンプル?ルーナが疑問に思っていると、アイザックさんが続いて説明をする。


「俺とレオナルドは隷属魔術の研究をしていてね。帝国では隷属魔術は禁術なんだけど、隣の連合王国では奴隷に使うことは禁じられていない。隣の国の奴隷制度なんてその国の勝手だからどうでもよかったんだけど、ここ数年不可解なことが起きててね。それで研究のために買ってきたのがファビエラだ。」


 そんな話をしている途中に、女将さんがファビエラさんの分の食事を並べる。並べ終わって、どうぞと言ってもファビエラさんは手をつけずに俯いたままだ。


「食べろ。」


 レオナルドさんがそう命令するとやっと食べ始める。


「こうやって私がいると私が命令したことしかできないから隷属魔術は面倒なんだ。はぁ。」


 なるほど、それで離れてこの宿に住んでるのかな。


「面倒なら解除はできないのかい?」


 今度はおばあちゃんが聞く。


「そこが不可解なんだよ!魔術ならさらに力の強い者か解除しようと思えばできるはずなのに、連合王国で最近解除ができない奴隷が出ているんだ!」


 レオナルドさんのテンションが上がってきたみたいだ。


「そうなんだ。冒険者ギルドの総ギルド長にも、宮廷魔術師長にも協力してもらったけど無理でね。それよりも強い術者が連合王国にいるのか、それとも術を強化する何かを開発したのか、それを解明するために国から俺たちに依頼されたんだ。レオナルドは魔術全般の研究、俺は干渉力と呼ばれる力について研究している専門家だ。」


 干渉力ってなんだろう?そう思って首を傾げていると、優しいフェルナンドさんが補足してくれた。


「ルーナちゃん、干渉力っていうのは魔力量や身体能力の強さとは別の、この世界の理に干渉できる力の強さのことだよ。例えば、人間の身体能力には限界がある。だけど、干渉力が強ければ重力や筋力を無視できる。ものすごく高く跳躍できたりミスリルのような硬いものを素手で壊せたりするんだ。魔術だったら転移魔術なんかが使えたりね。干渉力が強くなるってことは、この世界でなんでも自分の思い通りにする力が強くなるってことかな。だから、隷属魔術なんかも、かけた術者よりこの干渉力が強ければ消してしまうことができるんだよ。ちょっと難しいよね。」


 ふむふむ、ゲームで言うところのレベルみたいなものか?レベルが高くないと習得できない魔術もあるし、レベルが違えば他人の魔術でもレジストができると。そういうことだろう。


「フェルナンドさんありがとう。なんとなくだけどわかった。」


「それにしても、もし術を強化する方法を開発してるなんてことあったら厄介だな。」


 腕を組んで険しい顔をしたジェイドが呟く。


「そうだ!これだけ強化できたら賢者クラスの魔術師が量産できてしまうということだ!術の解除さえできてしまえばファビエラにどうやってかけられたか聞けるのだがね。私も解除を試してみたが、全く歯が立たん!」


 おばあちゃんの量産かぁ⋯世界が滅びるんじゃないの?というか、おばあちゃんなら解除できちゃったりする?けどそれでできちゃってもまずいしなぁ⋯


「賢者様クラスですか⋯。解除は⋯勇者カイン様には頼めないのですか?」


「あの勇者はだめだ!総ギルド長経由で頼んだが断られた!俺がなんで奴隷ごときの魔術の解除なんきゃしなきゃいけねーんだ?だそうだ!何が勇者だ!」


 勇者ってそんな人なんだ⋯。

 おばあちゃんを見ると屋敷に住んでいた頃のような機嫌の悪そうな顔をしている。勇者の言動に腹を立てているのか、勇者の悪口を言われたことに腹を立てているのかどっちだろう?


「そうですか、やっぱりあの方はだめでしたか⋯。」


 帝国の勇者って⋯優しいフェルナンドさんにやっぱりって言われるくらいには人望ないんだね⋯。


 大人たちの話が長引きそうなので、ルーナたちは先に部屋に戻った。


「ねぇ、おばあちゃんだったら解除できると思う?」


「さぁね。できてもやらないさ。」


「おばあちゃんが強いのジェイドとフェルナンドさんに完全にバレてたもんね。」


「ああ仕方ない。あいつらもそこそこ強いからねぇ。」


 強者は強者を知るってことね。けど⋯そこそこね。


「そこそこってどれくらいなの?」


「冒険者ランクで言えばAランクくらいかね。私と戦えば二人がかりで一分も持たないさ。」


「さ、さすがおばあちゃん⋯。ねぇ、おばあちゃんも勇者様嫌いなの?」


 ちょっとさっきのおばあちゃんの心底嫌そうな表情が気になっていた。


「ああ、帝国の勇者は嫌いだね。私はシルヴィア王国の勇者パーティにいたんだが、その頃からあいつは嫌いだよ。」


「おばあちゃんってシルヴィア王国の出身だったんだね!」


 なるほど、帝国の勇者パーティとは仲が悪かったっぽいな。


 寝る前にベッドの上で魔術の練習をする。そう、最近はライトの魔術を練習して魔力を使っているのだ。同じ大きさの光の玉をキープする。集中が切れるとすぐに大きくなったり小さくなったりするから意外と難しい。

 今までの成果で最初に比べたらかなり魔力量が上がった。蟻から像に⋯とまではいかないが、ハムスターから人間くらいにはなったと思う。ライトの魔術も二分くらいなら持つ。そろそろ時間だ⋯。


「おばあちゃんおやす⋯み⋯⋯⋯。」


「ふっ、おやすみ。」




◆◆◆◆◆



 帝都近くのどこか。



「だからこんなガリガリで小汚ねぇのじゃダメだっつったろーが!」


「す、すみません⋯⋯ですが、もう見つからなくて⋯⋯」


 大柄な男に怒鳴られて、ローブを着た男の肩がビクリとする。


「あ?いるだろぉ?貴族のガキでもなんでもいいからせめて顔の良いやつ連れてこいよ!」


 そんなことを言われても、貴族を攫うのなんてもっと難しい。だいたい貴族の子供は一人で街をぷらぷら歩いているなんてことはないのだ。それに攫った後も問題だ。一度きりならいいが、貴族なんて攫ったら確実に憲兵も動く。今はできるだけ身寄りの無さそうな子供か、行商人の子供など街の住人ではない子供を選んでいる。


「ですが⋯、憲兵に本格的に動かれると余計にやりにくくなるかと⋯」


「チッ、いいからもっとマシなの連れて来い。そいつはいらねぇから処分しとけ。」


「はい!」


 処分しておけと言われてもどこに捨てればいいだろうか?


 金も貰ってるし今更やめることもできない。俺も精々処分されないように頑張るか⋯。







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