第44章 敵か味方か
第44章 敵か味方か
一
翌朝、対魔局本部の会議室。
シロの解析により、「世界のへそ」の正確な座標が判明した。
「……場所は、太平洋のど真ん中。……マリアナ海溝の最深部、チャレンジャー海淵のさらに奥深くです」
シロが、モニターに深海の地図を映し出す。
「……深海一万メートル以上か。……普通の潜水艦じゃ、水圧でペシャンコだな」
アランが、腕を組んでモニターを見つめる。
「……ええ。……ですが、対魔局には深海探査用の特殊潜水艦『リヴァイアサン』があります。……これに、結月さんの氷結魔法と、透さんの空間魔法を組み合わせれば、水圧に耐えながら潜航することは可能です」
シロが、潜水艦の設計図を表示する。
「……なるほど。……それなら行けそうね」
凛音が、頷く。
「……問題は、教団の残党です。……天野博士が捕まったことで、教団は現在、指揮系統を失って混乱しています。……しかし、彼らも『世界のへそ』の場所を知っているはず。……私たちが向かえば、必ず妨害してくるでしょう」
紗綾局長が、厳しい表情で言う。
「……教団の残党か……。……朔、教団の内部事情について、何か知っていることはないか?」
蓮が、会議に参加している朔に尋ねる。
朔は、少し躊躇した後、口を開いた。
「……教団は、天野博士に絶対の忠誠を誓う『穏健派』と、無能力者の完全排除を主張する『過激派』に分かれていました。……天野博士が捕まった今、過激派が実権を握っている可能性が高いです」
「……過激派……。……厄介な連中だな」
蓮が、眉をひそめる。
「……過激派のリーダーは、『神宮寺』という男です。……彼は、天野博士以上に冷酷で、目的のためなら手段を選びません。……おそらく、彼らも『世界のへそ』に向かい、扉を開こうとするはずです」
朔が、警告する。
「……つまり、深海で教団の過激派と戦闘になる可能性があるということね」
結月が、表情を引き締める。
「……ええ。……それに、調律者も黙ってはいないでしょう。……中枢星への扉が開かれようとすれば、必ず防衛システムが作動するはずです」
シロが、付け加える。
「……教団の過激派と、調律者の防衛システム。……三つ巴の戦いになるってわけか」
アランが、ため息をつく。
「……それでも、行くしかない。……俺たちが扉を開かなければ、この世界は調律者に滅ぼされる」
蓮が、決意に満ちた目で全員を見渡す。
「……蓮の言う通りよ。……特務部隊、これより『世界のへそ』への潜航作戦を開始する。……準備を急ぎなさい」
紗綾局長が、号令をかける。
「「「了解!」」」
全員が、力強く返事をした。
二
数時間後、対魔局の地下ドック。
巨大な漆黒の潜水艦「リヴァイアサン」が、出撃の時を待っていた。
蓮、結月、凛音、アラン、透、アリス、そして朔の七人が、潜水艦に乗り込む。
「……全員、配置についたわね。……これより、リヴァイアサン、発進するわ」
操縦席に座る凛音が、計器類を操作する。
「……結月、透。……水圧の防御、頼むぞ」
蓮が、二人に声をかける。
「……任せて。……『氷結』――絶対零度・氷殻装甲!」
結月が、潜水艦の周囲に極低温の氷の装甲を展開する。
「……『空間』――空間断裂・水圧遮断!」
透が、氷の装甲の外側に空間の断層を作り出し、深海の水圧を完全に遮断する。
「……防御システム、正常に作動。……潜航を開始します」
シロのアナウンスと共に、リヴァイアサンはゆっくりと海中へと沈んでいった。
