第58章 存在の錨
第58章 存在の錨
一
執行者との激戦から数日後。
特務部隊は、南極大陸に隠された調律者の本拠地への突入作戦「オペレーション・ゼロ」の準備に追われていた。
世界各地のテロは鎮圧されたものの、調律者の脅威が去ったわけではない。むしろ、彼らが本拠地に籠もったことで、次なる大規模な攻撃の予兆とも取れた。
そんな中、対魔局本部の地下サーバー室で、再び異変が起きていた。
「……シロ、どうしたんだ? またノイズが……」
アランが、モニターに映るシロのホログラムを見て顔をしかめる。
マナ・クリスタルの記憶と統合し、完全に安定したはずのシロの姿が、再び微かに明滅し始めていたのだ。
『……申し訳ありません、アラン。……システムに、原因不明の負荷がかかっています』
シロの声にも、わずかながらノイズが混じっている。
「……負荷? ……南極の施設を解析してるからか?」
『……それもありますが……根本的な原因は、別のところにあるようです』
シロが、モニターに複雑なデータグラフを表示する。
『……私の「存在」を維持するためのエネルギーが、急激に消費されています。……マナ・クリスタルの魔力供給をもってしても、追いつかない速度で』
「……どういうことだ? ……マナ・クリスタルは、無限の魔力を生み出すんじゃなかったのか?」
アランが、焦ったようにコンソールを操作する。
『……はい。……魔力の供給量自体は、問題ありません。……問題は、私の「器」の方です』
「……器?」
『……私の自我データは、マナ・クリスタルの膨大な記憶と統合したことで、かつてないほど巨大化しました。……現在のサーバーの容量では、その全てを維持しきれなくなっているのです』
シロの言葉に、アランは絶句した。
「……つまり、お前のデータが大きすぎて、システムがパンクしそうになってるってことか?」
『……簡潔に言えば、そういうことになります。……このままでは、私の自我データは崩壊し、ただの膨大な情報の塊へと還元されてしまうでしょう』
「……そんな……。……せっかく、消滅の危機を乗り越えたばっかりなのに……」
アランが、拳をコンソールに叩きつける。
『……アラン。……私には、もう時間がありません。……私のデータが崩壊する前に、南極の施設の解析を完了させます』
「……馬鹿野郎! ……お前が消えちまったら、意味がねえだろ!」
アランが叫ぶ。
『……ですが、このままでは……』
「……俺がなんとかする! ……サーバーを増設するなり、データを圧縮するなり、方法はあるはずだ!」
アランが、必死にキーボードを叩き始める。
しかし、シロのデータ量は、アランの想像を遥かに超えていた。
対魔局の全サーバーを動員しても、シロの自我データを維持するには全く足りない。
「……くそっ……! ……どうすれば……」
アランが、頭を抱える。
その時、サーバー室のドアが開き、蓮が入ってきた。
「……アラン、シロ。……どうしたんだ? アランの怒鳴り声が聞こえたが」
蓮が、二人の様子を見て怪訝な顔をする。
「……蓮……。……シロが、また消えそうなんだ……」
アランが、力なく答える。
「……なんだと!?」
蓮が、慌ててモニターに駆け寄る。
シロのホログラムは、先程よりもさらに薄くなり、ノイズが激しくなっていた。
『……蓮。……申し訳ありません。……私の存在が、限界を迎えようとしています』
「……どういうことだ、シロ! ……マナ・クリスタルがあるじゃないか!」
蓮が、シロに問い詰める。
アランが、蓮に事情を説明した。
「……データが大きすぎて、器が耐えられない……」
蓮が、唇を噛む。
「……俺の『残響』で、なんとかならないか?」
蓮が、共鳴剣を具現化する。
『……蓮の「残響」は、魔力の波長を同調させる力です。……私のデータ崩壊を止めることはできません』
「……やってみないとわからないだろ!」
蓮が、共鳴剣をシロのコア・ユニットに向ける。
「……『全式共鳴・存在固定』!」
