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残響魔術(エコー・コード)  作者: 天音シオン
第二部 特異点と教団

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第38章 始まりの島

第38章 始まりの島



太平洋の絶海に浮かぶ孤島、「始まりのエデン」。

特務部隊を乗せたステルス輸送機は、夜明け前の暗闇の中、島の上空へと到達した。


「……蓮さん、島全体が強力な魔法結界で覆われています。……輸送機での直接降下は不可能です」


シロが、モニターの解析結果を見ながら報告する。


「……結界の強度は?」


蓮が、尋ねる。


「……第零研究所の結界とは比べ物になりません。……物理的な破壊は、ほぼ不可能です」


シロが、首を横に振る。


「……なら、透の出番だな。……結界の内側に、直接テレポートできるか?」


蓮が、透を見る。


「……やってみます。……ただ、結界の干渉で座標がずれる可能性があります。……着地と同時に戦闘になる覚悟をしておいてください」


透が、タブレットを操作しながら答える。


「……了解だ。……全員、武器を構えろ!」


蓮が、共鳴剣を抜く。


「……空間座標、ロック。……テレポート、開始します!」


透が、魔法を発動させる。


特務部隊のメンバーは、一瞬の浮遊感の後、島の地面へと着地した。


「……着地成功。……ここは……」


蓮が、周囲を見回す。


そこは、古代の遺跡のような石造りの建造物が立ち並ぶ広場だった。

中央には、天高くそびえる巨大な塔があり、その頂上から黒い光の柱が放たれている。


「……あれが、原初の式……」


結月が、光の柱を見上げる。


「……ええ。……そして、歓迎の準備もできているようですね」


凛音が、レールガンを構える。


広場の周囲から、無数の黒い影が現れた。

それは、教団の魔法生物たちだった。

しかし、以前戦ったものとは比べ物にならないほど巨大で、凶悪な魔力を放っている。


「……使徒の親衛隊か。……数は……ざっと百体以上」


アランが、大剣を構える。


「……突破するぞ! ……俺とアランで前衛を切り開く! ……凛音と透は後方支援! ……結月は、俺のサポートを頼む!」


蓮が、指示を出す。


「……了解!」


全員が、一斉に戦闘態勢に入る。


「……『残響』――全式共鳴・一刀両断!」


蓮が、先陣を切って魔法生物の群れに突っ込む。

共鳴剣の一振りで、数体の魔法生物が真っ二つに切り裂かれる。


「……『重力』――重力圧殺グラビティ・プレス!」


アランが、大剣を地面に突き立てる。

周囲の重力が急激に増し、魔法生物たちが地面に押し潰される。


「……『雷撃』――超電磁砲レールガン!」


凛音が、後方から正確な射撃で、遠距離攻撃を仕掛けてくる魔法生物を撃ち抜く。


「……『空間』――空間断裂ディメンション・カッター!」


透が、空間そのものを切り裂き、魔法生物の群れを分断する。


「……『氷結』――絶対零度・氷槍雨アイス・ジャベリン!」


結月が、無数の氷の槍を生成し、魔法生物たちに降り注がせる。


特務部隊の連携は完璧だった。

圧倒的な数で迫る魔法生物たちを、次々と撃破していく。


「……よし、このまま塔まで押し切るぞ!」


蓮が、叫ぶ。


しかし、その時。


「……よくここまで来ましたね、特異点の器よ」


塔の入り口から、使徒が姿を現した。


「……使徒……!」


蓮が、共鳴剣を構える。


「……原初の式の起動準備は、すでに最終段階に入っています。……あなたたちがここに来た時点で、私の勝ちは決まっているのです」


使徒が、仮面の奥で目を光らせる。


「……ふざけるな! ……俺が、お前の野望を打ち砕く!」


蓮が、使徒に向かって飛び出す。


「……無駄な抵抗を。……『虚無』――空間消去!」


使徒が、蓮の周囲の空間を無に帰そうとする。


「……させない! ……『残響』――全式共鳴・神速!」


蓮が、紗綾局長の『神速』を模倣し、虚無の範囲から瞬時に離脱する。


「……速い。……しかし、それだけでは私には勝てません」


使徒が、蓮の背後に回り込む。


「……『虚無』――生命消去!」


使徒の手が、蓮の背中に触れようとする。


「……蓮!」


結月が、悲鳴を上げる。


「……『氷結』――絶対零度・氷の盾!」


結月が、蓮の背後に分厚い氷の盾を生成する。


使徒の手が氷の盾に触れた瞬間、盾は音もなく消滅した。

しかし、その一瞬の隙を突いて、蓮は体勢を立て直した。


「……結月、ナイスサポートだ!」


蓮が、使徒に斬りかかる。


ガキィィィン!