潜水艦の窓からは、青い海が次第に暗くなっていくのが見えた。
水深一千メートル、三千メートル、五千メートル……。
太陽の光が全く届かない、完全な暗黒の世界。
「……不気味なところね……」
アリスが、窓の外を見つめながら呟く。
「……深海には、未知の魔法生物が生息している可能性もある。……警戒を怠るな」
蓮が、レーダーの画面を注視する。
水深八千メートルを超えたあたりで、シロから通信が入った。
「……蓮さん、レーダーに反応があります。……後方から、複数の潜水艇が接近中。……教団の過激派と思われます」
「……来たか。……数は?」
「……小型潜水艇が五隻。……かなりのスピードでこちらに向かっています」
「……迎撃する。……凛音、回避行動を取りながら、魚雷の準備を」
蓮が、指示を出す。
「……了解! ……振り切ってやるわ!」
凛音が、操縦桿を握りしめる。
リヴァイアサンが、深海を縫うようにして加速する。
しかし、教団の潜水艇も執拗に追ってくる。
「……敵潜水艇から、魔法攻撃の反応! ……来ます!」
シロが、警告する。
次の瞬間、リヴァイアサンの後方に、巨大な水流の渦が発生した。
「……『水流』の魔法か! ……この水圧の中で、あれほどの渦を作り出すなんて……!」
アランが、驚愕する。
「……結月、透! ……防御を固めろ!」
蓮が、叫ぶ。
「……『氷結』――氷殻装甲・最大出力!」
「……『空間』――空間断裂・多重展開!」
結月と透が、防御魔法の出力を最大に引き上げる。
水流の渦が、リヴァイアサンに激突する。
激しい衝撃が潜水艦を揺らすが、結月と透の防御魔法がなんとか持ち堪えた。
「……くっ……! ……このままじゃ、ジリ貧だわ!」
凛音が、歯を食いしばる。
「……俺が出る。……アリス、サポートを頼む」
蓮が、潜水艦のエアロックに向かう。
「……蓮! ……深海一万メートルで外に出るなんて、自殺行為よ!」
結月が、蓮を止める。
「……大丈夫だ。……『残響』で水圧の波長に共鳴し、相殺する。……それに、アリスの魔法があれば問題ない」
蓮が、結月に微笑みかける。
「……うん。……『創造』――環境適応・深海仕様!」
アリスが、蓮の体に魔法をかける。
蓮の体が淡い光に包まれ、深海の水圧や低温に耐えられる状態になる。
「……行ってくる」
蓮が、エアロックを開け、深海へと飛び出した。
三
深海一万メートルの世界。
そこは、圧倒的な水圧と、凍りつくような寒さが支配する、死の世界だった。
しかし、アリスの魔法と自身の「残響」によって、蓮は自由に動くことができた。
(……見えた。……教団の潜水艇だ)
蓮が、暗闇の中に光る五つの影を見つける。
「……『残響』――全式共鳴・水圧断裂!」
蓮が、共鳴剣を振り抜く。
深海の水圧そのものを刃に変え、教団の潜水艇に向かって放つ。
ズドォォォン!
水圧の刃が、先頭の潜水艇を真っ二つに切り裂く。
(……よし、この調子で……!)
蓮が、次の潜水艇に向かおうとした時だった。
「……させないよ、対魔局の犬め」
通信機から、冷酷な声が聞こえてきた。
(……この声は……神宮寺か!)
蓮が、周囲を警戒する。
「……『重力』――重力圧壊!」
神宮寺の声と共に、蓮の周囲の重力が急激に増加する。
深海の水圧に加えて、凄まじい重力が蓮の体を押し潰そうとする。
「……ぐぁぁぁっ……!」
蓮が、苦痛に顔を歪める。
(……なんて重力だ……! ……アリスの魔法でも、完全に防ぎきれない……!)
