表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

無言の跳躍26



 無言の跳躍・多宇宙航路編


外宇宙門が開いてから三年

共有観測宇宙は新しい時代へ入っていた

[多宇宙航路時代]

門の向こうには無数の宇宙が存在していた

物理法則が異なる宇宙

時間が逆流する宇宙

生命が光として進化した宇宙

そして、すでに滅びた宇宙も


最初、共有観測連盟は門の封鎖を検討した

危険すぎるからだ

未知の法則

観測汚染

現実侵食

一歩間違えば宇宙そのものが崩壊しかねない

だが、結局人類と多くの文明は進むことを選んだ

いつものように

怖がりながら

失敗しながら


銀河中心[星海中央港]


ユナは巨大な多宇宙航行艦を見上げていた

艦名は[レグルス]

全長三十キロ

文明連盟初の多宇宙航路探査艦

艦体表面には無数の文明紋章が刻まれている

人類だけの船ではない

共有観測宇宙そのものの船だ


「顔が完全に遠足前だな」

直哉が隣で呆れる


ユナは笑う

「人生最大の遠足ですよ」


「宇宙の外に行く遠足なんて聞いたことがない」


「じゃあ初めてです」


そのやり取りを異星乗組員たちが興味深そうに見ている

最近では人類の軽口文化が微妙に広まり始めていた

特に悪影響として


出航前ブリーフィング

議場中央には多宇宙構造図が映し出される

泡状宇宙群

その外側にはさらに巨大な暗黒領域


ユナは息を呑む

「宇宙ってこんなにあるんだ」


最初の観測者が静かに言う

[これでも観測できている範囲だけだ]


会場が静まる

つまり外側はまだ続いている

どこまでも


アシュレイの子孫代表が口を開く

「今回の目的は探査だけではありません」


星図の一部が赤く染まる

[消失宇宙群]


ユナの顔色が変わる


そこでは宇宙祖者もが崩壊し続けていた

共有観測が成立しなかった宇宙たち

孤立し、固定化し、やがて可能性を失った宇宙


直哉が低く呟く

「墓場みたいだな」


その時、共有回線へ静かな波が広がる


ユナは振り返る


観測層からの接続


淡い光の人影


直人が立っていた


以前よりさらに輪郭が薄い

もう半分以上宇宙法則側の存在になっている

だが声は変わらない

[気をつけろ]


ユナは笑う

「はい」


[外宇宙は観測そのものが通用しない領域もある]


直哉が眉をひそめる

「観測できない?」


[存在しても存在として固定されない]


ユナは少し震える

つまり、自分が自分でなくなる可能性


だが直人は続けた

[だから一人で行くな]


文明リンクが艦内へ広がる


乗組員同士

文明同士

互いの存在を支えあう共有観測網

ユナはその暖かさを感じる

怖い、でも、孤独じゃない


そして出航


[レグルス]の巨大リングが回転を始める

門の向こう

外宇宙航路

未知の宇宙群

ユナは操縦席で深呼吸する

「準備完了」


各文明乗組員からの応答

「重力同期完了」

「夢位相接続正常」

「感情翻訳問題なし」


そして最後に直哉

「人類側いつでも無茶できる」


ユナは吹き出す

「それ報告としてどうなんですか」


[レグルス]が門へ突入する


宇宙が裏返った

色が反転し時間が波になる


ユナは叫びそうになった

だが文明リンクが彼女を支える

誰かの存在が自分を現実に固定している


その時、窓の外に別の宇宙が見えた

海だけの宇宙

結晶でできた銀河

音楽として存在する星々


ユナは涙が出そうになる

「綺麗」


だが、その宇宙群のさらに奥、暗黒の中で何かが動いた

比較にならないほど巨大

そして、文明リンクが一斉に警告を発する


[未定義観測反応]


最初の観測者の顔色が初めて変わった

[まさか…]


ユナが震える声で聞く

「なんですか」


最初の観測者は暗黒を見つめたまま静かに答えた

[観測する側だ]


次の瞬間、暗黒の向こうで無数の光が一斉にこちらを見た


まるで、人類たちの宇宙をずっと昔から眺めていた存在たちのように


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