使徒が、腕で共鳴剣を受け止める。


「……厄介な連携ですね。……ならば、まずは彼女から消しましょう」


使徒が、結月に狙いを定める。


「……させない! ……『重力』――重力拘束グラビティ・ホールド!」


アランが、使徒の動きを重力で封じようとする。


「……『空間』――空間転移テレポート!」


透が、結月を使徒の攻撃範囲からテレポートさせる。


「……『雷撃』――超電磁砲レールガン・最大出力!」


凛音が、使徒の頭部を狙ってレールガンを放つ。


「……小賢しい!」


使徒が、『虚無』でレールガンの弾を消滅させる。


特務部隊の総力を結集した攻撃でも、使徒に決定打を与えることはできない。

使徒の『虚無』は、あらゆる魔法を無効化する、絶対的な防御壁だった。


「……くそっ……! ……どうすれば、奴の『虚無』を破れるんだ……!」


蓮が、焦燥感を募らせる。


「……蓮。……奴の『虚無』にも、弱点はあるはずよ。……どんな魔法にも、必ず代償や限界がある」


凛音が、冷静に分析する。


「……限界……。そうか、奴が『虚無』を発動する瞬間、ほんの一瞬だけ、魔力の流れが途切れる隙があるはずだ!」


蓮が、使徒の動きを観察する。


「……その隙を突くしかない。……でも、誰が囮になる?」


アランが、尋ねる。


「……俺がやる。……俺が奴の攻撃を引きつけて、隙を作る。……その瞬間に、全員で一斉攻撃を仕掛けるんだ!」


蓮が、決断する。


「……蓮、危険すぎるわ!」


結月が、止める。


「……これしかないんだ。……結月、俺を信じてくれ」


蓮が、結月の目を見る。


「……分かった。……必ず、成功させるわ」


結月が、力強く頷く。


「……よし、行くぞ!」


蓮が、再び使徒に向かって突進する。



「……愚かな。……何度やっても同じことです」


使徒が、蓮に向かって『虚無』を放つ。


蓮は、ギリギリのところで虚無を回避し、使徒の懐に飛び込む。


「……『残響』――全式共鳴・限界突破!」


蓮が、自身の魔力を極限まで引き上げる。

代償の激痛が頭を走るが、蓮はそれを気力でねじ伏せる。


「……うおおおおぉぉぉぉっ!」


蓮が、共鳴剣を振り下ろす。


「……『虚無』――完全消去!」


使徒が、最大の魔力で虚無を発動させる。


その瞬間。


「……今だ!」


蓮が、叫ぶ。


使徒が虚無を発動させた直後、ほんの一瞬だけ、魔力の流れが途切れた。


「……『氷結』――絶対零度・氷結牢アイス・プリズン!」


結月が、使徒の足元を凍りつかせ、動きを封じる。


「……『重力』――超重力圧殺スーパー・グラビティ・プレス!」


アランが、使徒に莫大な重力をかける。


「……『空間』――空間圧縮ディメンション・コンプレス!」


透が、使徒の周囲の空間を圧縮し、逃げ場を奪う。


「……『雷撃』――超電磁砲レールガン・限界突破!」


凛音が、最大出力のレールガンを使徒の胸に撃ち込む。


ドォォォォォォォォン!


