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残響魔術(エコー・コード)  作者: 天音シオン
第一部 覚醒と喪失

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第15章:箱舟への潜入と動力炉の死闘

第15章:箱舟への潜入と動力炉の死闘



作戦開始時刻、〇六〇〇(マルロクマルマル)。

太平洋上の空白地帯、「箱舟跡地」の上空に、対魔局のステルス輸送機が音もなく接近していた。


「……目標ポイントまで、あと三分。降下準備に入れ」


パイロットの声が、機内に響く。


「……いよいよだな」


蓮が、パラシュートのハーネスを確認しながら呟く。

彼の隣では、結月が静かに深呼吸を繰り返し、凛音がレールガンの最終チェックを行っていた。


「……おい、本当に僕も飛ぶのか? 高所恐怖症なんだけど……」


アランが、顔面を蒼白にしながら、パラシュートの紐をきつく握りしめている。


「……今更何言ってんだ。お前がいないと、動力炉のハッキングができないだろ」


蓮が、アランの背中を軽く叩く。


「……分かってるよ! でも、怖いものは怖いんだ!」


アランが、涙目で叫ぶ。


「……大丈夫よ、アラン君。私が一緒に飛んであげるから」


凛音が、アランのハーネスに自分のハーネスを連結する。


「……う、うん。頼むよ、凛音……」


アランが、少しだけ安堵したように息を吐く。


「……目標ポイント到達。降下開始!」


後部のハッチが開き、強烈な風が機内に吹き込んでくる。


「……行くぞ!」


蓮が、真っ先に夜明け前の空へと飛び出した。

続いて結月、そして凛音に抱えられたアランが降下する。


眼下には、海上に浮かぶ巨大な要塞――教団の海上プラントが、不気味な威容を誇っていた。

プラントの周囲には、半透明の魔力障壁がドーム状に展開されており、内部への侵入を拒んでいる。


「……アラン、障壁の隙間は?」


蓮が、インカム越しに尋ねる。


『……データ通りだ。北西の搬入口付近、障壁の出力が〇・五秒だけ低下するタイミングがある。……そこを狙うんだ』


アランの声が、風の音に混じって聞こえてくる。


「……了解。結月、凛音、タイミングを合わせろ!」


「はい!」


「任せて!」


四人は、パラシュートを操作し、北西の搬入口へと急降下していく。


『……三、二、一……今だ!』


アランの合図と共に、四人はパラシュートを切り離し、障壁の僅かな隙間を縫ってプラントの内部へと滑り込んだ。






プラントの内部は、無機質な金属の壁とパイプが入り組む、巨大な迷路のようだった。

警報は鳴っていない。どうやら、侵入には成功したようだ。


「……よし、第一段階クリアだ。……アラン、動力炉の場所は?」


蓮が、着地の衝撃を殺しながら立ち上がる。


「……ここから地下三階だ。……だが、道中には教団の警備兵と、自動防衛システムがうようよしてるぞ」


アランが、タブレットで内部のマップを確認しながら言う。


「……見つからずに進むのは不可能ね。……強行突破するしかないわ」


凛音が、レールガンを構える。


「……ええ。……でも、なるべく魔力の消費は抑えましょう。動力炉には、確実に強力な守護者がいるはずですから」


結月が、周囲を警戒しながら言う。


「……分かってる。……行くぞ」


蓮を先頭に、四人は地下へと続く階段を下り始めた。


地下一階、地下二階と進むにつれて、教団の警備兵との遭遇戦が頻発するようになった。

しかし、蓮たちは最小限の魔法と連携で、警備兵たちを次々と無力化していく。


「……アラン、防衛システムのハッキングは?」


蓮が、通路の角に身を隠しながら尋ねる。


「……やってる! でも、ここのセキュリティ、アマゾンの遺跡より厄介だぞ。……教団の連中、現代の技術もかなり取り入れてるみたいだ」


アランが、タブレットを操作しながら舌打ちをする。


「……急いで。……敵の増援が来るわ」


凛音が、通路の奥から近づいてくる足音を聞きつける。


「……よし、監視カメラと自動機銃の無効化、完了! ……三十分だけなら、ごまかせる!」


アランが、タブレットを掲げる。


「……上出来だ。……一気に地下三階まで抜けるぞ!」


