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episode:山下しずく

 どうも。

 ……そうだよ。アンタ、先週連絡してきた葛西だよね。話を聞きたいって聞いたから来たんだけど。

 ああ、そう、山下しずく。アンタから連絡してきたんだから、分かるでしょ。


 ちょっと! オレンジジュースとワッフル。……だーかーらあ! オレンジジュースと、ワッフル! シロップ多めに持ってきて。

 ほんと、一回で聞いてよ。グズ。


 それで、なんなの。わざわざ呼び出して。アタシ、近くに住んでた程度で別に知らないんだけど、アイツのこと。だから、アイツだよ! アイツ、斎藤のこと!

 近くに住んでたせいで幼馴染とか言われてたけど。ほんとサイアク。

 同じマンションの隣に住んでたの、アイツと。億ションとか言われてたけど、ホントかどーか。

 たっかいマンション買って、そのローンでずっとお金が無いお金が無いって父さんはずーっと言ってて、うるさかったよ、ずっと。


 アイツ、昔っから細くてさ。アタシの両親なんて、アイツのこと見ていっつも言うの。

 斎藤さんの息子さんは華奢で肌が白くて、目が大きくて可愛いのに、アンタは肌は黒いし、目は細くて一重で、まるでドラム缶みたいって。

 腹が立つ。


 ちょっと! さっき頼んだオレンジジュース、まだ!? 待ってんだけど、こっちは!


 ああもう、アイツのこと思い出すだけで腹が立つ。

 アタシが地黒で、一重で、太ってんのは私のせいじゃないだろ! アタシをそうやって産んだアイツらのせいだっつーのに!


 なんだよ、その目。アンタもアタシのこと、醜いブタだって思ってんの? ほんと、許せない。

 アタシだって! アタシだって、好きでブスに生まれたわけじゃないのに、どんだけケアしたって肌は汚いし、同級生みたいに唇がツヤツヤになるわけでもないし、目が大きくなるわけでもない。

 アタシだって、大きい目と白い肌と華奢な体が欲しかったよ! 毎日毎日、ずっと比べられて、オタクだから太ってるとか、歩けばドスドス音がするとか、言われる度にアイツのことを嫌いになっていったよ。


 おせーよ! さっさと持ってこいよ! くそ、クソクソクソ! 誰も彼も、アタシのことを見下しやがる!

 いま? 何もしてねーよ。むーしょーく! 無職! アイツら、アタシのことを傷付け続けたんだから、アタシの世話をして当然だろ。


 アイツと一緒だったのは中学までだよ。アタシ、中卒だから。

 そう、中卒。ずっと公立行ってたんだよ、でも公立の高校も私立の高校も行きたくなかったんだよ! どうせまたバカにされて、いじめられて、他の奴と比べられるんだ。そう思ったら行く気になれなかったんだよ。


 だから、それ以降アイツがどうなったかなんて知らないし、そもそも小学校の頃だって、アタシはアイツが何してたかなんて知らなかったよ。

 正直、どうでも良かったし、知りたくもなかった。思い出す度に腹が立つ!

 ……いじめられてんのは見たことあるけど、それも別に仕方ないだろ。

 アイツ、変な奴だったし。


 そう! 変な奴だったよ、ずっと薄笑い浮かべてて、気持ち悪い奴だった。

 アタシの両親は、アタシが中学の途中から学校行かなくなってからずーっと斎藤のこと言ってきてたよ! ああもう、思い出すだけではらわたが煮えくり返る!

 斎藤さんのところの息子さんは私立のおぼっちゃん高校に行っただとか、私立の文系の大学に行ったとか、大学院に進んだとか! 知るかよ、知るか! そんなこと!


 なんだよ! お客様の邪魔って、アタシらしかいないだろ! 誰の邪魔になんだよ、アタシが客じゃないってのかよ!

 みんな、みんなうるさい! うるさいうるさいうるさい!

 失礼しましたって言うなら二度と言うなよ! クソ、クソ! みんなアタシのことをバカにしやがって、何もかも全部、斎藤のせいだ、アタシの転落、全部斎藤から始まったんだ!


 クソ、アイツのせいで……アタシだって、まともな生活をしたかったよ! オシャレして、仕事して、アフターファイブとか言いたかったよ!

 でもできるわけねーだろ、こんなブスで、デブで!

 母さんが斎藤とアタシを、幼稚園の頃からずっと比べ続けてなかったら、アタシだってこんなことになってなかったよ!


 うるせぇ! 出禁だ? 二度と来るか! クソ、クソ、クソ!

 斎藤が何を思ってたかとか、どんな人間かなんて知らねーよ! なんだよ、斎藤なんて知るか! アタシだって、あんな風に生きたかったよ!


 痩せてて、華奢で、肌が白くて、二重で! アタシだって、ああなりたかったよ。

 両親にも愛されて、湯水のように金を使われて、妹と比べられることもなくて、学校だって行くことができて、勉強できて、アタシだって……アタシだって、ああなりたかったよ!


 クソ!

 サイアクな気分だよ、サイアクだ!

 タダ飯だって言うから来たのに、結局サイアクな気分だ、クソクソクソ! 二度と来るか、二度と来るかよ!

 ここまで来たのに電車賃くらい出さねーのかよ! 

 ふん。


 クソ、二度と外なんて出るか、クソ。

 何見てんだよ! クソが! クソ、アタシの人生、全部クソだ! クソがよ……。

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