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残響魔術(エコー・コード)  作者: 天音シオン
第二部 特異点と教団

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第42章 二人の特異点

第42章 二人の特異点



翌日の午後、対魔局本部の地下にある特別訓練室。

そこには、蓮、透、そしてアリスの三人が集まっていた。


「……アリスちゃん、今日は無理を言ってごめんね」


透が、アリスに申し訳なさそうに言う。


「……ううん、大丈夫。……透お兄ちゃんのためなら、私、頑張る」


アリスが、透に向かって微笑む。


「……シロの解析によると、特異点の力は、他の特異点と共鳴することで増幅される可能性があるらしい。……朔の時間魔法に対抗するためには、透とアリスの力を共鳴させるのが一番の近道だ」


蓮が、二人に説明する。


「……特異点同士の共鳴……。……僕の『空間』と、アリスちゃんの『創造』が合わされば、何が起きるか分からない。……でも、やるしかないですね」


透が、眼鏡を押し上げる。


「……ああ。……俺が『残響』で二人の魔力波長を繋ぐ。……もし暴走しそうになったら、すぐに俺が止めるから、安心して力を解放してくれ」


蓮が、共鳴剣を構える。


「……分かった。……アリスちゃん、準備はいい?」


透が、アリスに手を差し伸べる。


「……うん!」


アリスが、透の手を握る。


「……よし、始めるぞ。……『残響』――精神共鳴マインド・リンク!」


蓮が、自身の魔力を二人に繋げる。


その瞬間、透とアリスの体から、凄まじい魔力が放出された。

透の青い魔力と、アリスの白い魔力が、蓮の「残響」を介して混ざり合い、訓練室全体を眩い光で包み込む。


「……すごい……。……これが、特異点同士の共鳴……!」


蓮が、その圧倒的な力に息を呑む。


「……アリスちゃん、僕の空間魔法に、君の創造魔法を重ねてみて」


透が、アリスに指示を出す。


「……うん。……『創造』――空間固定!」


アリスが、透の空間魔法に自身の魔力を注ぎ込む。


すると、透が展開していた空間の歪みが、完全に固定され、一つの独立した「領域」として確立された。


「……これは……。……僕の空間魔法が、完全に固定されている。……これなら、朔の時間魔法の影響を受けない『絶対領域』を作れるかもしれない!」


透が、目を輝かせる。


「……すごいぞ、二人とも。……これなら、朔の時間停止にも対抗できる」


蓮が、二人の共鳴を維持しながら言う。


しかし、その時だった。


「……あ……れ……?」


アリスの顔が、急に青ざめる。


「……アリスちゃん? ……どうした?」


透が、異変に気づく。


「……魔力が……止まらない……! ……私の中に、知らない記憶が……流れ込んでくる……!」


アリスが、頭を押さえてしゃがみ込む。


「……アリス! ……共鳴を止めるぞ!」


蓮が、慌てて「残響」を解除しようとする。


しかし、二人の魔力はすでに蓮の制御を超えて暴走を始めていた。


「……くそっ……! ……魔力が、切れない……!」


蓮が、必死に魔力を引き剥がそうとするが、二人の特異点の力は、まるで一つの巨大な渦のように蓮を巻き込んでいく。


「……蓮さん……! ……僕の意識も……引っ張られる……!」


透が、苦悶の表情を浮かべる。


次の瞬間、三人の意識は、真っ白な空間へと飛ばされた。



「……ここは……?」


蓮が、目を覚ます。

周囲は、果てしなく続く真っ白な空間だった。


「……蓮さん……」


隣で、透とアリスも目を覚ます。


「……透、アリス。……無事か?」


蓮が、二人に駆け寄る。


「……はい。……でも、ここは一体……?」


透が、周囲を見渡す。


「……ここは、特異点の記憶の深淵。……あるいは、世界の記憶そのものかもしれない」


突然、空間に声が響いた。


「……誰だ!?」


蓮が、声のする方を振り向く。


そこには、一人の女性が立っていた。

長い銀髪に、透き通るような青い瞳。

その姿は、どこかアリスに似ていた。


「……あなたは……?」


アリスが、女性を見つめる。


「……私は、初代の特異点。……かつて、調律者によって滅ぼされた『第一番目の世界』の生き残りよ」


女性が、静かに語る。


「……第一番目の世界の……生き残り……?」


蓮が、驚愕する。


「……そう。……私は、調律者の実験を止めるために戦った。……でも、力及ばず、世界はリセットされた。……私の肉体は消滅したけれど、特異点としての魂だけが、こうして世界の記憶の底に残り続けているの」