蓮が、通路に飛び出し、警備兵たちに向かって突進する。


「『残響』――風刃!」


蓮の放つ風の刃が、警備兵たちの武器を弾き飛ばす。


「『氷結』――氷の檻!」


結月が、警備兵たちの足元を凍らせて動きを封じる。


四人は、警備兵たちの間をすり抜け、ついに地下三階の動力炉エリアへと辿り着いた。






動力炉エリアは、巨大な円筒形の空間だった。

中央には、青白く発光する巨大な魔力炉が鎮座しており、そこから無数のケーブルがプラント全体へと伸びている。


「……あれが、動力炉……。すごい魔力量だ」


結月が、息を呑む。


「……アラン、破壊できるか?」


蓮が尋ねる。


「……物理的な破壊は危険だ。炉が暴走して、プラントごと吹き飛ぶ可能性がある。……僕が制御システムにハッキングして、安全に停止させる」


アランが、動力炉のコンソールにタブレットを接続する。


「……頼む。……俺たちは、お前を守る」


蓮が、共鳴剣を顕現させ、入り口の方を向く。


その時、動力炉の裏側から、ゆっくりと足音が近づいてきた。


「……ネズミが入り込んだと思えば、対魔局の特務調査員か。……よくここまで辿り着いたな」


現れたのは、黒いローブを着た、長身の男だった。

顔の半分を銀色の仮面で覆っており、その隙間から冷酷な瞳が蓮たちを見据えている。


「……お前は、誰だ?」


蓮が、共鳴剣を構える。


「……私は、教団幹部『鋼の錬金術師』、ヴィクトル。……この動力炉の守護を任されている」


ヴィクトルが、両手を広げる。


「……錬金術師、だと?」


凛音が、眉をひそめる。


「……そうだ。私の魔法は『物質変換』。……この空間にある全ての金属は、私の武器となる」


ヴィクトルが、指を鳴らす。


すると、動力炉エリアの壁や床の金属が波打ち、無数の鋭い刃となって蓮たちに襲いかかってきた。


「『残響』――風壁!」


蓮が風の壁を展開し、金属の刃を防ぐ。


「……くっ、重い……!」


蓮が、顔をしかめる。

ヴィクトルの操る金属の刃は、ただの物理攻撃ではなく、強大な魔力が込められていた。


「……雨宮隊員!」


結月が、氷の槍を放ってヴィクトルを牽制しようとする。


しかし、ヴィクトルは金属の壁を作り出し、氷の槍を容易く防いでしまった。


「……無駄だ。私の錬金術の前には、いかなる魔法も通用しない」


ヴィクトルが、冷笑する。


「……なら、これならどう!」


凛音が、レールガンを構え、ヴィクトルに向かって発射する。


「『雷撃』――超電磁砲!」


極太のレーザーが、ヴィクトルに向かって一直線に放たれる。


「……愚かな」


ヴィクトルが、右手を前に突き出す。


すると、レーザーの軌道上にある金属が瞬時に鏡のような盾に変換され、レーザーを反射してしまった。


「……なっ!? レールガンが反射された!?」


凛音が、驚愕の声を上げる。


反射されたレーザーは、天井のパイプを破壊し、激しい火花を散らした。


「……アラン、急げ! こいつ、かなり厄介だぞ!」


蓮が、金属の刃を共鳴剣で弾き落としながら叫ぶ。


「……分かってる! でも、ここの制御システム、何重にもプロテクトがかかってるんだ! ……あと五分、いや、三分待ってくれ!」


アランが、必死にタブレットを操作する。


「……三分か。……結月、凛音、三分間、全力でこいつを抑え込むぞ!」


「はい!」


「了解!」


蓮たちは、ヴィクトルとの死闘に突入した。






「『残響』――雷炎刃!」


蓮が、雷と炎を纏った共鳴剣で、ヴィクトルの金属の盾に斬りかかる。


「……遅い」


ヴィクトルは、金属の盾を瞬時に無数の針に変換し、蓮に向かって放つ。


「……ぐっ!」


蓮は、咄嗟に風の魔法で針を吹き飛ばすが、数本がコートを掠め、頬に浅い傷を負った。


「……雨宮隊員!」


結月が、蓮の前に氷の壁を展開する。


「……氷の壁など、私の錬金術の前では紙切れ同然だ」


ヴィクトルが、床の金属を巨大なハンマーに変換し、氷の壁を粉砕する。


「……きゃあっ!」


結月が、砕け散った氷の破片を浴びて吹き飛ばされる。


「……結月!」


蓮が、結月に駆け寄ろうとする。


「……よそ見をしている暇があるのか?」


ヴィクトルが、蓮の背後から金属の刃を突き出す。