特務部隊の連携攻撃が、使徒に直撃した。


「……ぐぁぁぁぁぁぁっ!」


使徒が、初めて悲鳴を上げる。


「……やったか!?」


蓮が、土埃の向こうを見つめる。


しかし、土埃が晴れた後、そこには無傷の使徒が立っていた。


「……ば、馬鹿な……! ……あれだけの攻撃を食らって、無傷だなんて……!」


凛音が、絶望的な声を上げる。


「……素晴らしい連携でした。……しかし、私には通じません」


使徒が、仮面の奥で冷たく笑う。


「……なぜだ……! ……確かに、隙を突いたはずだ!」


蓮が、驚愕する。


「……私の『虚無』は、外部からの攻撃を消滅させるだけではありません。……私自身の肉体が受けたダメージすらも、無に帰すことができるのです」


使徒が、恐るべき事実を告げる。


「……ダメージすらも、無に帰す……? ……そんなの、無敵じゃないか……!」


アランが、大剣を取り落とす。


「……絶望しましたか? ……それが、調律者の力の一部です。……さあ、特異点の器よ。……大人しく、私と共に来なさい」


使徒が、蓮に手を差し伸べる。


「……ふざけるな! ……俺は、絶対に諦めない!」


蓮が、再び共鳴剣を構える。


「……往生際が悪いですね。……ならば、力ずくで連れて行くまでです」


使徒が、蓮に向かって歩み寄る。


その時、塔の頂上から放たれていた黒い光の柱が、さらに激しく輝き始めた。


「……原初の式の起動準備が、完了したようですね。……さあ、世界をリセットする時間です」


使徒が、塔を見上げる。


「……させない! ……『残響』――全式共鳴・限界突破!」


蓮が、最後の力を振り絞って使徒に斬りかかる。


しかし、使徒は蓮の攻撃を軽々と躱し、蓮の首を掴み上げた。


「……ぐっ……!」


蓮が、苦悶の声を漏らす。


「……蓮!」


結月が、助けに入ろうとする。


「……邪魔です」


使徒が、結月に向かって『虚無』を放つ。


「……きゃぁぁぁっ!」


結月が、吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。


「……結月!」


蓮が、叫ぶ。


「……さあ、特異点の器よ。……原初の式に、あなたの魔力を注ぎなさい」


使徒が、蓮を塔の入り口へと引きずっていく。


「……離せ……! ……俺は、絶対に……!」


蓮が、抵抗するが、使徒の力は圧倒的だった。


蓮は、塔の内部へと引きずり込まれていった。



塔の内部は、巨大な空洞になっていた。

中央には、黒い光を放つ巨大なクリスタルが浮遊している。

それが、「原初の式」のコアだった。


「……これが、原初の式……」


蓮が、クリスタルを見上げる。


「……そうです。……このクリスタルに、あなたの特異点の魔力を注ぎ込むことで、式は完全に起動し、世界は無に帰ります」


使徒が、蓮をクリスタルの前に突き飛ばす。


「……誰が、そんなこと……!」


蓮が、立ち上がろうとする。


「……拒否権はありません。……あなたの意志に関わらず、私が強制的に魔力を引き出します」


使徒が、蓮の胸に手を当てる。


「……ぐぁぁぁぁぁぁっ!」


蓮の体内から、莫大な魔力が強制的に引き出され、クリスタルへと注ぎ込まれていく。


クリスタルの黒い光が、さらに強さを増す。


「……やめろ……! ……世界が……終わってしまう……!」


蓮が、必死に抵抗するが、魔力の流出を止めることはできない。


(……くそっ……! ……このままじゃ、本当に世界が……!)


蓮の意識が、徐々に遠のいていく。


その時、紗綾局長の言葉が脳裏に蘇った。


『……原初の式の起動キーを抑える方法は、一つだけ。……特異点の器が、自らの意志で式に魔力を注いで、起動キーを内側から破壊することよ』


(……内側から、破壊する……)


蓮は、最後の力を振り絞り、自らの意志でクリスタルに手を伸ばした。


「……何をする気ですか?」


使徒が、眉をひそめる。


「……お前の思い通りには、させない……!」


蓮が、クリスタルに触れる。


その瞬間、蓮の意識は、クリスタルの内部へと吸い込まれていった。



蓮が目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった。

上下左右の感覚もなく、ただ無限の白が広がっている。


「……ここは……原初の式の内部か……?」


蓮が、周囲を見回す。


「……よく来ましたね、特異点の器よ」


真っ白な空間に、声が響いた。


「……誰だ!?」


蓮が、警戒する。


空間が歪み、一人の男が姿を現した。

白衣を着た、初老の男だった。


「……初めまして。……私は、天野あまの博士。……かつて、調律者の下で『式』の研究をしていた科学者です」


男が、穏やかな声で名乗る。


「……天野博士……? ……あなたが、原初の式を作ったのか?」


蓮が、尋ねる。


「……ええ。……私は、調律者の命令で、この世界をリセットするためのシステムを構築しました。……しかし、私は途中で気づいたのです。……調律者の目的が、人類の救済ではなく、単なる『実験』に過ぎないことに」