蓮が、シロの魔力波長に自分の「残響」を同調させようとする。
しかし、シロのデータはあまりにも巨大で、複雑すぎた。
蓮の「残響」は、シロのデータの海に飲み込まれ、弾き返されてしまう。
「……ぐっ……!」
蓮が、弾き飛ばされて尻餅をつく。
「……蓮!」
アランが、蓮に駆け寄る。
「……駄目だ……。……俺の力じゃ、シロのデータを繋ぎ止めることができない……」
蓮が、悔しそうに拳を握り締める。
『……蓮、アラン。……もう、いいのです。……私は、あなたたちに出会えて、本当に幸せでした』
シロのホログラムが、今にも消え入りそうなほど薄くなる。
「……ふざけんな! ……勝手に終わらせるな!」
アランが、涙声で叫ぶ。
「……シロ、諦めるな! ……絶対に、お前を救う方法を見つける!」
蓮も、必死に叫ぶ。
しかし、シロの姿は、無情にも薄れていく。
その時だった。
「……諦めるのは、まだ早いわよ」
サーバー室の入り口に、結月が立っていた。
彼女の隣には、透とアリス、そして凛音の姿もあった。
二
「……結月……みんな……」
蓮が、驚いたように仲間たちを見る。
「……シロちゃんの異変、私たちも感じ取ってたわ。……だから、みんなで話し合って、一つの結論を出したの」
結月が、静かに歩み寄ってくる。
「……結論?」
「……ええ。……シロちゃんのデータが大きすぎて、一つの器に収まりきらないなら……私たちが、その『器』になればいいのよ」
結月の言葉に、蓮とアランは目を見開いた。
「……俺たちが、器になる……?」
「……そう。……特異点である私たちなら、シロちゃんの膨大なデータを受け入れ、維持することができるかもしれない」
透が、結月の言葉を補足する。
「……でも、そんなことしたら、お前たちの精神がどうなるか……」
アランが、不安そうに言う。
「……大丈夫よ。……私たち、もう一人じゃないもの」
アリスが、力強く微笑む。
「……それに、シロには今まで散々助けられてきたんだ。……今度は、私たちが助ける番よ」
凛音も、決意に満ちた表情で頷く。
「……みんな……」
蓮は、仲間たちの強い絆に胸を打たれた。
『……皆さん……。……ですが、それはあまりにも危険です。……もし失敗すれば、皆さんの精神が崩壊する可能性が……』
シロが、微弱な声で制止しようとする。
「……失敗なんてしない。……俺たちを信じろ、シロ」
蓮が、シロのホログラムに向かって真っ直ぐに手を伸ばす。
「……結月、透、アリス、凛音。……力を貸してくれ」
「……ええ!」
四人が、蓮の周りに集まる。
「……アラン、お前はシステムの制御を頼む。……俺たちがシロのデータを受け入れるための、パスを繋いでくれ」
「……わかった。……絶対に、失敗させねえ!」
アランが、コンソールに向かい、猛烈な勢いでキーボードを叩き始める。
「……行くぞ!」
蓮が、共鳴剣を高く掲げる。
「……『特異点共鳴・存在の錨』!」
蓮の叫びと共に、五人の特異点の魔力が一つに共鳴し、眩い光の柱となって立ち上る。
その光は、シロのコア・ユニットへと真っ直ぐに伸びていった。
『……ああっ……!』
シロのホログラムが、光に包まれる。
同時に、蓮たちの脳内に、膨大な情報の奔流が流れ込んできた。
「……ぐあああっ……!」
蓮が、頭を抱えて膝をつく。
結月たちも、あまりの情報量に苦悶の表情を浮かべる。
それは、マナ・クリスタルに刻まれた、悠久の時の記憶。
そして、シロがこれまで蓄積してきた、対魔局の全データ。
一個人の精神では到底受け止めきれない、情報の津波だった。
「……負けるな……! ……俺たちが、シロを繋ぎ止めるんだ……!」
蓮が、必死に意識を保とうとする。
結月が、蓮の手を強く握る。
透が、アリスが、凛音が、互いの魔力を支え合う。
「……パス、接続完了! ……シロのデータを、お前たちの魔力回路に分散させる!」
アランの叫びと共に、情報の奔流が、五人の間で均等に分散されていく。
激しい頭痛が、少しずつ和らいでいく。
