第50章 第二部の終幕
第50章 第二部の終幕
一
黒の教団の過激派リーダー・氷室と、教団の創設者である天野博士の死から、一週間が経過した。
この一週間で、世界は大きく動いた。
教団の穏健派は対魔局に完全に投降し、彼らが保有していた特異点に関する研究データや、調律者に関する情報が全て対魔局に引き渡された。
これにより、長きにわたって世界を脅かしてきた「黒の教団」は、事実上解体された。
しかし、それは決して平和の訪れを意味するものではなかった。
「……これが、天野博士の遺したデータと、教団から押収した情報を統合した結果です」
対魔局本部の大会議室。
紗綾局長が、各国の対魔局支部長や政府高官たちが集まるオンライン会議で、重々しい口調で報告を行っていた。
モニターには、地球の軌道上に浮かぶ巨大な人工天体「中枢星」のホログラムが映し出されている。
「……調律者の本体は、この中枢星の『コア』に存在します。……彼らは、この世界を『実験場』と見なし、人類の中から完全な魔法生命体を創り出すための『選別』を行おうとしています」
紗綾局長の言葉に、会議室にどよめきが走る。
「……選別だと? ……具体的にはどういうことだ!」
アメリカ支部長が、画面越しに声を荒げる。
「……魔法適性のない人間、つまり無能力者を全て排除し、魔法使いだけの新世界を創る。……それが、彼らの目的です」
「……なっ……! ……そんな馬鹿な話があるか!」
「……世界人口の八割を抹殺する気か!」
各国の代表たちが、次々と怒りと恐怖の声を上げる。
「……静粛に!」
紗綾局長が、一喝する。
「……信じがたいことですが、これは事実です。……そして、調律者はすでに、その『選別』の準備を完了しつつあります。……我々に残された時間は、決して多くありません」
会議室が、水を打ったように静まり返る。
「……我々対魔局は、これより調律者の中枢星に対する直接攻撃作戦『オペレーション・アーク』を発動します。……目標は、中枢星のコアの破壊、および調律者の完全排除です」
紗綾局長の宣言に、誰も異論を唱える者はいなかった。
もはや、人類の存亡を懸けた戦いは、避けられないところまで来ていたのだ。
二
同じ頃、特務部隊の待機室では、蓮たちが作戦のブリーフィングに向けて準備を進めていた。
「……いよいよだな」
蓮が、共鳴剣の手入れをしながら呟く。
「……ああ。……相手は、この世界の法則そのものを操る神のような存在だ。……生半可な覚悟じゃ、一瞬で消し飛ばされるぞ」
アランが、大剣の刃を布で拭きながら言う。
「……分かってるわ。……でも、私たちにはもう、後戻りなんてできないもの」
凛音が、銃の手入れをしながら、真剣な表情で言う。
「……ええ。……博士が命を懸けて繋いでくれたこのチャンス、絶対に無駄にはしません」
結月が、蓮の隣で静かに頷く。
「……蓮お兄ちゃん」
アリスが、蓮の服の裾を引く。
「……どうした、アリス?」
「……私ね、昨日、天野博士の夢を見たの」
アリスが、少し寂しそうな顔で言う。
「……博士の夢?」
「……うん。……博士、笑ってた。……『君たちの未来は、君たち自身の手で創りなさい』って」
アリスの言葉に、蓮は少しだけ目を細める。
「……そうか。……博士も、俺たちのことを見守ってくれてるんだな」
「……うん!」
アリスが、力強く頷く。
「……僕も、博士の想いに応えたい。……特異点としての力を、今度こそ正しいことのために使います」
透が、決意を込めて言う。
「……ああ。……俺たち全員で、必ず生きて帰ってこよう」
蓮が、仲間たちの顔を見渡し、力強く宣言する。
その時、待機室のドアが開き、シロが入ってきた。
「……皆さん、ブリーフィングの準備が整いました。……作戦司令室へ移動してください」
「……よし、行くぞ!」
蓮を先頭に、特務部隊のメンバーたちが作戦司令室へと向かう。
三
作戦司令室の中央には、中枢星の巨大なホログラムが浮かび上がっていた。
「……これより、『オペレーション・アーク』の最終ブリーフィングを開始します」