女性が、悲しそうに微笑む。


「……なぜ、俺たちがここに?」


蓮が、尋ねる。


「……あなたたちが、二つの特異点の力を共鳴させたからよ。……特異点の力は、本来一つに交わるべきではない。……交われば、世界の法則そのものを書き換えるほどの力になる。……そして、その力は、過去の特異点の記憶を呼び覚ますの」


女性が、説明する。


「……世界の法則を書き換える力……。……調律者の記録にあった通りだ」


透が、呟く。


「……あなたたちに、見せたいものがあるわ。……調律者の真の目的。……そして、この世界がどうやって作られたのかを」


女性が、手を振る。


すると、真っ白な空間が歪み、一つの映像が映し出された。


それは、宇宙空間に浮かぶ、巨大な機械仕掛けの星だった。


「……あれが、調律者の本体が存在する場所。『中枢星コア・スター』よ」


女性が、指差す。


「……中枢星……」


蓮が、その巨大な星を見上げる。


「……調律者は、あの星から無数の世界を管理し、実験を繰り返している。……彼らの目的は、完全な魔法生命体を生み出すこと。……そのために、人間をモルモットにして、魔法の発現と進化を観察しているの」


女性の言葉に、蓮は激しい怒りを覚えた。


「……ふざけるな……。……人間の命を、なんだと思っているんだ……!」


蓮が、拳を握りしめる。


「……そして、彼らが最も恐れているのが、『特異点』の存在よ。……特異点は、調律者のシステムに属さない、イレギュラーな力。……だから彼らは、特異点が覚醒するたびに、世界をリセットしてきた」


女性が、映像を切り替える。


そこには、過去の世界が次々と滅ぼされていく様子が映し出されていた。

炎に包まれる街、崩壊する大地、逃げ惑う人々。


「……ひどい……」


アリスが、目を覆う。


「……でも、この第一七二四番目の世界は違う。……あなたたちが、調律者の中枢を破壊した。……それは、一七二三回の実験の中で、初めての出来事よ」


女性が、蓮たちを見る。


「……俺たちが、初めて……」


「……そう。……だから、調律者は焦っている。……彼らは、次のフェーズに移行し、特異点を直接回収しようとしている。……もし特異点が彼らの手に落ちれば、彼らはその力を使って、さらに恐ろしい実験を始めるでしょう」


