第47章 過激派の暴走
第47章 過激派の暴走
一
北海道の廃坑跡での戦闘から数日が経過した。
氷室とマリアを捕縛し、魔力増幅炉の脅威を退けたことで、黒の教団の過激派は完全に壊滅したかに見えた。
対魔局本部は、教団の残党狩りと、天野博士の尋問を並行して進めていた。
蓮たちは、久しぶりの休息を与えられ、それぞれの時間を過ごしていた。
「……ふう、やっと一息つけるわね」
対魔局のカフェテリアで、凛音がコーヒーを飲みながら大きく伸びをする。
「……ああ。……ここ数日、ずっと戦いっぱなしだったからな」
アランが、山盛りのサンドイッチを頬張りながら同意する。
「……でも、まだ完全に終わったわけじゃないわ。……天野博士の尋問も続いているし、教団の残党がどこに潜んでいるか分からないもの」
結月が、紅茶のカップを両手で包み込みながら、少し不安そうに言う。
「……結月の言う通りだ。……油断はできない」
蓮が、窓の外の景色を眺めながら呟く。
その時、カフェテリアの入り口から、透とアリスが歩いてきた。
「……蓮さん、皆さん。……お疲れ様です」
透が、軽く会釈する。
「……お疲れ様! ……アリス、体調はもう大丈夫なのか?」
蓮が、アリスに声をかける。
「……うん! ……もうすっかり元気だよ! ……蓮お兄ちゃんたちが助けてくれたおかげだもん」
アリスが、満面の笑みで答える。
廃坑での戦いで、アリスは自らの「創造」の力で魔力増幅炉の概念を書き換え、暴走を止めた。
その反動で数日間眠り続けていたが、ようやく回復したようだ。
「……よかった。……でも、無理はするなよ。……アリスの力は、まだ完全にコントロールできているわけじゃないんだから」
蓮が、アリスの頭を優しく撫でる。
「……えへへ……。……うん、気をつけるね」
アリスが、嬉しそうに目を細める。
「……アリスちゃんのその力、本当にすごいわよね。……機械の概念そのものを書き換えるなんて、普通の魔法じゃ絶対に不可能だわ」
凛音が、感心したように言う。
「……ええ。……特異点の力は、私たちの想像を遥かに超えています。……だからこそ、教団はアリスちゃんを狙ったのでしょう」
結月が、真剣な表情になる。
「……ああ。……氷室は、アリスの力を使って魔力増幅炉を完成させようとしていた。……もしそれが成功していたら、今頃どうなっていたか……」
アランが、サンドイッチを飲み込みながら身震いする。
「……でも、氷室は捕まったし、増幅炉も無力化された。……もうアリスが狙われることはないはずだ」
蓮が、アリスを安心させるように言う。
しかし、その言葉とは裏腹に、蓮の胸の奥には、得体の知れない不安が渦巻いていた。
氷室が捕まる直前に見せた、あの狂気に満ちた笑顔。
まるで、まだ何か「奥の手」が残っているかのような、不気味な笑みだった。
(……考えすぎか……。……いや、警戒するに越したことはない)
蓮が、気を引き締める。
その時、カフェテリアのスピーカーから、シロの緊迫した声が響き渡った。
『……緊急事態発生! ……緊急事態発生! ……特務部隊の皆さんは、直ちに第一会議室へ集合してください!』
「……シロの声……。……何かあったのか!?」
蓮が、立ち上がる。
「……行こう!」
結月たちも、一斉に立ち上がり、会議室へと急いだ。
二
第一会議室には、すでに紗綾局長と、数名の幹部が集まっていた。
皆、一様に険しい表情をしている。
「……局長、何があったんですか?」
蓮が、息を切らしながら尋ねる。
「……蓮くん、よく来てくれました。……実は、先ほど、地下の特別拘置施設から緊急信号が発せられました」
紗綾局長が、モニターを指差す。
