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残響魔術(エコー・コード)  作者: 天音シオン
第三部  調律者と世界の真実

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第51章 世界政府の正体

第51章 世界政府の正体



中枢星の内部通路で、蓮たちは異形の怪物「模倣体ミミック」の変異種と対峙していた。


四つの腕と三つの顔を持つその怪物は、観測者たちが合体して生まれただけあり、放つプレッシャーは桁違いだった。


「……来るぞ!」


蓮の叫びと同時に、模倣体が四つの腕を振り下ろす。

その腕から、それぞれ異なる属性の魔法が放たれた。

炎、氷、雷、そして重力。


「……『氷のアイス・シールド』!」


結月が、咄嗟に巨大な氷の盾を展開する。

しかし、四つの魔法が同時に直撃した瞬間、氷の盾は粉々に砕け散った。


「……くっ……!」


結月が、衝撃で吹き飛ばされる。


「……結月!」


蓮が、結月を庇うように前に出る。


「……こいつ、ただの合体兵器じゃない! ……俺たちの魔法を『模倣』してやがる!」


アランが、大剣で雷の魔法を弾き返しながら叫ぶ。


「……どういうこと?」


凛音が、銃を構えながら尋ねる。


「……さっきの炎は俺の魔法、氷は結月、雷は凛音の銃弾の属性、そして重力は……おそらく、教団の連中の魔法をコピーしたんだ!」


アランの言葉に、蓮は顔をしかめる。


「……相手の魔法をコピーして、自分の力にするってことか。……厄介な能力だな」


「……『全式共鳴・神速』!」


蓮が、目にも留まらぬ速さで模倣体の背後に回り込み、共鳴剣を振り下ろす。

しかし、模倣体は背中にも顔があり、蓮の動きを完全に捉えていた。


ガキィィィンッ!


模倣体の腕が、蓮の剣を弾き返す。


「……硬い……!」


蓮が、舌打ちをする。


『……蓮さん、模倣体の装甲は、空間の法則を歪めて硬度を増しています! ……物理攻撃だけでは、ダメージを与えられません!』


通信機から、シロの声が響く。


「……なら、どうすればいいんだ!」


「……アルテミスの中で待機している、透くんとアリスちゃんの力が必要です! ……彼らの特異点の力で、空間の歪みを打ち消してください!」


「……分かった! ……透、アリス、聞こえるか!」


蓮が、通信機に向かって叫ぶ。


『……はい、聞こえています!』

『……いつでもいけるよ!』


アルテミスの中から、二人の声が返ってくる。


「……俺たちが隙を作る! ……その瞬間に、あいつの空間の歪みをぶっ壊してくれ!」


『……了解!』


蓮の指示を受け、アランと凛音が動き出す。


「……うおおおおっ! ……『爆炎斬エクスプロージョン・スラッシュ』!」


アランが、大剣に炎を纏わせ、模倣体の正面から斬りかかる。


「……『雷光弾ライトニング・バレット』!」


凛音が、雷の属性を付与した銃弾を、模倣体の関節部分に正確に撃ち込む。


二人の猛攻に、模倣体の動きが一瞬だけ止まる。


「……今だ、透、アリス!」


蓮が、叫ぶ。


『……『空間断裂』!』

『……『概念書き換え・装甲解除』!』


アルテミスの中から、透とアリスの魔法が放たれる。

透の空間断裂が、模倣体の周囲の空間の歪みを切り裂き、アリスの概念書き換えが、模倣体の装甲の硬度を無効化する。


「……これで、終わりだ!」


蓮が、共鳴剣に全ての魔力を集中させる。


「……『特異点共鳴・真理解放アブソリュート・リンク』!」


蓮の剣から、眩い光の刃が伸びる。

それは、あらゆる法則を切り裂く、究極の一撃だった。


ズバァァァァンッ!!