「……させないわ!」


凛音が、レールガンを鈍器のように振り回し、金属の刃を弾き飛ばす。


「……チッ。鬱陶しい女だ」


ヴィクトルが、舌打ちをする。


「……アラン、まだか!」


蓮が、叫ぶ。


「……あと一分! ……くそっ、最後のプロテクトが……!」


アランの額から、滝のように汗が流れ落ちる。


「……一分も待たせん。ここで終わらせてやる」


ヴィクトルが、両手を高く掲げる。


すると、動力炉エリアの全ての金属が、ヴィクトルの頭上に集まり、巨大な鉄球を形成し始めた。


「……なっ!? なんだ、あれは……!」


凛音が、絶望的な顔で巨大な鉄球を見上げる。


「……私の最大魔法『メテオ・ストライク』だ。……この空間ごと、お前たちを押し潰してやる」


ヴィクトルが、狂気じみた笑い声を上げる。


「……まずい! あれが落ちてきたら、動力炉もろとも……!」


蓮が、顔を青ざめさせる。


「……アラン君、急いで!」


結月が、祈るように叫ぶ。


「……分かってる! ……いっけええええっ!」


アランが、タブレットのエンターキーを力強く叩き込む。


その瞬間、動力炉の青白い光がフッと消え、プラント全体を覆っていた魔力障壁が消失した。


「……動力炉の停止、完了した!」


アランが、歓喜の声を上げる。


「……なっ!? バカな、私の制御システムが……!」


ヴィクトルが、驚愕に目を見開く。


「……今だ、蓮!」


凛音が叫ぶ。


「……ああ! これで終わりだ!」


蓮は、残された全ての魔力を共鳴剣に集中させた。


「『残響』――全式共鳴・絶華!」


蓮の共鳴剣が、眩いほどの純白の光を放ち、巨大な鉄球に向かって一直線に伸びていく。


純白の光の刃が、巨大な鉄球を真っ二つに切り裂き、そのままヴィクトルの身体を貫いた。


「……がはっ……! バカ、な……。この私が、ただの子供に……」


ヴィクトルは、信じられないという顔で自分の胸に刺さった光の刃を見つめ、そのまま崩れ落ちた。


「……はぁ、はぁ……」


蓮は、荒い息を吐きながら、共鳴剣を消滅させた。


「……やったわね、蓮!」


凛音が、蓮の肩を叩く。


「……ええ。……アラン君のおかげです」


結月が、アランに向かって微笑む。


「……ふん。当然だ。僕の天才的な頭脳に感謝するんだな」


アランが、得意げに鼻を鳴らす。


「……ああ、感謝してるよ。……よくやった、アラン」


蓮が、アランの頭をくしゃくしゃと撫でる。


「……だから、触るなって言ってるだろ!」


アランが、顔を赤らめて蓮の手を振り払う。


動力炉の停止により、魔力障壁は完全に無効化された。

これで、主力部隊の突入が可能になった。


「……よし、俺たちの任務は完了だ。……脱出するぞ」


蓮が、三人に声をかける。


しかし、その時。

停止したはずの動力炉が、不気味な赤い光を放ち始めた。


「……なっ!? なんだ、これ……!」


アランが、慌ててタブレットを確認する。


「……どうした、アラン!」


蓮が尋ねる。


「……動力炉の制御システムが、何者かに強制的に書き換えられている! ……暴走モードに移行してるぞ!」


アランが、絶望的な声を上げる。


「……暴走モード? どういうことだ!」


凛音が叫ぶ。


「……このままだと、あと五分で動力炉が爆発する! ……プラントごと、吹き飛ぶぞ!」


アランの言葉に、蓮たちの顔が青ざめた。


「……誰が、そんなことを……」


結月が、震える声で呟く。


「……私です」


動力炉の裏側から、静かな声が聞こえた。


現れたのは、真っ白なローブを着た少女――「神の代行者」だった。





「……お前……!」


蓮が、再び共鳴剣を顕現させ、少女を睨みつける。


「……動力炉を停止させたのは見事でした。……ですが、大いなる門を開くためのエネルギーは、すでに十分に充填されています。……このプラントは、もう不要なのです」


少女は、無表情のまま淡々と語る。


「……不要だから、爆破して俺たちごと消し飛ばす気か!」


凛音が、レールガンを構える。


「……ええ。あなたたちは、神の計画の邪魔です。……ここで、消えていただきます」


少女が、右手を上げる。


圧倒的なプレッシャーが、再び蓮たちを襲う。

しかし、今回はそれだけではなかった。