天野博士が、悲しげに語る。


「……実験……?」


「……調律者は、様々な世界を創り出しては、失敗すればリセットするという行為を繰り返しています。……この世界も、彼らにとっては無数の実験場の一つに過ぎないのです」


天野博士の言葉に、蓮は息を呑んだ。


「……そんな……。俺たちの命を、なんだと思ってるんだ!」


蓮が、怒りで拳を握りしめる。


「……私も、同じ思いでした。……だから私は、調律者を裏切り、彼らの計画を阻止するために教団を作りました。……そして、自らを『使徒』と名乗り、原初の式を破壊する機会を窺っていたのです」


天野博士が、衝撃の事実を告白する。


「……なっ……!? ……あなたが、使徒の正体……!?」


蓮が、驚愕する。


「……はい。……私は、原初の式を破壊するために、あなたの特異点の力を必要としていました。……しかし、調律者の監視の目を欺くためには、あなたを敵として扱い、ここまで誘き寄せるしかなかったのです」


天野博士が、深く頭を下げる。


「……そんな……。じゃあ、今まで俺たちと戦ってきたのは、全て演技だったのか!?」


蓮が、混乱する。


「……演技ではありません。……私は、あなたたちが本当に世界を救う覚悟があるのか、試していたのです。……そして、あなたたちは見事に私の試練を乗り越え、ここまで辿り着いた」


天野博士が、微笑む。


「……試練……。ふざけるな! ……そのせいで、どれだけの人が傷ついたと思ってるんだ!」


蓮が、天野博士に掴みかかる。


「……申し訳ありません。……しかし、調律者を欺くためには、これしか方法がなかったのです。……どうか、私を許してください」


天野博士が、蓮の目を見つめる。


蓮は、天野博士の目から、深い悲しみと覚悟を感じ取った。


「……分かった。……あなたの事情は理解した。……で、どうすれば原初の式を破壊できるんだ?」


蓮が、天野博士から手を離す。


「……原初の式のコアは、この空間の中心にあります。……そこに、あなたの特異点の魔力を全て注ぎ込み、オーバーロードさせるのです。……そうすれば、式は内部から崩壊します」


天野博士が、空間の中心を指差す。


そこには、黒く輝く小さな球体が浮遊していた。


「……あれが、コアか。……分かった、やってやる」


蓮が、コアに向かって歩き出す。


「……待ってください。……コアを破壊すれば、この空間も崩壊します。……そして、魔力を使い果たしたあなたは、元の世界に戻れないかもしれません」


天野博士が、警告する。


「……覚悟の上だ。……俺は、世界を守るためにここに来たんだ」


蓮が、振り返らずに答える。


「……蓮くん。……あなたのお父上、神代誠一くんも、同じことを言っていましたよ」


天野博士が、懐かしそうに呟く。


「……父さんが……?」


蓮が、立ち止まる。


「……ええ。……誠一くんは、私の教え子でした。……彼は、調律者の計画を知り、それを止めるために命を懸けて戦った。……あなたは、本当に彼に似ていますね」


天野博士が、微笑む。


「……父さん……」


蓮の目から、涙がこぼれ落ちた。


「……さあ、行きなさい。……世界を、救ってください」


天野博士が、蓮の背中を押す。


蓮は、涙を拭い、コアの前に立った。


「……『残響』――全式共鳴・限界突破!」


蓮が、自身の全ての魔力をコアに注ぎ込む。


コアが、激しく明滅し始める。


「……うおおおおぉぉぉぉっ!」


蓮が、さらに魔力を注ぎ込む。


ピキッ……ピキピキッ……。


コアに亀裂が入り、眩い光が空間全体を包み込んだ。


「……これで、終わりだ!」


蓮が、最後の一撃をコアに叩き込む。


パリンッ!