光の刃が、模倣体の巨体を真っ二つに両断する。

模倣体は、断末魔の叫びを上げる間もなく、光の粒子となって消滅した。


「……ふぅ……。……なんとかなったな」


蓮が、共鳴剣を下ろし、息を吐く。


「……ええ。……でも、まだ先は長そうね」


結月が、立ち上がりながら言う。


「……ああ。……油断は禁物だ」


蓮たちは、再びアルテミスに乗り込み、中枢星のさらに奥深くへと進んでいった。



アルテミスが迷宮エリアを抜け、巨大な空間に出た時、シロのナビゲーションが警告音を鳴らした。


『……蓮さん、前方に巨大なエネルギー反応! ……これは……!』


シロの声が、驚愕に震えている。


「……どうした、シロ?」


蓮が、モニターを覗き込む。


モニターには、巨大な空間の中央に浮かぶ、巨大な球体が映し出されていた。

球体は、青白い光を放ちながら、ゆっくりと回転している。


『……あれが、中枢星の「コア」……調律者の本体が存在する場所です!』


「……ついに、辿り着いたか」


蓮が、操縦桿を強く握り締める。


しかし、コアの周囲には、これまでの防衛ユニットとは比べ物にならないほどの、圧倒的なプレッシャーを放つ存在が浮かんでいた。


それは、人間の形をしているが、全身が光り輝いており、顔には目も鼻も口もなかった。


『……あれが、最終防衛ライン……「幻影ファントム」です!』


シロが、叫ぶ。


「……幻影……。……精神攻撃を仕掛けてくるってやつか」


アランが、大剣を構える。


「……みんな、気をしっかり持て。……何を見せられても、惑わされるなよ」


蓮が、仲間たちに声をかける。


アルテミスが、幻影に近づいていく。

その瞬間、蓮たちの意識が、真っ白な光に包まれた。



蓮が目を覚ますと、そこは中枢星の内部ではなく、見覚えのある場所だった。


「……ここは……」


蓮が、周囲を見渡す。

そこは、蓮が幼い頃に住んでいた、実家のリビングだった。


「……蓮、どうしたの? ……そんなところでぼーっとして」


キッチンから、エプロン姿の女性が顔を出す。


「……母さん……?」


蓮の目が、大きく見開かれる。

そこにいたのは、蓮が幼い頃に病気で亡くなったはずの、母親だった。


「……ほら、早く手を洗ってきなさい。……もうすぐ、お父さんも帰ってくるわよ」


母親が、優しく微笑む。


「……母さん……。……生きて、るのか……?」


蓮が、震える声で尋ねる。


「……何言ってるの? ……変な子ね」


母親が、不思議そうな顔をする。


その時、玄関のドアが開く音がした。


「……ただいまー」


「……お父さん!」


蓮が、玄関に駆け寄る。

そこに立っていたのは、間違いなく、蓮の父親・誠一だった。


「……おお、蓮。……いい子にしてたか?」


誠一が、蓮の頭を撫でる。


「……父さん……! ……父さんっ……!」


蓮は、誠一の胸に飛び込み、号泣した。


「……おいおい、どうしたんだ? ……男の子が、そんなに泣くもんじゃないぞ」


誠一が、困ったように笑いながら、蓮の背中を撫でる。


「……だって……。……だって、父さんは……」


蓮は、言葉を続けることができなかった。

父が死んだこと、自分が対魔局に入ったこと、そして、調律者と戦っていること。

それら全てが、悪い夢だったのではないかという錯覚に陥りそうになる。


「……蓮。……もう、戦わなくていいんだよ」


誠一が、蓮の耳元で優しく囁く。


「……え……?」


「……お前は、普通の男の子として、平和に生きていけばいい。……魔法なんて、もう必要ないんだ」


誠一の言葉に、蓮の心が揺らぐ。


(……そうだ。……俺は、ただ家族と一緒に、平和に暮らしたかっただけだ。……戦いなんて、もう嫌だ……)


