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ジェーン・ドゥの旅路  作者: 朝霧


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5/10

手記:南でのあれこれ、及び穢れについて

 次こそは北の地でこの続きを書く、とか前回書きましたが、今いるのは南地方です。

 北地方には行っていません、理由はまたあの謎の北地方アンチのモノクロさんです。

 東から北に向かうために中央を経由しようとするその道中でジェーン・ドゥはバッタリとあの人に遭遇してしまいまして。

 それで、魔法行使込みの説得を受けて、結局また北行きは無しに。

 北地方出身だというモノクロさんから、北地方出身の女性があの地で合わされた酷い話を聞かされたので、自分の中にある北地方への嫌悪感もそのせいなのだろうな、と。

 それで、その説得を受けた後に少しだけ話をして、南地方には水気が満ちているから火属性魔法の威力が弱まる、弱まるから制御しやすくなるかも、という話を聞いたので、南に。

 あと、モノクロさんが話していた海水浴とやらも遠目に見ました、下着みたいな格好の人達が楽しそうに浜辺とか海で遊んでいました。

 忠告通り近寄りませんでしたし、あそこに混じろうだなんて少しも思いませんでしたが。

 なんなんですかね、何が楽しいんでしょうかねあれは、ジェーン・ドゥには全く理解できません。

 海水浴をしていなくても露出の多い格好をしている方は多いですし、この暑い気候のせいなのでしょうか、ああいうふうに平然と肌をさらせるのは。

 結構目のやりどころに困る場面が多かったです。

 ジェーン・ドゥはこの地に三ヶ月ほど滞在しましたが、ここの空気感にはいつまで経ってもなれませんでした。

 明日、諸事情あってこの地を出る予定なので、今日はこの地での備忘録を書くためにこの手記を開きました。

 この地についたジェーン・ドゥは真っ先に観光案内所に向かって、そこで案内されたこの地方の魔法使いギルドに登録しに行きました。

 それで、火属性魔法の講座を予約、ついでにお金稼ぎのために簡単なクエストも受注しました。

 仕事内容は東の時とさほど変わらず、魔物退治やらちょっと危険な場所での採集とか、そういう感じのが多かったです。

 ギルドに登録した後は観光という名の『前』の自分の手掛かり探しをやりつつ、仕事を受けたり講座を受けたり、そんな日々が続きました。

 モノクロさんが話していた通り、南地方では火属性魔法の威力が弱まりました。

 弱まったということは、それだけ制御もしやすくなるということ。

 そして制御するコツを少しずつでも掴んでいけば、この地以外でも多少は制御できるようになっていく、はずです。

 と、いうわけで火属性魔法の特訓を開始したジェーン・ドゥでしたが、なかなか難航しました。

 ちなみに、火属性魔法の特訓と並行して雷属性魔法の練習もしていましたが、そちらはメキメキ上達しました。

 基本は中級魔法の鳴神ばかり使いますが、他にも色々な魔法を覚えました。

 最上級は流石に習得できませんでしたが、なんと上級魔法を三つも習得。

 火属性魔法の講師の方に「お前はもう雷だけで食っていけ」と馬鹿を見る目をされてしまいましたっけ。

 自分でもなんか、もう雷だけでいいかな、という心情だったりします。

 だって、火属性魔法の制御難しいのですもの。

 とはいえ、火属性の方に全く進展がなかった、とはなりませんでした。