蓮の体が、深海の底へと沈んでいく。
「……蓮さん!」
潜水艦の中から、透が叫ぶ。
「……僕が行きます! ……『空間』――空間転移!」
透が、潜水艦の中から蓮の元へとテレポートする。
「……透! ……来るな、ここは危険だ!」
蓮が、透を制止しようとする。
「……蓮さんを見殺しにはできません! ……『空間』――重力反転!」
透が、蓮にかかっている重力を反転させ、蓮を深海の底から引き上げる。
「……助かった、透。……だが、神宮寺の姿が見えない。……どこから攻撃してきているんだ?」
蓮が、周囲を見渡す。
「……僕の空間探知でも、神宮寺の正確な位置が掴めません。……おそらく、特殊なステルス魔法を使っているんだと思います」
透が、目を閉じて空間を探る。
「……厄介だな。……姿が見えない敵を、どうやって倒せばいい……」
蓮が、共鳴剣を構え直す。
その時、朔の声が通信機から聞こえてきた。
「……蓮さん、透兄さん。……僕に任せてください」
「……朔? ……お前、何をする気だ?」
蓮が、尋ねる。
「……神宮寺のステルス魔法は、光と音を歪めることで姿を隠しています。……でも、時間の流れまでは隠せない。……僕の魔法で、彼の『時間』を可視化します」
朔が、静かに言う。
「……『時間』――時間残像!」
朔が、潜水艦の中から魔法を発動する。
すると、深海の暗闇の中に、微かな光の軌跡が浮かび上がった。
それは、神宮寺が移動した「過去の時間」の残像だった。
「……見えた! ……あの軌跡の先に、神宮寺がいる!」
蓮が、光の軌跡を辿る。
「……透、行くぞ!」
「……はい!」
蓮と透が、光の軌跡の先に向かって突進する。
「……チッ……! ……朔め、裏切りやがって……!」
神宮寺が、舌打ちする声が聞こえる。
「……見つけたぞ、神宮寺!」
蓮が、ステルス魔法を解いて姿を現した神宮寺の潜水艇に肉薄する。
「……『残響』――全式共鳴・限界突破!」
「……『空間』――空間断裂・最大出力!」
蓮の共鳴剣と、透の空間断裂が、同時に神宮寺の潜水艇に直撃する。
轟音と共に、神宮寺の潜水艇が大爆発を起こす。
「……やったか……!」
蓮が、爆発の光を見つめる。
しかし、爆発の中から、一人の男が姿を現した。
神宮寺だ。
彼は、特殊な防護服を着ており、深海の水圧に耐えていた。
「……対魔局のガキどもが……。……俺の邪魔をするな!」
神宮寺が、怒りに満ちた目で蓮たちを睨みつける。
「……神宮寺、お前たちの野望はここで終わりだ。……大人しく投降しろ」
蓮が、共鳴剣を神宮寺に向ける。
「……投降? ……ふざけるな。……俺たちは、天野博士の意志を継ぎ、この世界を魔法使いだけのものにするんだ。……そのためには、お前たち特異点の力が必要なんだよ!」
神宮寺が、両手を広げる。
「……『重力』――超重力崩壊!」
神宮寺の両手の間に、漆黒の球体が現れる。
それは、周囲の海水や瓦礫を全て吸い込む、小型のブラックホールだった。
「……なっ……! ……深海でブラックホールだと!?」
蓮が、驚愕する。
ブラックホールの強大な引力が、蓮と透を吸い込もうとする。
「……くっ……! ……引きずり込まれる……!」
透が、空間魔法で抵抗するが、ブラックホールの引力には抗いきれない。
「……終わりだ、特異点ども。……お前たちの力、俺が有効に使ってやるよ」
神宮寺が、狂気を含んだ笑い声を上げる。
絶体絶命の危機。
その時、蓮の脳裏に、再びイヴの言葉が蘇った。
『三人の特異点の力を一つに合わせるのよ。……空間、創造、そして時間。……この三つの力が完全に共鳴した時、世界の外側へと通じる扉が開かれるわ』
(……そうだ。……俺たちには、まだあの力がある……!)
蓮が、通信機に向かって叫ぶ。
「……アリス、朔! ……俺に魔力を送れ! ……もう一度、『三位一体』をやるぞ!」
「……うん! ……『創造』――魔力譲渡!」
「……分かりました! ……『時間』――魔力譲渡!」
潜水艦の中にいるアリスと朔から、膨大な魔力が蓮に送られてくる。
「……透、お前の空間魔法も合わせろ!」
「……はい! ……『空間』――魔力同調!」
透の魔力も、蓮の「残響」に流れ込む。
「……『残響』――特異点共鳴・三位一体!」
蓮の体から、三色の魔力が混ざり合った、眩い光が放たれる。