蓮の意識が、甘い誘惑に飲み込まれそうになる。


しかし、その時。


『……蓮くん! ……目を覚まして!』


頭の中に、結月の声が響いた。


「……結月……?」


『……それは、幻影が見せている幻よ! ……あなたの本当の居場所は、そこじゃない!』


結月の声が、蓮の意識を現実に引き戻す。


「……そうだ。……俺は、みんなと約束したんだ。……絶対に、生きて帰るって」


蓮が、誠一の胸から離れる。


「……蓮? ……どうしたんだ?」


誠一が、不思議そうな顔をする。


「……ごめん、父さん。……俺、行かなくちゃ」


蓮が、涙を拭い、真っ直ぐに誠一の目を見る。


「……俺には、守らなきゃいけない仲間がいる。……そして、倒さなきゃいけない敵がいるんだ」


「……蓮……」


「……父さんの想いは、俺が引き継ぐ。……だから、見守っていてくれ」


蓮が、微笑む。


その瞬間、誠一と母親の姿が、光の粒子となって消え去った。

そして、実家のリビングの風景も崩れ去り、蓮は再び、中枢星の内部へと戻ってきた。



「……はぁっ……!」


蓮が、息を吹き返す。

隣を見ると、アラン、凛音、結月、透、アリスも、それぞれが幻影の精神攻撃から抜け出し、息を荒げていた。


「……みんな、無事か?」


蓮が、声をかける。


「……ああ。……危うく、昔の仲間の幻影に飲み込まれそうになったぜ」


アランが、冷や汗を拭う。


「……私も。……死んだ家族の幻影を見せられたわ」


凛音が、唇を噛む。


「……でも、みんな、自分の意志で戻ってこれた。……私たちの絆は、幻影なんかに負けないわ」


結月が、力強く言う。


「……ええ。……僕も、もう迷いません」

「……私も、お兄ちゃんたちと一緒に行く!」


透とアリスも、決意の表情を浮かべる。


「……よし。……幻影の精神攻撃は、もう通じない。……一気にコアを叩くぞ!」


蓮が、アルテミスの操縦桿を握り直す。


幻影が、再び光を放ち、アルテミスに向かって突進してくる。

しかし、迷いを断ち切った蓮たちの前には、もはや敵ではなかった。


「……『特異点共鳴・三位一体トリニティ・リンク』!」


蓮、透、アリスの三人が、再び魔力を共鳴させる。

アルテミスの魔導砲から、先ほどよりもさらに強力な光線が発射された。


光線は、幻影の光を打ち消し、その体を貫いた。


「……これで、終わりだ!」


蓮の叫びと共に、幻影は完全に消滅した。


『……最終防衛ラインの突破を確認! ……コアへのルート、クリアです!』


シロのアナウンスが響く。


「……行くぞ!」


アルテミスは、巨大な球体……中枢星のコアへと向かって、一直線に進んでいった。



アルテミスがコアに接近すると、コアの表面が開き、内部へと続く通路が現れた。

蓮たちは、アルテミスを降り、生身でコアの内部へと足を踏み入れた。


コアの内部は、外観の無機質な金属とは異なり、まるで巨大な生物の体内のような、有機的な構造をしていた。

壁や床には、血管のような管が張り巡らされ、青白い光が脈打つように流れている。


「……なんだ、ここは……。……生き物の中みたいだ」


アランが、周囲を見渡しながら顔をしかめる。


「……調律者の本体は、この奥にいるはずよ」


結月が、警戒を怠らずに進む。


しばらく進むと、通路は巨大なドーム状の空間へと繋がっていた。

空間の中央には、巨大なクリスタルのような物体が浮かんでおり、その中には、人間の脳のような形をした発光体が収まっていた。


「……あれが、調律者の本体……?」


凛音が、息を呑む。


その時、空間全体に、機械的で無機質な声が響き渡った。


『……よくぞここまで辿り着いた、特異点たちよ』


「……誰だ!」


蓮が、共鳴剣を構える。


『……我々は、調律者。……この世界の法則を管理し、人類の進化を導く者』


声は、クリスタルの中の発光体から発せられているようだった。


「……人類の進化だと? ……ふざけるな! ……お前たちは、ただ人間を自分たちの都合のいいように選別して、殺そうとしているだけじゃないか!」


蓮が、怒りを露わにする。