女性が、警告する。


「……絶対に、そんなことはさせない。……俺たちが、調律者を止める」


蓮が、力強く宣言する。


「……その言葉が聞けて、安心したわ。……あなたたちなら、きっと調律者の連鎖を断ち切ることができる」


女性が、優しく微笑む。


「……でも、どうやって調律者の本体に辿り着けばいいんですか? ……彼らは、この世界の外側にいるんでしょう?」


透が、尋ねる。


「……三人の特異点の力を一つに合わせるのよ。……空間、創造、そして時間。……この三つの力が完全に共鳴した時、世界の外側へと通じる『扉』が開かれるわ」


女性が、答える。


「……三人の特異点……。……やっぱり、朔の力が必要なんだな」


蓮が、呟く。


「……ええ。……彼を救い出し、三人の力を合わせなさい。……それが、調律者を倒す唯一の方法よ」


女性の姿が、徐々に薄れていく。


「……待って! ……あなたの名前は……?」


アリスが、叫ぶ。


「……私の名前は、イヴ。……あなたたちの未来に、希望があることを祈っているわ」


イヴと名乗った女性は、光の粒子となって消えていった。



「……はっ!」


蓮が、目を覚ます。

そこは、対魔局の特別訓練室だった。


「……蓮さん……!」


透とアリスも、同時に目を覚ます。


「……戻ってこれたか……」


蓮が、息を整える。


「……今の、夢じゃありませんよね?」


透が、蓮を見る。


「……ああ。……俺たち三人が、同じ記憶を共有したんだ。……初代特異点、イヴの記憶を」


蓮が、立ち上がる。


「……三人の特異点の力を合わせれば、調律者の本体に辿り着ける……。……それが、イヴさんの残したメッセージ……」


アリスが、呟く。


「……ああ。……そのためには、どうしても朔の力が必要だ。……朔を教団から取り戻し、俺たちの仲間に引き入れる」


蓮が、決意を固める。


「……はい。……僕が、必ず朔を説得します」


透が、力強く頷く。


その時、訓練室のドアが開き、シロが駆け込んできた。


「……蓮さん! ……大変です!」


シロの表情は、切羽詰まっていた。


「……どうした、シロ?」


蓮が、尋ねる。


「……黒の教団が、動き出しました。……彼らは、東京の主要なインフラ施設を同時多発的に占拠し、政府に対して宣戦布告を行いました!」


シロが、タブレットの画面を見せる。


そこには、教団の構成員たちが施設を占拠している映像が映し出されていた。


「……なんだと……!?」


蓮が、驚愕する。


「……さらに、教団の声明文には、こう記されています。『我々は、調律者の支配から世界を解放する。そのために、全ての無能力者を排除し、魔法使いだけの新世界を創生する』と」