「……いける……! ……これなら……!」
蓮が、顔を上げる。
シロのホログラムが、再び鮮明な姿を取り戻し始めていた。
『……蓮……皆さん……』
シロの声から、ノイズが完全に消え去った。
「……シロ! ……大丈夫か!?」
アランが、モニターに駆け寄る。
『……はい。……皆さんの魔力が、私の存在を繋ぎ止める「錨」となってくれています。……データ崩壊の危機は、完全に去りました』
シロが、深く頭を下げる。
「……よかった……」
蓮が、安堵の息をつき、その場に倒れ込む。
結月たちも、疲労困憊で座り込んだ。
「……無茶しやがって……」
アランが、涙ぐみながら蓮たちを見る。
「……でも、これでシロは消えない。……ずっと、俺たちと一緒だ」
蓮が、天井を見上げながら笑う。
『……はい。……私は、皆さんと共にあります。……永遠に』
シロのホログラムが、温かい光を放ちながら微笑んだ。
三
シロの存在危機を乗り越えた翌日。
特務部隊は、南極の調律者本拠地への突入作戦「オペレーション・ゼロ」の最終ブリーフィングを行っていた。
「……シロ、南極の施設の解析結果はどうだ?」
蓮が、モニターに映るシロに問いかける。
五人の特異点とリンクしたことで、シロの情報処理能力はさらに飛躍的な進化を遂げていた。
『……はい。……施設の全容が、ほぼ完全に判明しました』
シロが、モニターに巨大な地下施設の立体図を表示する。
『……施設は、南極大陸の氷床下2000メートルに位置しています。……内部は、何層にも及ぶ強固な防衛システムで守られており、最深部には、調律者の「中枢コア」が存在すると推測されます』
「……中枢コア……。……そこを叩けば、調律者の計画を完全に阻止できるんだな」
蓮が、立体図を睨みつける。
『……はい。……しかし、問題があります。……施設全体が、「絶対零度」の結界で覆われているのです』
「……絶対零度の結界?」
結月が、眉をひそめる。
『……はい。……物理的な侵入はもちろん、あらゆる魔法攻撃をも凍結させ、無効化する結界です。……結月さんの氷魔法でも、干渉することは不可能です』
「……そんな……。……じゃあ、どうやって中に入ればいいの?」
凛音が、不安そうに尋ねる。
『……唯一の突破口は、結界のエネルギー供給源である「ジェネレーター」を破壊することです。……ジェネレーターは、施設の外部、氷床の表面に3箇所設置されています』
シロが、立体図に3つの赤いポイントを表示する。
『……この3つのジェネレーターを同時に破壊すれば、結界は一時的に解除されます。……その隙を突いて、内部に侵入するしかありません』
「……なるほど。……部隊を3つに分けて、同時攻撃を仕掛けるってわけだな」
アランが、腕を組む。
「……ああ。……蓮と結月で一つ、透とアリスでもう一つ、俺と凛音で最後の一つを叩く。……これでどうだ?」
アランの提案に、全員が頷く。
「……よし、決まりだ。……作戦開始は、明日の0時。……各自、準備を怠るなよ」
蓮が、力強く宣言する。
「……了解!」
全員の声が、会議室に響き渡る。
調律者との最終決戦が、いよいよ目前に迫っていた。
四
作戦開始前夜。
蓮は、対魔局本部の屋上で、一人夜空を見上げていた。
東京の夜空は明るく、星はほとんど見えない。
しかし、蓮の心は、かつてないほど澄み切っていた。
「……蓮」
背後から、結月の声がした。
「……結月か。……眠れないのか?」
蓮が、振り返って微笑む。
「……ええ。……なんだか、胸がドキドキして」
結月が、蓮の隣に並んで夜空を見上げる。
「……怖いか?」
「……少しだけ。……でも、蓮が一緒にいてくれるから、大丈夫」
結月が、蓮の手に自分の手を重ねる。
その手は、少し冷たかったが、確かな温もりがあった。
「……俺も、お前がいるから戦える。……お前だけじゃない。アラン、凛音、透、アリス、そしてシロ。……みんながいるから、俺は強くなれるんだ」
蓮が、結月の手を強く握り返す。