『……選別は、進化のために必要なプロセスだ。……魔法適性のない劣等な個体を排除し、優れた魔法生命体のみを残す。……それが、この宇宙の意志であり、我々の使命だ』


調律者の声には、一切の感情がこもっていなかった。


「……そんなの、ただの虐殺だ! ……俺たちは、お前たちの勝手な計画を止めるためにここに来たんだ!」


アランが、大剣を突きつける。


『……愚かな。……我々の計画は、すでに最終段階に入っている。……お前たちが何をしようと、もう手遅れだ』


調律者の言葉と共に、クリスタルが激しく発光し始めた。


『……シロさん、コアのエネルギー値が急上昇しています! ……このままでは、地球に向けて巨大な魔法エネルギーが発射されます!』


通信機から、シロの悲痛な叫びが響く。


「……させない! ……『全式共鳴・限界突破』!」


蓮が、共鳴剣に全ての魔力を込め、クリスタルに向かって斬りかかる。


しかし、クリスタルの周囲には、強力な結界が張られており、蓮の剣は弾き返されてしまった。


「……くそっ! ……硬すぎる!」


蓮が、体勢を立て直す。


『……無駄だ。……我々の結界は、この世界の法則そのもの。……お前たちの力では、決して破ることはできない』


調律者が、冷酷に告げる。


「……法則なら、書き換えればいい!」


アリスが、前に出る。


「……『概念書き換え・結界無効化』!」


アリスが、特異点の力を解放し、結界の概念そのものを書き換えようとする。

しかし、調律者の結界は、アリスの力をもってしても、完全に無効化することはできなかった。


「……アリスの力でも、ダメなのか……!」


透が、焦りの表情を浮かべる。


『……特異点とはいえ、所詮は我々が創り出した実験体の一部に過ぎない。……創造主に逆らうことは、不可能なのだ』


調律者の声が、空間に響き渡る。


地球へのエネルギー発射まで、残された時間はあとわずか。

蓮たちは、絶体絶命の危機に立たされていた。





【第51章終了】



「……諦めるな!」


蓮が、仲間たちを鼓舞するように叫ぶ。


「……俺たちは、ここまでたくさんの犠牲を払って、たくさんの想いを背負ってやってきたんだ! ……こんなところで、終わらせるわけにはいかない!」


蓮の言葉に、アラン、凛音、結月、透、アリスが、再び闘志を燃やす。


「……そうね。……ここで負けたら、天野博士や、今まで死んでいった人たちに顔向けできないわ」


結月が、氷の槍を創り出す。


「……俺たちの力、全部ぶつけてやる!」


アランが、大剣を構え直す。


「……私も、最後まで戦う!」


凛音が、銃のエネルギーを最大までチャージする。


「……僕も、お兄ちゃんたちと一緒に!」

「……私も、負けない!」


透とアリスも、特異点の力を極限まで高める。


「……行くぞ! ……全員で、あの結界をぶち破る!」


蓮の号令と共に、五人が一斉に攻撃を仕掛ける。


アランの爆炎斬、凛音の雷光弾、結月の氷槍、透の空間断裂、アリスの概念書き換え。

五人のありったけの魔力が、調律者の結界に激突する。


激しい閃光と轟音が、空間を揺るがす。


しかし、結界はヒビ一つ入らない。


『……無駄な抵抗だ。……我々の力は、絶対なのだ』


調律者の声が、嘲笑うかのように響く。


「……まだだ! ……まだ、終わってない!」


蓮が、共鳴剣を構えたまま、結界に突進する。


「……蓮!」


結月が、叫ぶ。


蓮は、結界に剣を突き立て、全身の魔力を注ぎ込む。


「……うおおおおおおっ!!」


蓮の叫びと共に、共鳴剣が激しく発光する。

それは、蓮自身の魔力だけでなく、仲間たちの魔力、そして、地球で待つ人々の想いが共鳴した光だった。


「……『特異点共鳴・心魂解放ソウル・リンク』!!」


蓮が、氷室との戦いで開眼した新技を、さらに強力な形で発動する。


蓮の魔力が、結界の波長と完全に同調し、結界そのものを内部から崩壊させようとする。


『……な、何!? ……我々の結界が、共鳴しているだと……!?』


調律者の声に、初めて焦りの色が混じる。


「……いっけえええええっ!!」


蓮が、渾身の力を込めて剣を押し込む。


パァァァァンッ!!