その光は、ブラックホールの漆黒の闇を切り裂き、神宮寺を包み込んだ。
「……な、なんだこの光は……!? ……俺のブラックホールが……消滅していく……!?」
神宮寺が、信じられないという表情を浮かべる。
「……これが、俺たちの力だ! ……神宮寺、お前の野望はここで終わりだ!」
蓮が、光を纏った共鳴剣を振り下ろす。
「……ぐぁぁぁぁっ!」
神宮寺が、光に飲み込まれ、深海の底へと沈んでいった。
教団の過激派は、完全に沈黙した。
「……終わった……」
蓮が、息を切らしながら呟く。
「……蓮さん、透兄さん! ……早く戻ってきてください!」
朔の声が、通信機から聞こえる。
蓮と透は、リヴァイアサンへと帰還した。
四
「……無事でよかったわ、二人とも」
結月が、蓮と透を迎える。
「……ああ。……アリスと朔のおかげだ。……ありがとう」
蓮が、二人に礼を言う。
「……えへへ。……蓮お兄ちゃんの役に立てて嬉しいな」
アリスが、笑顔を見せる。
「……僕も、少しは罪滅ぼしができたでしょうか……」
朔が、少し寂しそうに笑う。
「……罪滅ぼしなんて言わないで。……朔は、もう私たちの仲間なんだから」
凛音が、朔の肩を叩く。
「……はい……!」
朔が、嬉しそうに頷く。
「……蓮さん、レーダーに巨大な反応があります。……おそらく、これが『世界のへそ』です」
シロが、モニターを指差す。
モニターには、深海の底にそびえ立つ、巨大な遺跡のような構造物が映し出されていた。
「……あれが、世界のへそ……。……全ての魔法の起源……」
蓮が、モニターを見つめる。
「……いよいよですね。……あの遺跡の中に、中枢星への扉があるはずです」
透が、緊張した面持ちで言う。
「……ああ。……行こう。……俺たちの手で、この世界の運命を変えるんだ」
蓮が、力強く宣言する。
リヴァイアサンは、巨大な遺跡に向かって、ゆっくりと進んでいった。
最終決戦の舞台への扉が、今、開かれようとしていた。
五
リヴァイアサンは、巨大な遺跡の入り口と思われる開口部に静かに着底した。
周囲は完全な暗闇だが、潜水艦のサーチライトが遺跡の表面を照らし出している。
その表面には、現代の言語とは異なる、幾何学的な模様のような文字がびっしりと刻まれていた。
「……シロ、この文字の解析はできるか?」
蓮が、モニターに映る文字を見ながら尋ねる。
「……現在、データベースと照合中ですが……これは、魔法発現以前の古代文明の言語、あるいは調律者が使用している言語の可能性があります。……完全な解読には時間がかかりそうです」
シロが、キーボードを叩きながら答える。
「……解読を待っている時間はない。……中に入るぞ」
蓮が、エアロックへと向かう。
「……待って、蓮。……この遺跡、何かおかしいわ」
結月が、レーダーの画面を見つめながら言う。
「……おかしい?」
「……ええ。……遺跡の内部から、微弱だけど、一定のリズムで魔力の波長が放出されているの。……まるで、心臓の鼓動みたいに……」
結月が、不安そうに言う。
「……心臓の鼓動……。……まさか、この遺跡自体が生きているのか?」
アランが、身構える。
「……生きているかどうかは分からないけど、何らかの防衛システムが稼働しているのは間違いないわ。……気をつけて」
凛音が、蓮に忠告する。
「……分かっている。……全員、警戒を最大レベルに引き上げろ。……行くぞ」
蓮、透、アリス、朔の四人が、アリスの「環境適応」魔法をかけられ、遺跡の内部へと足を踏み入れた。
結月、凛音、アランは、リヴァイアサンに残り、後方支援と通信の維持を担当する。
遺跡の内部は、外観からは想像もつかないほど広大で、そして明るかった。
壁や天井に埋め込まれた未知の鉱石が、淡い青色の光を放ち、通路を照らしている。
「……水がない……?」
透が、不思議そうに周囲を見渡す。
遺跡の内部には、海水が一切浸入していなかった。
入り口には目に見えない結界が張られており、水圧と海水を完全に遮断しているようだった。
「……どうやら、ここは深海でありながら、地上と同じ環境が保たれているみたいだな」
蓮が、アリスの魔法を解除し、深呼吸をする。
空気は少し埃っぽいが、呼吸に問題はない。
「……蓮さん、気をつけてください。……奥から、複数の魔力反応が近づいてきます」
朔が、目を閉じて時間の流れを読み取りながら警告する。