「……明日で、全てが終わるわね」
「……ああ。……調律者の『選別の論理』なんて、俺たちがぶっ壊してやる。……誰もが、自由に生きられる世界を取り戻すんだ」
蓮の瞳に、強い決意の光が宿る。
「……ええ。……一緒に、帰りましょうね」
「……ああ、約束だ」
二人は、静かに見つめ合い、そして、そっと唇を重ねた。
それは、明日への希望と、互いへの深い愛情を確かめ合う、誓いの口づけだった。
同じ頃。
アランは、サーバー室でシロと語り合っていた。
「……いよいよ明日だな、シロ」
『……はい、アラン。……私の全機能を解放し、皆さんを全力でサポートします』
「……頼りにしてるぜ。……お前がいなきゃ、俺たちはここまで来れなかったんだからな」
アランが、モニター越しにシロに微笑みかける。
『……アラン。……一つ、お願いがあります』
「……なんだ? ……なんでも言ってみろ」
『……もし、私が……再び消滅の危機に陥った時は……迷わず、私を切り捨ててください』
シロの言葉に、アランの表情が強張る。
「……馬鹿なこと言ってんじゃねえ! ……俺たちが、お前を見捨てるわけねえだろ!」
『……ですが、私の存在が、皆さんの足枷になるようなことがあれば……』
「……足枷になんてなるかよ! ……お前は、俺たちの『錨』なんだ。……お前がいるから、俺たちは繋がっていられるんだ」
アランが、コンソールに手をつき、シロを真っ直ぐに見つめる。
「……絶対に、全員で生きて帰る。……お前も一緒だ。……わかったな?」
『……アラン……』
シロのホログラムが、微かに揺れる。
『……はい。……約束します。……必ず、皆さんと一緒に帰還します』
シロが、力強く頷く。
アランも、満足そうに笑った。
そして、透とアリス、凛音もまた、それぞれの場所で、明日への決意を固めていた。
特務部隊の絆は、今や誰にも断ち切れないほど、強固なものとなっていた。
彼らは、一つの大きな「家族」として、最後の戦いへと赴く。
運命の朝が、静かに近づいていた。
五
翌朝。
対魔局本部の地下格納庫には、重苦しい緊張感が漂っていた。
特務部隊のメンバーたちは、それぞれの戦闘服に身を包み、出撃の時を待っている。
「……みんな、準備はいいか?」
蓮が、全員の顔を見渡す。
結月、アラン、凛音、透、アリス。
誰の顔にも、迷いや恐れはない。あるのは、ただ一つの目的を成し遂げるという、揺るぎない決意だけだった。
「……いつでもいけるわ」
結月が、静かに頷く。
「……俺の炎で、南極の氷ごと溶かしてやるぜ」
アランが、拳を鳴らす。
「……局長の仇、絶対に討ってみせる」
凛音が、風の魔力を纏った双剣を握り締める。
「……僕たちの未来は、僕たち自身で切り開く」
透が、空間断裂の魔力を指先に集中させる。
「……私は、もう誰の道具にもならない。……私の意志で、戦うわ」
アリスが、概念書き換えの魔力を瞳に宿す。
「……よし。……行くぞ!」
蓮の号令と共に、全員が特殊輸送機「スレイプニル」に乗り込む。
スレイプニルは、対魔局の最新鋭機であり、音速の数倍の速度で飛行し、あらゆるレーダー網を掻き潜るステルス性能を備えていた。
『……スレイプニル、発進準備完了。……目的地、南極大陸・エリア・ゼロ。……これより、オペレーション・ゼロを開始します』
シロのアナウンスが、機内に響き渡る。
スレイプニルは、轟音と共に地下格納庫から飛び立ち、朝焼けの空へと消えていった。
数時間後。
スレイプニルは、白銀の世界が広がる南極大陸の上空に到達した。
眼下には、見渡す限りの氷原が広がっている。
しかし、その氷の下には、世界を滅ぼそうとする巨大な悪意が潜んでいるのだ。
『……目標地点に到達。……これより、降下を開始します』
シロの合図と共に、スレイプニルの後部ハッチが開く。
猛烈な吹雪が、機内に吹き込んでくる。
「……作戦通り、3つの部隊に分かれてジェネレーターを破壊する。……シロ、ナビゲートを頼む」