モニターには、地下施設の監視カメラの映像が映し出されていた。
しかし、映像は激しいノイズに覆われ、何が起きているのかはっきりと確認できない。
「……特別拘置施設って……。……まさか、氷室たちが!?」
透が、驚きの声を上げる。
「……ええ。……氷室とマリア、そして天野博士が収容されている区画です。……現在、施設内の通信は完全に遮断され、防衛システムも乗っ取られているようです」
シロが、状況を説明する。
「……どういうことだ? ……氷室たちは、魔力を封じる特殊な手錠をかけられていたはずだろ?」
アランが、疑問を口にする。
「……それが、どうやら外部からの手引きがあったようなのです。……監視カメラの映像が途切れる直前、施設内に侵入する複数の人影が確認されました」
紗綾局長が、別のモニターに映像を切り替える。
そこには、黒いローブを着た数名の人物が、拘置施設の入り口を突破する様子が映っていた。
「……教団の残党か……!」
蓮が、拳を握り締める。
「……彼らは、ただの残党ではありません。……氷室が密かに組織していた、過激派の中でもさらに狂信的なエリート部隊『黒の使徒』と思われます」
天野博士の尋問を担当していた尋問官が、青ざめた顔で報告する。
「……黒の使徒……?」
「……はい。……彼らは、氷室の『絶対氷結』の力を分け与えられた、強力な氷結魔法の使い手たちです。……氷室を救出し、再びテロを起こすつもりでしょう」
「……くそっ……! ……まだそんな連中が残っていたなんて……!」
蓮が、舌打ちする。
「……局長、すぐに地下施設へ向かいます!」
蓮が、出撃の許可を求める。
「……待ってください、蓮くん。……状況は、さらに深刻です」
紗綾局長が、蓮を制止する。
「……深刻って……。……これ以上、何があるんですか?」
「……氷室たちが狙っているのは、脱走だけではありません。……彼らは、地下施設に保管されている『ある物』を奪おうとしているのです」
「……ある物?」
「……はい。……それは、天野博士が教団本部から持ち出した、調律者の遺物……『世界の鍵』と呼ばれるアーティファクトです」
紗綾局長の言葉に、会議室の空気が凍りつく。
「……世界の鍵……。……それって、まさか……」
透が、息を呑む。
「……ええ。……中枢星への扉を開くために使われた、あの光の鍵のオリジナルです。……天野博士は、それを研究のために密かに保管していました」
「……そんな危険なものを、どうして対魔局に……!」
凛音が、声を荒げる。
「……博士は、調律者の真の目的を探るために必要だと主張していました。……しかし、もし氷室たちがそれを手に入れれば……」
「……再び、世界の外側への扉を開くことができる……」
蓮が、最悪のシナリオを口にする。
「……それだけではありません。……氷室は、その鍵を使って、この世界そのものを『氷結』させようとしている可能性があります。……世界を初期化し、無能力者のいない新しい世界を創り出すために」
紗綾局長が、重々しい口調で告げる。
「……世界を……氷結させる……!?」
結月が、信じられないという表情を浮かべる。
「……そんなこと、絶対にさせない! ……みんな、行くぞ!」
蓮が、共鳴剣を手に取り、会議室を飛び出す。
「……待って、蓮お兄ちゃん! ……私も行く!」
アリスが、蓮の後を追う。
「……アリス、お前はここに残れ! ……危険すぎる!」
蓮が、アリスを止めようとする。
「……嫌だ! ……あの鍵は、私の『創造』の力と共鳴するはずだよ。……もし氷室が鍵を使おうとしたら、私にしか止められないかもしれない!」
アリスが、強い意志を込めて蓮を見つめる。