暴走を始めた動力炉から、赤い魔力の奔流が溢れ出し、空間全体を歪ませ始めている。


「……くそっ、魔力が……吸い取られる……!」


蓮が、膝をつく。

動力炉の暴走は、周囲の魔力を強制的に吸収するブラックホールのような役割を果たしていた。


「……雨宮隊員!」


結月が、蓮を支えようとするが、彼女自身も魔力を奪われ、立っているのがやっとの状態だった。


「……アラン、爆発を止める方法は!?」


凛音が、必死に叫ぶ。


「……無理だ! 制御システムが完全に物理的に焼き切られてる! ……もう、どうしようもない!」


アランが、タブレットを投げ捨て、頭を抱える。


「……そんな……」


結月が、絶望的な顔で赤い光を放つ動力炉を見つめる。


「……さようなら、対魔局の諸君」


少女が、光の球体を放とうとした、その時。


『……諦めるのは、まだ早いわよ』


インカムから、紗綾局長の声が響いた。


「……局長!」


蓮が、顔を上げる。


『……主力部隊の突入は中止。……これより、プラントの強制排除を行う。……あなたたちは、すぐにそこから脱出しなさい』


「……強制排除? どうやって……」


蓮が尋ねる。


『……上空を見てみなさい』


紗綾の言葉に、蓮たちは天井の隙間から夜空を見上げた。


そこには、対魔局のステルス輸送機ではなく、巨大な漆黒の飛行戦艦が浮かんでいた。


「……あれは……対魔局の空中要塞『アルテミス』……!」


凛音が、驚愕の声を上げる。


「……アルテミスの主砲で、プラントごと吹き飛ばす気か!?」


蓮が、叫ぶ。


『……ええ。動力炉の暴走を止めるには、それしかないわ。……爆発まであと三分。……死に物狂いで逃げなさい』


紗綾の声は、冷酷なまでに冷静だった。


「……局長、本気ですか!? 俺たちも巻き込まれますよ!」


アランが、パニックになって叫ぶ。


『……あなたたちなら、逃げ切れると信じているわ。……健闘を祈る』


通信が、一方的に切れた。


「……くそっ、あの鬼局長め……!」


蓮が、悪態をつく。


「……文句を言ってる暇はないわ! 逃げるわよ!」


凛音が、アランの襟首を掴んで走り出す。


「……待ちなさい」


少女が、光の球体を放つ。


「……させない!」


結月が、残された僅かな魔力を振り絞り、氷の壁を展開する。


光の球体が氷の壁に激突し、凄まじい爆発を起こす。


「……きゃあっ!」


結月が、爆風で吹き飛ばされる。


「……結月!」


蓮が、結月を抱きとめる。


「……私は、大丈夫です。……早く、逃げて……」


結月が、苦しそうに息を吐く。


「……一緒に逃げるんだ!」


蓮は、結月を背負い、凛音たちの後を追って走り出した。






「……はぁ、はぁ……!」


蓮たちは、崩れゆくプラントの内部を必死に走っていた。

動力炉の暴走による赤い魔力の奔流が、通路を次々と飲み込んでいく。


「……こっちだ! エレベーターは使えない、非常階段を登るぞ!」


アランが、先頭を走りながら指示を出す。


「……急げ! アルテミスの主砲発射まで、あと一分よ!」


凛音が、叫ぶ。


四人は、非常階段を駆け上がる。

しかし、途中で階段が崩落しており、巨大な穴が開いていた。


「……くそっ、道が塞がれてる!」


蓮が、舌打ちをする。


「……どうするの!? このままじゃ、間に合わないわ!」


凛音が、焦燥感を募らせる。


「……僕に任せろ!」


アランが、バックパックからワイヤーガンを取り出し、上の階の手すりに向かって発射する。


ワイヤーが手すりにしっかりと巻き付く。


「……これに掴まって、登るんだ!」


アランが、ワイヤーを引っ張って強度を確認する。


「……よし、凛音、アランを頼む! 俺は結月を連れて登る!」


蓮が、結月を背負い直す。


「……分かったわ!」


凛音が、アランを抱えてワイヤーを登り始める。


蓮も、結月を背負ったまま、片手でワイヤーを掴んで登り始めた。


「……蓮、重くないですか……?」


結月が、申し訳なさそうに尋ねる。


「……バカ言うな。お前一人くらい、どうってことない」


蓮が、強がって笑う。


しかし、魔力を奪われ、体力も限界に近い蓮にとって、結月を背負ってのワイヤー登りは過酷を極めた。