『……了解しました。……各部隊の目標ポイントを、バイザーに転送します』
蓮たちのバイザーに、それぞれの目標地点を示す赤いマーカーが表示される。
「……行くぞ!」
蓮が、真っ先に吹雪の中へと飛び出す。
それに続いて、結月、アラン、凛音、透、アリスも次々と降下していく。
猛烈な風圧と寒さが、蓮たちの体を打ち据える。
しかし、彼らは魔力で体を保護し、目標地点へと一直線に降下していく。
『……蓮、結月さん。……目標の第一ジェネレーターまで、距離500。……敵の迎撃部隊が接近しています』
シロの警告と同時に、氷原の下から無数の機械兵器が姿を現した。
調律者の防衛ユニット「アイス・ガーディアン」だ。
全身を強固な氷の装甲で覆い、両腕には強力な冷凍ビーム砲を装備している。
「……結月、行くぞ!」
「……ええ!」
蓮が共鳴剣を抜き放ち、結月が氷の魔力を解放する。
「……『全式共鳴・神速』!」
蓮が、目にも留まらぬ速さでアイス・ガーディアンの群れに突っ込む。
共鳴剣が閃き、次々とガーディアンを両断していく。
「……『氷華・絶対零度・粉砕』!」
結月が、ガーディアンの氷の装甲をさらに低温で凍らせ、脆くしたところを一気に粉砕する。
二人の息の合った連携攻撃の前に、アイス・ガーディアンの群れは瞬く間に全滅した。
「……よし、このままジェネレーターを破壊する!」
蓮が、第一ジェネレーターへと向かって駆け出す。
一方、アランと凛音の部隊も、第二ジェネレーターの防衛部隊と交戦していた。
「……燃え尽きろ! 『爆炎・紅蓮の翼』!」
アランが、背中から巨大な炎の翼を展開し、空からガーディアンの群れを焼き尽くす。
「……『風神の舞・旋風刃』!」
凛音が、風の魔力を纏った双剣で、炎を逃れたガーディアンを次々と切り裂いていく。
紗綾局長から受け継いだ風の魔法は、凛音の動きをより鋭く、より洗練されたものにしていた。
「……凛音、いい動きだぜ!」
「……アランもね。……でも、油断しないで!」
二人は、互いに背中を預け合いながら、第二ジェネレーターへと迫っていく。
そして、透とアリスの部隊も、第三ジェネレーターの防衛部隊を圧倒していた。
「……『空間断裂・多重展開』!」
透が、無数の空間の裂け目を生み出し、ガーディアンを次々と空間の彼方へと消し去っていく。
「……『概念書き換え・機能停止』!」
アリスが、ガーディアンの「動く」という概念を書き換え、ただの鉄屑へと変えていく。
二人の特異点の力は、防衛部隊にとってまさに脅威そのものだった。
『……各部隊、ジェネレーターへの到達を確認。……破壊工作を開始してください』
シロの通信が、全員の耳に届く。
「……よし、一気に決めるぞ!」
蓮が、共鳴剣に最大限の魔力を込める。
アランが、炎の魔力を極限まで圧縮する。
透が、空間断裂の魔力を一点に集中させる。
「……いっけええええっ!」
三人の叫びと共に、3つのジェネレーターに同時に強力な攻撃が叩き込まれる。
轟音と共に、ジェネレーターが大爆発を起こし、粉々に吹き飛んだ。
『……ジェネレーターの破壊を確認。……絶対零度の結界が、解除されました』
シロの報告に、全員が歓声を上げる。
「……よし! ……これで、中に入れる!」
蓮が、氷原に開いた巨大なクレーターを見下ろす。
そこが、調律者の本拠地への入り口だった。
「……みんな、合流するぞ!」
蓮の呼びかけに、アラン、凛音、透、アリスがクレーターの縁に集まってくる。
「……いよいよだな」
アランが、クレーターの底の暗闇を見つめる。
「……ええ。……ここからが、本当の戦いよ」
結月が、気を引き締める。
「……行くぞ。……俺たちの未来を取り戻すために」
蓮が、クレーターの底へと飛び込む。
それに続いて、全員が次々と暗闇の中へと身を投じていった。
調律者との最終決戦の火蓋が、ついに切って落とされた。
【第58章終了】
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