「……アリス……」
蓮は、アリスの決意の固さに、言葉を失う。
「……蓮さん。……アリスちゃんの言う通りかもしれません。……特異点の力は、特異点にしか対抗できない。……僕たちも全力でサポートします」
透が、蓮の肩に手を置く。
「……分かった。……でも、絶対に俺のそばから離れるなよ」
蓮が、アリスに念を押す。
「……うん!」
アリスが、力強く頷く。
特務部隊は、世界の危機を阻止するため、対魔局の地下深くへと向かった。
三
対魔局の地下特別拘置施設は、すでに「黒の使徒」たちによって完全に制圧されていた。
通路の壁や床は分厚い氷に覆われ、冷気が白く立ち込めている。
「……ひどい有様ね……。……防衛システムも完全に凍らされてるわ」
凛音が、周囲を警戒しながら進む。
「……気をつけてください。……この氷、ただの氷じゃありません。……魔力を吸収する性質を持っています」
透が、壁の氷に触れそうになり、慌てて手を引っ込める。
「……氷室の『絶対氷結』の劣化版ってところか。……厄介だな」
アランが、大剣を構える。
「……来るぞ!」
蓮が、前方を指差す。
通路の奥から、黒いローブを着た数名の男たちが現れた。
彼らの手には、氷でできた鋭い剣や槍が握られている。
「……対魔局のネズミどもめ。……ここから先へは通さん」
黒の使徒の一人が、冷酷な声で言う。
「……氷室はどこだ!」
蓮が、問い詰める。
「……氷室様は、すでに『世界の鍵』を手に入れられた。……今頃、世界を浄化するための儀式を始めているだろう」
「……なんだと……!」
蓮が、焦りを見せる。
「……お前たちは、ここで我々の氷の餌食となるがいい! ……『氷結』――氷槍雨!」
黒の使徒たちが、一斉に氷の槍を放ってくる。
「……『氷結』――絶対防壁!」
結月が、氷の壁を展開して防ぐ。
しかし、黒の使徒たちの氷の槍は、結月の壁に突き刺さると、そのまま壁の魔力を吸収し始めた。
「……くっ……! ……壁が……もたない……!」
結月が、苦悶の表情を浮かべる。
「……結月、下がれ! ……『炎』――爆炎・紅蓮地獄!」
アランが、結月の前に出て、巨大な炎の渦を放つ。
炎と氷が激突し、大量の水蒸気が発生する。
「……今だ! ……透、朔!」
蓮が、水蒸気に紛れて指示を出す。
「……『空間』――空間断裂!」
「……『時間』――時間停止!」
透が空間を切り裂いて黒の使徒たちの陣形を崩し、朔が時間を止めて彼らの動きを封じる。
「……『残響』――全式共鳴・衝撃波!」
蓮が、動けなくなった黒の使徒たちに向かって、強力な衝撃波を放つ。
轟音と共に、黒の使徒たちが吹き飛ばされ、壁に激突して気を失う。
「……よし、突破したぞ! ……急ごう!」
蓮が、先を急ぐ。
しかし、地下施設の最深部へ近づくにつれて、冷気はさらに強さを増していった。
息をするだけで肺が凍りつきそうなほどの極寒だ。
「……蓮お兄ちゃん……。……寒いよ……」
アリスが、体を震わせる。
「……アリス、大丈夫か? ……結月、アリスに保温魔法を頼む」
蓮が、結月に頼む。
「……ええ。……『氷結』――温熱衣」
結月が、アリスの体を温かい魔力の膜で包み込む。
「……ありがとう、結月お姉ちゃん……」
アリスの顔色が、少しだけ良くなる。
「……みんな、気をつけて。……この先の扉の向こうに、氷室がいるわ」
凛音が、最深部の重厚な金属の扉を指差す。
扉は、完全に氷漬けになっており、通常の手段では開けることができそうにない。
「……俺が壊す。……下がってろ」
蓮が、共鳴剣に魔力を込める。
「……『残響』――全式共鳴・限界突破!」
蓮が、渾身の力を込めて扉を斬り裂く。
ガァァァンッ!