紗綾局長が、ホログラムの前に立ち、特務部隊のメンバーたちを見渡す。
「……作戦の目標は、中枢星の最深部に存在する『コア』の破壊です。……しかし、そこへ至るルートには、調律者の強力な防衛システムが幾重にも張り巡らされています」
シロが、ホログラムを操作し、中枢星の内部構造を表示する。
「……第一防衛ラインは、中枢星の外殻を覆う『法則の壁』。……これは、あらゆる魔法攻撃を無効化する絶対防御の結界です」
「……あらゆる魔法を無効化……。……どうやって突破するんだ?」
アランが、眉をひそめる。
「……そこは、特異点の力を使います。……蓮くん、透くん、アリスちゃん。……あなたたち三人の特異点共鳴で、法則の壁に穴を開けてください」
紗綾局長が、三人に指示を出す。
「……了解しました」
蓮たちが、力強く頷く。
「……壁を突破した後は、内部の迷宮エリアを進みます。……ここには、『観測者』や『模倣体』といった、調律者の防衛ユニットが多数配置されています」
シロが、防衛ユニットのデータを表示する。
「……こいつら、教団の遺跡で戦った『ガーディアン』より強いのか?」
凛音が、尋ねる。
「……比較になりません。……彼らは、調律者の力を直接分け与えられた、言わば『神の兵隊』です。……一体一体が、特務部隊の隊長クラスの力を持っていると考えてください」
シロの言葉に、司令室に緊張が走る。
「……そして、迷宮エリアを抜けた先にあるのが、最終防衛ライン……『幻影』です」
紗綾局長が、ホログラムの最深部を指差す。
「……幻影……?」
「……天野博士のデータによれば、幻影は侵入者の『最も恐れるもの』や『最も会いたい人』の姿をとり、精神的な揺さぶりをかけてくるそうです。……物理的な攻撃だけでなく、精神的な攻撃にも備える必要があります」
「……精神攻撃か……。……厄介だな」
蓮が、顔をしかめる。
「……幻影を突破すれば、いよいよコアです。……コアには、調律者の本体が存在すると推測されています。……そこで何が待ち受けているかは、博士のデータにも記録されていません」
紗綾局長が、静かに言う。
「……何が待ち受けていようと、やることは一つだ。……コアをぶっ壊して、調律者を倒す」
蓮が、迷いのない瞳で言う。
「……ええ。……あなたたちなら、必ずやり遂げられると信じています」
紗綾局長が、蓮たちに向かって深く頭を下げる。
「……作戦開始は、明日の午前零時。……それまで、各自しっかりと休息を取ってください。……以上で、ブリーフィングを終了します」
紗綾局長の言葉で、ブリーフィングは解散となった。
四
その夜。
特務部隊のメンバーたちは、それぞれが出撃前の最後の時間を過ごしていた。
アランは、訓練室で一人、大剣の素振りを繰り返していた。
彼の額には大粒の汗が浮かび、荒い息遣いが訓練室に響き渡る。
「……ふぅ……」
アランが、大剣を下ろし、タオルで汗を拭う。
「……精が出るな、アラン」
入り口から、蓮が声をかける。
「……蓮か。……お前こそ、休まなくていいのか?」
「……少し、体が鈍っててな。……軽く動かしておこうと思って」
蓮が、訓練室に入ってくる。
「……そうか。……なら、少し手合わせするか?」
アランが、大剣を構え直す。
「……ああ、頼む」
蓮も、共鳴剣を抜く。
二人は、言葉を交わすことなく、激しく打ち合い始めた。
剣と剣がぶつかり合う甲高い音が、訓練室に響き渡る。
「……お前、また腕を上げたな」
アランが、蓮の剣を弾き返しながら言う。
「……アランこそ。……その大剣の重さ、前より増してるんじゃないか?」
蓮が、アランの攻撃を躱しながら笑う。
「……ふっ。……俺も、まだまだ強くなれるってことさ」
アランが、不敵に笑う。
二人は、しばらくの間、互いの力を確かめ合うように打ち合いを続けた。
「……なあ、蓮」
アランが、剣を交えながら、ふと口を開く。
「……ん?」
「……俺は、お前と出会えて良かったと思ってる。……お前がいなかったら、俺は今でも、ただの力任せの馬鹿だったかもしれない」