 東にいた頃に比べると暴走する回数が減りました。

 とはいっても減っただけで、全く暴走しない、という状態には程遠いです。

 それでも進歩はありました、雷一本でいいのではと思いつつそれでも火の方もなんとかできるのならそうしたい、とジェーン・ドゥは現状そう思っています。

 と、まあそんな具合で頑張っていたのですが、昨日ちょっとしたトラブルが。

 昨日ジェーン・ドゥはいつものように修行兼日銭稼ぎとして簡単な討伐依頼を受けました。

 お仕事の内容は町はずれに出る小型の魔物の群れの討伐、私くらいの実力であれば余程の事故が起こらない限り簡単にこなせる依頼でした。

 が、起こってしまったのです、その余程の事故というやつが。

 そこに出たのです、穢れ鳥の被害にあった魔物が。

 南に来る前からちょくちょく話だけは聞いていた穢れ鳥について、一応記載しておきましょう。

 穢れ鳥は数年前に観測されるようになった存在であるそうです。

 穢れそのものの体現者、もしくは穢れというものが生物の形を取った存在、と言われていますが、実情はよくわかっていないとのこと。

 ※一応補足ですが、穢れというのは生物、主に人間のよくない感情、敵意悪意殺意憎悪などが自然界に存在する純粋な魔力と結合した『よくないもの』の総称です。通常穢れというものはその場に漂うよくない気、目には見えないけど穢れが多い場所では生物に何らかの悪影響をもたらすもの、とされています。魔法によって穢れをある程度祓うことができますが、普通の人がそれをやろうとすると時間がかかります。

 実は私が南に来る少し前、この地では穢れ鳥による大規模な被害、というか事件が起こっていました。

 その事件を一旦解決に導いたのがあの『曙光』という組織、というかいのりさんとアビントン姉妹とその仲間達だったそうです。

 そして事件を引き起こした下手人、穢れ鳥をこの地に導いたのがその『曙光』が現在敵対している謎の組織こと『禍時』だった、とのこと。

『禍時』がこの地に引き連れたらしき穢れ鳥の群れは『曙光』の皆様達によってどうにか討伐されたのですが、私がこの地を訪れた時にはまだその被害の影響が残っている状態でした。

 ちなみに、穢れ鳥を普通の人が討伐するのはかなり厳しいそうです。

『英雄』なら、『英雄』であるいのりさんの魔力には穢れを祓う強い浄化の力が宿っているため、彼女や彼女の支援を受けた人であれば普通の人よりも苦戦することはないそうですが。

 とはいえ、今はすでに穢れ鳥は討伐されていて、ひとまず問題ない、ということになっていました。

 けれどジェーン・ドゥが昨日討伐依頼を受けた場、入り組んでいて人が滅多に立ち入ることはないというその森の中に残っていたんです。

 穢れ鳥ではなく、穢れ鳥の卵を食べてしまった大蛙が。

 なんか様子がおかしいな、穢れに触れすぎて穢れ者になってしまったのかな、と思ったら突然魔物のお腹が『パーン』って弾けて、中から大きな穢れ鳥が。

 ※穢れ者は穢れを取り込みすぎた生物がなってしまう者です。こうなるともう完全に暴走状態になり、殺害以外の方法では一般的には止められません。基本的にそうなるのは魔物ですが、稀に人間もそうなります。一応、補足です。

 ものすごくびっくりしました、魔物のお腹が弾けて中から真っ黒ででっかい鳥が「こんにちは」してきたのですもの、ジェーン・ドゥでなくとも吃驚仰天します。

 ひとまず穢れ鳥に鳴神を何度もぶっ放して、ついでに穢れ鳥のせいで急速に穢れ者になってしまったらしい周辺にいた小型の魔物も鳴神で蹴散らして、どうにかなるわけがありません。