分厚い金属の扉が、氷ごと粉々に砕け散った。
扉の向こうには、広大な保管庫が広がっていた。
そして、その中央には、氷室とマリア、そして拘束された天野博士の姿があった。
氷室の手には、まばゆい光を放つクリスタルのような鍵――「世界の鍵」が握られている。
「……遅かったな、蓮。……儀式は、すでに最終段階に入っている」
氷室が、狂気に満ちた笑顔で蓮たちを振り返った。
四
「……氷室! ……その鍵をどうするつもりだ!」
蓮が、共鳴剣を構えながら叫ぶ。
「……どうするも何もない。……この鍵を使って、世界の外側から『絶対零度』の概念を引き出し、この世界を完全に凍結させるのだ。……無能力者という不純物を、全て浄化するためにな」
氷室が、世界の鍵を高く掲げる。
鍵から放たれる光が、周囲の空間を歪め、異次元への扉を開こうとしている。
「……やめろ! ……そんなことをすれば、世界中の人間が死ぬんだぞ!」
結月が、悲痛な声で叫ぶ。
「……それがどうした? ……魔法という進化の恩恵を受けられない劣等種など、生きていても意味がない。……我々魔法使いだけの、純粋で美しい世界を創るのだ」
氷室の目は、完全に狂気に支配されていた。
「……お兄様、早く儀式を完成させて。……こいつらは、私が足止めするわ」
マリアが、蓮たちの前に立ち塞がる。
「……『大地』――大地の怒り(ガイア・レイジ)!」
マリアが、保管庫の床を激しく隆起させ、蓮たちを攻撃する。
「……くっ……! ……またこいつか!」
アランが、隆起する床を避けながら舌打ちする。
「……みんな、マリアは俺とアラン、凛音で抑える! ……透、朔、アリスは、氷室を止めてくれ!」
蓮が、瞬時に役割を分担する。
「……了解!」
透と朔が、アリスを守りながら氷室へと向かう。
「……させないわ! ……『大地』――土流壁・迷宮!」
マリアが、再び土の迷宮を作り出し、透たちを分断しようとする。
「……同じ手は食わない! ……『残響』――全式共鳴・衝撃波!」
蓮が、迷宮が完成する前に強力な衝撃波を放ち、土の壁を粉砕する。
「……きゃあっ!」
マリアが、衝撃波の余波を受けて吹き飛ばされる。
「……今だ、透!」
「……はい! ……『空間』――空間断裂!」
透が、氷室の周囲の空間を切り裂き、儀式を妨害しようとする。
「……無駄だ。……『氷結』――絶対氷壁!」
氷室が、世界の鍵を持ったまま、もう片方の手で絶対氷壁を展開する。
透の空間断裂は、氷壁に触れた瞬間に凍りつき、無効化されてしまう。
「……くそっ……! ……やっぱり、あの氷壁は厄介だ……!」
透が、悔しそうに言う。
「……なら、僕が時間を止めます! ……『時間』――時間停止!」
朔が、氷室の時間を止めようとする。
しかし、氷室の周囲には、世界の鍵から放たれる異次元のエネルギーが渦巻いており、朔の時間魔法すらも弾き返してしまった。
「……なっ……! ……時間魔法が効かない……!?」
朔が、驚愕する。
「……ハハハハ! ……世界の鍵が発するエネルギーは、この世界の法則を超越している! ……お前たちの特異点の力でも、この儀式を止めることはできない!」
氷室が、狂ったように笑う。
世界の鍵から放たれる光が、さらに強さを増していく。
保管庫の天井に、巨大な空間の亀裂が走り、そこから絶対零度の冷気が流れ込み始めた。
「……まずい……! ……扉が開きかけてる……!」
天野博士が、拘束されたまま叫ぶ。
「……博士! ……どうすれば止められるんだ!?」
蓮が、マリアの攻撃を躱しながら尋ねる。
「……世界の鍵は、特異点の『創造』の力と共鳴する性質を持っている! ……アリスの力で、鍵の概念を書き換えるしかない!」
天野博士が、解決策を提示する。
「……アリス! ……できるか!?」
蓮が、アリスを見る。
「……うん! ……やってみる!」
アリスが、氷室に向かって走り出す。
「……行かせるか! ……『大地』――岩石槍!」
マリアが、アリスに向かって岩の槍を放つ。
「……アリスには指一本触れさせない! ……『炎』――爆炎弾!」
「……『風』――真空刃!」
アランと凛音が、マリアの攻撃を完全に防ぐ。
「……アリスちゃん、今よ!」