アランの言葉に、蓮は少し驚いたような顔をする。
「……何だよ、急に。……らしくないぞ」
「……いや、言える時に言っておこうと思ってな。……明日の戦い、何が起こるか分からないからな」
アランが、少し照れくさそうに笑う。
「……馬鹿野郎。……俺たちは、全員で生きて帰るんだ。……死ぬ前提で話をするな」
蓮が、アランの剣を強く弾き返す。
「……ああ、そうだな。……悪かった」
アランが、大剣を下ろし、蓮に向かって拳を突き出す。
「……絶対に、生きて帰ろうぜ」
「……ああ、約束だ」
蓮も、アランの拳に自分の拳をぶつける。
二人の間には、言葉以上の強い絆が結ばれていた。
五
一方、凛音は自室で、一人静かに銃の手入れをしていた。
彼女の表情は、いつになく真剣だった。
(……明日の戦い。……私が、みんなの足を引っ張るわけにはいかない)
凛音は、銃のパーツを一つ一つ丁寧に磨きながら、心の中で呟く。
彼女は、特務部隊の中で唯一、特異点でもなければ、圧倒的な魔力を持っているわけでもない。
彼女の武器は、正確無比な射撃技術と、状況を冷静に分析する判断力だけだ。
(……私にできること。……それは、みんなの背中を守ること)
凛音は、銃を組み立て直し、スコープを覗き込む。
「……凛音」
ドアがノックされ、結月が入ってくる。
「……結月。……どうしたの?」
「……少し、話したくて」
結月が、凛音の隣に座る。
「……明日のこと?」
「……ええ。……凛音、怖くない?」
結月の問いに、凛音は少しだけ目を伏せる。
「……怖くないって言ったら、嘘になるわ。……でも、それ以上に、みんなと一緒に戦いたいって気持ちの方が強いの」
凛音が、結月の顔を見て微笑む。
「……そっか。……凛音は、強いね」
「……そんなことないわ。……私なんて、いつも蓮や結月に助けられてばかりだもの」
凛音が、自嘲気味に笑う。
「……そんなことない。……凛音がいてくれるから、私たちは安心して前を向けるのよ。……凛音は、私たちの『目』であり、『盾』なんだから」
結月が、凛音の手を握る。
「……結月……」
「……明日も、私たちの背中、お願いね」
結月が、優しく微笑む。
「……ええ、任せて。……絶対に、誰一人死なせないわ」
凛音も、力強く頷く。
二人の少女は、互いの存在を確かめ合うように、静かに微笑み合った。
六
そして、シロのラボでは、シロと透、アリスの三人が、最終的なデータの確認を行っていた。
「……シロさん、このルートの防衛システム、少しパターンが不規則ですね」
透が、モニターを指差しながら言う。
「……ええ。……おそらく、幻影の直前にある『最終防衛ライン』の影響だと思います。……空間の法則自体が歪んでいる可能性があります」
シロが、キーボードを叩きながら答える。
「……空間が歪んでるなら、僕の『空間断裂』で道を切り開けるかもしれません」
透が、真剣な表情で言う。
「……頼もしいですね。……でも、無理はしないでくださいね。……透くんの力は、コアの破壊に必要不可欠ですから」
シロが、透に向かって微笑む。
「……はい、分かっています」
透が、頷く。
「……シロお姉ちゃん、私も頑張るね。……私の『概念書き換え』で、悪いやつらを全部やっつけちゃうんだから!」
アリスが、元気いっぱいに言う。
「……ふふっ、アリスちゃんも頼りにしてますよ。……でも、アリスちゃんも無理は禁物ですからね」
シロが、アリスの頭を撫でる。
「……えへへ〜」
アリスが、嬉しそうに笑う。
「……さあ、データの確認はこれで終わりです。……二人とも、明日に備えてしっかり休んでくださいね」
シロが、モニターの電源を落とす。
「……はい。……おやすみなさい、シロさん」
「……おやすみなさーい!」
透とアリスが、ラボを後にする。
シロは、二人の背中を見送った後、再びモニターの電源を入れ、一人でデータの最終チェックを始めた。
(……みんな、絶対に生きて帰ってきてくださいね。……私が、全力でサポートしますから)