シロが、読み上げる。


「……朔の言っていた通りだ。……教団は、調律者に対抗するために、世界を壊そうとしている」


透が、拳を握りしめる。


「……目的が同じでも、やり方が間違っている。……無関係な人々を巻き込むテロは、絶対に許さない」


蓮が、共鳴剣を手に取る。


「……特務部隊、全員出撃だ。……教団のテロを阻止し、朔を確保する!」


蓮が、指示を出す。


「……了解!」


透とアリスが、同時に答える。


二人の特異点の共鳴によって、調律者の真の目的と、彼らを倒す方法が明らかになった。

しかし、その前に立ちはだかるのは、同じく調律者を倒そうとする黒の教団、そして三人目の特異点である朔だった。


世界の命運を懸けた、三つ巴の戦いが、今始まろうとしていた。



東京の街は、混乱の渦に包まれていた。

黒の教団による同時多発テロは、発電所、通信施設、交通機関など、都市の機能を麻痺させるものだった。


「……状況は最悪ね。……教団の連中、本気で東京を沈める気だわ」


凛音が、通信機越しに舌打ちする。


「……各部隊は、それぞれの担当エリアの制圧を急げ。……俺と透、アリスは、教団の指揮官がいると思われるテレビ塔に向かう」


蓮が、指示を出しながら、夜の街を駆け抜ける。


「……了解!」


結月、凛音、アランが、それぞれの担当エリアへと散っていく。


蓮、透、アリスの三人は、東京の中心にそびえ立つテレビ塔へと向かった。

教団は、このテレビ塔から全世界に向けて、自分たちの思想を放送しようとしていた。


「……見えた。……テレビ塔だ」


蓮が、塔を見上げる。

塔の周囲には、黒いローブを着た教団の構成員たちが多数配置されていた。


「……正面突破は難しいですね。……僕の空間魔法で、一気に展望台までテレポートします」


透が、提案する。


「……頼む。……アリス、透のサポートを」


蓮が、アリスに言う。


「……うん。……『創造』――空間安定!」


アリスが、透のテレポートを安定させるための魔法を発動する。


「……行きます! ……『空間』――空間転移テレポート!」


透の魔法が発動し、三人の姿がその場から消えた。


次の瞬間、三人はテレビ塔の展望台に現れた。


「……侵入者だ!」


展望台にいた教団の構成員たちが、一斉に魔法を構える。


「……『残響』――全式共鳴・衝撃波!」


蓮が、共鳴剣を振り抜き、構成員たちを吹き飛ばす。


「……朔はどこだ!?」


蓮が、周囲を見渡す。


「……兄さん。……来るのが遅かったね」


展望台の奥から、朔が姿を現した。

その後ろには、放送用の機材が設置されており、すでに全世界への放送が始まっていた。


「……朔! ……放送を止めろ! ……こんなことをしても、誰も救われない!」


透が、朔に向かって叫ぶ。


「……救う? ……僕たちは、救うためにやっているんじゃない。……壊すためにやっているんだ。……この腐った世界をね」


朔が、冷たく言い放つ。


「……お前たちのやり方は間違っている。……無関係な人々を巻き込むな!」


蓮が、共鳴剣を構える。


「……無関係? ……この世界に生きている以上、無関係な人間なんていない。……全員が、調律者の実験のモルモットなんだから」


朔が、両手を広げる。


「……だからといって、お前たちが彼らの命を奪っていい理由にはならない!」


蓮が、朔に向かって踏み込む。


「……『時間』――時間停止タイム・ストップ!」


朔が、再び時間停止の魔法を発動する。


しかし、今回は違った。


「……アリス!」

「……うん! ……『創造』――空間固定!」


透とアリスが、同時に魔法を発動する。

二人の魔力が共鳴し、蓮たちの周囲に「絶対領域」が形成される。


朔の時間停止の波紋が、絶対領域にぶつかり、弾き返された。


「……なに!?」


朔が、驚愕の表情を浮かべる。


「……朔、お前の時間魔法は、もう俺たちには通じない。……透とアリスの力が共鳴したこの領域内では、時間の流れは固定されている」


蓮が、絶対領域の中から朔を見据える。


「……特異点同士の共鳴……。……まさか、そこまで力を引き出しているとはね」


朔が、悔しそうに顔を歪める。


「……朔、もうやめよう。……僕たちは、戦う必要なんてないんだ」


透が、絶対領域の中から朔に語りかける。


「……黙れ! ……僕の邪魔をするなら、兄さんでも容赦しない!」


朔が、激昂する。


「……『時間』――時間加速・崩壊タイム・アクセル・コラプス!」


朔が、自身の周囲の時間を極限まで加速させ、その反動で生じた破壊エネルギーを蓮たちに向けて放つ。


「……『残響』――全式共鳴・反射!」


蓮が、共鳴剣で破壊エネルギーを受け止め、朔に向かって跳ね返す。


「……くっ……!」


朔が、咄嗟に時間を逆行させてエネルギーを相殺するが、その衝撃で吹き飛ばされ、壁に激突する。


「……朔!」


透が、絶対領域を解除し、朔に駆け寄ろうとする。


「……来るな!」


朔が、立ち上がり、透を睨みつける。


「……なぜだ、朔! ……なぜ、そこまでして世界を壊そうとするんだ!」


透が、悲痛な声で叫ぶ。


「……教団の長が……あの人が、僕に教えてくれたんだ。……この世界が、どれほど残酷で、無意味なものかを……」


朔が、息を切らしながら言う。


「……教団の長……? ……そいつが、お前を洗脳したのか!」


蓮が、朔に問う。


「……洗脳じゃない! ……あの人は、真実を教えてくれただけだ! ……あの人こそが、この世界を救う唯一の希望なんだ!」


朔が、狂信的な目で叫ぶ。


「……その教団の長というのは、誰なんだ?」


蓮が、静かに尋ねる。


朔は、しばらく沈黙した後、口を開いた。


「……『天野博士』。……それが、あの人の名前だ」


「……天野博士……!?」


蓮が、驚愕の声を上げる。


天野博士。