結月が、アリスの足元に氷の道を作り、氷室の元へと滑らせる。
「……邪魔をするな、小娘! ……『氷結』――絶対零度・氷葬!」
氷室が、アリスに向かって絶対氷結の魔法を放つ。
「……アリス!」
蓮が、絶叫する。
しかし、アリスは逃げなかった。
彼女は、真っ直ぐに氷室を見据え、両手を前に突き出した。
「……私は、もう逃げない! ……みんなを守るんだ!」
アリスの体から、純白の光が爆発的に放たれる。
「……『創造』――概念書き換え(コンセプト・リライト)!」
アリスの純白の光が、氷室の絶対氷結の冷気と激突する。
相反する二つの力が、保管庫の中で激しくぶつかり合い、凄まじいエネルギーの嵐を巻き起こす。
「……ぐぬぬぬ……! ……小娘ごときが、俺の絶対氷結に抗うというのか……!」
氷室が、顔を歪めながら魔力を振り絞る。
「……負けない……! ……絶対に、負けない……!」
アリスも、必死に光を放ち続ける。
しかし、氷室は世界の鍵のエネルギーを吸収しており、その魔力は底なしだった。
徐々に、アリスの純白の光が、氷室の冷気に押し返され始める。
「……アリスの力が……負けてる……!」
透が、焦燥感を募らせる。
「……このままじゃ、アリスが凍らされちゃう!」
結月が、助けに入ろうとするが、エネルギーの嵐が強すぎて近づくことができない。
「……くそっ……! ……俺が行く!」
蓮が、心魂解放を発動し、光を纏ってエネルギーの嵐の中へと飛び込む。
「……蓮お兄ちゃん……!」
アリスが、蓮を見る。
「……一人で背負い込むな、アリス。……俺たちも一緒だ」
蓮が、アリスの背中に手を当てる。
「……蓮さん! ……僕たちも!」
透と朔も、エネルギーの嵐を強引に突破し、アリスの背中に手を当てる。
「……みんな……」
アリスの瞳から、涙が溢れる。
「……特異点の力を、一つに合わせるんだ! ……アリス、お前の『創造』を核にして、俺たちの力を全部使え!」
蓮が、叫ぶ。
「……うん! ……行くよ、みんな!」
アリスが、三人の特異点の力を吸収し、さらに強大な純白の光を放つ。
「……『創造』『空間』『時間』『残響』――特異点共鳴・奇跡の光!」
四人の特異点の力が完全に融合し、奇跡の光となって氷室の絶対氷結を打ち破る。
「……ば、馬鹿な……! ……俺の絶対氷結が……世界の鍵の力が……押し負けるだと……!?」
氷室が、信じられないという表情で光に飲み込まれていく。
「……これで、終わりだぁぁぁっ!」
アリスの奇跡の光が、氷室の手にある「世界の鍵」を直撃する。
パキィィィンッ!
世界の鍵が、粉々に砕け散った。
鍵が破壊されたことで、天井の空間の亀裂が閉じ、絶対零度の冷気も消滅した。
「……あ……ああ……。……俺の……理想の世界が……」
氷室が、砕け散った鍵の破片を見つめながら、その場に崩れ落ちる。
「……お兄様!」
マリアが、氷室に駆け寄る。
「……終わったな、氷室」
蓮が、荒い息をつきながら氷室を見下ろす。
「……ふっ……。……俺の負けだ……。……だが、忘れるな。……調律者が存在する限り、この世界に真の平和など訪れないということを……」
氷室が、自嘲気味に笑い、そのまま意識を失った。
「……お兄様……! ……うわぁぁぁん!」
マリアが、氷室にすがりついて泣き崩れる。
蓮たちは、その姿を静かに見つめていた。
過激派の暴走は、アリスの勇気と、特異点たちの絆によって、間一髪で阻止されたのだ。
【第47章終了】
【第47章登場魔法・用語解説】
「黒の使徒」:氷室が密かに組織していた、教団過激派のエリート部隊。氷室の「絶対氷結」の力を分け与えられており、強力な氷結魔法を操る。
「世界の鍵」:天野博士が教団本部から持ち出した、調律者の遺物。世界の外側(中枢星など)への扉を開く力を持つアーティファクト。
「特異点共鳴・奇跡の光」:アリスの「創造」を核とし、蓮、透、朔の力を融合させた共鳴魔法。世界の鍵のエネルギーすらも凌駕し、概念を完全に書き換える奇跡を起こす。
ここまで読んでくれてありがとうございました!
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