シロの瞳には、強い決意の光が宿っていた。
七
翌朝。
対魔局本部の地下格納庫には、特務部隊のメンバーたちと、彼らを乗せて宇宙へと飛び立つための特殊宇宙船「アルテミス」が待機していた。
アルテミスは、天野博士が遺した技術と、対魔局の最新技術を結集して建造された、対中枢星用の決戦兵器だ。
大気圏を突破するための強力な推進力と、宇宙空間での戦闘を想定した重装甲、そして、特異点の魔力を増幅して発射する「魔導砲」を備えている。
「……いよいよだな」
蓮が、アルテミスの巨大な機体を見上げて呟く。
「……ええ。……これが、私たちの最後の戦いになるわ」
結月が、蓮の隣で静かに言う。
「……みんな、準備はいいか?」
アランが、大剣を背負いながら、メンバーたちに声をかける。
「……いつでもいけるわ」
「……僕も、準備万端です」
「……私も!」
凛音、透、アリスが、それぞれ力強く頷く。
「……蓮くん」
紗綾局長が、蓮たちに歩み寄る。
「……局長」
「……あなたたちには、本当に重い使命を背負わせてしまいました。……でも、私は信じています。……あなたたちなら、必ずこの世界を救ってくれると」
紗綾局長が、蓮の手を両手で包み込む。
「……ええ。……必ず、調律者を倒して、みんなの元へ帰ってきます」
蓮が、力強く答える。
「……シロ、通信とナビゲーションは頼んだぞ」
蓮が、コンソールに向かっているシロに声をかける。
「……はい! ……アルテミスのシステムは全て正常。……いつでも発進可能です!」
シロが、笑顔で答える。
「……よし。……全員、搭乗しろ!」
蓮の号令で、特務部隊のメンバーたちが次々とアルテミスに乗り込んでいく。
蓮は、最後に振り返り、紗綾局長とシロに向かって敬礼した。
「……行ってきます」
「……ご武運を」
「……いってらっしゃいませ!」
紗綾局長とシロが、敬礼で応える。
蓮がアルテミスに乗り込み、ハッチが閉まる。
『……メインエンジン、点火。……出力上昇。……発進シークエンス、開始します』
シロのアナウンスが、格納庫に響き渡る。
アルテミスの機体が、激しい轟音と共に浮上し始める。
『……カウントダウン。……5、4、3、2、1……発進!』
アルテミスは、目にも留まらぬ速さで格納庫の天井を突き破り、朝焼けの空へと飛び立っていった。
八
アルテミスは、大気圏を突破し、漆黒の宇宙空間へと躍り出た。
「……すごい……。……これが、宇宙……」
アリスが、窓の外に広がる無数の星々を見て、目を輝かせる。
「……綺麗ね……」
凛音も、息を呑む。
「……感心している暇はないぞ。……目標の中枢星まで、あと少しだ」
蓮が、操縦席から声をかける。
アルテミスの前方には、地球の月よりも遥かに巨大な、機械仕掛けの人工天体……中枢星が、不気味な光を放ちながら浮かんでいた。
『……蓮さん、中枢星の防衛システムが起動しました。……第一防衛ライン「法則の壁」が展開されます!』
通信機から、シロの緊迫した声が響く。
中枢星の周囲に、巨大な光の結界が展開され、アルテミスの行く手を阻む。
「……来たな。……透、アリス、準備はいいか?」
蓮が、二人に声をかける。
「……はい!」
「……うん!」
透とアリスが、蓮の両隣に立つ。
「……行くぞ! ……特異点共鳴!」
蓮、透、アリスの三人が、同時に魔力を解放する。
三色の光が混ざり合い、巨大なエネルギーの奔流となって、アルテミスの魔導砲に注ぎ込まれる。
「……撃てぇぇぇっ!!」
蓮の叫びと共に、魔導砲から極太の光線が発射された。
光線は、法則の壁に激突し、激しい火花を散らす。
「……くっ……! ……なんて硬さだ……!」
蓮が、歯を食いしばる。
「……負けない……! ……絶対に、負けないんだから!」
アリスが、必死に魔力を振り絞る。
「……僕たちの力で……道を切り開く!」
透も、限界まで魔力を高める。
三人の想いが一つになった瞬間、光線はさらに輝きを増し、法則の壁を貫いた。
パァァァァンッ!!