ついに、調律者の絶対的な結界が、ガラスのように砕け散った。


「……やった!」


アランが、歓声を上げる。


「……今だ、蓮!」


結月が、叫ぶ。


蓮は、結界が消滅した隙を突き、クリスタルに向かって跳躍する。


「……これで、終わりだあああっ!!」


蓮の共鳴剣が、クリスタルの中の発光体……調律者の本体を貫いた。


『……バ、カナ……。……我々ガ、実験体ニ、敗レル、ナンテ……』


調律者の声が、ノイズ混じりに途切れる。


クリスタルが激しく明滅し、やがて、巨大な爆発と共に粉々に砕け散った。



調律者の本体が破壊された瞬間、中枢星全体が激しく揺れ始めた。


『……蓮さん! ……コアの破壊を確認しました! ……しかし、中枢星の崩壊が始まっています! ……急いで脱出してください!』


シロの緊迫した声が響く。


「……みんな、アルテミスに戻るぞ!」


蓮が、仲間たちに指示を出す。


崩れ落ちる瓦礫を避けながら、蓮たちはアルテミスへと急ぐ。


「……急げ! ……もうすぐ、ここが完全に崩壊する!」


アランが、最後尾で仲間たちを急かす。


全員がアルテミスに乗り込んだ瞬間、中枢星の内部で大爆発が起きた。


「……シロ、発進だ!」


蓮が、操縦席に飛び乗る。


『……了解! ……アルテミス、最大推力で離脱します!』


アルテミスは、崩壊する中枢星から間一髪で脱出し、宇宙空間へと飛び出した。


背後で、中枢星が巨大な光の球となって爆発し、宇宙の塵となって消え去っていく。


「……終わった……のか?」


アランが、モニターを見つめながら呟く。


「……ええ。……調律者は、完全に消滅したわ」


結月が、安堵の息を吐く。


「……やったね、お兄ちゃん!」

「……僕たち、勝ったんだね!」


アリスと透が、抱き合って喜ぶ。


「……ああ。……俺たちの、勝ちだ」


蓮が、操縦席に深く寄りかかり、目を閉じる。


長く、苦しかった戦いが、ついに終わったのだ。


アルテミスは、地球へと向かって帰還の途についた。



地球に帰還した蓮たちを待っていたのは、世界中からの歓喜の声だった。


調律者の脅威が去り、世界は再び平和を取り戻した。

対魔局は、世界政府の管理下から離れ、独立した平和維持組織として再編されることになった。


蓮たちは、世界を救った英雄として称えられたが、彼ら自身は、これまでと変わらない日常を望んでいた。


数日後。

対魔局本部の屋上で、蓮と結月が並んで立っていた。


「……終わったな、本当に」


蓮が、青空を見上げながら言う。


「……ええ。……でも、これからが本当の始まりよ。……魔法という力と、どう向き合っていくか。……世界は、新しい課題に直面することになるわ」


結月が、静かに答える。


「……そうだな。……でも、俺たちなら、きっと乗り越えられるさ」


蓮が、結月に向かって微笑む。


「……ええ。……あなたがいれば、きっと」


結月も、蓮に微笑み返す。


二人は、そっと手を繋ぎ、これからの未来へと歩み出していくのだった。






帰還から三日後。

対魔局本部の会議室に、蓮たちと紗綾局長が集まっていた。


「……シロが、中枢星のデータを解析しました。……衝撃的な事実が判明しています」


紗綾局長が、重い口を開く。


「……何が分かったんですか?」


蓮が、前のめりになる。


「……調律者の正体です。……彼らは、宇宙から来た存在でも、超自然的な神でもありませんでした。……調律者とは、国連の中枢に潜む秘密結社の名称だったのです」


紗綾局長の言葉に、会議室が静まり返る。


「……国連に……?」


凛音が、息を呑む。


「……ええ。……彼らは、五十年以上前から国連の主要機関に入り込み、世界の政治・経済・科学を陰で操ってきました。……魔法発現も、彼らが引き起こした人為的な計画でした」


「……じゃあ、最初から全部、あいつらの筋書き通りだったってことか……」


アランが、拳を握り締める。


「……そうです。……調律者の目的は、魔法適性を持つ人間だけを生き残らせ、自分たちが支配する『新世界』を作ること。……魔法発現は、その選別プロセスの第一段階に過ぎませんでした」


「……許せない……!」


透が、静かな怒りを滲ませる。


「……しかし、今回の戦いで、調律者の中枢は完全に壊滅しました。……残党の処理は、世界各国の政府と連携して進めています。……世界は、ようやく本当の意味で、自由を取り戻しつつあります」


紗綾局長が、蓮たちを見渡す。


「……あなたたちのおかげです。……本当に、ありがとう」


紗綾局長が、深々と頭を下げる。


「……頭を上げてください、局長。……俺たちは、ただ自分たちにできることをしただけです」


蓮が、照れくさそうに言う。


「……でも、一つだけ気になることがあります」


結月が、手を挙げる。


「……なんですか、結月さん?」


「……調律者の残党が、まだ世界各地に潜伏している可能性があります。……そして、魔法という力が世界に広まった以上、新たな脅威が生まれることも考えられます。……対魔局の役割は、まだ終わっていないのではないでしょうか」


結月の言葉に、会議室が静まり返る。


しばらくの沈黙の後、蓮が口を開いた。


「……そうだな。……俺たちが守るべき世界は、まだここにある。……戦いが終わっても、俺たちは対魔局として、この世界の平和を守り続ける。……それが、俺たちの使命だ」


蓮の言葉に、仲間たちが力強く頷く。


「……ええ。……一緒に守りましょう、この世界を」


結月が、微笑む。


「……ああ。……みんなで、な」


蓮が、仲間たちを見渡し、笑顔を浮かべた。


世界を救った戦いは終わった。

しかし、彼らの物語は、まだ続いていく。





【第51章終了】



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