コアが完全に砕け散り、真っ白な空間が崩壊し始めた。


「……ありがとう、蓮くん。……世界を、頼みましたよ」


天野博士の声が、崩壊する空間に響き渡った。


蓮の意識は、再び深い闇の中へと沈んでいった。



蓮が目を開けると、そこは島の広場だった。

夜明けの空が広がり、島の全土が薄い光に包まれている。

塔は、根元から崩壊し、島全体が震えていた。


「……蓮!」


結月が、倒れた蓮の元に駆け寄る。


「……結月……」


蓮が、微かに目を開く。


「……大丈夫!? ……蓮、蓮!」


結月が、蓮の顔を小突く。


「……ああ……大丈夫だ……」


蓮が、苦笑する。


「……良かった……!」


結月が、蓮の胸に駆け込み、泣き崩れる。


「……大丈夫か? ……蓮さん!」


アランが、目に涙を浮かべる。


「……塔が崩壊した。……原初の式は、破壊されたのか?」


透が、島全体の魔力反応を確認する。


「……はい。……塔から放たれていた黒い光の柱が消えました。……原初の式の起動シーケンスも、完全に停止しています」


シロが、通信機越しに報告する。


「……やった……。原初の式を、止めたんだ」


蓮が、少しずつ力を取り戻しながら、身体を起こす。


「……蓮、中で何があったの? ……使徒は?」


凛音が、小声で尋ねる。


「……使徒の正体は、天野博士という人だった。……調律者の元で『式』の研究をしていた科学者で、調律者の計画を止めるために、自ら悪役を演じて俺たちを導いていたんだ」


蓮が、一同に語る。


「……そんな……。使徒が、実は味方だったの?」


結月が、目を大きく開く。


「……俺たちを導いた方法は、許せない。……でも、天野博士の目的は、俺たちと同じだった」


蓮が、言い切る。


「……天野博士は、俺の父さんの教え子だった。……父さんと同じように、世界を守るために戦い続けた人だったんだ」


蓮の目から、再び涙がこぼれ落ちた。


「……蓮……」


結月が、蓮の手を握る。


「……天野博士の意志は、俺が受け継ぐ。……調律者の本体は、まだ存在する。……俺たちの戦いは、まだ終わっていない」


蓮が、仲間たちを見回す。


その時、島の地面が、再び大きく振動した。


「……また地震か!?」


凛音が、身構える。


「……いいえ、これは地震ではありません。……島自体が不安定になっています。……早く脱出しないと、島ごと沈没する可能性があります!」


シロが、緊張した声で報告する。


「……島が沈没するだと!? ……透、輸送機までテレポートできるか?」


蓮が、透を見る。


「……今の状態では、全員を一度には無理です。……二回に分けてテレポートします」


透が、汗を流しながら答える。


「……分かった。……凛音、アラン、結月は先に行け。……俺と透は後から行く」


蓮が、指示を出す。


「……了解!」


凛音、アラン、結月の三人が、透のテレポートで輸送機に送り込まれる。


島の振動がさらに激しくなり、島の一部が海に沈み始めた。


「……蓮さん、急いでください!」


透が、蓮の腕を掴む。


「……分かった。……行くぞ!」


蓮が、透の手を握り、輸送機へとテレポートした。


輸送機の中で、蓮は崩壊する塔を最後に振り返った。


「……天野博士。……あなたの意志を、俺は必ず成し遂げます」


蓮が、心の中で天野博士と父に誓った。


輸送機が島から離れ、太平洋の上空へと飛び立った。

塔は完全に崩壊し、島は海の泡沫の中に沈んでいった。


「……原初の式の魔力反応が、完全に消滅しました。……任務完了です」


シロが、歓喜の声で報告する。


「……やった……!」


凛音が、拳を振り上げる。


「……蓮さん、よくやりました!」


アランが、蓮の肩を叩く。


「……蓮。……ありがとう」


結月が、蓮の胸に顔を埋め、小さく泣いた。


「……みんな、ありがとう。……一緒に戦ってくれて」


蓮が、仲間たちを見回す。


これで第一の戦いは終わった。

しかし、調律者の本体はまだ存在する。

蓮たちの戦いは、まだ終わっていなかった。





【第38章終了】





【第38章登場魔法・用語解説】


「原初の式」:調律者が作り出した、世界を無に帰し、ゼロから作り直すための最終兵器。その内部には、式を構築した天野博士の意識が残されていた。


「使徒(天野博士)」:使徒の正体は、魔法発現以前に「式」の研究をしていた天才科学者・天野博士だった。調律者の計画を阻止するため、自ら悪役を演じて蓮を導いていた。



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