法則の壁が、ガラスのように砕け散る。
「……やった!」
凛音が、歓声を上げる。
『……第一防衛ラインの突破を確認! ……アルテミス、中枢星内部へ突入します!』
シロのアナウンスと共に、アルテミスは中枢星の内部へと突入していった。
九
中枢星の内部は、無機質な金属の壁と、幾何学的な模様が描かれた通路が果てしなく続く、巨大な迷宮だった。
アルテミスは、シロのナビゲーションに従い、迷宮の奥深くへと進んでいく。
『……蓮さん、前方に多数の熱源反応! ……調律者の防衛ユニット「観測者」の群れです!』
シロの警告と同時に、通路の奥から、無数の機械兵器が姿を現した。
それらは、人間の形をしているが、顔には目も鼻もなく、ただ無機質なレンズが一つ付いているだけだった。
「……数が多いな。……アルテミスの主砲で一掃する!」
蓮が、操縦桿を握り直す。
「……待って、蓮! ……あいつら、何かおかしいわ!」
凛音が、モニターを指差す。
観測者たちのレンズが赤く光り、その周囲の空間が歪み始めた。
『……警告! ……観測者たちが、空間の法則を書き換えています! ……アルテミスの魔導砲のエネルギーが、無効化される可能性が高いです!』
シロの声が、焦りを帯びる。
「……ちっ、法則の書き換えか……! ……なら、直接叩くしかない!」
蓮が、操縦席から立ち上がる。
「……アラン、凛音、結月! ……俺たちは外に出て、あいつらを迎撃する! ……透とアリスは、アルテミスの中で待機して、いざという時のために魔力を温存しておいてくれ!」
「……了解だ!」
「……任せて!」
「……ええ!」
アラン、凛音、結月が、それぞれの武器を構える。
「……蓮お兄ちゃん、気をつけてね!」
「……蓮さん、ご武運を!」
アリスと透が、蓮たちを見送る。
蓮たちは、アルテミスのハッチから宇宙空間(中枢星内部の通路)へと飛び出した。
中枢星の内部には、人工的な重力と空気が存在しており、生身でも活動することが可能だった。
「……行くぞ!」
蓮が、共鳴剣を構え、観測者の群れに向かって突進する。
観測者たちが、一斉にレンズから赤い光線を放つ。
それは、触れたものを原子レベルで分解する、恐るべき破壊光線だった。
「……『氷の盾』!」
結月が、巨大な氷の盾を創り出し、光線を防ぐ。
「……アラン、凛音、今だ!」
蓮の合図と共に、アランと凛音が動き出す。
「……うおおおおっ!」
アランが、大剣を振り下ろし、観測者を真っ二つに両断する。
「……そこよ!」
凛音が、正確無比な射撃で、観測者のレンズを次々と撃ち抜いていく。
「……『全式共鳴・神速』!」
蓮が、目にも留まらぬ速さで観測者の群れの中を駆け抜け、次々と斬り伏せていく。
三人の連携攻撃により、観測者の群れは瞬く間に数を減らしていく。
「……よし、このまま一気に押し切るぞ!」
蓮が、叫ぶ。
しかし、その時だった。
『……蓮さん、気をつけて! ……観測者たちが、合体しようとしています!』
シロの警告と共に、残った観測者たちが一つに集まり、巨大な金属の塊へと変化し始めた。
「……なんだ、あれは……?」
アランが、目を丸くする。
巨大な金属の塊は、やがて、四つの腕と三つの顔を持つ、異形の怪物へと姿を変えた。
『……データにありません! ……おそらく、観測者の上位個体……「模倣体」の変異種です!』
シロの声が、震えている。
「……変異種だろうが何だろうが、ぶっ倒すだけだ!」
蓮が、共鳴剣を強く握り締める。
異形の怪物が、四つの腕を振り上げ、蓮たちに向かって襲いかかってきた。
世界の命運を懸けた、最後の戦いが、今、本格的に幕を開けた。
【第50章終了】
ここまで読んでくれてありがとうございました!
まだ【評価】と【ブクマ】が済んでいないという方がいましたら、どうかお願いします!
☆☆☆☆☆→★★★★★
評価して頂けると、ものすごく喜びます!
これで半分のつもり!!!