それは、始まりの島で使徒の正体として現れ、原初の式を起動させようとした男の名前だった。


「……どういうことだ……。……天野博士は、始まりの島で死んだはずじゃ……」


蓮が、混乱する。


「……死んでいない。……あの人は、生きている。……そして、教団を率いて、調律者との最終決戦の準備を進めているんだ」


朔が、冷笑する。


「……天野博士が、黒の教団の長……」


蓮は、事態の複雑さに眩暈を覚えた。

使徒であり、調律者の手先だと思っていた天野博士が、実は調律者に対抗する黒の教団の長だった。


「……蓮さん、どういうことですか? ……天野博士って……」


透が、蓮を見る。


「……俺の父さんの教え子で、魔法発現の元凶となった男だ。……だが、奴の真の目的が何なのか、俺にも分からなくなってきた」


蓮が、歯を食いしばる。


「……今日は、ここまでにしておく。……だが、次は必ず、お前たちを排除する」


朔が、懐から煙幕弾を取り出し、床に叩きつける。


白い煙が展望台を包み込む。


「……待て、朔!」


透が、煙の中に飛び込むが、すでに朔の姿はなかった。


「……逃げられたか……」


蓮が、煙を払いながら言う。


「……朔……」


透が、床に崩れ落ちる。


「……透、落ち込んでいる暇はない。……天野博士が生きているなら、事態はさらに深刻だ。……奴の真の目的を突き止めなければならない」


蓮が、透の肩に手を置く。


「……はい……。……必ず、朔を取り戻します。……そして、天野博士の野望を止めます」


透が、顔を上げる。


教団のテロは、特務部隊の活躍によって最小限の被害で食い止められた。

しかし、天野博士の生存と、彼が黒の教団の長であるという事実は、蓮たちに新たな謎と脅威をもたらした。



翌朝、対魔局本部の会議室。

蓮、透、アリス、結月、凛音、アラン、そしてシロが集まり、緊急会議が開かれていた。


「……天野博士が生きている。……そして、黒の教団の長として活動している。……これが事実なら、事態は根本から変わってくる」


蓮が、重々しい口調で切り出す。


「……始まりの島で、天野博士は原初の式を起動させようとした。……あれは、調律者の計画を進めるためじゃなかったのか?」


アランが、疑問を口にする。


「……おそらく、違う。……天野博士は、原初の式を使って、調律者に対抗しようとしていたんだ。……だが、その方法は、世界を一度リセットするという過激なものだった」


蓮が、推測を述べる。


「……そして今度は、黒の教団を使って、無能力者を排除し、魔法使いだけの世界を作ろうとしている。……それも、調律者に対抗するための手段ということ?」


結月が、眉をひそめる。


「……ええ。……調律者は、魔法生命体の進化を観察している。……もし、この世界が魔法使いだけの完全な世界になれば、調律者は実験を終了し、この世界を『完成品』として保存するかもしれない。……天野博士は、それを狙っているのかもしれません」


シロが、分析結果を報告する。


「……なるほど。……調律者に滅ぼされる前に、自分たちから調律者の望む世界を作り上げることで、生き残ろうとしているわけか」


凛音が、腕を組む。


「……でも、そんなの狂ってる! ……無能力者の人たちを見殺しにするなんて、絶対に間違ってる!」


アリスが、声を荒げる。


「……ああ。……天野博士の目的が何であれ、そのやり方は絶対に認められない。……俺たちは、調律者も、天野博士も、両方止めなければならない」


蓮が、力強く言う。


「……そのためには、教団の本部を叩く必要があります。……シロさん、教団の本部の場所は特定できましたか?」


透が、シロに尋ねる。


「……はい。……昨夜のテロの際、朔の魔力波長を逆探知し、教団の本部の座標を特定しました。……場所は、日本アルプスの地下深く。……かつて、政府が極秘に建設した巨大な地下シェルターの跡地です」


シロが、モニターに地図を映し出す。


「……日本アルプスの地下か。……かなり大規模な施設になりそうだな」


アランが、地図を見つめる。


「……教団の総力戦になる。……天野博士も、そこにいるはずだ」


蓮が、モニターを見据える。


「……蓮さん、僕も行きます。……朔を、必ず連れ戻します」


透が、決意に満ちた目で言う。


「……ああ。……お前の力が必要だ。……アリスも、一緒に来てくれるか?」


蓮が、アリスを見る。


「……うん! ……私、もう逃げない。……自分の力で、みんなを守る!」


アリスが、力強く頷く。


「……よし。……特務部隊、これより黒の教団本部への潜入作戦を開始する。……目標は、天野博士の確保、および水無月朔の奪還だ」


蓮が、全員に指示を出す。


「「「了解!」」」


全員の声が、会議室に響き渡る。


調律者、黒の教団、そして特異点。

複雑に絡み合う運命の糸が、蓮たちを次なる戦いへと導いていく。

教団本部での決戦が、すぐそこまで迫っていた。





【第42章終了】





【第42章登場魔法・用語解説】


「空間固定」:アリスの「創造」と透の「空間」の共鳴によって生まれた複合魔法。特定の空間の法則を完全に固定し、外部からの干渉(時間停止など)を一切受け付けない「絶対領域」を作り出す。


中枢星コア・スター」:調律者の本体が存在する、宇宙空間に浮かぶ巨大な機械仕掛けの星。ここから無数の世界を管理し、実験を行っている。


「イヴ」:第一番目の世界の生き残りであり、初代の特異点。肉体は消滅したが、特異点としての魂が世界の記憶の底に残り続けていた。蓮たちに調律者の真実と、彼らを倒す方法を伝えた。


「時間加速・崩壊タイム・アクセル・コラプス」:朔の時間魔法。自身の周囲の時間を極限まで加速させ、その反動で生じた破壊エネルギーを対象に放つ。強力だが、自身への負担も大きい。



ここまで読んでくれてありがとうございました!


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