「……防衛システムのお出ましってわけか」
蓮が、共鳴剣を構える。
通路の奥から現れたのは、金属と水晶で構成された、人型の機械兵器だった。
その数は、ざっと数十体。
それぞれの機械兵器の胸部には、壁の鉱石と同じ青い光を放つコアが埋め込まれている。
「……機巧兵か……。……いや、パンデモニウムで戦った奴らとは少し違うな」
蓮が、機械兵器を観察する。
「……あれは、調律者が作り出した自律型防衛ユニット『ガーディアン』です。……魔法の力を動力源とし、侵入者を排除するようプログラムされています」
シロが、通信機越しに解説する。
「……ガーディアン……。……強敵そうだな」
透が、空間魔法の準備をする。
「……来るぞ!」
蓮の掛け声と共に、ガーディアンたちが一斉に襲いかかってきた。
「……『残響』――全式共鳴・衝撃波!」
蓮が、先頭のガーディアンに向かって衝撃波を放つ。
しかし、ガーディアンは胸部のコアを光らせ、衝撃波を完全に吸収してしまった。
「……なに!? ……魔法を吸収しただと!?」
蓮が、驚愕する。
「……蓮さん、彼らのコアは、あらゆる魔法エネルギーを吸収し、自身の動力に変換する性質を持っているようです! ……魔法攻撃は逆効果です!」
シロが、警告する。
「……魔法が効かないなら、物理攻撃で破壊するしかない!」
蓮が、共鳴剣を構え、ガーディアンに肉薄する。
剣を振り下ろし、ガーディアンの装甲を切り裂こうとするが、装甲は異常に硬く、剣が弾き返されてしまう。
「……くっ……! ……硬すぎる……!」
蓮が、舌打ちする。
「……僕がやります! ……『空間』――空間断裂!」
透が、ガーディアンの関節部分を狙って空間を断裂させる。
関節が外れ、ガーディアンがバランスを崩す。
「……今だ、蓮さん!」
「……おおっ!」
蓮が、バランスを崩したガーディアンの胸部のコアに向かって、渾身の力で剣を突き立てる。
ガキンッ!
コアにヒビが入り、ガーディアンは動きを停止した。
「……よし、コアを破壊すれば倒せる!」
蓮が、他のガーディアンに向き直る。
しかし、ガーディアンの数は多すぎた。
一体を倒す間に、他のガーディアンが蓮たちを取り囲み、一斉に光線のような魔法攻撃を放ってくる。
「……『創造』――絶対防壁!」
アリスが、巨大な盾を創り出し、光線を防ぐ。
「……『時間』――時間遅延!」
朔が、ガーディアンたちの周囲の時間を遅らせ、動きを鈍らせる。
「……透、アリス、朔! ……連携してコアを狙うぞ!」
蓮が、指示を出す。
四人は、それぞれの特異点の力を駆使し、ガーディアンたちと激しい戦闘を繰り広げた。
透が空間を歪めて敵の陣形を崩し、朔が時間を操作して隙を作り、アリスが防御と支援を行い、蓮がコアを破壊する。
息の合った連携により、ガーディアンの数は徐々に減っていった。
「……これで、最後だ!」
蓮が、最後の一体のコアを破壊し、ガーディアンは完全に沈黙した。
「……ふぅ……。……なんとか倒せたな」
蓮が、汗を拭う。
「……でも、まだ奥から魔力反応が……。……しかも、さっきよりもずっと巨大な……」
朔が、通路の奥を見つめながら言う。
「……まだいるのか……」
蓮が、共鳴剣を握り直す。
通路の奥から、地響きのような足音が近づいてくる。
そして、姿を現したのは、先ほどのガーディアンの数倍はあろうかという、巨大な機械兵器だった。
「……あれは……『マスター・ガーディアン』……。……遺跡の中枢を守る、最強の防衛ユニットです」
シロの声が、緊張で震えている。
マスター・ガーディアンは、四本の腕を持ち、それぞれの腕には異なる属性の魔法を放つ砲門が備えられていた。
「……こいつを倒さなければ、扉には辿り着けないってわけか」
蓮が、マスター・ガーディアンを見上げる。
「……蓮さん、あいつのコアは、胸部ではなく、頭部にあります。……しかも、強力な結界で守られているようです」
透が、空間探知でマスター・ガーディアンの弱点を見抜く。
「……頭部のコアか。……透、朔、アリス。……俺があいつの注意を引く。……その隙に、結界を破ってコアを破壊してくれ!」
蓮が、作戦を伝える。
「……分かりました!」
「……うん!」
「……了解です!」
三人が、頷く。
「……行くぞ!」
蓮が、マスター・ガーディアンに向かって突進する。
