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33歳元勇者、旅に出るので探さないでください ~ちびドラゴンを拾って薬草士はじめました~  作者: くれは
山へ入った人が、帰ってこなくなりました

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37/37

37:よく言われます

 街道に戻って、四日歩いた。

 道は平らで、風が横から来る。

 山は、後ろで低くなった。どれがあの山か、もう分からない。


 腰の鉈が、歩くたび当たった。柄はまだ白い。握ると、やはり少し太い。

 背中の糸は、そのままにしてある。自分では抜けない。どこかで、誰かに頼むことになる。


 コゲが肩の上で、荷のほうへ首を伸ばした。

「まだだ」

「きゅーっ」

 こちらを向いて、口を開けた。


 ふすん。


 顔の横を、煙が通っていった。

「やめろ」

 コゲは首を引っ込めて、また前を向いた。


 日が落ちる前に、宿が二軒ある町に着いた。

 安いほうに入った。

 帳場で、紙を出された。

「お名前を」

「トトです」

 書いた。短くて、行の端が余った。

 主人が、覗き込んだ。

「子供みたいな名前だね」

「よく言われます」


 主人がトトの荷物に目をやった。

「薬草士さんかい」

「はい」

「ちょうどよかった。子供が咳をしてね」

 荷から布包みを出して、帳場の板の上で開いた。

 三種類と、二種類。山際で採ったもので、下のほうでは出ない。

 一つ選んで、渡した。

「湯に落として、蓋をしてください。湯気のほうを吸わせて」

「煎じるんじゃないのか」

「それでも効きますが、子供は飲みません」

 主人は笑って、銅貨を置いた。

 残りは、また布に包んだ。

 これで宿代になった。


 部屋は二階の奥だった。

 荷を下ろすと、コゲが寝台の下へ潜り込んで、すぐに出てきた。埃が鼻の脇についている。

 払ってやってから、荷の底に手を入れた。


 不恰好な牛の木彫りだ。角の片方が短い。足も彫りきれていない。

 紐は、自分で通したものではない。

 しばらく眺めて、それから荷へ戻した。


 子供の頃、自分の名前がうまく言えなかった。

 言い違えたほうが、そのまま呼び名になった。

 彼女だけが、最後までそう呼んだ。


 朝、下でパンと豆を食べていると、隣の卓の話が聞こえた。

「山向こうの谷は、まだ道が塞がっとる」

「雪解けまでかかるな」

「婆さんが寝込んどるそうだ。薬売りも入れん」

 トトは、パンをちぎって卓の下へ落とした。

 コゲが飛びついた。

(山向こうの谷、か)

 湿ったところなら、この時期に出る草がある。ついでに見ておいてもいい。


 勘定を済ませて、外へ出た。

 町を抜けると、街道に出る。谷へ入る道は、その先で右に分かれている。


 街道を、男が一人歩いていく。

 肩の上に、小さいのが一匹。


 しばらく行って、右へ折れた。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

更新はいったん停止します。

続きが書けたら、再開します。


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