 撤退及び救援要請を、と逃げようとしたその直前にそう遠くないところから悲鳴が。

 子供でした、二人いました、幼い姉妹達が。

 後々聞いた話ですが、その幼い姉妹は病気になった飼い犬のために、あの場に薬草を探しにきていたそうです。

 ジェーン・ドゥはその子供達二人を逃すために、その場に残りました。

 振り返らずにまっすぐ人里に向かって走ってくださいと子供達の背を押し、穢れ鳥達が二人に危害を加えぬよう、追いつかないよう、その場に残って足止めを。

 基本は鳴神、時々最近覚えた雷光結界やら天雷なんかも使いましたが、どれも穢れ鳥への決定打にはなりませんでした。

 それでもジェーン・ドゥは子供たちを逃すことに成功しました、そして逃げ切った子供達は救援を呼んでくれました。

 どうにか足止めをできているうちに魔法使いギルドの方からゾロゾロと救援が現れた時、ジェーン・ドゥはものすごく安堵しました。

 ギルドの人々の活躍で穢れ鳥及び穢れ者の殲滅は成功しました。

 私も途中までは殲滅戦に参加していたのですが、魔法の使い過ぎで負荷をかけすぎた稲妻の腕輪がぶっ壊れてしまったので、途中から完全に戦力外に。

 それでもどうにかなりました、本当によかったです。

 それで、どうにかなった後に救援を呼んでくれた子供達の家、というかお屋敷に呼び出されました。

 助けてくれたお礼を、なんて言われてしまいましたが、大したことはしていません。

 むしろお礼を言うのはこちらの方でした、あの子達が助けを呼んでくれなかったら、ギルドの人達が来るのがもう少し遅かったら多分ジェーン・ドゥは死んでいたでしょうから。

 なので礼を言うのはこちらの方です、とあの子達とそのご家族の方にお礼を言いました。

 互いに礼を言い合って、それでもどうにかなってよかったと、死者が出なくて済んでよかったと全員で安堵していたら、あの子達のご家族が、あの子達を逃したお礼を私にしたい、と。

 大したことはしていないと断りましたが、ここで礼をしないとこちらが納得できず家の沽券にも関わる、と言われてしまって。

 それでいただいてしまったのです、なんか凄そうな魔法石を。

 触れるどころか見ただけで強力な雷の力が秘められているのが一眼でわかる、どう考えても『お宝』という言葉が似合うそれを。

 ジェーン・ドゥの魔法道具がぶっ壊れたらしいという話をギルドの人達からの報告で聞いた彼らは、家の宝物庫にあったそれを何の躊躇いもなくジェーン・ドゥに。

 この辺りにそれをまともに扱える職人はいないけど、東に行けばいい職人がいるから、それを壊してしまった魔法道具の代わりにって。

 こんな凄そうなものはいただけませんと言ったのですが、ほとんど押し付けられるような形でいただいてしまいました。

 そういうわけで、明日この地をたって急遽東地方に向かうことになりました。

 まさかこんなことになるとは、本当だったら火属性魔法がもう少しまともに使えるようになるまでここに滞在するつもりだったのですが。

 けれど、こういうことなので仕方なく。

 ああ、そういえばあの子達のお屋敷に占い師だというダウナー系の美青年がいらっしゃっていたのですけど、その占い師さん曰くジェーン・ドゥはなんかやばいもんに目をつけられているそうです。

 お屋敷から帰る途中、すれ違い様に目をカッと光らせた占い師さんに、すごい形相で「ちょっと」と詰め寄られた時にものすごくビビってしまいました。

 占い師さん曰く『あんたはよくないものに目をつけられている。そしてそのよくないものは北と関わりの深いもの。だからまともに生きたければ北には絶対に足を踏み入れるな。それと蛇に気をつけろ』と。

 蛇というとジェーン・ドゥにとっては今回の穢れ鳥騒動でそこそこ活躍してくれた蛇の指輪 (治癒+痛み止め効果あり)になりますが、この指輪は別に関係ないとのこと。

 謎の北地方アンチのモノクロさんだけでなく、南地方の占い師さんからも北に行くなと言われてしまいました。

 もう行く気なんてほぼ失せていましたが、占い師さんの言葉もありますし、本当に行かない方がいいんだろうな、とジェーン・ドゥは思いました。

 余談終わり、とにかく明日東に向かいます。

 次これを開くときはきっと東をたつその時になるのでしょう、今度こそこの予測通りになってくれるといいのですが。

 今ふと思ったのですが、二度あることは三度あるとも言いますし、ひょっとしたら東に向かう途中でまたあのモノクロさんと遭遇するかもしれません。

 多分ないでしょうけどね、流石にそんな偶然が何度も続くとは思えないので。

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