最終決戦への扉を開くための、最後の試練が始まった。
六
マスター・ガーディアンの四本の腕が、それぞれ炎、氷、雷、風の魔法を放つ。
蓮は「残響」でそれらの魔法の波長を読み取り、紙一重で回避しながら接近していく。
「……『残響』――全式共鳴・乱れ桜!」
蓮が、無数の斬撃をマスター・ガーディアンの脚部に叩き込む。
装甲は硬いが、連続した衝撃によってわずかに体勢が崩れる。
「……今だ!」
蓮の合図と共に、透、アリス、朔が動く。
「……『時間』――時間停止!」
朔が、マスター・ガーディアンの時間を一瞬だけ停止させる。
巨大な機械兵器の動きが、完全に凍りつく。
「……『創造』――概念破壊の槍!」
アリスが、あらゆる結界を貫通する光の槍を創り出し、マスター・ガーディアンの頭部に向けて投擲する。
光の槍は、頭部を守る強力な結界に突き刺さり、激しい火花を散らしながら結界に亀裂を入れる。
「……透、とどめだ!」
「……はい! ……『空間』――空間断裂・一点集中!」
透が、アリスの槍が作った亀裂に向けて、空間断裂の魔法を極限まで圧縮して放つ。
空間の刃が結界を完全に破壊し、マスター・ガーディアンの頭部にあるコアを真っ二つに切り裂いた。
「……ギィィィィィン……!」
マスター・ガーディアンが、耳障りな機械音を立てながら崩れ落ちる。
巨大な体が床に激突し、遺跡全体が大きく揺れた。
「……やった……!」
蓮が、息を切らしながら剣を下ろす。
「……すごい連携だったね、みんな」
アリスが、笑顔で透と朔にハイタッチをする。
「……ええ。……三人の特異点の力が合わされば、どんな敵でも倒せる気がします」
透が、自信に満ちた表情で言う。
「……僕も、少しは役に立てたみたいでよかったです」
朔が、安堵の息を吐く。
「……蓮さん、マスター・ガーディアンの奥に、巨大な扉があります。……おそらく、それが中枢星への扉です」
シロからの通信が入る。
蓮たちが奥へ進むと、そこには遺跡の壁面と一体化した、巨大な石の扉があった。
扉の表面には、三つのくぼみがある。
「……このくぼみ……。……特異点の魔力を注ぎ込むためのものか」
蓮が、扉のくぼみを見つめる。
「……透、アリス、朔。……準備はいいか?」
蓮が、三人を振り返る。
「……はい!」
「……うん!」
「……いつでもいけます!」
三人が、力強く頷く。
「……よし。……扉を開けるぞ」
透、アリス、朔の三人が、それぞれ扉のくぼみに手を当てる。
空間、創造、時間の魔力が、扉に注ぎ込まれていく。
ゴゴゴゴゴ……!
遺跡全体が震動し、巨大な石の扉がゆっくりと開き始めた。
扉の向こうには、眩い光が溢れていた。
それは、この世界とは異なる、別の次元へと繋がる光だった。
「……これが、世界の外側への道……」
蓮が、光を見つめる。
「……蓮、気をつけて。……その先は、私たちの常識が通用しない世界よ」
通信機越しに、紗綾局長の声が聞こえる。
「……分かっています。……必ず、調律者を倒して帰ってきます」
蓮が、力強く答える。
「……みんな、行くぞ!」
蓮を先頭に、透、アリス、朔の四人が、光の中へと足を踏み入れた。
最終決戦の舞台、中枢星。
調律者との真の戦いが、今、幕を開けようとしていた。
【第44章終了】
【第44章登場魔法・用語解説】
「氷殻装甲」:結月の氷結魔法。極低温の氷で対象を覆い、物理的な衝撃や水圧から守る。
「水圧遮断」:透の空間魔法。空間の断層を作り出し、深海の水圧を完全に遮断する。
「環境適応・深海仕様」:アリスの創造魔法。対象の体を深海の過酷な環境(水圧、低温、暗闇)に適応させる。
「時間残像」:朔の時間魔法。対象が過去に移動した軌跡を、光の残像として可視化する。ステルス魔法を見破るのに有効。
「超重力崩壊」:神宮寺の重力魔法。周囲のあらゆるものを吸い込む小型のブラックホールを作り出す。
「機巧兵ガーディアン」:調律者が作り出した自律型防衛ユニット。魔法エネルギーを吸収し、自身の動力に変換する性質を持つ。
「マスター・ガーディアン」:遺跡の中枢を守る最強の防衛ユニット。四本の腕から異なる属性の魔法を放ち、強力な結界でコアを守っている。
ここまで読んでくれてありがとうございました!
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