「……ぐっ……!」


蓮の手から、血が滲む。


「……蓮!」


結月が、悲鳴を上げる。


「……大丈夫だ……! 絶対に、落とさない……!」


蓮は、歯を食いしばり、必死にワイヤーを登り続ける。


「……主砲発射まで、あと三十秒!」


凛音が、上の階から叫ぶ。


「……くそっ、間に合え……!」


蓮が、最後の力を振り絞って、上の階へと這い上がった。


「……やったわ!」


凛音が、蓮を引き上げる。


「……はぁ、はぁ……」


蓮は、床に倒れ込み、荒い息を吐く。


「……まだだ! 外に出ないと、巻き込まれるぞ!」


アランが、叫ぶ。


四人は、再び走り出し、ついにプラントの屋上へと辿り着いた。






屋上に出ると、夜明け前の空に、巨大な空中要塞アルテミスが不気味に浮かんでいた。

アルテミスの艦首にある巨大な主砲が、眩い光を放ち始めている。


「……主砲発射まで、あと十秒!」


アランが、絶望的な顔で叫ぶ。


「……海に飛び込むぞ!」


蓮が、叫ぶ。


「……ここから飛び降りたら、死ぬわよ!」


凛音が、悲鳴を上げる。


「……ここにいても死ぬ! 飛ぶしかない!」


蓮が、結月の手を強く握る。


「……はい!」


結月が、蓮の手を握り返す。


「……行くぞ!」


蓮の合図と共に、四人はプラントの屋上から、暗い海へと向かって飛び降りた。


『……主砲、発射!』


インカムから、紗綾の冷酷な声が響いた。


直後、アルテミスの主砲から、極太の光の奔流が放たれた。

光の奔流は、プラントの動力炉を正確に撃ち抜き、凄まじい大爆発を引き起こした。


「……うおおおおっ!」


蓮たちは、爆風に吹き飛ばされながら、海面へと落下していく。


プラントは、轟音と共に完全に崩壊し、海の中へと沈んでいった。






「……ぷはっ!」


蓮が、海面から顔を出す。


「……結月! 凛音! アラン!」


蓮が、周囲を見渡して叫ぶ。


「……ここよ!」


少し離れた場所で、凛音がアランを抱えて海面に浮上した。


「……結月は!?」


蓮が、焦って周囲を探す。


「……蓮……」


蓮のすぐそばで、結月が弱々しい声で呼んだ。


「……結月! 無事か!」


蓮が、結月を抱き寄せる。


「……はい。……蓮が、守ってくれたから……」


結月が、安堵の笑みを浮かべる。


「……よかった……」


蓮が、結月を強く抱きしめる。


上空では、空中要塞アルテミスが、ゆっくりと旋回していた。


『……生存信号、確認。……よくやったわね、あなたたち』


インカムから、紗綾の声が聞こえてきた。


「……局長、あんた本当に鬼だな……」


蓮が、苦笑しながら呟く。


『……褒め言葉として受け取っておくわ。……救助部隊を向かわせる。少しの間、海で泳いでいなさい』


通信が切れた。


「……ははっ。……終わったな」


蓮が、夜明けの空を見上げて笑う。


「……ええ。……でも、あの少女は……」


結月が、不安そうに呟く。


「……ああ。あいつは、絶対に生きてる。……『大いなる門』の計画も、まだ終わってない」


蓮が、表情を引き締める。


「……次は、私たちが攻め込む番ね」


凛音が、力強く言う。


「……ふん。僕のハッキング技術があれば、どんな門でも閉じてみせるさ」


アランが、強がって笑う。


夜が明け、水平線から朝日が昇り始めた。

黄金の光が、海面をキラキラと照らし出す。


黒の教団との最終決戦は、まだ始まったばかりだった。

蓮たちは、次なる戦いに向けて、決意を新たにしていた。





【第15章終了】





【第15章登場魔法・用語解説】


「ヴィクトル」:黒の教団幹部「鋼の錬金術師」。魔法「物質変換」により、周囲の金属を自在に操り、武器や盾として使役する。


「メテオ・ストライク」:ヴィクトルの最大魔法。周囲の金属を巨大な鉄球に変換し、対象を押し潰す。


「全式共鳴・絶華」:蓮の「残響」の最大出力。仲間の想いと魔力を極限まで高め、全てを切り裂く純白の光の刃を放つ。


「空中要塞アルテミス」:対魔局が保有する巨大な漆黒の飛行戦艦。強力な主砲を備えており、局地的な殲滅作戦に使用される。


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